Blizzard Entertainmentが展開するアクションRPG「ディアブロ」シリーズより、「ディアブロ IV」と「ディアブロ イモータル」の2作品において、日本の漫画「ベルセルク」とのコラボレーションイベントが開催されることが発表された。

「ディアブロ」と「ベルセルク」がまさかのコラボ!ダークファンタジーの二大巨頭が交わることになった経緯とはの画像

「ベルセルク」は、三浦健太郎氏が手がけるダークファンタジー作品。巨大な剣を携え、漆黒の鎧を身にまとった戦士・ガッツの、過酷で壮大な旅が描かれる。日本はもちろん、世界でも大きな人気を誇り、作者の三浦健太郎氏が2021年に逝去したあとも、物語の全容を聞かされていた友人の漫画家・森恒二氏と、三浦氏の弟子たちによって連載が続けられている。

「ディアブロ」と「ベルセルク」はともに壮大なダークファンタジー作品であることから、親和性は高いように思える。とはいえ「ディアブロ」という作品が、日本の漫画とコラボするというのは衝撃を受けたのも事実だ。今回「ベルセルク」コラボについてのインタビューを行うことができたので、その様子をお届けする。

今回インタビューに応じてくれたのは、「ディアブロ イモータル」のリードアーティスト Emil Salim氏(写真左)と、「ディアブロ VI」のリードアーティスト Viviane Kosty氏(写真右)だ。

「ディアブロ」と「ベルセルク」がまさかのコラボ!ダークファンタジーの二大巨頭が交わることになった経緯とはの画像
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――まず、今回のコラボのきっかけを教えてください。

Emil Salim氏:チーム内でコラボをするならどこがいいかなと話していると、真っ先に名前が挙がったのが「ベルセルク」でした。「ディアブロ」と「ベルセルク」はダークファンタジーというところで親和性がありますし、ストーリーにおいても、人間が神と悪魔に挟まれて苦境に立たされたり葛藤を感じたりするところなど、ベースになっている部分が似ていると感じていました。なので、我々としてはこのコラボは起こるべくして起きた、という印象なんですよ。

Viviane Kosty氏:「ディアブロ」と「ベルセルク」のファンが被っていることも大きな要因でした。このコラボによって、双方のファンを喜ばせられるのではと考えたんです。開発陣にも「ベルセルク」のコアなファンが多く、このコラボが実現した際はみんな喜んでいましたね。

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――海外から見て「ベルセルク」のアートワークはどのように映っているのでしょうか。

Viviane Kosty氏:「ベルセルク」のアートは中世時代の甲冑や描写がメインとなった、かなりリアル寄りの描かれ方をしていると思います。そこは「ディアブロ IV」も同じですので、「ベルセルク」の世界をゲームに落とし込むのはやりやすかったですね。

Emil Salim氏:三浦先生の絵は、ガッツの感情や苦しみが絵から見て取れるのが魅力だと思います。この独特の味をどうゲームで表現するかに気を使いました。先ほども話題に出ましたが、とにかく開発陣にファンが多いので、いざ実現できるとなると多くの意見が挙がっていました。

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――同じダークファンタジー作品ということで、落とし込みやすかったとのことですが、逆に頭を悩ませた部分などはありましたか?

Emil Salim氏:何回かトライをした点でいえば、ガッツが羽織っているマントです。見えかたや、原作の再現度を高めるために、異なるバリエーションを何度も作り直しています。

Viviane Kosty氏:髑髏の騎士の甲冑のバランスがですね。マンガ内のサイズ感そのままにゲームに落とし込むと、腕が甲冑を貫通したり、甲冑と同化してるように見えたりすることがあったんです。原作のサイズ感をキープしながらゲーム内でも自然に見えるようにするのは少し大変でした。

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――今回報酬として実装されるキャラクター以外にも、原作にはほかのキャラクター……例えばシールケなどの候補もあったと思うのですが、導入する要素の選択はどのように決まっていったのでしょうか?

Viviane Kosty氏:「ディアブロ IV」に関しては、どのキャラをどのクラスに割り当てたら自然に見えるかという点を考えました。ガッツは狂戦士の甲冑と、傭兵時代の鎧という2種類のバリエーションが登場するのですが、これを2つのクラスで分けてあります。

まずローグに傭兵時代のガッツの鎧を割り当てました。ローグは遠近両方の武器を使って戦うクラスなので、いろいろな武器を使いこなして、状況に合わせて戦っていくという傭兵時代のガッツの戦闘スタイルにフィットするのではと思ったからです。一方で、狂戦士の甲冑を装備したガッツは接近戦特化の戦闘スタイルですし、ガッツの怒りを表現できる戦い方ができるのはバーバリアンしかないと思いました。

「ディアブロ」と「ベルセルク」がまさかのコラボ!ダークファンタジーの二大巨頭が交わることになった経緯とはの画像
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このように、ゲームに落とし込んだ際にできるだけ自然に見えるようにすることを念頭に置いてキャラクターの選択をしています。制作の時間は限られているため、まずはできるだけ作品のコアな部分を再現しようということで今回の選択となりました。

Emil Salim氏:「ディアブロ イモータル」では、「ベルセルク」のストーリーをゲーム内で再現してみたかったというのが根底にあります。コラボの作業が始まった際、要素がいろいろありすぎて、何を選ぶか迷ってしまう……いわばコンテンツのビュッフェのようでした。最終的にマンガの黄金時代編を選択して、“生存者の厄災”というイベントをベースに、マンガの敵を登場させたり、ガッツの体験した“蝕”を再現したりしようと考えました。これが「ベルセルク」のコアとなる物語の切り出しの部分ですし、一番アイコニックな場面なので、ここをフォーカスすることで原作ファンもゲームファンも納得できるだろうと思ったからです。

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――「ディアブロ イモータル」におけるゾットの戦いや生存者の厄災イベントについて、原作の激しい戦いをどのようにゲームプレイに落とし込んだのでしょうか。

Emil Salim氏:先に補足しておくと、イベントとゾットとの戦いは分けて体験することができます。イベントをやらないとゾットと戦えないとか、ゾットと戦わないとイベントが進まないといったことはありませんのでご安心ください。

イベントについては“蝕”を再現したらどうなるか、というのがテーマです。イベントを進めていくと蝕が発生し、マンガのように敵がどんどん沸いてきます。蝕の発生中はプレイヤーがダメージを受けるなど、追加の要素も入ってくるので、そういった形で蝕の絶望感を体験してもらえると思います。

ゾット戦は黄金時代編での象徴的なシーンですから、どれだけ忠実に再現できるかを意識しました。原作では、ゾットとガッツとグリフィスによる戦闘中、印象的な場面や掛け合いが登場したと思います。本作のゾット戦も、そういった印象的な場面を再現していた李、原作に近い環境を作ったりしているので、原作そのままの戦いを体験してもらえると思います。それと詳しくいうとネタバレになってしまうので、一言だけ。ゾット戦では、ぜひゲーム内で手に入る“深紅のベヘリット”を装備した状態で挑んでください(笑)。

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――「ディアブロ IV」では魑魅魍魎、「ディアブロ イモータル」ではゴーレムというペット用スキンが手に入るようですが、このユニークなチョイスをした理由をお聞かせください。

Viviane Kosty氏:原作にはペットにしやすそうなものや、ペットにできたらおもしろそうなキャラクターが数多く登場するので、実際かなり選択肢は豊富でした。そのなかで魑魅魍魎を選んだのは、もっとも印象に残るキャラクターではないかと感じたからです。実際このキャラクターがかわいいかと言われるとそうでもないのですが、このキャラクターを見ていると奇妙な安心感を覚えるというか……(笑)。「ディアブロ」も「ベルセルク」と同様に希望がないような世界観ですが、その中に魑魅魍魎がいることで、ちょっとした緩和剤になるのではと思って選択しました。あとファンのあいだでこのキャラクターの印象が強いというのも理由ですね。社風としてファンを大事にしたいということもあり、ファンに喜んでもらおうと考えたときに、魑魅魍魎が一番ふさわしいと思いました。

「ディアブロ」と「ベルセルク」がまさかのコラボ!ダークファンタジーの二大巨頭が交わることになった経緯とはの画像

Emil Salim氏:「ディアブロ IV」側で魑魅魍魎が選ばれたため、「ディアブロ イモータル」では違うものにしようという話になり、選ばれたのがゴーレムでした。その理由は、原作においてゴーレムはさまざまな大きさや見た目のものがあり、ペットとして作りやすいと思ったからです。じつは原作サイドにゴーレムの見た目をカスタマイズしていいかと聞いたところ、かなり肯定的な反応をいただけたので、ペットのゴーレムに関しては葉っぱのカスタマイズなどができるようになっています。

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――どのように原作サイドとすり合わせを行ったのでしょう? また原作サイドからの要望などはありましたか?

Emil Salim氏:一番気を付けてほしいと言われたのは使える武器に関してでした。スキンのビジュアルと扱える武器を、原作の雰囲気を壊さないようにしてほしいという要望ですね。ほぼ毎日のように連絡を取り合っていた時期もありますし、オープンにお話ししていただいたので、やり取りはしやすかったです。

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Viviane Kosty氏:「ディアブロ IV」側も同じリクエストがありました。ただ「ディアブロ IV」ではどのクラスにどのスキンを割り当てるのかは早々に決まっていたので、この点に関してはそれほど苦労はしませんでした。印象的だったのは、狂戦士のマントを生きているように見えるものにしてくださいと言われたことでしょうか。

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――最後に日本のファンへメッセージをお願いします。

Emil Salim氏:今回のコラボは、開発陣全員が高いテンションで作業を行い実現させました。「ディアブロ イモータル」では、マンガを可能な限り忠実に再現するという考えをベースに開発しました。本作を通じて、ぜひ「ベルセルク」の世界観を楽しんでください。また、わかりやすいものからコアなものまで、さまざまな小ネタを仕込んであるので、探してもらえると嬉しいです。あまりいないかもしれませんが、もし「ディアブロ」ファンでまだ「ベルセルク」を読んだことがない人がいたら、この機会にぜひ読んで欲しいですね。優れた作品であることは間違いないですし、読んだうえで我々がどれだけ情熱を注いだかを感じてほしいです(笑)。

Viviane Kosty氏:最初にも言ったように、開発陣にも「ベルセルク」の大ファンがたくさんいます。そんな開発から「ベルセルク」ファンへのラブレターのようなコラボになっていると思います。原作に忠実に再現することを心がけましたので、プレイを通じてそれを感じていただければ嬉しいです。

2008年から、主にゲームメディアを中心に活動しているフリーランスライター。海外ゲームを遊ぶ比率が多く、ファンタジーやSFがテーマのものが大好物。特にミニチュアゲームの「ウォーハンマー」やTRPGの「ダンジョンズ&ドラゴンズ」は、もはや人生になくてはならないものとなっています。

それはそれとして日本のかわいいキャラも好きで、「Fate/Grand Order」や「ウマ娘」もプレイ。最近は「ウマ娘」の影響でダンスを始めました。

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