京都・みやこめっせにて7月14日(金)~16日(日)の期間で開催されたBitSummit Let’s Go!!(一般公開日は15、16日)。アニプレックスブースにて出展されていた「Venture to the Vile」のプロデューサーインタビューをお届けしよう。
2024年にSteamで販売を予定しているダークファンタジーアクションアドベンチャー「Venture to the Vile」(ベンチャートゥザヴァイル)はアニプレックスが販売を担当、モントリオールのインディーゲームスタジオ・Cuts to Bitsで開発が行われている。
本稿ではBitSummitのために来日したCuts to Bitsのプロデューサー・小林正男氏へのインタビューをお届けする。「Venture to the Vile」の世界観、“メトロイドヴァニア”と呼ばれるゲーム性を選んだ理由と、本作ならではのオリジナリティについて。さらに大手メーカーでAAAタイトルを手掛けたスタッフが多く在籍するCuts to Bitsというスタジオに関してなど、さまざまな角度からこのゲームについて掘り下げることができた。
筆者自身、「Venture to the Vile」への期待感が高まる内容となったので、インディーゲームファン、メトロイドヴァニアのファンには、ぜひともご一読いただきたい。
AAAタイトルから持ち込んだ“昼夜の概念”で、メトロイドヴァニアの欠点を克服する
――「Venture to the Vile」というゲームで何を表現しようとしているのか、教えてください。
小林:「Venture to the Vile」はヴィクトリア朝時代のイギリスをモチーフにしたゲームです。当時の雰囲気を再現しようと試みています。ファンタジーなので、現実のイギリスでは起きていないことがいろいろと起きているのですが、雰囲気は当時のフィクションを参考にしています。
ヴィクトリア朝は“変動”の時代です。科学や医学が急速に発展して、産業革命もありました。その影では、たくさんの人たちが犠牲になっています。そうした時代背景を踏まえた世界になっています。
――ダークファンタジーな世界観は、当時の暗い世相を反映しているのですね。
小林:はい。庶民の方々にはとても厳しい時代だったので、そこからインスピレーションを受けています。あわせて“ヴァイル”と呼ばれる、それまでは存在していなかった力により、モンスターが発生したりといった形で、この時代の“変化”も表現しています。
変わろうとしている世界で、人々はどのように暮らしているのか? それをどのように捉えるべきか? そういったことをプレイヤーさんにも考えていただきたいと思っています。
――ゲームジャンルとして、メトロイドヴァニアの形式を取った理由を教えてください。
小林:Cut to Bitsはクリエイティブディレクターのポール・グリーンに誘われて、4人で立ち上げたスタジオなのですが、そのときすでにポールは「Venture to the Vile」のアイデアを持っていました。もともとチームにはメトロイドヴァニアのファンが多かったので、「おもしろそうだし、作ってみたい」と意見が一致して、開発が始まりました。
「Venture to the Vile」のスタッフは、その多くがオープンワールドゲームなどのAAAタイトルに携わったクリエイターたちです。僕は「アサシン クリード」や「ファークライ」、ポールならロックスター・ゲームスの「グランド・セフト・オート」。ユービーアイソフトでミッションデザインを担当していたスタッフもいて、彼にはオープンワールドにおけるストーリーテリングなどのノウハウがありました。
スタッフたちのAAAタイトルのノウハウをメトロイドヴァニアに落とし込めば、いままでにないゲームになるのではないかと話し合いました。それなら少数精鋭のチームで、プレイヤーさんに楽しんでもらえるものが作れるのではないかと考えたんです。
――メトロイドヴァニア系のタイトルで、とくに参考にしたものがあれば教えてください。
小林:とくにインスピレーションを受けたのは「悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲」と「Hollow Knight(ホロウナイト)」です。
――では「Venture to the Vile」ならではの、ほかのメトロイドヴァニアとは異なる独自性は、どんな部分にありますか?
小林:まず、我々が“マルチレーン”と呼んでいる、奥行きのあるレベルデザインです。また、昼夜のサイクルを取り入れ、ダイナミックに世界の時間経過が表現されている点も、従来のメトロイドヴァニアにはなかったものだと思います。
時間帯によって、敵の種類や配置が変わったり、NPCの行動が変化するので、特定の時間に訪れることで受けられるクエストや、手に入るアイテムがあったりするんです。
メトロイドヴァニアって構造上、同じマップに何度も行くことになりますよね。「新しいところに行きたいけど、一度戻らなきゃいけない」というのは場合によってはちょっとダレるよなぁと。同じエリアでも、時間帯によって新たな要素が見つかるようにすることで、そういった退屈さを克服するデザインになっているんです。
体験版からのフィードバックで“パリィ”を使うシチュエーションは増加する予定。ボスから手に入る能力もわかりやすく
――BitSummitでもプレイできた体験版はストーリーの部分はあまり描かれませんでしたが、ヴァイルに感染した植物に襲われて困っているキャラクターを助けるといったイベントがひとつありました。あのイベントはその後の展開に、何か影響があるのでしょうか?
小林:あのキャラクターを助けることで、拠点となる街にある、モンスターたちの情報が集まる施設に入れるようになるんです。
――道中で出会った人を助けることでプレイヤーにも恩恵があるというのは、オープンワールド系タイトルのサブクエストなどでよく見るデザインですよね。そういったイベントはほかにもけっこうあるのでしょうか?
小林:「Venture to the Vile」にはNPCがたくさん登場します。ひとりひとりに物語やサブクエストがあるので、世界観が深まる要素が好きな方には、たくさんのNPCと関わってみてほしいです。オープンワールド的なストーリーやクエストの展開をいろいろと取り入れているので、メトロイドヴァニアタイトルをたくさんプレイした方にも、新鮮に感じていただけるんじゃないかなと思います。
もちろん、そういった要素をあまり気にせず、アクションゲームとして楽しんでいただくこともできます。
――体験版をプレイしていて個人的に気に入ったのが、敵の攻撃を弾いて追撃する“パリィ”の感触だったのですが、これを使える対象となる敵キャラクターが限定されていたのが、勿体ない印象を受けました。あれ以降のゲームプレイで、もっとパリィが活躍する機会が増えると嬉しいと思ったのですが。
小林:体験版のマップでは使える機会が少なくなってしまいましたが、ベーシックアクションのひとつとして、かなり多用できるものにするつもりです。もちろん、タイミングをあわせるアクションが苦手な人は、使わずに進めることもできます。
開発チームとしても、体験版を作ってみて「やっぱりパリィっておもしろいよね」と。「じゃあもっと使えるようにしよう」という話になっていますので、さらに使える局面は増えると思います。ご期待ください!
――体験版の先のゲームプレイで解禁される要素について、注目してほしいポイントがあれば、いま言える範囲で教えていただけますか?
小林:現時点で公開しているアビリティセットが“ダブルジャンプ”、“パリィ”、“壁ジャンプ”、“ダッシュ”、“バックステップ”、あと“触手アーム”……いわゆるフックショットですね。この6種類になりますが、ほかにもアクションは用意しています。ちょっとずつ公開していきますので、もう少々お待ちいただければと(笑)。
基本的なゲームループとしては、要所要所でボスを倒すと、その能力が吸収できます。体験版ではラストにバッタのボスが登場して、倒すとバッタの能力であるダッシュが手に入りましたよね。
――ボスを倒して手に入るアビリティが、倒したボスの能力に紐付いていたというのは、いま言われて初めて気付きました。
小林:体験版では、ボスと能力の紐付けが分かりづらかったなという反省があります(苦笑)。いま開発中のバージョンでは、ダッシュ時のグラフィックにバッタのエフェクトが追加されているんです。「あのボスの能力が使えるようになったんだ!」というのが製品版ではもっと分かりやすくなるはずです。
新型コロナが切っ掛けで国際色豊かなチームになったCuts to Bits。コミック版を制作するためのKickstarterも実施中
――本作を開発しているCuts to Bitsのことも教えてください。4人からはじまったスタジオということですが、現在は何人のスタッフが在籍しているのでしょう?
小林:いまは14人体制でゲームを作っています。もともとはカナダのモントリオールにあるローカルスタジオだったのですが、起業した翌年に新型コロナウィルス感染症が流行しはじめて、リモートワークを中心とした仕事環境に切り替えたんです。
「どうせみんなリモートなら、スタジオに足を運べるスタッフである必要はないんじゃない?」という話になり、いまは世界中からスタッフを集めています。アーティストがメキシコやベルギーにいたり、オーディオデザイナーがスウェーデンにいたり、作曲家がスコットランドにいたり。そしてパブリッシャーは日本のアニプレックスさん。世界中のスタッフで一丸となって「Venture to the Vile」は作られています。
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| 画像はCuts to Bits公式サイトより |
――国際色豊かなチームで開発が進められているんですね。では、モントリオールにあったスタジオはもう引き払っているのですか?
小林:いや、僕はいまも毎日出社しています(笑)。
――では小林さんは、このBitSummitのために日本に?
小林:やはりこうしてメディアさんに話を聞いていただくのは重要ですから。モントリオールのスタジオと言えば、ひとつおもしろい話があります。スタジオを借りるとき、ゲームしか作らないのも勿体ないかなと思い、知り合いのコミックアーティストに声を掛けて、スペースの半分をコミック制作用のコワーキングスペースにしたんです。
そうしたことで、彼らが我々のゲーム作りに手を貸してくれることもありますし、我々がコミック作りをお手伝いすることもあります。「Venture to the Vile」のキーアートに描かれているウサギの姿のボスなどは、パール・カーシェルというコミックアーティストにデザインしてもらったものなんです。
――へぇ~! 別々の分野のプロがひとつのスタジオにいることで、それぞれに良い影響を与え合っているんですね。
小林:そんな中でゲームを発表することになり、「じゃあこのゲームを題材にしたコミックを出したらおもしろいんじゃないか」という話になったんです。いまKickstarterでクラウドファンディングを行っています。
コミックの内容としては、ゲームに登場するNPCを掘り下げるものになります。5人のアーティストが、それぞれ異なる5人のNPCを描く、オムニバス作品です。コミックの発送は今年の10月頃を予定しているので、ゲームに先駆けて「Venture to the Vile」の世界に触れていただけることになります。
現時点では日本語への翻訳は予定されていないので、ちょっと難しいかもしれませんが……日本の皆さんに応援していただけたら翻訳も検討できると思いますので、ご興味があればぜひご支援いただきたいと思っています。よろしくお願いします!
――AAAタイトルの開発経験があるスタッフが多い「Venture to the Vile」のチームですが、開発のスタイルとして大作を作っていたときと異なる点はありますか?
小林:大きいチームだと、連絡が難しかったり、各セクションがやっていることにすれ違いが起きたりと、どうしても無駄が生まれやすいんですよね。そこは小さいチームということを活かして、よりスマートに開発が進められるように意識しています。
それから、うちのチームはポールがクリエイティブディレクターとして、シナリオも兼任しながらゲーム全体の方針を考えています。けれど、ワンマン開発のスタジオというわけではありません。みんなで相談して、ゲームの方向性を決めていくようにしています。
多くのスタッフが、もう長いあいだ友達なんですよね。僕とポールだったら、「アサシン クリード II」を作っていた2008年の頃からの付き合いですし、アートディレクターのナージはもう少し前から。10年とか、それ以上のあいだ友達だった、一緒に仕事をしたこともある人間が集まって作った会社なので、その仲の良さから来る協調性を大切にしています。
もちろん仕事なので、友達関係に甘えたりはせず、プロフェッショナルとしてやるべきことに向き合うというのも、同じくらい大切です(笑)。
――やはりメリハリは大事、と。
小林:仕事は仕事ですから、そこはちゃんとしなきゃいけないよねと。とくにいまは設立当初はいなかった社員さんも雇っているので、創設メンバーだけお友達付き合いでなあなあでやっていたら悪影響ですし。しっかりやっているつもりです。
――最後になりますが、日本のインディーゲームファンにメッセージをお願いします。
小林:メトロイドヴァニアというジャンル名のルーツである「メトロイド」と「悪魔城ドラキュラ」は、いずれも日本で生まれたゲームです。“メトロイドヴァニアの聖地”のように考えている日本のプレイヤーさんに「Venture to the Vile」を受け入れていただけたら、とても嬉しいです。
(C)Studio Cut to Bits / Aniplex
※画面は開発中のものです。
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