【「UN:Me」制作発表記念】マルチクリエイター・山中拓也のエッセンスを紐解く:第2回は動画発で盛り上がりを見せる「MILGRAM」「ネガハピ」ゲームではないからこそのインタラクティブな仕掛けを展開

企画記事
1コメント TOKEN 近藤智

山中拓也氏が企画・シナリオを担当するゲーム作品「UN:Me」の制作発表を受け、「Caligula2」以来のゲーム企画作となる同作の発表に至るまでのコンテンツに触れるインタビュー企画をお届け。第2回は「MILGRAM -ミルグラム-(以下、MILGRAM)」「ネガティヴハッピィ(以下、ネガハピ)」にフォーカスする。

企画・編集・インタビュー:TOKEN
インタビュー・文・構成:近藤智

【「UN:Me」制作発表記念】マルチクリエイター・山中拓也のエッセンスを紐解く:第2回は動画発で盛り上がりを見せる「MILGRAM」「ネガハピ」の画像

「MILGRAM -ミルグラム-」とは

DECO*27×OTOIRO×山中拓也による視聴者参加型音楽プロジェクト。視聴者は監獄の看守となり、何らかの死に関わった10人の囚人が抱える罪を楽曲とミュージックビデオから推察して「赦す」「赦さない」を投票。その結果が音楽、映像、ボイスドラマなどの展開に影響していく。2020年にスタートして以降、物語は現実の裁判の三審制と同様に3シーズンで展開中で、インタビュー時点では第三審が進行中である。

【「UN:Me」制作発表記念】マルチクリエイター・山中拓也のエッセンスを紐解く:第2回は動画発で盛り上がりを見せる「MILGRAM」「ネガハピ」の画像

――「MILGRAM」について、まずファン目線の感想になってしまいますが……最初はもっと看守と囚人が一対一で対話するような展開だと思っていたんです。運営型かつリアルタイム性にこだわるタイトルで、ユーザーが勝敗など何らかの形で関与した結果、ストーリーや方向性が変化していくもの自体はそう珍しくありませんよね。それと似たような形で「赦す」でも「赦さない」でも、どちらに転んでもいいように物語を用意しておくのかなと。しかし実際のところ「どの囚人が赦されて、どの囚人が赦されなかったのか」が、物語へダイレクトに関わってきています。もともと「MILGRAM」ではスタート時点から商業性を排除したやり方を貫いていますが、これは絶対に商業的には無理な手法ですね。

山中:ええ、絶対無理ですね。おそらくもう二度とできない作り方だと思います。

――しかも、山中さんだけでなくDECO*27さんやOTOIROのメンバーの方もいる。同じ温度感でプロジェクトを進められる相手、しかも自ら進んで地獄のような展開へ突っ込んでいくような仲間がいらっしゃったのは、奇跡ですよね。

山中:本当に奇跡ですし、プロジェクトを始めたのが今よりずっと若かったからできたことですね。頭では思いつくかもしれないけれど、それを実行するには一種の無謀さがなければできないというか。よくここまで走り切ったなと思います。

――「MILGRAM」は、実際の裁判の三審制がベースにあります。現実の裁判も、慎重に進めないといけないからこそ長期化が問題視される面もありますよね。「MILGRAM」も終わりが見え始めていますが、もうスタートから丸6年ですし、長期戦になるのは覚悟の上で走り出したんでしょうか。

山中:思ったより長期戦にはなってますね。でもそれも良いことだと思っています。視聴者さん自身の環境が変わるにつれ、囚人たちへの見方が変わったりするのも醍醐味だと思いますし。人が誰かを赦す/赦さないについて考える時、その罪だけを見つめられるかというと、すごく難しい。実際には自分と相手の関係の深さだったり、この人を赦したらあの人に迷惑がかかってしまうとか、誰かへの義理を通すことが別の誰かへの不義理になってしまうとか。そうした人間らしい感情とは切り離せないんです。とくに重要なのは「この人を赦し、肯定することが、あの人の肯定を否定することになる」という横軸なんですよ。それが人間のままならなさですよね。

――まさに、それによって第三審がとんでもない結果から始まりました。

山中:本当なら、そうした複雑さが発生するんです。先ほどおっしゃっていただいた、囚人と看守が一対一で赦す/赦さないを決めるような、縦軸オンリーのタイトルであれば媒体はゲームがいいと思います。でもゲームだと実装できるルートにも限りがあって、どうしてもオミットする部分が出てしまう。中には「HUNDRED LINE -最終防衛学園-」のような、凄まじいやり方で課題をクリアするゲームもありますね。しかし、「MILGRAM」でそれをやると1つ1つがとても薄くなってしまう。

一方、YouTubeという媒体なら、膨大に存在するルートの中から視聴者に選ばれ確定した“正史”だけを形にするという形で実現可能なわけです。僕がやりたいと思う「本当に罪だけを見つめられるのか」という話をやるには、この形しかないんです。

作業者としての僕らにとっての地獄なのは、10番目のコトコが終わるまで誰の運命も確定しません。すでに赦す/赦さないが決まった登場人物がいたとしても、最後まで終わらないと次の審判の内容を作り始めることができないんですよ。この人はこうなって、この人がこうなったからここが干渉して……というのを反映してお話を書きます、曲を作りますという。改めて、ものすごく変なことをしているなと思いますね。そんなゆっくりとした歩みですが、その分視聴者の方が選んだ“正史”はなによりも尊重されます。

――第三審ではハルカ、シドウ、マヒルの3人はこれまでのMVに代わり、最期の瞬間が映像で届けられました。その際、彼らの表情がほとんど見えなかったのが印象的で。声優さんたちの生々しい演技を生かすため、あえてそうしたのでしょうか。

山中:そうですね。本当にその通りで、通常のアニメは脚本があって、コンテがあって、お芝居があるので、芝居の尺がすでに決まっています。ただ、そうしたやり方では、ここ数年に溜め込んだものを出力できなかったと思います。。「MILGRAM」はいつもお芝居が先で、後から絵をつけているんですが、何の縛りもなくお芝居してもらうことができるんですよね。

――これは山中さんがキャラクターを中心に物語を描いていくスタイルだからこそ取れる手法ですよね。もちろん、ある程度の方向性というか、軸のようなものは決めてあるというお話もありましたが、ストーリーが前提にあったら絶対にできません。

山中:そうですね。先がどうなるか分からなくてもお話になるのは、キャラクターのバックボーン、思想をきっちり決めているからです。このキャラクターは、このシチュエーションなら梃子でも動かない。または、このキャラクターなら何があってもこういう動き方をする、といったような。キャラクターに環境を与えたら自然と行動が決まるイメージです。ストーリーがメインでキャラクターが後だと、この形はできないんですよ。

ただキャラクターの組み合わせとして、エンタメとして面白くならないこともあり得ると思います。例えばカズイは、結果的に誰とも絡まなかったんですよ。話としては自分の話に集中して一貫してますから完成度としては、もしかしたら高いといえるのかもしれません。

でも、色々な組み合わせの横軸があるということが、すごく重要なんです。物語単体としては分かりにくくても、曖昧な結果になってしまったとしても、それこそがやりたかったことというか、人間の生き様を見てもらうということだと思うので。

――カズイの例ですと、おそらくこのままいくのかな……といった印象ですが、それを彼がどう受け止めるのかと思うと……。

山中:赦す/赦さないなんて、誰の目から見るかで変わるし、どの時代で考えるかでも違う。赦す/赦さないを話すことに対して、一種の空虚さのようなものすら感じます。

人の罪を赦す/赦さないということは、一見シンプルに思えるかもしれません。しかし自分の環境によっても判断は変わるし、その周りにいる人によっても変わる。この「MILGRAM」と5年間以上、一緒に過ごしてきた愛着によっても変わってしまう。そうした社会実験のような部分を皆と一緒に体験したかったんです。

――そうした実験的な展開といいますか「MILGRAM」はあくまでも音楽プロジェクトとして、結果はどうあれ第三審まで囚人の曲は全員分が出るものだと思っていました。しかし最後の第三審が始まったところで「死んでしまったから曲が出ない」という、当たり前といえば当たり前の展開にちょっと衝撃を受けまして。「MILGRAM」を見くびっていたというか、いつのまにか全てが公平で平等だと信じ切っていたというか……。リアルタイムの出来事に連動するタイプですと「勝ったら曲が増える」みたいなことはよくありますが、そういうのとは逆のようなケースもあるんだなと。

山中:これまで選択の重みですとか、人の死とは何なのだろうとか、人を殺した人を肯定していいのかとか、そうしたものをテーマとして扱っていますから、視聴者の方々が納得せざるを得ない状況になっていますよね。もちろん、展開の全てを受け入れていただいているわけではありませんが。

――そもそもでいえば、この状況を生み出したのは視聴者の投票ですからね。全部が選んだ結果通りとなっていても「こんなつもりじゃなかったのに」と思った人もいるでしょう。結果に納得のいかなかった相手が命を落として、ある意味、狙い通りのようになったケースも考えられる。でもどんな形でたどり着いたにせよ、受け入れるしかない気がします。

山中:マーケットインじゃないっていうところも含め、作品性やメッセージを深めるために失うものが出てくる。失ったら当然、その先の声は聞こえてきません。そういうものをやりたいと言って、本当にやらせてくれる人たちはそんなにいないと思います。

赦されたから生きるとか、赦されなければ死ぬみたいな話でもありませんしね。第三審の時点で3人が死んだのも、横軸の影響ですし。とても挑戦的であると同時に、ここに関わっている人たちが全員「死んでしまったのなら、楽曲も何もかもなくなるのが妥当だよね」とすんなり決まってるのがすごいですよね。なによりも視聴者さんによって作られた“正史”を尊重するという姿勢はそこにも表れていますね。

アニメ「うたごえはミルフィーユ(以下、うたミル)」の総監督である佐藤卓哉さんなども同様なんですが、素晴らしい人たちに巡り合えたなという感覚です。価値があると思えることが一致していて、そのために一緒の方向を向ける人と出会えるのは本当に貴重です。それこそ死ぬことになったキャラクターの役者だって、結果としてお仕事が減ってしまっているわけですが、それでも、失うことに意味を見出してくださって、最後のドラマを録る時は本当に力を入れてくれました。キャラクターの人生や思想を共有してるからこそ、納得の方が勝ってしまうというのがチーム全員にあるので、こういう無茶が通じているのかなと思います。

以前「VS AMBIVALENZ」の毛利泰斗さんと対談させていただいたことがあるんですが、この作品はエンターテインメントとして非常に完成されているんですよ。アイドルのオーディションを舞台としていますが、負けた側にもドラマや救いがありますし、声優さんも一人二役という形を取っていますから役者さんのファンまで含めて全方位で楽しませられるので、本当に素敵な作品ですよね。一方「MILGRAM」のようにエンターテインメントであることを捨てる作品がどちらも存在していることに、すごく意味があると思います。

「MILGRAM」はインディーズなので、今はむしろ大きくなりすぎているぐらいなんですよ。小規模の挑戦的なコンテンツではなく、きちんと商業性を意識するタイトルであれば「やっぱりキャラクターを死なせるのはやめませんか」となってもおかしくない。でも、そんなことは誰も言い出しませんでした。最初から腹が据わっていたからこそ、ここまでやれているんでしょうね。

――かなり度量の広いプロジェクトのように感じますが、それでも想定外だったことはあったのでしょうか。

山中:思った以上に海外の方から人気が出たことですね。囚人を赦す/赦さないという結果に対して、日本とは異なる文化圏の感性や価値観から大きな影響を受けたのは面白いことになったなと非常にワクワクしていました。

――とくに宗教観に伴う価値観や判断基準によって、誰を赦す/赦さないというのは日本と大きく変わりそうですね。

山中:囚人によってはは、日本と海外で受け止め方が全く違うこともあります。日本では「実際にこういうこともあるよね」といった感じなんですが、海外では「あまりにも遅れている」と炎上に近いような反応で。ただ、それも「MILGRAM」が現代日本を映している以上、これも含めて正しい反応なんだと思います。文化や価値観の違う場所から非難されるということも、現実の常です。それでも個々人のレイヤーではそこにしかない苦しみや必死さがあると、伝わっているのも感じます。

中には海外向けのコンテンツでは扱わないほうがいいくらいのジャンルのテーマもあるんですが、やはり日本のリアルな現状として書く必要がありますし、ここ数十年の日本の価値観をいかにエンタメ性を排除しながら反映するかが「MILGRAM」だと思うんです。そうして逃げずに描いた結果、こうした反応をいただけているのは、ある種の正しいことなのかなと。

――いよいよ最後のシーズンとなりましたが、まだ「審判」の折り返しを越えたところです。囚人全員の結末を見届けるまで、しばらく時間がかかりそうですね。どうなるのか早く結果を知りたいような、終わってほしくないような、複雑な気持ちです。

山中:もう始まってから5年以上経ってしまいましたね。始めた頃は、考察がこれから流行していくだろうなと思っていたので、考察というものが抱える危険性や暴力性などを「MILGRAM」で表現したかったんです。

本来、流行するだろうなと感じたのであれば昨今の“考察ブーム”に乗っていくのが正しい商売だとは思うんです。そこに、考察がいかに暴力を孕むものなのかと突き付けていく存在が必要だと思うんです。本当に「MILGRAM」は商売性とはかけ離れた方向に進んでいるなと思いますけど、存在するだけの意味を自分たちの中でも感じ取れています。

「MILGRAM -ミルグラム-」
YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/c/MilgramOfficial
公式サイト:https://milgram.jp
MILGRAM公式X:https://x.com/MILGRAM_info
MILGRAM公式ファンアプリ:https://c-rayon.com/milgram/

「ネガティヴハッピィ」とは

“顔かわいいけど全員がカス”をコンセプトとしたアイドルコンテンツ。YouTubeで毎週月曜日にショートアニメを公開中で、2025年7月に1周年を迎えた。声優陣による他では見られないダウナーな姿の生放送や、担当者が人気を信じられず早々にグッズが売り切れてしまい虚無と化したポップアップショップなどで注目を集めている……ような気がする。

【「UN:Me」制作発表記念】マルチクリエイター・山中拓也のエッセンスを紐解く:第2回は動画発で盛り上がりを見せる「MILGRAM」「ネガハピ」の画像

――「ネガハピ」について伺う前にどうしてもハッキリさせたいことがありまして……佐伯ユウスケさんの弱みを握ってらっしゃるんですか?

山中:(笑)

――そうでもなければ辻褄が合わない状態なので……(※インタビュー時点で「新曲のレコーディングをするアイドル~セナの場合~」まで配信)。

山中:佐伯ユウスケさんといえば、僕も大好きなアイドル「SixTONES」をはじめ西野カナさん、ゲーム関係でいえば「アイドルマスター」などにも楽曲を提供している、素晴らしいご活躍をされているクリエイターですよね。

なので、当初はごく普通に曲をお願いしようと思ったんです。そこで声優事務所のステイラックさんと業務提携を行っていて、声優としても活動していることを知って。「これは、お芝居も一緒にやったらめちゃくちゃ面白いエンタメが作れるんじゃないか?!」と思って、お芝居もしてほしいとお願いしたところ快諾していただけました。

ちょうど佐伯さんご自身も、お芝居の機会を求めているタイミングだったのもあり、コンテンツの方向性みたいなものにも共感してくださいました。ただ「ネガハピ」が「ネガハピ」たるためには、ある種の暗黒面にも踏み込まないといけないんですが、どこまでいけますかと伺ったら「一旦、全力で!」と言われまして。そこで全力で書いたところOKというか、むしろそれ以降意気投合しまして、とても仲良くやらせてもらっています。

――ご本人がノリノリだったのであれば、よかったです。ユウヒの「誰も止めてくれなかったんですか?!」みたいな精神状態になっていたので。

山中:さすがにそこを混同している人はいないと思いつつ念のため言いますが、僕自身が彼女たちと同じことを思ってるわけではありません。キャラクターの思想=作家の思っていることではありません。僕は本当に世界一かっこいいと思ってます。

――まだ弾が4発残ってますからね。個人的にはマナカの回を楽しみに待っています。MVの「ネガハピライフ」のマナカのコメント欄は、もはや芸術の域ですよね。

山中:「ネガハピ」ですごくいいなと思ったことのひとつが、ちゃんと「ネガハピ」の楽曲では、あの世界の住人として完璧なロールプレイをしたコメントをしてくれるんですよね。エスプリの効いたコメントばかりで、そういう方がお客さんとして来てくださっているのがとても嬉しいです。

――先日チャンネル登録者数15万人突破を記念した生放送では、韓国からのファンがすごく増えたというお話もありましたね。

山中:最近「ネガハピ」に韓国からの研究生が加わったんですが、そのあたりの回をきっかけに韓国でバズりました。アナリティクスを見ると、視聴者の20%くらいが韓国になってます。いわゆるバズって運や巡り合わせなんですけど、そういう時に「バズをきっかけに知ったけど、ちゃんと内容が面白いよね」と思ってもらえるように作ってきてよかったなと。

――話が前後しますが、そもそも「ネガハピ」の着想はどこから来たものなんでしょうか。

山中:僕は常々、いわゆるアイドルものの作品はステージ上と舞台裏の性格が一緒すぎると思っていまして。芸能職って本来オンオフがあって、カメラの前だからこそのスタンスがあるはずなんですよ。僕はむしろその部分がアイドルを掘る上での一番の旨味だと感じてしまう。そこを自分なりにリアルに落とし込むことができるんじゃないかと。

ただ、そもそも「ネガハピ」は、一般的に想像されるアイドルコンテンツではない気もしています。どちらかといえば「アイドルという職業のコンテンツ」という感じですね。僕は常々アイドルもの作ってみたいと発信していますが、「ネガハピ」ではそれが満たされたわけではないので、全然、マジメなアイドルもののお仕事もお待ちしておりますよ。

――どのような座組みで行われているのでしょうか。

山中:運営会社はあるものの、企画とかプロジェクトの進め方という面では、純度100の山中という感じですね。

コメディと芝居が作りたいという気持ちから始まって、やりたいことをやって、やりたくないことはやらなくて、人気とかウケるかどうかは、もう究極的にはどうでもいいくらいの。他ではできない脚本と、好きなお芝居で戦おうという超ストロングスタイルの仕掛けです。その一例として「ネガハピ」は役者が歌って踊るライブをやらないと明言しているんですが、それこそ今、役者さんがアイドル作品に関わろうと思ったらリアルで歌う、踊るといったライブアクションとは切り離せないですよね。でもその選択肢しかないのは少し不健全な気もするんです。芝居のみを追求したい人ができるアイドルものがあってもいい。だから「リアルに歌って踊らないアイドルもの」が存在するということには、大きな意味があると思っています。

――個人的にはバーチャルなどの技術の進歩も含めて、もう少し人形浄瑠璃といいますか、キャラクターを演じるという部分の役割が分かれていくのかと思っていました。しかし、むしろさまざまな場で1人が全てを担うケースがますます加速している気がします。

山中:キャラクターと役者が同一性を保ち、より一層の感動を作り出すのがここ20年くらいの主流ですが、表現とはそれだけではないはずです。その形が今の市場・客質に対してとても優れたエンタメなだけに「そうじゃなくても面白いものがあったほうが世の中って豊かだよね」という考えで、ある種もっとも損する役割は「ネガハピ」が担おうと。その代わり、好き勝手にやらせてもらっています(笑)。

色々なモノに色々な幅が存在しますが、その一番下を広げる役割には意味があると思うんです。極端に言えば、今は「キャラクターは好かれなきゃいけない」という点が大きな縛りになっている気がするんです。僕はいわゆる好感度というものからキャラクターを解放したいんですよ。巷では「ヘイトコントロール」とかよく言いますけど、あんまり考えたことがないです。視聴者に嫌われるよりも、キャラクターがキャラクターらしく生きられる方が大事だと思っています。

「理想と違った」とか「嫌いになった」とか思われても全然構わない。それが彼女たちの人間性としてきちんと描けていれば、それを魅力に感じてくれる人がいる……そういうものを証明し続ける必要があると思うんです。仮にいい子じゃなくても、好かれていなくても、皆にとって都合よくなくても、人間としては魅力的だよねという子たちを「ネガハピ」で描ければ成功かなと。

――そういう「ネガハピ」なら聞いてもいいだろうということで……ぶっちゃけ、どうやって儲けてるんですか?ハナコ様の生誕祭(2026年)とか謎が多くて。

山中:コメント欄でも同じようなことを心配してくださるお客さんがいらっしゃるんですよね。お客さんは、別にマネタイズとか気にしなくていいんですよ!

まず、2026年1月に「ネガティヴハッピィ POP UP SHOP」を開催させていただいたんですが、グッズが一瞬で売り切れました。2週目の土日を空の棚で迎えるという、担当者が非常に気まずい思いをしたイベントだったんです。ただ、このようにグッズが盛況だったので、そうしたハナコらしい施策を行えたという形です。

メンバーシップは何千人もご登録いただいていますし、動画の広告収益とかもありますから、皆さんが思っているほど奇行に走っているわけではありません。POP UP SHOPもそうですが、何か新しいことをやるたびに、想像以上の反応で良い結果が出続けているので、アツいネガハピファンのおかげで順調です。

僕も他のコンテンツできちんとお仕事をしていますから、還元だと思ってもらえれば。そして直接お金をもらわない分、皆さんの好みに寄せる気も一切ないので、タダより怖いものはないですね。

――メンバーシップではアイドルたちの裏話が限定公開されているので、ここはぜひマネージャーを演じている橘龍丸さんについてお話を聞きたいです。「Caligula2」の主人公のボイスをはじめ、舞台にアニメに大活躍されていますね。

山中:彼とは、面白いと思う芝居の方向性が似ているというか、共感する部分がとても多いんですよ。「こういう芝居をやります」というものを率先して見せてくれる存在ですし、お話の中でマネージャーというポジションが必要だなと思った時にすぐ浮かびました。

等身大の感じというか、可愛いとかカッコいいだけではない。いかに人間としての息遣いがあって、自分の気持ちに嘘をつかず芝居してくれるかという部分に、すごく信頼を置いています。

色々なところで活躍していますから、アニメ作品らしいお芝居、洋画の吹き替え作品としてのお芝居、舞台上でのお芝居と求められるものも変わってきます。そんな中「ネガハピ」という空間で、お芝居の勘所を共有できるメンバーとやれるっていうのは、彼が忙しくなっている中で一種のご褒美的な空間として捉えてもらっているので、すごく楽しくパートナーとしてやっています。

――あの中にいて、恐ろしいほど普通なんですよね。「あんな空間で、普通のお芝居ができるんだ」と驚愕しました。キャラクターの表情は見えないのに、どんな顔をしているのか想像できてしまいますし。

山中:極力、「ネガハピ」では現実の空間を再現しようとしているんです。龍丸もそうですが、「Caligula2」のささらを演じてくれた諸星すみれさん、「うたミル」のアイリを演じてくれた須藤叶希さん等、過去作品で出会った役者の中でも同じ方向を目指せる人たちとまたご一緒できているのは本当に嬉しく心強いことです。

通常の作品でオーディションを行うにしても、普通1人で審査することはまずありません。色んな立場の人間が色んな指標で審査する。その指標は芝居だけではないかもしれません。SNSの影響力だって今は無視できない要素ですから。でも「ネガハピ」は、監督・脚本・音響監督の自分が1人でオーディションをさせてもらったんですよ。1人で理想とするお芝居の方向性だけを純粋に見てオーディションをすると、こういう一貫性のあるものが生まれると示せたのはよかったなと。今後、お芝居のディレクションを行う役職とかポジションに光が当たるというか、注目されたり興味を持たれたりすると非常に健全だと思います。

役者自身には色々な芝居の選択肢がありますけど、その選択肢のどれを選ぶかという。そのポジションの人がどんな理想を示す人なのかで、お芝居全体が変わるということを示せるといいなと。仮に同じ役者を揃えても、音響監督が違えばまったく違うものになると思いますので。

逆に、作品が変わっても自分が音響監督していれば、同じ味の芝居をきっとお届けできると思います。そうした部分に注目してもらうことも示せたらいいですね。

――山中さんの作品では、他の作品ではあまり聞くことがないであろう声優さんのお芝居が体験できるのも魅力のひとつになっていると思います。

山中:他ですでに演じているようなキャラクターを続けてもらうよりも、まだやったことがないようなお芝居に挑戦してほしいんですよ。僕自身もそれが嬉しいし、ファンの方も違うものが見られた方が嬉しいだろうと思いますし。

その声優さんにとってヒットとなるキャラクターが出ると、どうしても次もそういうものを求められやすいですよね。あの人気の出ている役に近いキャラクターだから、あの役の人を起用しようみたいな。多彩なコンテンツがある中で、パブリックイメージから求められない役をやってもらった方が本人たちも楽しいし、このプロジェクトや現場が楽しみになってくれるんじゃないかと思います。

――それでは「ネガハピ」で今後やってみたいことや、目指しているものがあればお聞かせください。

山中:「ネガハピ」でやりたいこととして、もっと企業のプロモーション案件をしたいんですよね。プロモーションの時には作品の「ネガハピ」というより、アイドルグループ「ネガハピ」に仕事を振ってほしいんです。実際のアイドルがやるような仕事をどんどん増やしていき、表の活動が充実していけばいくほど、裏はこんな感じという相互作用ですごく面白くなるので。表で真っ当なPRをして、裏はコメディとして落とす。こういう「ネガハピ」しかできないPRのやり方があるんです。

僕がすごいと思ってるのは、PR動画なのに再生数が落ちないんですよ。本来、PR動画ってお客さんは忖度に対して少し白けてしまうというか、あまり面白いと思うものではありませんよね。普段からファンであればあるほど沿う感じてしまうものだと思います。「ネガハピ」はPRというお題を使ってコメディを作るので、お客さんも「こういうお題をもらえたら、あの子たちはこういう反応するんだ」と楽しんで見れているような印象です。

――オーディオビジュアルブランド「AVIOT」のPR案件も、ワイヤレスヘッドホンへひどい難癖つけてましたね。しかし販売台数が先方いわく730%アップだったそうで。何かがおかしいとしか思えない数字ですが……。

山中:ある種ボロカスに言うんですが、彼女たちのキャラクター性もあって嘘くささみたいなものがなく「ここは気になる。でもここは便利だよね」みたいな、腹を割ったプロモーションになる。そこにすごく可能性を感じていますし、企業の方々から価値を感じてもらえるかなと。そしてネガハピに仕事を振ると企業として器がデカそうで好感度がちょっと上がるという副産物もあります。

PRに関しては僕が「これはネガハピがやれば面白くなる!」と判断すれば、どんな小さなものでも変わったものでもやります。逆に「ネガハピ」のノリが適さないと思ったら、どんなに巨額でも断らざるを得ないという感じですが、気になったらお気軽にご相談ください。

「ネガティヴハッピィ」
公式サイト:https://negahapi.com/
公式X:https://x.com/nega_hapi/
YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/@nega_hapi

2011年イクセル入社後、Gamerをはじめとした媒体の運営に携わる。好きなジャンルはRPG、パズル、リズム、アドベンチャー(ほぼギャルゲー)。実はゲームよりもアニメが大好きです。

趣味のゲーム系をはじめ、IT/ビジネス系などWeb媒体を中心に活動。AAAタイトルから乙女ゲーム、インディーズまで何でも遊ぶ雑食ゲーマー。あらゆる次元のアイドルと映画も愛してます。 https://contacos.hatenadiary.jp/

本コンテンツは、掲載するECサイトやメーカー等から収益を得ている場合があります。

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