2025年3月6日にリマスター版が発売される「Never7 -the end of infinity-」と「Ever 17 - The Out of Infinity」の魅力を紹介する。
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2025年3月6日に発売されるリマスター版の「Never7 - The End of Infinity」(以下、Never7)と「Ever17 - The Out of Infinity」(以下、Ever17)について、作品のファンであるライターが魅力を伝える企画記事をお届け。クリティカルなネタバレは記載しないが、ユーザーを驚かせるトリックやミステリーが魅力のシリーズであるため、新鮮に楽しみたいと思っている読者は注意してもらいたい。

「Never7」と「Ever17」は「極限脱出」シリーズや「AI: ソムニウム ファイル」シリーズで知られる打越鋼太郎氏の初期作なので、これらの作品をプレイして好きになった人であれば楽しめるはずだ。本作もしっかりユーザーに驚きを与えてくれる。“記憶を消して遊びたいゲーム”と評されるゲームであるし、筆者としては、これからなにも知らずに遊べるユーザーをうらやましく思う。

「Never7」や「Ever17」はKIDの「infinity」シリーズで展開していた2作。「KISSより…」や「Memories Off」を手がけていたKIDの作品であることや、パッケージに描かれた美少女からいわゆる“ギャルゲー”のジャンルに位置されていると思わせつつ、実際には後半にはSFやミステリー要素が濃いめになっていき、グイグイと引き込まれる展開になっている。
ただ、“ギャルゲー”の部分が後半へのフリだけに使われているかと言われればそうではなく、胸がドキドキするようなヒロインとの交流もしっかりと濃密に描かれる。当時のKIDは“SDR”というセンチメンタル、ドラマティック、ロマンティックを掲げたギャルゲー作品を制作していたが、「Never7」と「Ever17」にもその“SDR”は詰め込まれている。

「Never7」は故・川上とも子さんや松岡由貴さん、山崎和佳奈さん、「Ever17」は浅川悠さんや下屋則子さん、植田佳奈さんなどを起用しており、今回のリマスター版ではこれら有名声優陣の初々しい芝居を堪能できるのも見どころだろう。

「Never7」「Ever17」ともに人気作であるがゆえに何度も移植がおこなわれているが、今回のリマスター版はいいとこどりだ。「Never7」は最初に「infinity」というタイトルでPSで発売され、その後にシナリオがブラッシュアップされていったのが特徴だが、今回はタイトルからも分かる通り、「Never7」準拠になっている。「Ever17」に関しては2Dと3Dの作品があるが、今回はもとの美しいイラストが堪能できる2Dに。一方でシナリオはファンから好評だったXbox 360版を基本として新規に組み立てられている。

また、リマスターということで当然ながらグラフィックやテキストは鮮明になっている。「Never7」や「Ever17」はMagino DriveというサービスでPCダウンロード版も発売されていたが、こちらをプレイしていなかったPS2版やPSP版のユーザーにとっては劇的な進化に、より驚くはずだ。少し余談かもしれないが、40代の筆者にはリマスター版は文字がクッキリしていて読みやすいのもありがたかった。

以下で、それぞれのタイトルについて詳しく紹介していく。
「Never7」:人気シリーズの第1弾で、悲劇を回避してハッピーエンドに導くストーリー

遺伝子工学の発展などが進み、法律の改正などもおこなわれている架空の西暦2019年を舞台にした作品。ゼミの親睦を深めるため、4月1日から4月7日までの1週間の合宿にやってきた主人公の石原誠が“4月6日に誰か女性が死ぬ”という夢を見る展開からスタートする。ヒロインが複数存在しており、好感度でストーリーが分岐する。いわゆるループもので、確定したヒロインの1周目を体験したあと、そのヒロインの2周目の物語を体験できる仕組みだ。2周目で1周目の悲劇を回避する行動を選ぶことができれば……?

キャラクター
川島優夏 cv.川上とも子

誠と同じゼミに所属し、班長を務める。にぎやかで人づきあいがよい。初日に誠と同じ悪夢を見ており、この世界で6日間が永遠に繰り返されていることに気づき、誠とともに事態の打破を図る。中学時代に悲しい事故に遭遇しており、そのことを未だ引き摺っている。
樋口遙 cv.???

誠と同じゼミに所属。飛び級で3年生になった優等生。無口で単独行動が多く、内向的であまり人と接しようとしない。一般常識に疎く、フナムシに興味を抱きつつ焼いてみようとするなど、不思議な言動や行動の多い不思議ちゃんでもある。
朝倉沙紀 cv.山崎和佳奈

優夏の中学時代の友達であるお嬢様。勉強が得意で、今は某一流大学に通っている。美人だがわがままで感情の起伏が激しく、人間関係においてトラブルが絶えない。誠たちの合宿所の近くにある別荘にたまたま遊びにきており、優夏と再会する。
守野くるみ cv.松岡由貴

いづみの妹。高校3年生だが、外見的にも精神的にも中学生ぐらいにしか見えない。春休みの間、いづみと一緒に過ごす為に島に滞在して店を手伝っており、誠たちと知り合う。誠を「お兄ちゃん」と、億彦を「おっくん」と呼ぶ。
守野いづみ cv.井上喜久子

くるみの姉。主要キャラクター中最年長で、優しく落ち着いた雰囲気の女性。合宿所のある島で、喫茶「ルナビーチ」を店長代理として経営するが、徒歩5分ほどの所にある月屋ホテルに客をほとんど取られてしまっている。温厚で面倒見が良く、頭脳明晰だがややズレたところがある。
飯田億彦 cv.千葉進歩

誠と同じゼミの学生。金持ちな上にきざな性格をしており、女性や金にまつわる噂が絶えない。好きなものは可愛い女の子。嫌いなものは男。
石原誠 cv.無し
主人公(プレイヤー)。大学3年生だが、大学にはほとんど行っていない。優夏や遙とともにゼミ合宿に参加し、数奇な運命に巻き込まれる。
感想:基本は青春モノでありつつ、要所で不穏な空気をチラつかせるのがうまい!
序盤こそ誰かの死を予感させる不吉な展開であるものの、そこから先は大学のゼミということで楽しい雰囲気でゲームは進行する。賑やかでムードメーカーの優夏や素直で元気なくるみなど、表情豊かなヒロインが多く、眩しい青春感が伝わってくる。金持ちでキザであるものの、どこか憎めない男キャラクターの億彦もいいアクセントになっている。内向的で人と関わろうとしない遙も、こういった作品には欠かせないミステリアスで気になる存在になっている。

ビーチや肝試しなどといったギャルゲーの王道らしい物語が展開しつつ、主人公が“地震が来る”と思った瞬間に実際に地震が起きたり、cv.すら???となっている謎の多いヒロインである遙の素性が明かされたりと、謎が謎を呼ぶシーンや、物語にとって重要なカギとなるシーンが挟まれていく。この設定を明かすタイミングがうまく引き込まれる仕組み。ギャルゲー的な展開からミステリーやSFの展開に一気に反転していく姿にハッとさせられる。

「infinity」シリーズは「Ever17」が傑作として話題に上がることが多いが、「Never7」も素晴らしいと再認識させられた。今でこそループや量子力学を題材にしたギャルゲーはポピュラーになっているが、2000年にこういったテーマの作品を作っていたことにも驚かされる。歴史を知る意味でもぜひ触ってみて欲しい1本だ。

「Ever17」:記憶を消して遊びたいと言われる本作のおもしろさは色褪せない

海中のテーマパーク「レミュウ」に閉じ込められた男女7人の脱出劇が展開するSFサスペンス。大学生の倉成武と記憶喪失の少年のそれぞれの視点で物語を進めていくことが特徴で、ひとつの物語を多面的な視点から捉えていくことになる。武視点ではココという少女が登場する一方で少年視点では登場しなかったり、逆に少年視点では沙羅という少女は登場するが武視点では登場しないなど、それぞれの物語で差異がある。武編と少年編、それぞれをクリアすると……?

キャラクター
田中優美清春香菜 cv.下屋則子

テーマパーク・LeMUのバイト係員。「優美清春香菜」という名前は、彼女の父親がつけた。友達の多くは彼女のことを「優」または「なっきゅ」と呼ぶ。サバイバル的な知識とオカルト関係の知識が豊富。18歳。大学1年生。
小町つぐみ cv.浅川悠

クールビューティという言葉の似合う、人を寄せ付けない雰囲気を持つ。ネズミのチャミにだけは心を開いている。LeMUに来て武と出会った直後に事故に巻き込まれた。メカや医療関係にも詳しい。17歳。高校2年生。
松永沙羅 cv.植田佳奈

ツインテールが特徴の、忍者を自称する優の後輩。学校の課題でLeMUに来ている最中に事故にあう。さびしがりやな一面もあり、閉じ込められた不安からか少年の事を兄か父親のように慕う。16歳。高校2年生。※少年視点で登場
茜ヶ崎空 cv.笠原弘子

LeMUの専属スタッフで案内係。LeMUに関する知識は膨大だが、一般常識的な「お約束」を知らない事もたまにあり、意外な茶目っ気を発揮することも。一番年上ということもあり、皆を優しく見守るかのようにLeMUからの脱出をサポートする。24歳。
八神ココ cv.望月久代

小学生といっても通じるくらいの幼い感じな女の子。犬のピピと仲良しで、「ピピ語」なる謎の言葉を良く使う。武をたけっちょ、というように、子供らしく他人にあだ名をつけるのが大好きらしい。物語の鍵を握る少女。14歳。中学3年生。※武視点で登場
倉成武(主人公) cv.保志総一朗

一方の主人公。偶然来ていたレミュウで事故に巻き込まれ、海中に閉じ込められることに。積極的・楽観的・情に厚い・明るいバカという感じだが、熱血漢でその強さが他人の支えになることもある。20歳。大学3年生。
少年(主人公)

もう一方の主人公。目覚めたときは、全ての記憶を失っていた15歳ぐらいの少年。自分の名前も、住所も、生年月日も、もちろん年齢も覚えていない。LeMuに、いつ、誰と、なぜ、どのようにしてやって来たのかも。その謎は、ゲームを進めていくことで徐々に明らかにされていく。
感想:ラストに向かって加速する展開はもちろん、個々のルートのテーマも興味深い
各ヒロインのルートで設定が少しずつ明かされていき、最後のルートで大きなカタルシスが待っている「Ever17」。改めてプレイして感じたのはヒロインのかわいさや、それぞれのルートで提示されるテーマだった。本作は誰ひとりとして欠けてはいけない緻密な作品であるが、それぞれのキャラクターは舞台装置のために用意されているということは決してなく、それぞれが生きたキャラクターであり、多彩な顔を見せてくれる。そのため、交流していくなかでどんどん好きになっていく。

オリジナル版が発売されたとき、“緊迫的な状況なのにキャラクターの危機感が薄い”という指摘はされていたが、ギスギスしすぎていないことは本作においてはプラスにも作用している。

プレイヤーのキャラクターが全員幸せになって欲しいという思いは、後半の展開をよりドラマチックに彩っている。

キャラクターそれぞれのエンディングも本作ではグランドエンディングひとつの通過点であるが、きちんとひとつの物語として完結もしているため、興味深い。とくに空との恋愛はキャラクターの魂の在り処を描くシナリオとなっており、VTuberなどが当たり前に認識され、目の前に存在している現在にプレイすると、人間とキャラクターの境界線はどこなのか改めて考えさせられる。このテーマはSFでは王道であるが、ギャルゲーというジャンルで描いたことこそに大きな意味があるだろう。

有名タイトルがゆえにクライマックスの内容を知っている人も多いかもしれないが、今、プレイすることで新しい発見もあると思うのでぜひ遊んでみてほしい。
リマスター版の「Never7」と「Ever17」は2025年3月6日にPS4とNintendo Switch、Steamで発売。Nintendo Switch用には、2タイトルを収録したパッケージ版「Ever17/Never7 Double Pack」(通常版 / 限定版)も発売される。
(C)MAGES.
※画面は開発中のものです。
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