NetEase Gamesおよびグラスホッパー・マニファクチュア(Switch版のみ)より2024年10月31日に発売されるPS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/Nintendo Switch/PC(Steam)向けアクションアドベンチャー「Shadows of the Damned: Hella Remastered」のレビューをお届けする。
本作は2011年に発売された「Shadows of the Damned」(シャドウ・オブ・ザ・ダムド、以下「SotD」と表記)のリマスター版。須田剛一氏(ディレクター)、三上真司氏(プロデューサー)、山岡晃氏(音楽)などの著名クリエイターが集結、須田氏が代表取締役を務めるグラスホッパー・マニファクチュアが開発を担当し、“地獄×ロケンロール”を打ち出したタイトルだ。

ボス悪魔のキャラクターデザインを「ドロヘドロ」や「大ダーク」の漫画家・林田球氏が担当。日本語の声優を浅野忠信さん、栗山千明さん、我修院達也さんらが務めるなど、各方面で話題性のある起用が見られるのも特徴。このたびのリマスター版では画質やフレームレートの向上のみならず、主人公・ガルシアの新規コスチュームや“強くてニューゲーム”モードといった追加要素が取り入れられている。
須田剛一氏が手掛けたゲームはその唯一無二の個性から俗に“須田ゲー”と呼ばれている。筆者は須田ゲーの中でも最初に「killer7」に触れて衝撃を受け、さかのぼって「シルバー事件」や「花と太陽と雨と」もプレイ。「ノーモア★ヒーローズ」シリーズは新作が発売されるたびにプレイしているファンでありながらも、これまで「SotD」には触れる機会を逃し続けてきた(ほかにもプレイした/していないゲームはあるが、ここでは割愛)。
リマスター版が「SotD」初体験となった者のレビューにはなるが、「長年のファンでありながら2024年に初体験」というのもそこそこ貴重な視点なのではないかと思う。楽しんでいただけたら幸いである。なお、レビューのためにプレイしたのはPS5版だ。
荒削りだが文句なく楽しいアクションと、暗闇&明かりのギミックがもたらすパズルの融合
悪魔ハンターのガルシア・ホットスパーが、銃やバイクに変身する元悪魔の相棒・ジョンソンとともに、悪魔王・フレミングに連れ去られた恋人のポーラを助けるべく、地獄を巡っていく「SotD」。
ゲームはエピソード形式で進行。ゴシックな雰囲気の中に馬鹿馬鹿しさ(本作に対しては褒め言葉だ)が混じった地獄の各地で、さまざまな困難を乗り越えながらポーラを取り戻すための戦いをくり広げていくことになる。この地獄巡りは終始、ガルシアとジョンソンの賑やかかつ中身のない会話(褒め言葉だ)が彩る。


三人称視点のアクションシューティングである本作では、ジョンソンが姿を変えるボナー、ティザー、スカルカッショナー(一般的なシューターでのハンドガン、マシンガン、ショットガンに近い性能)という3種の銃や、近接攻撃などを使い分けて多種多様な悪魔たちに対抗する。
弾薬はある程度潤沢に手に入るので、状況にあわせておおよそベストな銃をぶっ放せる。部位破壊が狙えたり、ヘッドショットでトドメを刺せば特殊な演出が挿入されるなど、かなりの爽快感が味わえた。


展開にあわせた各種銃のパワーアップや、道中で手に入る“赤玉”の消費による任意のアップグレード要素もあり、プレイヤー側と悪魔側の能力がそれぞれにインフレしていく中での戦闘の高度化も、うまくゲームプレイのマンネリを防いでいる。その上で、敵が密集しているときの当たり判定がときどき納得がいかなかったりと、アクションシューティング単体での手触りは「文句なしに楽しいが、やや荒削り」といった塩梅だ。
こうした点を補う本作の個性として機能しているのが“暗闇に明かりを灯す”ギミック。各種銃は通常弾とは別に“ライトショット”という弾を放つことができ、ヤギの頭部を象った“ゴートランプ”に明かりを灯したり、悪魔に直接ヒットさせて動きを止めたりできる。
悪魔たちは明かりに弱く、逆に暗闇は悪魔たちを強化し、ガルシアを蝕む。フィールドが“暗闇”状態だと悪魔たちは闇をまとって無敵化してしまうし、ガルシアはやがて体力を奪われていくのだ。暗闇を晴らすためランプに明かりを灯す、悪魔たちからまとった闇を剥がす、そして足止めする――これらにライトショットは有効であり、ダメージこそ与えられないものの、戦闘時の立ち回りでは常に意識する必要がある。


ランプを見つけ出して明かりを灯す必要があったり、逆にあえて暗闇に飛び込まなければ破壊できないギミックがあったりと、戦いの中でパズル的な思考が求められるのが本作独自のゲーム性として機能しているのだ。
これらは地形や出現する悪魔の組み合わせなどにより取るべき立ち回りにバリエーションを作り出し、同時に「暗闇は悪魔へと有利に働き、明かりはガルシアの有利を作り出す」一貫した法則性により、どのギミックも一度理解すれば戸惑わずに利用できる簡潔さをもたらしている。コンセプトの一貫性による“ゲームプレイのバリエーションとわかりやすさの両立”は、プレイ前の印象よりも優れており、本作の白眉だと感じた。

痛快無比なアクションだけを求めて本作を手に取った場合、暗闇の中にいると常にゲージが減少していく仕様にはストレスを感じるかもしれないが、こういったトータルでのゲームデザインは、熟練クリエイターのなせる業であろう。
ある意味で“血を分けた兄弟”?あのゲームとはまったく異なる変則的ゲームデザインと“グラスホッパーらしさ”
このように書くと「TPS的なバトルデザインに暗闇/明かりのギミックが加えられた」ような印象を与えるかもしれないが、TPS的なゲーム性はオリジナル版「SotD」のパブリッシャーだったエレクトロニック・アーツからの要請により導入されたことが「Grasshopper Direct 2024! SotD:HR Behind the Scenes Special」などで語られており、むしろ本作のプロトタイプだった「KURAYAIMI」では、暗闇/明かりのギミックのほうがコアコンセプトだったことが察せられる。
該当の場面はこちらから
https://youtu.be/aAQE3GIjdu4?t=818
「killer7」(2005年)や「ノーモア★ヒーローズ1、2」(2007年、2010年)を経てアクションゲームを手掛ける開発会社としてノウハウを溜めている最中だったグラスホッパー・マニファクチュアにとって、この方針転換はかなり大変だったのではないかと推察する。
一方、三上真司氏はカプコンで優れたアクションゲームを作り続けてきたスタッフが集ったプラチナゲームズとともに開発した「VANQUISH」(2010年)という、シングルプレイのシューターとしては現代の観点でも最高峰と言えるタイトルと「SotD」をある程度平行して手掛けていたという。

「VANQUISH」(Steamより)
https://store.steampowered.com/app/460810/Vanquish/?l=japanese
2024年になってようやく筆者は「VANQUISH」と「SotD」という発売時期の近い2タイトルを比較できる立場になったわけだが、同じ“三人称視点のシングルプレイシューター”でも出発点が大きく異なり、プラチナゲームズと須田氏率いるグラスホッパー・マニファクチュアという別方向に尖った個性を擁するメーカーにより生み出された2タイトルはまったく異なるゲームであることが改めてよくわかった。
アクションシューティングとしての完成度は「VANQUISH」のほうが間違いなく高いが、「SotD」は紆余曲折による仕様変更を変則的なゲームデザインとして見事にまとめ上げ、そしてグラスホッパー・マニファクチュア作品にしか醸し出せないシリアスと悪ふざけが混ざりあったノリが作品全体を包んでいる。
ガルシアとジョンソンの益体もない会話劇を耳にしながら、「“荒いけど楽しいアクションシューティング”と“暗闇と明かりのパズル”の融合」という独特のゲームプレイに身を委ねることになる本作は、喩えるなら“至高のジャンクフード”と呼ぶに相応しい体験だった。

とくに深みのあるテーマが描かれているわけではなく、ゲームとしても“ゲーム・オブ・ザ・イヤー級”みたいな格調高さは持ち合わせていない。しかしその気安く味わえる「とにかく楽しい」を実現するために、職人技と言えるゲームデザインや、唯一無二のセンス、さらにさまざまな豪華食材が惜しみなく投入されている。
それらが渾然一体となった「SotD」は、リマスター版になったことで2024年にプレイしてもなお、ほかのゲームとは一味違う、一風変わった「とにかく楽しい」が色褪せることなく体験できるゲームとなっていた。
アクションゲームに慣れているプレイヤーであれば、フィールドを隈なく探索しながらプレイしても、だいたい8時間ほどでクリアできるかと思う。リマスター版では“強くてニューゲーム”で周回プレイができることを踏まえるとこの“腹八分感”はちょうどいいし、4,180円という価格設定はお得感もある。気安く関係が持てて、後腐れなく離れられるゲームと言えるだろう。


趣向を凝らされたボス戦の数々もやりがいがある。随所に取り入れられているミニゲームや特殊なシチュエーションは……イライラすることもあった(ゾンビのようになったポーラに追いかけ回されるパートはもうあまりやりたくない)が、ちょっとした箸休めとして、振り返れば概ねいい思い出だ(※須田ゲーファンはミニゲーム的なパートのユルさに甘い)。
ガルシアの旅路から紆余曲折あった開発に想いを馳せる
いま「SotD」をプレイすると、ポーラのセクシャルな描かれ方などは「時代だなぁ……」と感じるし、ガルシアの台詞から読み取れる想いはどこまでも主観的で、ポーラ自身がそれを求めているのかは最後までイマイチはっきりとわからない辺りは少しモヤッとするところでもあった。
こういう言い方もどうかとは思うのだが、浅野忠信さんによる微妙に格好のつかない声の演技は、やたらとハードボイルドを気取ってはいるが、台詞の端々から“理想の彼氏”とはあまり思えない情けなさ、みっともなさ、自己中心的な思考が感じられるガルシアという人物にはピッタリだったように思う。


本作でガルシアは、悪魔王・フレミングのいざないやほかの悪魔たちの罠・横槍により、何度もポーラと再会しながらも、それは徒労に終わり、また新たな目的地へ向かうといった感じで地獄中を駆けずり回る。
カフカの「城」から着想を得てこういった“遠回りをくり返す”ストーリーになったようなのだが、前述したゲームデザインの変更に加え、主人公のキャラクターデザインの変更、さらには決定稿にいたるまで第5稿まで改稿を重ねたというシナリオなど、決して順風満帆とはいかない、紆余曲折をくり返す形で進められたことが明白となった本作の開発は、このゲームのストーリーと見事にそっくりであるように感じられる。

そんな開発中の諸々に感じたフラストレーションを前述の動画「Grasshopper Direct 2024! SotD:HR Behind the Scenes Special」では赤裸々にぶちまけているのだが、それでも須田氏ら自身が本作のリマスター版の発売を強く望んだというのは、結果として完成したゲームへの自信と愛情の現れであろう。
さまざまな困難に逢いながらも「悪くねぇ」とうそぶきながらポーラのために戦い続けるガルシアを操作しながら、きっと須田氏らにとっても本作の開発をめぐる紆余曲折は、振り返ってみれば「悪くねぇ」旅路だったのかもしれないと、想いを馳せる。2024年にようやくプレイした「SotD」は、ジャンクフードではあるのだが、13年を掛けて熟成されたことで、そんな感慨もまた味わえる作品になっていた。

最後に、さまざまな紆余曲折を経た熱量の集合体と言える“混沌”であることが魅力の「SotD」だが、より高い純度で、須田氏の脳内に渦巻く“混沌”を作品化したものがこの世には存在する。須田氏や三上氏がとくに気に入っていた「SotD」の第2稿をベースに原作を書いたという漫画「暗闇ダンス」(作画:竹谷州史氏。全2巻)だ。


「暗闇ダンス」(Amazonより)
Amazon PRhttps://www.amazon.co.jp/dp/B01ASK4MLE/
「SotD」が気になった人や気に入った人は、ぜひ「暗闇ダンス」のほうも手に取って、その差異を楽しんでみてほしい。
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参考文献
https://jp.ign.com/shadows-of-the-damned-hella-remastered/76388/interview/killer7
https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1601/26/news089.html
※画面は開発中のものです。
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