千葉・幕張メッセにて9月26日~29日にかけて開催の「東京ゲームショウ2024」。インディーゲームコーナーで出展されていた「Tokyo Stories」のプレイレポートと開発者インタビューをお届けしていく。
素晴らしいアートワークに魅了される
ゲーム内の雰囲気に合わせたブース自体も素晴らしかった「Tokyo Stories」。アクリルジオラマやビジュアルボードなどのさまざまなアイテムを展示し、来場者を楽しませてくれた。
ゲームは誰もいなくなった渋谷の3Dマップを探索する内容で、主人公のスズが思い出を辿っていきながら、消えたはずの少女のユノと出会うストーリーが展開。ドット絵風のノスタルジックなグラフィックが大きな特徴となる。
ローポリゴンのキャラクターや、移動に応じて自動的に視点が変更される仕様は初代プレイステーションのゲームを彷彿とさせ、どこか懐かしさも。
探索中は詩的な表現の文字が浮かび上がってくる演出も。多くを語らないキャラクターや抽象的な表現などがゼロ年代のセカイ系のような雰囲気を醸し出している。
本作を手がけるプロデューサー&ディレクターの池田佑基氏とアートディレクターの寺島誠一氏は、かつてソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)でアクションアドベンチャー「rain」を手掛けており、不思議なビジュアルやストーリーは、その雰囲気もどこかに感じられていた。
ゲーム内には特定のポイントを調べることでマップが変化してこれまで行けなかった場所に進めるようになる謎解き要素も。見慣れた渋谷の街を探索していたのかと思えば、その次ではファンタジー感のある崩壊した場所を進んでいくことになったりして、現実と夢が混ざりあったような不思議な世界に引き込まれていく。
人がいないにもかかわらず電源が入った明るいゲームセンターなど、思わず考察したくなるシチュエーションも魅力だ。
選択肢が発生することもあるが、カーソルを移動すると、その選択にする場合はキャラクターがどのような心理であるのか上下に詳しく表示される仕組み。
選択肢を選んだあとにプレイヤーとキャラクターの心理が乖離していて「そういう意味で選んではなかったのに」と戸惑うということはないので安心できる設計だ。
試遊時間は10分程度ではあったが、本作独自の世界観がしっかり伝わる内容であった。ぜひブースに立ち寄ってプレイしてみて欲しい。
池田佑基氏へのインタビューをお届け
ここからはプロデューサー兼ディレクターの池田佑基氏のインタビューをお届けする。
――「Tokyo Stories」がどのような作品であるのかお聞かせください。
池田氏:ピクセルアートを3Dで表現することをメインに据えた作品で、誰もいなくなってしまった東京が舞台の3Dアドベンチャーゲームになります。
――戦闘などは存在せず、探索がメインになるのでしょうか?
池田氏:そうですね。探索と謎解きがメインの作品になります。
――セカイ系のような独特な世界観が魅力ですが、このような雰囲気の作品を制作した理由をお聞かせください。
池田氏:セカイ系というのは意識していませんでしたが、グラフィック表現をメインに物語を演出していくにあたり、ノスタルジーやセンチメンタルな感じが合うのではないかと思いました。その核となる部分を決めてから物語や演出を構築していきましたね。
――スズとユノはどのようなキャラクターですか?
池田氏:主人公のスズに関してはゲーム内で明言しているわけではないですが、少し内向的でどこか寂しさを抱えてる少女です。彼女がどのように心の成長を遂げていくのかという部分をゲームでは描いていきます。もうひとりのユノはミステリアスな性格で、スズを翻弄するような不思議な少女になります。
――キャラクターは原宿や渋谷にいるようなストリート系のファッションですが、どのようなイメージで作り上げましたか?
池田氏:時代は明言していないものの、どこかしら現代的なテイストは入れたいと思っていました。洋服や持ち物は自分たちで考えたものを若いデザイナーにも見てもらって作っています。
――本作は実在の東京が舞台になるのでしょうか?
池田氏:はい。時代設定や具体的な場所などは明言していませんが、実在の東京がモデルです。
――ノスタルジーを感じるピクセルアートは2Dの作品が多いと思うのですが、3Dで表現した理由を教えてください。
池田氏:サイドビューやトップビューの作品がたくさんあるなかで、どう差別化していくのかを考えていきました。
そのなかで、イラストでピクセルアートを制作しているモトクロス斉藤さんやAPO+さんのダイナミックな画角でありながらノスタルジーを感じるような作品が、もしもゲームで動いたらすごくおもしろいんじゃないかと思いつきました。
日本だけでなく海外アーティストの作品なども分析しつつ、ゲーム内でピクセルアートをどう魅力的に映るのか試行錯誤しながら作っています。ダイナミックな画角のグラフィックを1枚ずつ描いていたら作業がいつまでも終わらないので3Dを駆使しながら制作しています。
――選択肢を選ぶときに、主人公の感情が分かるようにした理由を教えてください。
池田氏:スズとユノがふたりで会話をするときに、どういう感情を相手にぶつけたいのか、背景が分かるようにしたいと思いました。たとえば、「嫌だ」という気持ちを伝えるときも、自分が寂しいから嫌だと言っているのか、相手を拒絶したいから嫌だと言っているのか、言葉だけでは文脈が分からないと思うんです。どうして「嫌だ」と言っているのかプレイヤーさんに説明したくて、この形のシステムを取り入れました。
また、スズとユノは言葉は少ないのですが、頭のなかではいろいろな思考が巡っているということを表現したいとも思いました。
――本作は2023年にリリース時期の延期を発表していましたが、制作は順調でしょうか?
池田氏:そうですね。具体的な発売時期に関しては目途が立ってからお伝えさせていただきますが、ベースとなるストーリーやシステムは固まっているので、あとは作るだけの段階に入っています。制作チームは少人数であるものの、ゲームの幅は広いので量を作るのは大変ですが、引き続き頑張ります。
――最後に発売を楽しみにしていいるファンにひとことお願いします。
池田氏:お待たせしてしまい申し訳ありません。ただ、とてもいいものが作れている予感があり、自分たち自身も完成がとても楽しみです。リリースまで、もう少しだけお待ちいただけると幸いです!
――ありがとうございました。
(C)Drecom Co., Ltd.
※画面は開発中のものです。
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