「グランツーリスモ」シリーズ25周年を記念したメディア向けスタジオツアーをレポート――山内一典氏によるプレゼンも

発表会・イベント取材
0コメント 御簾納直彦

2022年12月23日、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)のドライビング&カーライフシミュレーター「グランツーリスモ」シリーズが25周年を迎えた。

「グランツーリスモ」と言えば、実写と見紛うほど徹底的に作り込まれたグラフィックや車の挙動など、圧倒的なクオリティで世界中のレースゲームファンから支持された作品だ。現在は最新作となる「グランツーリスモ7」が発売中で、12月15日には新規車種やスケープスの特集追加を伴うアップデートも展開。今後の動向にも期待されるタイトルだ。

今回はグランツーリスモの25周年を記念して「グランツーリスモ」の開発を手掛けるポリフォニーデジタルにて、メディアを対象とした取材が実施された。

内容はシリーズ生みの親でもある同社代表取締役 山内一典氏が「グランツーリスモ」の軌跡を語るプレゼンテーション及び、メディア合同のインタビュー。加えて、ポリフォニーデジタル社内のスタジオツアーだ。

まずはプレゼンテーションのレポートをお届けしよう。

今年で25周年を迎える「グランツーリスモ」シリーズ。世界中にファンを持つタイトルに成長した。
ポリフォニーデジタルの東京スタジオ。
最新作「グランツーリスモ7」の試遊台がズラリと並んでおり、自由にプレイ可能だった

グランツーリスモの歴史

最初に山内氏はポリフォニーデジタル設立の背景を語った。設立は1998年。グランツーリスモが発売された1997年末からさほど間をおかずしてのことだ。創業当時のメンバーが持っていたスピリットは、80年代から始まったPCカルチャーをルーツとしたもの。そのため、コンピュータサイエンスに対するロマンティシズムが強く流れているという。根底にあるものはPCゲームをルーツとしたものだった。

ポリフォニーデジタル 代表取締役 山内一典氏

設立時の理念は「世界の森羅万象を量子化して計算可能な存在にする」「社会に対して開かれた存在であること」。当時、コンピュータは物凄い進化を続けていた。チープな表現しかできなかったものが、年を追うごとにリッチな計算ができるようになる。このペースで進化が続くのであれば、いずれは世界全体をシミュレートすることもできるだろう、と山内氏は感じた。

そしてもう一つの理念は、「社会に対して開かれた存在であること」。ゲームは、当時としては「閉じこもりがち」というイメージが少なからずあった。それゆえ山内氏は、社会に対して開かれたゲームを作りたいという思いを抱いていたと振り返る。

ここで話は「グランツーリスモ」のランドスケープデザインへ移る。山内氏は「グランツーリスモ(1)」と最新作「グランツーリスモ7」を比較して進化の幅を説明。「1」は320×240の解像度で、「7」は4K 2160pであり、「1」と「7」では解像度だけでも180倍くらいのピクセルを凌駕していることになるという。

続いてはコース制作の秘話へ。まずロケーション選定を行い、コースのアップダウンやどう曲がっているかなどを調べる。コースの地名や景観の美しさ、走っていて楽しいかどうかという部分も選定基準だ。

そして「グランツーリスモ」の制作において欠かせないのが「取材」だ。地図を作り、どの班がどの部分で取材するのか。どういった機材でデータキャプチャするのかも事前に決めるとのこと。レーザースキャンや固定スキャンの計測ポイント、ドローンの飛行経路なども綿密に考えられている。

撮影に関しては、徒歩でのスチールカメラ撮影で、1コース平均3万枚以上撮影を行う。ただ、これでもだいぶ枚数は減ってきたとのこと。以前は1コース8万枚は撮っていた。枚数を抑えられたのは、ドローンやレーザースキャナーなど機材の進化が理由にあるとのこと。

取材を徹底的に行うことで知られる「グランツーリスモ」の開発。
プレゼンではポリフォニーデジタルの取材に対する考え方を改めて思い知った形だ。

ポリゴン数で見るグランツーリスモの進化

取材が終われば、次はモデリングとマテリアルの設定だ。モデリングには「地形」「路面」「植生」「構造物」などが挙げられる。

例えば地形は「地面がどのような属性を持っているのか」などをを設定するという。そしてスキャンデータから路面を抽出して、路面に沿った形でメッシュを生成するそうだ。続いてはマテリアルの設定。例えば、道に対してマテリアルを設定すると光に対して応答するようになる。こうして多数のオブジェクトに対してマテリアルが設定されていく。

「植生」では木を1本1本作るとのこと。ただ作っただけでは動かないため、荒っぽいポリゴンとテクスチャの組み合わせで近似させる作業が必要になってくる。結果、見た目はそれほど変わらないものの、データの軽量化に成功するのだという。

自然の描写も「グランツーリスモ」を語る上では外せない要素だ。

続いては、「グランツーリスモ」の命とも言える「車」の制作過程について。「グランツーリスモ1」では250頂点のポリゴンで制作されたいたが、「グランツーリスモ3」で2000頂点、最新作「グランツーリスモ7」では1,000,000頂点(曲面)で描かれている。カメラの画角に応じてアダプティブにポリゴンの数が増減する設計とのこと。

ちなみに「グランツーリスモ7」では1人のカーモデラーが270日かけて作るのだそうだ。内装も全てだ。車の選定方法は人気車種や流行、さらにレースの歴史なども考慮される。加えて、人間の歴史や文化に与えた影響も選定の基準だ。さらにこれからの自動車史に影響を与えるようなコンセプトカーも収録対象になるとのこと。

データキャプチャリングに関しては、自動車メーカーからもらえるデータと、自分たちでデータキャプチャをする2つの方法があるという。

グランツーリスモと音楽の関係

「グランツーリスモ」と言えばサウンドも無視できない。ポリフォニーデジタルはレコーディングの拠点を国内だけではなく、北米、ヨーロッパにも持っている。そこに実際の車を持ち込んで収録。シリーズ累計で1800台もの収録を行ってきたそうだ。

収録方法はシャーシダイナモ上に車をセットし、ホイールを外して、ハブにダイナモを直結することでエンジンに負荷をかけ、その状態で音を録っているとのこと。エンジン音再現の試みとしては、車内・屋外ともにインパルスレスポンスのリバーブを使用。

さらに特筆すべきは、物理シミュレーションによるエンジン音シンセサイザーだ。シリンダーの中の燃焼室への爆発からシミュレートして、完全にシンセサイズすることができるのだという。実際に録音されたものとシンセサイズしたものを使い分けることもあるそうだ。

また、エンジンが6000回転しか回らない車でも、チューニングを加えることで7000回転や8000回転回ることもあるとのこと。実際の車は6000回転しか回らないため回転数を拡張する必要が出てくる。そこで登場するのがAI技術だ。これによって回転数を拡張することができるのだそうだ。

「グランツーリスモ」と言えば音楽も特筆すべき点だ。「グランツーリスモ7」では350曲以上を収録しており、クラシックやジャズ、ロックなど幅広く取り揃えられている。「7」では音楽とのシンクロを果たした「ミュージックリプレイ」の実装も記憶に新しい。

PS3から実装された「3Dオーディオ」も「グランツーリスモ」の進化に貢献している。シーン全体で2,000個以上のサウンドエミッタを搭載。小鳥の鳴き声など、環境音を表現するための機能だ。インパルス・レスポンス(IR)という残響効果も取り入れられている。その他、アンビソニックによる高さ方向を含む3D定位表現や、距離遅延、大気吸収のシミュレーションも行っている。

25年を振り返って

続いては「グランツーリスモ25周年を振り返って」というテーマで語られた。初代「グランツーリスモ」の中核メンバーだったスタッフは今でも第一線で活躍しており、山内氏いわく、そういったタイトルはビデオゲームの業界の中ではほとんどないのでは、と分析。「グランツーリスモ」は過去25年間、世界でもっとも売れた車のゲームとして記録されており、全世界で9000万本を出荷。1タイトル1000万本売れているそうだ。

「グランツーリスモ」にはどのような感情が込められているのか。そこには3つの思いがある。1つは、動車業界へのあこがれ。もう1つは物理シミュレーション、最後に、リアルタイム3Dグラフィックス。グランツーリスモ1が登場した時期は、3Dグラフィックスが出始めの頃だった、ということもシリーズ誕生のきっかけとして大きいという。

また「グランツーリスモ」の特徴の1つに、実際の自動車をゲーム内に登場させるというものがあるが、当時それを実現するにあたりネックだったのが、メーカーへの許諾だ。当時リアル系のドライビングゲームはまだまだ多くない時代。そんな中、どうやって自動車メーカーとの契約を取り付けるか。グランツーリスモ開発初期の段階ではプレイステーションが世に出ていないため、リアルドライビングゲームを作るといっても話が通じにくい。

そこで山内氏は3つの企画書を作る。

・ソニー・コンピュータエンタテインメントについて
・プレイステーションについて
・グランツーリスモについて

最初にトヨタ自動車が話を聞いてくれることになったのだが、そこで山内氏は2時間半ほどプレゼンをして、ようやく契約にこぎつけた。「トヨタさんがやるなら」と、他のメーカーも動き始め、多数のメーカーとの契約に至った。山内氏は当時を振り返り、担当者の方には今でも恩を感じていると述べた。

今や誰もが知る有名タイトルの「グランツーリスモ」だが、今では考えられない苦労の時代もあった。
25周年を記念し、過去を振り返る機会だからこそ聞けた貴重なエピソードだ。

「グランツーリスモ」というタイトルの由来についても語られた。当時、ヨーロッパの貴族が子息に教養を学ばせるため大旅行に出たそうなのだが、その時に使われた馬車の名前が「グランツーリスモ」の由来になっているとのこと。ポリフォニー・デジタル自体も海外への出張が多く馬車のような存在であることも理由の1つだ。

最後に山内氏は、なぜ自分たちが「グランツーリスモ」を25年に渡り作り続けてこれたのか、という部分に触れた。その理由は、「エネルギーのポテンシャルを持った人たちと一緒に仕事をしてきた」というのが大きいそうだ。エネルギーとは、あるところからあるところまで流れができるもので、エネルギーができた時というのは、そこに最も効率の良い形として、「渦を作る」と山内氏は言う。

そういった渦のような存在が「グランツーリスモ」だったのではないか。つまり「グランツーリスモ」は常に流れがあって、流れの中で、ある一定の形を保つ。そういう存在なのではないかと語る。

最後に山内氏は「グランツーリスモ」が追求してきたものは「美しさ」であると述べる。車、景観、光、サウンド、音楽(Music)、グラフィックデザイン、物理シミュレーションなど、様々な種類の美しさがあるものの、「何が美しいのか」という挑戦が常に行われてきたのが「グランツーリスモ」であり、それを求めてきた25年なのではないかと述べ、プレゼンを締めくくった。

ポリフォニーデジタル スタジオツアー

プレゼン終了後に行われたスタジオ・ツアーの模様もお届けしよう。

スタジオ内に設置されているバーカウンター。
サウンドルーム。「グランツーリスモ」の音楽が作られている場所だ。
トレーニングジムを完備。山内氏もここでトレーニングしている。
グランツーリスモを開発する際の参考資料が収められている資料室。
多数の本やゲーム、クルマのプラモデルなどが大量に収納されていた。

本コンテンツは、掲載するECサイトやメーカー等から収益を得ている場合があります。

コメントを投稿する

この記事に関する意見や疑問などコメントを投稿してください。コメントポリシー

関連タグ

グランツーリスモ7 関連ニュース

関連ニュースをもっと見る

注目ゲーム記事

ニュースをもっと見る

ゲームニュースランキング