捜査書類を読み解き意見書を作成、事件の有罪/無罪を左右するというアドベンチャーゲーム「リーガルダンジョン」をレビュー。異色と呼ばれるほど独自性の高いその内容と魅力を紹介したい。
「リーガルダンジョン」は、警察官として意見書の作成を行うミステリー・アドベンチャーゲーム。PC版はSomiから、Switch版はPLAYISMからリリースされており、3月にはiOS版とAndroid版がZero Rock Entertainmentからリリース。また、4月5日には本作のPlayStation4版がPLAYISMからリリースされる。「ミステリー」と書いた通り、本作が扱うのはさまざまな刑事事件。しかし、その切り口が他に類を見ないほど異色だ。何しろプレイヤーが担当する警察官は事件を捜査しない。すでに被疑者は逮捕されており、取り調べも終わっている。さらには、法廷もののように有罪/無罪をダイレクトに争うわけでもない。プレイヤーにできることは、意見書を作成し、自分の意見を述べることだけ。でもこれが、とんでもなくおもしろいのだ!
プレイヤーの視点が事件の見え方を左右する!異色のミステリー
一般的なミステリーでは、警察が犯人を逮捕したことをもって晴れて事件解決、エンディングとなることが多い。つまり「警察が逮捕するのは犯人」という描き方をしている。ただ厳密にいうと、これは正しくない。というのも、警察が逮捕した時点では、まだ「犯罪を行った」ことが証明されたわけではなく、「おそらく犯罪を行っただろう」という疑いをかけられただけだから。警察が逮捕した時点では「疑いをかけられた者」=「被疑者」であり、これが検察によって起訴されれば「被告人」となる。そして裁判にかけられ、犯行が立証されることでようやく「犯罪を行った張本人」であることが確定するので、「犯人」という呼称を使うなら、本来は裁判の終了を待たねばならない。本作を楽しむためには、まずこの理解が必要だ。
本作が扱う「意見書」というのは、警察として「被疑者」を起訴すべきかどうか、検察に対して意見を申し述べる書類のこと。検察はすべての「被疑者」を起訴し、裁判にかけているわけではない。警察に逮捕はされたものの、実際には犯罪を行ったと言い切れるほどの証拠が揃ってないだとか、あるいは検察の時点で情状酌量の余地があると思われるとかいった場合には、起訴されない場合もある。いわゆる「不起訴」というやつだ。こうした検察側の判断に対して、警察官の立場で意見を伝えられるのが「意見書」。あくまで意見に過ぎず、決定権は検察側にあるのだが、それでも影響力がゼロというわけではない。
「意見書」に書かれたものはあくまで「意見」に過ぎず、起訴するかどうかの決定権は検察側にある。さらには、起訴したところで必ず有罪になるわけでもない。しかし、それでも影響力ゼロというわけではなく、少なくとも検察側の判断や、警察への評価には影響を及ぼす…。複雑に思えるかもしれない。ただ、決していたずらに複雑なわけではなく、リアリティを表現するために必要なレベルの複雑さといえる。
本作で扱う事件は、とてもリアルだ。たとえば、本作最初の事件は取り調べ中の警察官に対して「ポリ公」と罵倒したというもの。罪状は侮辱罪。続く事件は、古紙回収を生業とする老人が、無料配布されているフリーペーパーを大量に持ち去ったというもので、罪状は窃盗罪となる。いずれも、身の回りで起きたとしてもまったくおかしくはないリアルな事件だ。
事件の内容もさることながら、素直に事件とは断定できないモヤモヤ感を持っているのもリアル。たとえば第二の事件については、商業目的で、かつ常識的に1人1部というかたちで配布されているフリーペーパーを大量に持ち去るという点では窃盗罪が成立するのだが、「フリーペーパーの古い号と新しい号を入れ替えるために、古い号が捨てられていた」…つまり、「古紙だと勘違いした」のであれば、成立があやうくなってくる。
こうした点について正解はなく、起訴を望むかどうかはプレイヤーの視点次第。資料の中のある情報を採用すれば起訴に持っていく意見を書けるだろうし、別の情報を採用すれば、不起訴にすることができるだろう。わかりやすい絶対の悪役がいて、唯一の真実が定まっているわけではないのだ。このあいまいさ、モヤモヤ感がもたらすリアリティは現実と同レベルといっていいだろう。
意見書の作成はRPGのバトル風!ゲームシステムも異色
では、「意見書」の作成はゲームシステム的にどんなかたちなのか?システム的には2つのパートに分かれている。ひとつめのパートは、事件に関する事実の整理を行うパート。このパートでは、被疑者を告訴しようとする「告訴人」や、被疑者の個人情報、そして告訴の内容などといった情報をまとめていく。
具体的には、「被疑者の姓名」や「被疑者の職業」といった設問に対し、事件に関する資料の該当欄を示せばOK。回答として使えるワードは資料中で異なる文字色で示されているので、実際のプレイ感は選択式のクイズのようなものといえる。このパートはさほど難しくなく、どちらかといえば攻略要素より、事件のストーリーを把握することが目的といえるだろう。
そしてふたつめのパートで、いよいよ意見を作成する。このパートはそれまでと雰囲気が一変。RPGのターン制バトルを模したかたちとなる。プレイヤーは「被疑者がすでに認めている事実」「その事実が犯罪に該当するかどうか」といった点に対して回答していく。回答はひとつめのパートと同様、資料内のワードを選択することで行うが、正しいワードを選ばなかった場合、攻撃を受けて自分のHPが減ってしまう。一方、正しいワードを選べば、こちらの攻撃がヒット。被疑者のHPを減らすことができる。ちなみに、刑法などの専門知識については、ヘルプが読めるようになっているのでまったく知らなくても問題ない。
正しいワードを選択し、こちらのHPがゼロになる前に被疑者のHPをゼロにすれば、いよいよ結果の判定。被疑者が起訴されたのか、それとも不起訴となったのか。そして、起訴された場合有罪となったのか無罪となったのかが表示される。正しいワードという書き方をしたが、正しいワード=唯一の正解ワードというわけではない。複数存在する正しいワードの中からどのワードを選んだのかによって、結果が変化するわけだ。
正義か?成績か?ストーリーの背後にうごめく巨悪
起訴を望むかどうかはプレイヤーの視点次第と書いたが、とはいえノベルゲームの選択肢のように、プレイヤーに任意で選べばいいというわけじゃないというのも本作のおもしろいところ。というのも、意見書の結果判定には、警察の成績と法機関からの評価、そしてストーリーの分岐がかかわってくるからだ。
本作における警察は、検挙率で成果が判定されている。検挙率は起訴まで持って行けたかどうかで計られているため、不起訴が増えれば検挙率がダウンし、警察の成績もダウン。当然、主人公の警察内での評価も下がってしまう。
じゃあとにかくガンガン起訴しちゃうか!と、やみくもに起訴して万が一裁判で無罪となれば、今度は法機関からの評価がダウンする。当たり前だが、確実に有罪といえる人間を起訴しなければならない。
いわばプレイヤーは「社会的な正義」と「警察の成績」の板挟みになっているわけだ。これはゲームシステムを通して描かれるだけでなく、ストーリーを通しても描かれる。成績という目に見える形でシビアに判定される以上仕方のないことなのだろうが、本作において警察官として登場するキャラクターは成績アップに余念がない。多少のこじつけで起訴に持って行けるのであれば、起訴に持っていこうとする。その様子は、「社会的な正義」を担う機関の一員のものとはとても思えないだろう。しかし、実際に成績という形で判定されてしまう以上、プレイヤーもまた「社会的な正義」にだけこだわるわけにもいかない。その中でどんな結果を選ぶのか?本作の選択は、こうした重みをもっている。
そして重みをもたせた選択に対して、本作はストーリーの分岐というかたちで応えてくれる。分岐するストーリーの中では、権力を持った巨悪の影がちらつく。いきなり巨悪を出されてもリアリティがないが、「意見書」の作成で取り扱う事件がリアルなだけに、巨悪の存在にも説得感があり、本作のストーリーを魅力的なものにしている。
ビターな魅力を持った大人の作品!警察小説ファンにとりわけオススメ
本作は、そのほとんどテキストで表現しており、ビジュアルによる表現は少ない。しかし、具現化された世界観は非常に奥深く、プレイし甲斐のある作品に仕上がっている。ここまでに触れたとおり、唯一無二の真実がどこかにあり、プレイヤーは正義の存在でわかりやすい悪を懲らしめて終了という作品ではないので爽快感は少ない。テイストは重く、ビターだ。しかしストーリーや設定がしっかり作られているため、大人の鑑賞にも耐えうるエンターテインメントに仕上がっている。とりわけ、普段本格的な警察小説を読むという人にはぜひプレイしていただきたい。
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