探偵ものとして描かれる貞子が新鮮!謎解きアドベンチャー「貞子M 未解決事件探偵事務所」レビュー

プレイレビュー
0コメント 田中一広

謎解きアドベンチャーゲーム「貞子M 未解決事件探偵事務所」をレビュー。アドベンチャーパートとアクションパート、2つのパートで未解決事件を捜査するという作品。その内容を紹介する。

「貞子M 未解決事件探偵事務所」は、グラビティゲームアライズからリリースされたスマートフォン向け謎解きアドベンチャーゲーム。タイトルにある通り、「リング」シリーズの貞子が関わる未解決事件を捜査するというホラー作品。ホラーファンには、貞子という名前を聞いただけで無条件に興味を持ってしまう人も多いのではないだろうか。かくいう筆者もそんな一人。そこで、ホラーファン…いや、「リング」シリーズのファンとして本作のレビューをお届けしたい。

アドベンチャーとアクション!2つのパートで未解決事件を捜査

本作は、アドベンチャーパートとアクションパートという2つの対照的なパートから構成されている。アドベンチャーパートは、登場人物による会話劇でストーリーを進めていくパート。アクションパートは、3Dマップを移動して、敵から逃れつつ探索を行うというパートだ。

主人公=プレイヤーは、何らかの出来事によって記憶を失ってしまった人物。どうやら記憶を失う直前、岩井賢二という探偵と会っていたようだ。しかし、その岩井もまた、主人公と会った直後に、何らかの出来事によって失踪を遂げていた。主人公は岩井の探偵事務所で事務として勤務していた紅葉 巴杏とともに、岩井失踪事件の謎をいう事となる。

探偵事務所で勤務はしていたものの、巴杏は探偵ではない。にもかかわらず岩井失踪の調査に乗り出すのは、岩井の死が弟の変死事件にかかわっているため。4年前の高校で発生した連続変死事件。1年の間に5人もの生徒が校内で遺体となって発見されたという。その1人が、巴杏の弟。そして岩井が失踪したのは、この事件の捜査中だった。

この事件に絡んでくるのが、貞子だ。観た人間を死に至らしめるという「呪いのビデオ」から出てくる怨霊。本作の貞子は「ビデオ」でなくとも映像であれば媒介にできるようで、ゲーム序盤の設定的には近年の3D映画版の貞子に近いようだ。

アドベンチャーパートでは、会話劇によってこうしたストーリーの流れが語られていく。背景は一見2Dに見えるが3Dで作られており、登場人物が視線の方向を変える際には、背景も3D的に変化。また、キャラクターもセリフに合わせて大きくアニメーションするため、会話劇と言えど、臨場感は高い。少なくともただ文章を読んでいるだけ…の作品ではない。

一方のアクションパートはステージ制になっており、ステージ毎に定められた目的を達成するとクリアとなる。本作はJホラーである前に「探偵もの」として作られているようで、クリア目的には「いなくなった猫を探す」だとか「書類を隠密裏に処分する」などが存在。私立探偵として業務を行っているかのような気分が味わえる。

アクションパートの基本は、3Dマップ内を移動して、ポイントを調べていくこと。目的は違っても、基本的には特定のポイントに到達・調べることが達成に繋がっている。

しかし、ただ調べればいいというわけではない。というのも、敵が襲ってくるからだ。敵には貞子のような人ならぬ存在もいるが、命を持った人間も登場。たとえば、「書類を隠密裏に処分する」といった目的の場合、潜入先のガードマンなどが敵して登場する。

敵が人だろうが人ならぬ存在だろうが、基本的に見つかってはいけない。そのためには、しゃがんで身を隠したりロッカーや机の下といった場所へ隠れたりする必要がある。なお、もし見つかったとしても即死というわけではない。敵は執拗に追ってくるが、走ることで敵と距離を取り、上手く撒くことができれば、再び探索に戻ることができる。いわゆるステルス要素だ。

ちなみに、アクションパートにおける「発見されやすさ」や、走るための「スタミナ」といった要素はRPGのようにパラメータ化されており、職業選択とレベルアップ、装備する服などによって増減する。また、装備している「護符」によって、「見つかった時に一定確率で敵の動きを10秒間止める」などのスキルを発動可能。

この「護符」がなかなかおもしろい。「天照」や「酒呑童子」などのキャラクターが描かれた「護符」に対し、「災厄消除」「心願成就」などの「祈祷文」を組み込むことでカスタマイズできるのだ。機能的にはRPGなどで装備にルーンを設定するのと変わらないのだが、見た目的に神社のお札を作っているような感覚がある。自分が欲しいご利益を込めた護符は、リアルでも欲しいと思ってしまった。

アクションパートに課題!運営側の対応に期待

本作をプレイした感想として、まずアドベンチャーパートは非常に楽しい!貞子という題材を、ホラーではなく探偵ものという切り口で描いていることに新鮮味を感じた。しかしその一方で、アクションパートは課題を抱えているように思う。

その課題とは、操作性。まず、本作は片手でプレイすることの多い「縦画面」のゲームなのだが、アクションパートは両手でのプレイが前提となっている。視点が固定ではなく、手動で動かすタイプの作品なので、移動と同時に視点を操作しなければならない。また、敵に見つからないよう、リアルタイムで「走る」「しゃがむ」などのボタンも押さなければらないので、必然的に左手で移動、右手で視点&各種ボタン操作という形になる。

これだけなら両手で操作すればいいだけの話なのだが「縦画面」に「両手操作」を組み合わせたことで、視点操作が行いにくいという症状が発生している。「横画面」の場合、画面左側半分で移動、画面右側半分で視点変更というスタイルになることが多い。しかし本作の場合、「縦画面」で画面スペースが少ないためか、画面スワイプで移動、視点スライダー操作で視点変更というスタイルになっている。視点変更を受け付けるのがスライダーの表示された小さい領域に限定されているため、視点を一気に大きく動かしたり、逆に小さく視点を動かして微調整したり…といった操作が行いにくい。敵の出てこない探索ゲームならこれでもよかったが、ステルス的なアクション要素を持つ本作では、視点移動のしにくさがストレスに繋がってしまう。

また、「懐中電灯」ボタンが画面右上の離れた位置に置かれているというのも辛い。本作において懐中電灯は、室内灯が使えない状況で周囲を照らし、アイテムの位置を知るために使用する。しかし懐中電灯使用中は電池を消費してしまう。このため、なるべくこまめにスイッチをオン/オフしたいのだが、ボタンが離れているせいでやりにくい。

こうした操作性に関する諸問題については運営側も把握しているようで、Twitterで改善を実装することが告知されていた。操作性が改善されると、アクションパートのおもしろさが随分変わってくると思うので、実装に期待したい。

「貞子」の新たなスタイル?ホラーとしての「貞子M 未解決事件探偵事務所」

本作がタイトルに掲げている「貞子」が初登場した「リング」は、ホラー史に名を残す作品。なので、最後に、ホラーとしての本作について触れておくと…、正直、「リング」で感じただろう「ガチの怖さ」は、現時点では少ない。

というのも、変死事件は起こるものの文章的に説明されるだけでビジュアル的に死体が表現されることはないし、アクションパートに至っては、貞子を含めて2頭身のディフォルメモデルで表現されるからだ。怖さがゼロというわけではないが、「リング」の怖さをイメージしていると、薄味に感じてしまう。

ただ、これはある程度しょうがないようにも思う。というのは、「貞子」は繰り返し繰り返し描かれてきた存在だから。最初はガチで怖い存在だったとしても、繰り返し繰り返し描かることで、キャラクター化してしまう。野球の始球式にまで登場してしまった「貞子」は間違いなくそんな存在だろう。このため、映画作品の方では異形のクリーチャー化させるなど、様々な試みが行われている。設定が知れ渡った現在、ストレートに怨霊として描いたところで、「リング」を超える怖さは表現できないからだ。

「貞子M 未解決事件探偵事務所」はホラーとしてのこうした課題に対し、「ホラーと探偵ものとの融合」「キュートなビジュアルとホラーとのギャップによる怖さ」というスタイルで回答しようとしているのだと、筆者は感じている。どんなホラーでも、恐怖を表現するためには一旦観客を弛緩させなければならない。「出ないだろう」と油断した状態で幽霊を見るからこそ怖さを感じられるからだ。「出るぞ、出るぞ…」と準備している状態の観客に幽霊を見せてもさほど怖さは感じられない。

つまり、探偵ものとしての展開や、キュートなビジュアルというのは、キャラクター化して親しみのある存在になってしまった「貞子」に新たな恐怖をもたらす手法なのだろうと、筆者は考えている。もちろん、最後までプレイしていないのでこの考えが合っているかどうかはわからない。ただ、この先の展開にどういう表現が待っているのか、楽しみには思っている。それだけに、アクションパートの一日も早い改善が待たれるところだ。

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