ダウンロードで遊べる、気になるゲームの魅力を実際にプレイした上でご紹介する「DLゲームインプレッション」。第5回は、Nintendo Switchにて配信中の短編・横スクロールアドベンチャーゲーム「What Comes After」(ワットカムズアフター)をピックアップ!
「What Comes After」は、「コーヒートーク」の作者であるモハメド・ファーミ氏とインドネシアのインディーゲーム開発スタジオRolliing Glory Jamが共同制作したタイトルだ。日本語ローカライズが行われているのはNintendo Switch版のみ。Steamでも販売されているが、こちらは現時点では日本語化されていない。
ひとりの女性が死者たちとの対話から、自分自身が抱える問題を見つめ直す物語
本作の主人公は日々の生活に疲れきった女性・ビビ。ある日、ビビは終電に乗ったまま居眠りをしてしまう。目覚めると、何やら異様な雰囲気に包まれている車内。少し歩き回って明らかになることには、なんとビビは、死者を乗せて“あの世”へと運ぶ電車に迷い込んでしまったのだ。
ゲームとしては、車内にいる死者たちひとりひとりに話しかけて行くことで、物語が進展していく。死者といえど、自分の“死”に対する考え方はさまざま。穏やかに受け入れている者もいれば、当然心残りがあって悔やんでいる者もいる。
一度死なないとなかなか出てこない発想で、思わずクスリと笑わされてしまうことも。
日本語ローカライズにはごくまれに誤字が見受けられたが、登場人物たちの感情や、ちょっとしたユーモアをしっかりと伝えるテキストにはなっており、そういう意味では基本的な品質は高い。
車両を移動していくと、この電車には人間以外の死者もちらほらと乗っていることが分かる。ここでは、すべての生物の魂と等しく会話ができるのだ。
犬や猫といった動物、あるいは植物にもそれぞれの一生があり、彼らなりの死生観があるのかもしれない――彼らを愛でることの多い我々人間だが、果たして彼らの命に報いることができていただろうか? 本作をプレイしていると、そんなことを考えずにはいられない。
死者たちとの対話の中で、ビビは幾度も彼らにかける言葉を探す。慰めたり、元気づけたり、これからのことを前向きに考えている相手の気持ちを尊重して、あまり悲観的にならないように振る舞ったり。そうして彼らの言葉に耳を傾けているうちに、いつしかビビのほうも、これから先の人生をどのように生きて行くべきか考えはじめる。
最終的には、ビビ自身が抱える不安がどういったものであるかも明らかになる本作。それはありふれていて、取り立てて悲劇的なものではない。しかしだからこそ、多くの人が抱える悩みに寄り添ってくれるものになっているように思う。
不思議な電車をめぐる一夜の旅を終えたプレイヤーは、ビビと一緒に、晴れやかな気持ちで明日を迎えることができるはずだ。
あなたがいま必要としている言葉が見つかるかもしれない
「What Comes After」の定価は770円(税込)。ストーリーには分岐も存在せず、1~2時間ほどのプレイでエンディングに到達することになる。ゲームならではのやり込み甲斐といったものはなく、ただ指定された場所でボタンをクリックし、用意された展開を受け取るだけの作品と言える。
これを割高と感じる人もいるだろう。しかしプレイ時間の中で交わされる死者との対話の中に、あなたがいま必要としている言葉を見つけ出すことがあるかもしれない。そう思えば、映画よりは安く、短編小説を買うにしてはやや高いこのゲームに、価格以上の価値を感じることはできるはずだ。
死者を運ぶ列車に舞台を移すまえの、終電に乗っている乗客が皆マスクを着けているのも特筆すべき点だ。繰り返す毎日の中で不安ばかりが積み重なり、少しずつ心をすり減らされていくような感覚……。おそらく本作の世界もコロナ禍以後であると考えると、よりいっそう感情移入できるのではないかと思う。
ゲームの開始時、「自殺や自傷行為についての表現が含まれています」という警告文が入るが、とくべつ刺激が強い描写があるわけではない。とはいえ、何らかの理由でこういった描写への抵抗が強い人は気をつけたほうがいいかもしれない。そういった不安のない方で、ここ最近の生活に辛さを感じている方には、ぜひ本作に触れてみてほしい。
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