2021年3月19日にNintendo Switch版の配信がスタートしたアクションゲーム「アカネ」のレビューをお届けする。
「アカネ」はブラジルのゲーム開発スタジオ、Ludic Studiosが手掛けたアクションゲーム。Nintendo Switch版のほか、PC版がSteamでも販売されている(Steam版のタイトル表記は「Akane」、こちらは日本語化されていないので注意)。
Nintendo Switch版は500円、Steam版は520円と、極めて低価格で購入できる本作は、ゲームモードがチュートリアルを除いてただひとつしかない点や、敵のバリエーションの少なさなど、価格相応の部分があることは否めない。しかし「過去の自分の記録を塗り替え続ける」という、アーケードスタイルのアクションゲームが持つ根源的な楽しさに喜びを見いだせるゲーマーならば、何度でも繰り返し楽しむことができるだろう。
現に筆者はこのレビュー執筆時、すでに本作を12時間ほどプレイしており、未だに手に取ると原稿そっちのけで指が痛くなるまで遊び続けてしまう。チープな部分を補って、余りある魅力に満ちた逸品なのだ。本作がなぜそこまで楽しいのか、順を追って説明していこう。
サイバーパンクな“未来都市メガ東京”での戦い
「アカネ」の舞台となっているのは、2121年の未来都市メガ東京。違和感のある日本語が書かれた色とりどりのネオン看板が並ぶ、いわゆる“サイバーパンク風”の世界だ。ここで主人公である銀髪の少女・アカネは、際限なく現れるヤクザどもを己の命が尽きるまで倒し続けることになる。
さっそくヤクザどもを血祭りにすべくゲームをはじめたいところだが、まずはメニュー画面から「チュートリアル」を選び、戦闘システムを理解するところからはじめるのがおすすめだ。チュートリアルではアカネの幼少期まで時間をさかのぼり、彼女の師匠であるイシカワの道場で、「ブシドー」の極意を学ぶというシチュエーションが展開される。
チュートリアルでイシカワがアカネに放つ衝撃的な台詞に、「刀はお前の命だ。だがブシドーでは、銃もとても重要な武器となる」というものがある。我々の認識を大きく揺るがす台詞だが、「ブシドー」なので「武士道」とは全然別物なのかもしれない。そしてこの台詞こそが、「アカネ」というゲームの特徴を端的に表わしているとも言えるだろう。
死闘感を生み出す「1ヒット1キル」というゲーム性
メインとなるゲームモードでアカネは、刀による“斬撃”と銃による“射撃”によって四方から襲いかかってくるヤクザどもを倒していくことになる。ほとんどの敵は一撃で葬れる反面、アカネも一度でも敵の攻撃を食らえばゲームが終了してしまう。緊張感を絶やさないプレイを求められ、コントローラーを持つ手にも力が入る。
本作の特徴のひとつとして、刀にも銃にもゲージが設けられており、これらは攻撃をするたびに減っていき、ゼロになると該当する攻撃が使えなくなってしまうことが挙げられる。これらのゲージは攻撃をしなければ時間と共に回復していくが、時間が経つほどヤクザの出現頻度は上がっていくので、逃げ回ることで時間を稼ぐのは難しい。ではどうすべきか?
実は、刀のゲージは銃で敵を倒せば時間経過よりも効率よく回復し、逆に銃のゲージは刀で敵を倒せば時間経過よりも効率良く回復するのだ。したがって、刀と銃をバランス良く使い分けて、攻撃の手を緩めることなくヤクザを倒し続けることが求められる。イシカワの教え、「ブシドーでは銃もとても重要」というのは、このゲームにおいては紛うことなき真実だったのである。
もうひとつ、本作の特徴として挙げておきたいのが、「ひと太刀で倒せるヤクザは、ひとりだけ」ということ。公式ページの文言を借りれば「1ヒット1キル」ということになる。斬撃に巻き込めば複数の敵にまとめてダメージを与えられるアクションゲームが多い中、本作は敵の群れに突っ込んで刀によるひと太刀を放っても、倒せるのはひとりだけ。攻撃を受けなかったヤクザに横から反撃されたらこちらが命を落としてしまう。
刀と銃を織り交ぜて立ち回る必要が生じるゲージシステムと、「1ヒット1キル」というゲーム性。これらを考慮して立ち回るからこそ生まれるスリリングさが、このゲームに宿る“死闘感”を支えているのだと思う。
迫りくる強敵たち――ボス戦は宿敵・カツローとの一騎打ち
時折、雑魚ヤクザに紛れて中ボス的な強敵が現れることも。遠くからマシンガンで狙い撃ってくる“狙撃手”、体力が高く、アカネに掴み掛かってくる巨漢の男“戦車”、範囲の広いダッシュ攻撃を繰り出し、攻撃後の隙を突かなければ倒せない“サイバー忍者”。それぞれ対処法の異なる強敵たちが出現すると、戦況はさらなるカオスに。彼らへの対処に気を取られているうちに、雑魚のほうにバッサリやられてしまうこともままあり、一筋縄ではいかない。
なお、“狙撃手”の銃撃は防御ボタンではじくことができ、はじいた流れ弾でヤクザたちを撃破することも可能となっている。逆に“サイバー忍者”はこちらの銃撃を弾いてくることがあり、これに当たるとアカネもまた即死してしまう。“サイバー忍者”を見かけたら、そちらには銃口を向けないのがセオリーだ。
敵を100人倒すたび、ボスキャラクターである“カツロー”が出現。一騎打ちをすることになる。カツローは100人撃破時、200人撃破時と攻撃手段が増えていき、300人撃破以降は最強状態として立ち塞がる。攻略方法はプレイヤーそれぞれが試行錯誤して見出してほしいが、特に最強状態のカツローは剣戟アクションゲームのボスに相応しく、一瞬の判断ミスが命取りになる難敵だ。乱戦とはまた異なる緊張感が、ゲームプレイに彩りを加えてくれる。
戦況をひっくり返す必殺技「ドラゴンスラッシュ」と「ドラゴンスレイヤー」
数々の困難な状況を打開したいときに役立つのが、時間の流れをスローにしたのちに必殺技を放てる「アドレナリンモード」。必殺技は敵を倒すたびに溜まる、画面下にある3段階のゲージを消費するが、非常に強力な上、放てば刀のゲージが全回復する。劣勢時に体勢を立て直すのにも有効ということだ。
ゲージをひとつ消費して放つ「ドラゴンスラッシュ」は、左スティックで引いた直線上の敵を一掃できる。強力だが直線を引いている最中も時間は経過するので、反撃を受けないように注意が必要となる。
ゲージを3つすべて消費して放つ「ドラゴンスレイヤー」は、カットインが入ってから、画面上のほぼすべての敵を一掃できる大技だ。
これらを戦いに組み込めば、困難な状況を打開できる可能性が大幅に上昇する。通常攻撃ではまとめて敵を撃破できないシステムだからこそ、そのカタルシスはとても大きい。
巧みな目標設定と、装備品のアンロックで生まれる、発展性のあるゲームプレイ
「アカネ」はひたすら再プレイを繰り返して敵の撃破数を更新していくゲームだが、いくつもの目標が設定されており、これを達成することで新たな銃、刀、持ち物、靴などがアンロックされる。装備品を変更すればアカネの能力も変化するので、改めて立ち回りを考え直す必要が生じ、新鮮な気持ちでプレイを続けることができるのだ。
刀の中には攻撃ボタン長押しで複数の敵をまとめて倒せる“回転攻撃”や、刀を放り投げて遠くにいる敵までまとめて倒せるといった「特殊攻撃」が使えるものもある。これらは一度使うとしばらく使えないが、必殺技と同様、刀のゲージが全回復する効果も併せ持っており、強力だ。
ちなみに銃、刀、靴といった装備は、そのほとんどが一長一短の性能になっている。特殊攻撃が使えない初期装備の刀は代わりにゲージが減りにくいし、複数の敵をまとめて倒せる銃なども登場するが、こちらはゲージ(弾数)が少なく、乱発はできない。ダッシュの飛距離が伸びる靴は、遠くにいる敵に素早く近づけるようになるが、慣れるまでは近くにいる敵との間合いの調節に難儀するだろう。
持ち物は2つまで装備できるのだが、上記のような欠点を補えるものを選ぶか、自分が得意とする戦い方をサポートしてくれるものを選ぶかなど、悩まされるのもまた楽しいところ。いろいろな組み合わせを試して、自分にあったものを見つけてほしい。
また、目標設定がプレイヤーに、自然とプレイの上達を促してくれるのも特筆すべき点だ。
例えば「刀攻撃精度100%で撃破数101に達する」という目標がある。これは刀攻撃を一度も空振りすることなく1人目のカツローまで倒し切ることを意味するわけだが、この目標を達成すれば、プレイヤーは攻撃を確実にヒットさせるコツを身につけられるだろう。刀に設けられたゲージは空振りでも消費するので、これを抑えられれば、いざというときに攻撃できずヤクザに斬り伏せられてしまうのを防ぐことにも繋がる。
ほかにも、「コンボ数50以上で戦車を撃破する」という目標があるが、コンボは矢継ぎ早に敵を倒し続けなければ繋がらないので、4~5回攻撃を加えなければ倒せない戦車の相手を普通にしていては途切れてしまう。1~2回戦車に攻撃を加えるたびにほかのヤクザも倒してコンボを継続させつつ立ち回る……といった戦い方が必要なのだ。こういった目標では、強敵が出現しても広い視野を持って立ち回る判断力が鍛えられ、さらに大きなコンボ数への挑戦も現実的なものへと変えてくれる。
通常攻撃以外の手段で敵を倒すとポイントが入る「度胸」が一定数を超えることが条件となっている目標は、特殊技や必殺技を積極的に使うように促してくれるし、中ボスやカツローを特定の技で倒すといった目標は、どんなタイミングでどんな攻撃を加えるのがより有効な攻略法になり得るかを気づかせてくれる。
プレイヤーの上達を促す目標設定と、それを達成することでアンロックされる装備品で生まれる新たな戦術。この見事な相互作用が「アカネ」に、何度でも遊びたくなる発展性のあるゲームプレイを付与していると言えるだろう。
ハマる人はとことんハマれる、一服の清涼剤のような快作
このように、「アカネ」は練り込まれた絶妙なゲームシステムと、発展性のある目標設定、アンロック要素によって、ハマる人はとことんハマれる快作に仕上がっている。
また、ここまでシステム面での特筆すべき点に焦点を当ててきたが、「人間を斬る、撃つ」という行為の爽快感を高める、ヤクザたちの“やられ演出”も素晴らしい。
身体が真っ二つに裂けながら倒れる、首が落ちるなどのアニメーションには力が入っており、肉を裂くような効果音や断末魔の叫び声も相まって、ひとりひとり血祭りにしていく楽しさを増幅してくれているのだ。とはいえ粗いピクセルで描画されているので、グロテスクすぎる表現にはなっておらず、多くの方が楽しめるのではないかと思う。
ボリュームたっぷりで、様々な要素がてんこ盛りのゲームも素晴らしい。けれど、そうした作品でお腹いっぱいになったとき、「アカネ」のような快作は、ある種のゲーマーにとって一服の清涼剤のように感じられるはずだ。ぜひ気軽に購入して、プレイしてみてほしい。
(C) 2021 QubicGames S.A. / Ludic Studios
※画面は開発中のものです。
本コンテンツは、掲載するECサイトやメーカー等から収益を得ている場合があります。



















































