日本ファルコムより2020年8月27日に発売されたPS4用ソフト「英雄伝説 創の軌跡(はじまりのきせき)」のプロデューサーで、同社の代表取締役社長を務める近藤季洋氏にインタビュー。後編ではネタバレありの制作エピソードのほか、次回作「黎の軌跡(クロノキセキ)」の話題にも触れた。
なお、後編は前編の流れからそのまま続いているので、まだ前編を見ていないという人は先に読んでもらうことをオススメする。
※「英雄伝説 創の軌跡」や軌跡シリーズのネタバレになる要素も含まれていますので、ご注意ください。
《C》ルートの主人公は最初違っていた!?
近藤氏:最初《C》の正体は、もう一人のロイドの予定だったんですよ。ただ、それをパッと見た時に僕がすでに完成させていた「イースIX」のシナリオにちょっと似ていて(笑)。流れも似ていたので続けて出してしまうと、ということでゴメンと話してほかのアイデアを出してもらった時に、担当者がルーファスと言ったんですよ。
その時に僕と「閃の軌跡」のメインシナリオライターはピンと来たんですが、ほかの人はみんな「えっ?」となったんです。みんながポカンとしているから逆にいけるかなと思ったんです。
ルーファスはちょっとヒールな部分がありますよね。それとパーティを組めるようなキャラクターを考えようとしたところからラピスが生まれました。ラピスの設定も最初はいろいろあったんですが、ルーファスの写し鏡でもあるというところからあの設定に落ち着きました。それと「閃の軌跡」チームからスウィンとナーディアを加えたら良いのではというアイデアがあり、決まっていきました。
――あの4人のパーティになったのは既定路線というわけではなかったんですね。
近藤氏:結構試行錯誤しながら、紆余曲折あって決まっていきました。ただ、やり取りの心地よさというのは若手の力だと思います。僕らが今まで「空の軌跡」から「閃の軌跡」の中でやってきたものとはまたちょっと違うものを提示できて良かったねという社内での評価にもなっています。
――ルーファスに関しては、これまで内面的なところを見れているようで見れていないキャラクターでしたよね。
近藤氏:自分のことを見ていないですし、その必要もないと思っているんだけど、その虚を突くのがあの3人なんですよね。
――終盤の展開は特に印象的でした。
近藤氏:最後のルーファスの選択はとても彼らしいですよね。ただ、そこに至っても悪い意味で彼らしいということだと弟と同行者に一斉に釘をさされて(笑)。
――例えばエステルとヨシュアの関係だと、やはり主人公のエステルがヨシュアを引き上げるような印象でしたが、ルーファスは逆にみんなに気付かされて引き上げてもらうような感覚ですよね。
近藤氏:でも、ルーファスルートだけでもダメだったと思うんですよ。やはりほかの2ルートがあって、その中で1本異色なルートがあるから余計に映えると。ルーファスルートだけで1本作ったらそれはそれで疲れちゃうかもしれないので、「創の軌跡」のかたちだからこそ生まれてきたものだと思います。普通はここまで思い切ったチャレンジをできないんですよ(笑)。
――軌跡シリーズはヒールな主人公像のイメージがないというのもありますよね。
近藤氏:本編であれば光の主人公でないといけなかったりもしますね。
――先ほど写し鏡という表現がありましたが、ラピスのキャラクター作りというところで意識した点があればお聞かせください。
近藤氏:やはりルーファスという主人公が決まったからこそ、ラピスが決まったんですよね。軌跡シリーズって「空の軌跡」の時からエステルが決まればヨシュア、シェラザードが決まればオリビエ、と対にしてキャラクターやパーティの構成を考えていくことが多いので、僕の中で唐突ではないと思いました。人形工房の設定はそもそもありますし、そこからレンとつながったりもするので、決まると有機的にいろいろな設定が組み合わさっていきますね。
――見た目と扱う武器のミスマッチ感も良いですよね。
近藤氏:僕はラピスが斧に立っているシルエットが好きなんですよね。
――発表時のビジュアルにもあって、実際のゲーム内にも勝利パターンとしてあって良かったですよね。
近藤氏:そういう部分も含めて、今回はやはりルーファスを見つけて引っ張り上げてきたところに感心したんですよね。それがあったからあのルートが活きてきているので。偽ロイドじゃなくて良かったじゃんと。ほかにも実はガイという案もあったんですけど、みんなが一斉に某作品を挙げた時点で止めておきました(笑)。偽ロイドのシナリオもそれはそれで面白かったんですが、あまりにタイミングが悪くて。同じ場所で同じような話題をしながら作っているからか、結構こういう偶然があるんですよね。
ルーファスがああいうかたちで再スタートするというのが、ルーファスを主役にした時にピンとくる部分がありつつ、我々では思いつかなかったので面白かったです。
――スウィンとナーディアに関連して、小説の内容が本編にフィードバックされるということはあったと思うのですが、その中で登場した組織という存在が今後どこかで描かれることはあるのでしょうか?
近藤氏:可能性はありますね。ただ、小説を書いた時にそう決めているわけではなく、劇中の小説ってシナリオライターとして入社した時の最初の課題なんです。これって本編で使えるんじゃないかと思い、取り入れたところから慣習化されています。
軌跡シリーズに関しては、帝国編までは「空の軌跡」の頃に何となくの流れは考えていたんですが、ここから先は新たに構築していくものなので、現時点で決まっているものではないです。今までにみんなが作ってきたものも見直してみて、つながると面白いものやユーザーの意見を反映したりして積み上げていく中で、その一環として小説の内容が実在の人物として登場するという流れです。
これは「ガガーブトリロジー」という「英雄伝説」の前シリーズの頃からやられています。「女剣士サフィー」という小説が「英雄伝説III 白き魔女」で集められるんですが、「英雄伝説IV 朱紅い雫」で実際にサフィーのモデルになった人物が出てくるのを、当時すごいと思ったので、そこにインスパイアされてやっているという部分もあるかもしれないです。
「カーネリア」についても最初はそんなつもりもなかったんです。実際に組みこむ際には、自然に見えるようには一生懸命やってはいるのですが(笑)。最初に決めていたことだけでは幅が広がらないですし、トレンドも変わっていくので。
――ユーザーが小説に登場するキャラクターを汲み取って話題にしてくれるのも、軌跡シリーズならではですよね。
ロイドルート、リィンルートの制作エピソードも
――話は戻るのですが、ロイドのルートに関して「閃の軌跡」の頃から特務支援課がクロスベルの象徴みたいになっている感覚が強かったのですが、そこに対する一種のアンチテーゼみたいな展開があったのが印象的でした。
近藤氏:活躍した人たちがそのまま英雄扱いされるという件はどの物語でも良くある話で、もちろんロイドたちにはあると思っていました。今回、ロイドたちの話って「碧の軌跡」までである程度完結しているんですよね。ロイドも成長していますし、ほかのメンバーも成熟しているので、その上で彼らに何かが降りかかるとしたら直球でいくしかないわけです。それにルーファスというのは噛ませ甲斐があるキャラクターですよね。能力的にはそういうことをやってのける人物ですし、そういうことを突きつけるのは、オズボーン亡き今だと彼しかいないと。
《C》ルートは問題ないと思っていて、リィンルートについても先ほど触れた“もう一人”という軸があるので問題はないだろうと。ただ、多分ロイドは苦戦するだろうと思っていたんです。彼はこれ以上ネタが無いところをどうするのかなって見ていたら、ストレートに来たのでなるほどなと。
――それによってロイドルートにも軸ができたのかなという風には感じました。
近藤氏:先ほど仰っていたように、リィンルートは何もなければリィンの漫遊記で終わるわけですし、ロイドルートについてもその可能性がすごく高くて。何かをきちんと入れ込まないといけないのですが、それが生き返ったガイなのか、もう一人のロイドなのかというところもありつつ、それが《C》ルートに割れてしまったことで、本当にそこに入れ込まなきゃいけないということで、だからこそストレートにいったんでしょうね。
――それを乗り越えて、彼らはこれからもクロスベルでの日々を過ごしていくわけですよね。
近藤氏:自然に考えて彼らが英雄扱いされるのもわかるし、彼らがその気になってしまうことも無理からぬことではありますよね。でもやはりそのままでいいわけがないよね、という問いかけはやらないといけないはずなので、そこに正面からいったのかなと思って、見守っていました。
――あと特務支援課のメンバーたちがロイドと再会した時にみんな抱きつくじゃないですか。あれは何だったんだろうなと(笑)。
近藤氏:それはもう攻略王ですから(笑)。「碧の軌跡」でもランディ含めてみんなに告白されているんですよね。そこでノエルに対して言った「君は俺がもらう」というセリフはロイドの象徴的な部分でしたが、「創の軌跡」では正面から英雄像を崩されることで封印されているんですよね。その中で描かないといけないのでロイドルートは結構苦しいとは思っていたんですが、よく見たらちゃんとやっているなと(笑)。
――リィンルートについては、少し話に出ていたもう一人のリィンの存在がやはり「閃の軌跡IV」との関連性を想起させますよね。あり得たかもしれない未来を見ているような感覚で。
近藤氏:その一連のシーンは大きな伏線になっていて触れづらいのですが、今言えるのはあの出来事を覚えていてほしいというところですね。
――軌跡シリーズの今後の展開にも関わってくるかも、というところですよね。リィンルートはとにかく触れづらいのですが、リィン、クロウ、ルーファスの3人で機甲兵に乗り込むシーンなど、どうしてそうなっているのかは分からないものの、印象的なシーンが多いですよね。
近藤氏:リィンのエピソードはとにかく仕掛けが大きいですよね。
「創の先へ」の話題から次回作「黎の軌跡」の話へ
――3つのルートそれぞれでしっかりとした結末が描かれている一方で、大型アップデート「夢幻の彼方へ」の配信に併せて追加された「創の先へ」のエピソードの中で今後に関する示唆もありました。
近藤氏:「創の軌跡」はタイトルそのままでもう始まっているわけですから、あそこで語られていることはそのまま続いていくんじゃないですかね。特に「創の先へ」に関しては、ヒントが盛り込まれていますし、次回作の登場人物も出ていますからね。
――ここまで踏み込むのかなと驚きました。
近藤氏:「創の軌跡」と次のタイトルは並行してずっと走ってきたので、最後にサービスでやろうという話になりました。これも当初予定にはなくて、そこまでやるなと言いそうになるぐらいでした(笑)。
――舞台がカルバード共和国に移っていくにあたって、今後の作品で彼らが登場するようなことはあるのでしょうか?
近藤氏:やはり前半戦終了という意味では、今までよりは境界線が大きいと思います。次回作というのはパッとビジュアルを見たらみなさんは全くの新作に見えるかもしれませんし。ただ繋がっているところはありますので、関わっていくキャラクターもちらほらはいますね。ただ彼らがもう主軸になることはないと思います。「創の先へ」のエピソードでリィンが言っていたことを思い出してほしいんですけど。
やはり共和国という舞台に根を張る人物たちがたくさん登場してきますので、彼らがある意味今までの主人公が追ってきた謎を引き継いで、新たな物語を紡ぐことにはなります。このインタビューが公開されるタイミングでは次回作のタイトル「英雄伝説 黎の軌跡(以下、黎の軌跡)」も発表されているので、そこで公開される予定の素材を見ながらお話していきましょうか。
このコンセプトビジュアルにはエピソードにも出ていたキャラクターが登場しています。ちょっと特殊な能力を持った人間という感じです。
こちらがゲーム画面です。モデルも今までのものより精細でいろんなところが揺れますね(笑)。アクティブにいろんなことをやっていてアクション性も高まっているので、PS4でもシステム的には結構いっぱいいっぱいです。
――マップを見ていてもすごく精細になっていますね。
近藤氏:今回は完全新規のゲームエンジンになっていて、空気とか光の演出はバージョンアップしています。完全新規というのはすごく久しぶりで、実に10数年ぶりのことなんですよ。そもそも今の3Dエンジンって「ぐるみん」なので(笑)。ずっとごまかしながら使ってきたんですがもう限界ということで、3年前ぐらいから取り組んでいます。イースも次はこのエンジンで作ろうと思っています。
あと彼は「創の軌跡」のPlatinumマイスターBOXの卓上カレンダーにうっすらと映っていたのですが、こちらもパーティキャラクターの一人です。
――これだけを見ると、全くの新作に見えますね。
近藤氏:少し大人っぽい雰囲気にしようということで、主人公の年齢も「創の軌跡」の《C》を除くと一番高くなっています。高級感やちょっとダーティな雰囲気があると思います。
――もう一枚のコンセプトビジュアルに描かれているアイテムは何なのでしょうか?
近藤氏:これは超重要アイテムなので現時点では何もコメントできません(笑)。
――主人公は今までとは立ち位置が変わるのでしょうか?
近藤氏:“裏解決屋(スプリガン)”という、今までの主人公とはぜんぜん違う職業です。あまり日の当たる人じゃないかもしれないですね。
それと制服姿じゃないのでわかりにくいかもしれませんが、この女の子もエピソード内に登場しています。
――では3つのエピソードが全て関連するということなんですね。
近藤氏:全て「黎の軌跡」のプロローグになっているんですよ。リィンのエピソードで別の流派が出てきますが、それも作中に出てくるはずですし。
――フィールドの移動についても見た印象から違うように感じるのですが。
近藤氏:全然違いますね。これまでは秘伝のタレみたいに継ぎ足してきたのですが、僕らも久しぶりにまっさらな状態で制作しているので楽しみです。「創の軌跡」とスタートはほぼ同時期なんですが、その分時間をかけて取り組んでいます。
――「黎の軌跡」と同時に「那由多の軌跡:改」も発表されましたが、軌跡シリーズは過去のタイトルを現行機で遊べるように取り組まれているのが印象的です。
近藤氏:軌跡シリーズは最新作が出ると、前のシリーズが結構売れるんですよ。その時に現行機種で遊べないというのは僕らにとっての機会損失なので、そこは今後もちゃんと作り直したいです。本当は「空の軌跡」を3Dで作り直したいんですけど(笑)。
実際、「創の軌跡」の発売後に「閃の軌跡I・II:改」のリピート注文をいただくことがずっと続いていて、「閃の軌跡」を始めるきっかけにもなっていると思います。
――最後に「創の軌跡」をプレイされたファンにメッセージをお願いします。
近藤氏:エンディングにたどり着いた方たちもたくさんいらっしゃると思うのですが、手にとっていただいて本当にありがとうございました。タイトルの通り、「創の軌跡」は軌跡シリーズ後半の狼煙でもあるので、その内容はそのまま次回作に引き継がれていくことになります。
いよいよ次回作の「黎の軌跡」が発表になりましたが、「創の先へ」のエピソードで明らかになった情報とつながる部分もあるかと思います。ファルコム創立40周年ということで、全てを一新した渾身の軌跡シリーズになりますので、こちらも楽しんでいただければと思います。引き続き軌跡シリーズをよろしくお願いいたします。
――ありがとうございました。
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