声優の三宅麻理恵さんが気になるゲームを実際にプレイして紹介する「マリエッティのゲーム探訪」。第13回はレッド・エンタテインメントより2017年11月9日に発売されるPS Vita用ソフト「俺達の世界わ終っている。」の制作に携わる、森田直樹さん、阿智太郎さんにインタビューしました。

目次
  1. 「俺達の世界わ終っている。」は実在の浅草を舞台に
  2. 大ボリュームのシナリオや「S.O.S.システム」誕生の経緯とは?
  3. 7人と一緒に“2017年の夏”を体験してほしい
  4. 三宅麻理恵さんプロフィール

今年半ばに彗星のように発表され、気づけば発売目前というゲームソフトがあります。

その名も「俺達の世界わ終っている。」。

タイトルのインパクトや、そこから浮かび上がる疑問は沢山ありますが、特に私の興味をひいたのが制作スタッフの皆様です。

企画・原作は思春期に私に多大な影響を与えてくれた「サクラ大戦」などを制作されたレッド・エンタテインメント。シナリオは、こちらも思春期から著書をたくさん読ませていただいているシナリオライターの阿智太郎さん。そんな面々が制作されるアドベンチャーゲームが、ただのアドベンチャーゲームのはずがない!

ということで、今回は「俺達の世界わ終っている。」を前後編に分けて、前編は制作に携わる方々へのインタビュー、後編はゲーム本編のコラムをお届けいたします。

前編である今回は、発売直前&マスターアップ後というホットなタイミングでインタビューさせていただきましたのでご覧くださいませ。

(左から)シナリオの阿智太郎さん、ストーリー原案・ディレクターの森田直樹さん

(インタビュー:三宅麻理恵、構成:TOKEN)

「俺達の世界わ終っている。」は実在の浅草を舞台に

三宅さん:「俺達の世界わ終っている。」はどういった経緯で制作されたのでしょうか?

森田さん:レッド・エンタテインメント(以下、レッド)はこれまでも「サクラ大戦」などのタイトルに関わらせていただいてますが、実は自社でパブリッシングしたタイトルはあまり無くて。最近ですと「スカーレッドライダーゼクス」(※)を出していましたが、男性向けのタイトルが意外と無かったので、何か社内で新しいことを立ち上げたいなと思っていました。

※「スカーレッドライダーゼクス」:レッド・エンタテインメントが2010年7月1日にPS2用ソフトとして発売した、女性向け恋愛アドベンチャーゲーム。PSP、PS Vitaへと移植されているほか、2016年7月にはTVアニメも放送された。

レッドはキャラクターやお話、世界観の構築が強みだと思っていますので、ジャンルとしてはアドベンチャーゲームを選択し、どうせなら自分が一番表現しやすいことをテーマにしようと考えました。

僕はレッドで20数年間ゲームを作ってきましたので、その経験を活かしたテーマとして、ゲーム開発会社の若者たちによる青春モノを作ろうと企画しました。舞台を浅草にしているのも、昔レッドが浅草にあったことが背景になっていて、僕個人のノスタルジーもちょっとは込められていますね。

三宅さん:「花やしき」とか、実在の場所が実名で登場していますよね。

森田さん:ゲーム中に登場させたい場所をリストアップしてプロデューサーに交渉してもらい、許可をいただいたところは名前を使わせていただいています。背景を描く上での参考資料も撮らせていただいたりして、実際に行けばそこにゲームと同じ風景があるようにしています。

現代を舞台にしているのもプレイしている人にとって身近なものにしたかったというのと、新世界と呼ばれるゲーム世界と現実を行き来するというシナリオ構成なので、現実の方はなるべくリアルに作りたいという理由からです。両方が虚構になってしまったら面白くないですから、なるべく本物の浅草を再現するように心がけました。

三宅さん:タイトルが“わ”となっているのは…。

森田さん:あれ? 何か間違ってます?

三宅さん:普通、はひふへほの…。あれ、違いましたっけ?

森田さん:すみません、わざと間違えましたー(笑)。

三宅さん:それはどういう意味合いなんですか?

森田さん:それはぜひプレイしてもらって、「え、その程度なの?」というオチを知ってほしいなと。もちろん“わ”であることに意味はあります。

三宅さん:最後の“。”もですか?

森田さん:僕はロゴデザインも担当しているのですが、一文字スペースが空いて寂しかったので、デザインとして“。”を入れてみました。その後、プレスリリースなどでもみなさん丁寧に“。”を入れてくださったので、今のタイトルが正式になりました。もちろん、タイトルが文章であることにも意味がありますので。

三宅さん:私はタイトルを見た時に言い切られていて、言い返す余地もないような感じだなと思いました。キャラクターが尖っているので、そこに意見は求められていないんだなという印象で面白いなと。

森田さん:自分たちで終ってるとわかっていますからね(笑)。ただ、このタイトルを発表する時はドキドキでしたね。自分でつけておいてなんですが、出オチ感満載じゃないですか。面白いタイトルだなと思って出してはいるものの、勇気がいるタイトルではありますからね。

阿智さん:最初に企画書を見せていただいた時はすでにこのタイトルで、プロットにもその理由も触れられていて「なるほどな」と思いました。

三宅さん:企画はいつ頃から立ち上げたのですか?

森田さん:プロジェクトとして始動したのは2016年の4月下旬ですが、その前から頭の中でゲーム開発会社を舞台にしたものはやりたいなと思っていました。この企画を立ち上げてから改めて浅草へ取材しに行ったのですが、僕の頭の中にある20年前の浅草と風景が違うんですよね(笑)。

三宅さん:ジャッジメント7(※)が作るゲームですが、敵にJK(ジャッジメントナイツ)という自分たちの会社の名前を入れてるのは、あるあるだからということでしょうか?

※ジャッジメント7:作中に登場する、「変態」「中二」「残念」「天然」「幼稚」「混沌」「平凡」という、七つの罪を背負ったゲーム開発者集団。彼らを中心に物語は展開していく。

森田さん:多分こいつらがゲームを作ったらナチュラルに入れるだろうなという、ある意味キャラクター目線での名付け方になっています。

三宅さん:“JK事件”という文字を見た時は、最初女子高生かなと思ってクリックしちゃいました(笑)。ゲームの制作は、作中とレッドさんでリンクする部分ってあるんですか?

同席していたプロデューサー・小川智章さん:あります、あります。ゲームの中では何人かのキャラクターが会社にほぼ住み込み状態で働いているんですけど、森田がそうです。

森田さん:それ、言っていいの?(笑) 安心してください、レッドはホワイトな企業です!

三宅さん:シャワー室はあるんですか?

森田さん:今はないんですが、昔はあったんですよ。なのでその頃の雰囲気で描いています。

阿智さん:私がいた頃もシャワー室はなかったのですが、銭湯は近所にありました。

森田さん:銭湯もこのゲームではしょっちゅう行きますね。実際、僕もしょっちゅう行きますが(笑)。

三宅さん:男のキャラたちのお風呂シーンが載っていて「エッー!!」ってビックリしました。

森田さん:ちなみにこのゲーム、女の子たちのお風呂シーンにはCGがないので、これが一番のお色気シーンです(笑)。

三宅さん:ジャッジメント7がそれっぽいタイトルを決めてから内容を考えるというのは…。

森田さん:それは僕の作り方かも。そもそも、企画を考える時はタイトルと世界観、キャラクターがなんとなく同時に出てくる感じなので、今回も同じような流れですね。

三宅さん:シナリオ制作は阿智さんとどのように分担されたのですか?

森田さん:僕が最初に全体のプロットを作成して、それを阿智くんに渡して細かく落とし込んでもらいました。

阿智さん:イベントによっては後に来ることもあって、ストーリー中盤にあたる個別のイベントや夏合宿は最後の最後に書いています。繋ぎ目をどうするのかというのは何も考えてませんでしたが、こちらがお渡ししたピースを上手くまとめていただいているだろうと。

森田さん:ゲーム中の分岐は僕達で付け足していったので、阿智くんが作ってくれたベースを、こちらで膨らませるといった流れになっていますね。

阿智さん:僕が書いたシナリオには分岐が一切ないですね(笑)。

大ボリュームのシナリオや「S.O.S.システム」誕生の経緯とは?

――ちなみに阿智さんはどういった経緯で参加されたのでしょうか?

森田さん:阿智くんは元々レッドのスタッフだったということと、一緒に仕事を何本かやっていたというのがあります。何より、シナリオが物足りないというものをアドベンチャーゲームとして作りたくないということもありました。その上でライトノベル的な展開やキャラクター作りを想定していたので、もう阿智くんしか思いつかなくって、いきなり電話して「一緒にゲーム作ろうよ」と。

阿智さん:それが去年の春頃でしたね。その後、夏頃に一度お伺いしてプロットを渡されたのですが、「多いぞ、これ」と(笑)。

森田さん:レッドのみんなが読みたがらない(笑)。プロットだけでノベル1冊分はありましたからね。

阿智さん:ほかの仕事を全て整理してからじゃないと取り掛かれなかったので、今までやっていたことを全てキレイにさせて、シナリオに取り掛かったのは9月の半ばでした。そこから3月末までほぼ半年、ほぼずっと続けて書き続けました。

三宅さん:これまでもゲームのシナリオには関わられていると思うのですが、アドベンチャーゲームのシナリオはこれまでやられてきたのですか?

阿智さん:以前レッドで担当したタイトルがDSのアドベンチャーゲームだったのですが、その時担当したのはシナリオの半分だったので、ほぼ全てのシナリオを任せてもらえるというのは今回が初めてでした。

三宅さん:ボイス収録のワード数も昨今のアドベンチャーゲームでは録らないボリュームですよね。

森田さん:トータルで2万ワードって、声優さんも結構ビックリしていましたね。

三宅さん:しかもセリフの行数も多いですしね(笑)。

森田さん:PS Vitaって文字がたくさん表示できるんだなと。昔のゲームだと横15文字ぐらいだったのですが、今は30文字出しても読めることが嬉しくなっちゃって。僕の文章はわりと3行フルで使っちゃうので、音響制作会社さんから1ワードが長すぎます、と言われちゃいましたが(笑)。

三宅さん:PS Vitaで出すことには理由はあるのでしょうか?

森田さん:お話にのめり込む上で一番遊びやすいハードだと思ってチョイスしました。

三宅さん:当初は「新世界プロジェクト」という名前で発表されていたと思うのですが、レッドさんの中での新たなプロジェクトということなのでしょうか?

森田さん:これは、レッドの中で立ち上げた時のコードネームになります。このプロジェクトを立ち上げるにあたって、社長と話した際にただ出してもねという意見もあり、発売するまでブログで作っていく過程やその時思っていることを書いていくことになりました。ただその時点ではゲームタイトルを出したくはなかったので、そのためのコードネームとして「新世界プロジェクト」という名前でしばらくは進めていたんです。

森田氏が更新するブログ「企画屋家業(仮)」

三宅さん:(ブログでの森田氏のイラストを見て)絵柄よりも細身というのは珍しいですね。

森田さん:これ、太ってますよね! イラストを見た時にこれ失敬だなと思いましたもん(笑)。

――ブログに関するプレスリリースをご連絡いただいた際、これは一体何なのだろうとすごく印象に残ったのを覚えています。

森田さん:「企画屋家業(仮)」という名称は小川がつけたんですよ。あと、これ読んでも全然ゲームクリエイターを目指す人の勉強にならないです(笑)。

――シナリオにおいて苦戦したポイントはありますか?

森田さん:主人公は零時くんなので、女の子キャラとのラブシーンのような甘いシーンもあるんですが、僕はそういうシチュエーションを書くのが苦手なんですよ。アシスタントの女の子にも「森田さん、これ全然甘くないですよ」「こんなもので満足なんですか?」と愛のムチで叩かれまして、どうしたら甘くなるのかと悩みながら進めていきました。

阿智さん:僕はコンピュータのことがちんぷんかんぷんで、プロットを読みながらそういうものなのかなと思いながら書いていましたので、そのあたりはぶん投げておまかせしました。

森田さん:このゲームで描きたかったのは7人の若者たちのひと夏の青春物語なので、事件は起こりつつもそういった要素を重視していきました。

三宅さん:実際に実体化してほしいキャラクターはいますか?

森田さん:彼らが実体化するとしたら大変ですよね。イルカ2号さんは出てこなくていいと思いますが、僕はメガネをかけた女性が好きなので七罪さんはちょっとひいきしているかもしれないです。

阿智さん:最初プロットを渡された時は、メインヒロインはずっとユウノだと思っていたのですが、実は違っていて。

森田さん:(ジャッジメント7の女の子について)基本はみんなヒロインですね。

三宅さん:そうなんですね。(公式サイト上のキャラクターを見て)この並びだと不思議と世界が主人公に見えちゃいますね(笑)。

森田さん:尾張が代表なので並び順的には真ん中で、零時くんが最近参加したバイトくんでプレイヤーのポジションなので、端っこになっています。

公式サイト内キャラクターページより

三宅さん:「S.O.S.システム」はいつ頃生まれたシステムなのでしょうか?

森田さん:割と最初から決めていましたね。企画当初は「S.O.S.システム」ではなく、「Flowing Selection」みたいな別の名称で呼んでいました。プログラマーさんにもその名称で作ってもらっていたのですが、発表の際に僕が急にこの名前にしてみんなを混乱させたという過去があります。

――「S.O.S.」は「Selection of Soul」の略称だと思いますが、この名称にしたポイントはあるのでしょうか?

森田さん:システムとしては主人公がパニクった時とかに出てくるようにしたかったので、“魂の選択”という意味の言葉をチョイスしました。ただこういうのはこじつけで、「S.O.S.システム」と聞いたら「何そのシステム」と興味を持ってもらうための後付けの理由なので、ジャッジメント7方式の考え方です(笑)。

三宅さん:色彩が仮想のようなリアルのような、不思議なフィルターがかかっていますよね。

森田さん:少しだけ色がずれたような表現も使っています。これはキャラクターデザインの白井鋭利さんのテイストをなるべく背景やゲーム全体に取り入れようということで、背景やイベントCG作画をしてくれたクリープさんが試行錯誤しながら作ってくれたフィルターです。

三宅さん:キャラクターデザインも当初から決められていたのでしょうか?

森田さん:企画を立ち上げた際にいろいろなイラストレーターさんの絵を見させていただき、その中ですごいなと思った白井さんにコンタクトを取らせてもらったという感じです。

三宅さん:服装が独特なキャラクターが多いですが、その中でも世界のシャツには変な文字が書いてありますよね(笑)。

森田さん:最初にデザインを上げていただいた時にはもう少し違う言葉だったんですが、遠目から見ても分かる2文字ぐらいの言葉で表現したくて、ただ変態だからそのまま書くのも弱いなと思って、よく見たら変態と書かれていない“変熊”にしようと。彼がパソコンに貼り付けている青い熊のステッカーも、おでこにHと書いてある、変熊というキャラクターになっています。

小川さん:Tシャツにジャージ、サンダルという姿も森田の普段の格好ですね。今回はよそ行きですが。

森田さん:そりゃね(笑)。

三宅さん:女子高生が実際にアルバイトに来たことはありますか?

森田さん:女子高生はさすがに僕の知っているレッドでは無いなと思います。でも、昔は結構社員の子供が普通に遊びに来ていたので、そういう意味ではこんな環境かもしれませんね。

7人と一緒に“2017年の夏”を体験してほしい

三宅さん:このゲームのターゲットはどの層になってくるのでしょうか?

森田さん:僕の中ではまずは男性ユーザーをターゲットにしていまして、若い人よりは30代ぐらいですね。どうしても今の若い方ってスマートフォンでゲームをプレイされていて、少なくとも僕には太刀打ちできない市場かなと思っていますし。

ではどこで勝負できるかと考えると、お話やキャラクターがしっかり表現できてちゃんとオチまであるもの、終わりがあるものを作るというコンセプトにたどり着いて。そうした点から、まずは30代以降のゲーム機で遊んできた方にプレイしてもらいたいと思っています。

三宅さん:私、「阿智さんだ」「レッドさんだ」と思って、そこからタイトルをチェックしました(笑)。ちなみに見どころのシーンってありますか?

森田さん:もう全部が見どころですね。ストーリー上で各キャラクターがお当番回みたいになっているので、尾張さんだったら変態チックなイベントが起こったり、アサノさんだったら残念な事件が起こったりと、7つのワールドからなるゲームをクリアしていくような感じで進んでいきます。

三宅さん:話数毎に区切られているような感じなのでしょうか?

森田さん:一応話数での区切りは用意されています。ただ各話で独立している「サクラ大戦」方式ではなく、ひとつの長いエピソードの区切りになっています。当番回を用意することで、バラエティ豊かなゲーム世界を作れたんじゃないかなと思います。

阿智さん:ジャンクマやエロリィといった新世界でのイベントで出てくるキャラクターは、書いていて非常に楽しかったですね。このキャラクターを基点として起こるイベントは楽しい感じのものが多いです。

三宅さん:このキャラクターはキャストが大先輩方ばかりだなと。

森田さん:新世界のキャラクターたちは、「サクラ大戦」でご一緒したキャストの方々にお願いしています。ジャッジメント7が考えたキャラクターという設定になっているので、彼らから見ても上の世代の方にお願いしたかったので。でも、贅沢ではありますよね。

ジャンクマ(CV:小桜エツコ) エロリィ(CV:井上喜久子) ニコル(CV:日髙のり子)

阿智さん:僕は全てのシナリオが書き上がった後にキャラクターデザインを見たんですが、敵キャラクターのイメージではないですよね。ジャッジメント7のキャラクターデザインはラフをいただいていたので、それを作業机に貼り付けて作業していたのですが、その後にデザインが変わったキャラクターもいましたね。

シナリオの作業を進める中で、ストーリー中に出てくる浅草の場所を回ってみたんですが、意外と歩ける距離に収まってるんだなと。あと、閉鎖空間となる「ゲーム世界」は限られていてそこを超えた先はないという設定なので、そこの交差点が区切りなのかなと思いつつ、浅草の地下街にも行ってみたりしました。あと洋食屋のシーンを書くにあたって、浅草に実在するヨシカミさんのホームページを見ながら書きました。

森田さん:美味しいですよ、ヨシカミさんは。僕も何回か取材がてら行きましたし、お話の中でキャラクターたちが食べるシーンもあります。老舗の洋食屋さんなので、いつも混んでいますね。

三宅さん:そういうお店に行けるということは、給料の良い会社さんなんですね。

森田さん:その点、お話を読んでいただけると分かると思いますが、そんなに給料の良い表現にはなっていません。ジャッジメント7以外の人にご馳走してもらっていて、零時くんが「一度は来たかった」と感動するシーンもありますね(笑)。

三宅さん:今回のボイス収録数もレッドさんが企画された中では多いのでしょうか?

森田さん:僕が企画した中では一番多いかもしれないですね。今回は最初からフルボイスにしようと決めていたのですが、後半はアフレコが始まってるのにエンディングが書き終わっていないという状況で、昼はアフレコ、夜はシナリオみたいな感じで泣きながら進めていました。めちゃくちゃプレッシャーでしたよ。

三宅さん:ダウンロードコンテンツみたいなものは予定されていますか?

森田さん:ゲームクリアするとおまけが開いたりといった要素は入れていますが、現時点では有料・無料共に予定はしてないんです。できたら良いなと思いつつ、仕組みは入れてありますが。

――阿智さんにお伺いしたいのですが、自身で書かれる小説と企画をベースに書いていくゲームシナリオで作業に違いはありますか?

阿智さん:僕がキャラクターから作っていく仕事に関しては、口調に関しても自分で決めるので、変更も自分の中だけで済むんですけど、最初から作っていただいたキャラクター設定がある場合は、そこからあまり外れてしまったらえらいことになってくるので、最初にサンプルのセリフをくださいとお願いするようにしています。呼称表だけでなくセリフのサンプルを一通り、あとはキャラクターのイラストをとにかく最初にくださいと。

――キャラクターのイメージをいかに把握するかということですね。

阿智さん:キャラクターのイメージから外れないように、というのは一番最初に気をつけますね。3分の1くらい書くとそれで固まるので、意識しなくても進められるようになります。最初は大変ですが、それも楽しさのひとつではあると思います。今作で言えば、少なくともストーリーをどちらに向かせるかを悩む必要はないので、とにかく目の前のプロットをシナリオにしていくという作業に全力投球できました。そうでなければ、この量のシナリオは難しかったと思います。

――それはゲームシナリオならではの役割分担ということですね。

森田さん:僕もプロットと言いつつ後半はセリフしか渡さなかったりしていて(笑)。

阿智さん:森田さんのプロットは、結構長くなりそうなシーンが数行しかなったり、このまま書いてもいいんじゃないかというほどガッツリ渡してくる時もあるので、ストーリーのタイムテーブル表を見ながら照らし合わせていましたね。

――我々みたいなシナリオを書く側でない人間ですと、書いている方の文章のイメージが先に出てくると思うのですが、今回のようなシナリオですと、森田さんのプロットのイメージを反映するほうがより重視されているのですね。

阿智さん:そうですね。

森田さん:でも、いわゆる地の文である零時くんの心の声は、阿智くんのライトノベルのテイストだなと思いました。

阿智さん:森田さんが熱い思い入れがあるシーンはプロットにも表れているのでそこは残しつつ、行動のみが書いてあるシーンは任せてくれていると思って、頑張りましたね。

三宅さん:意図して任せるようなシーンはあったんですか?

森田さん:キャラクターを使ってワキャワキャさせるのは僕がやるより阿智くんがやるほうが良いと思っていました。なので僕は1対1の会話や、キャラクターの内面をえぐるような台詞を厚めに書いたかもしれません。

阿智さん:夏休みのイベントでは、誰と海で過ごすかという選択肢が用意されています。キャラごとにそれなりのボリュームで海で遊ぶシナリオを用意しているのですが、全部作り終わった後で、尾張が一番長かったという(笑)。

森田さん:阿智くん、尾張が好きなのかなって(笑)。

三宅さん:開発内で人気のキャラクターはいるのでしょうか?

森田さん:結構人によってバラけている印象です。

小川さん:流通の受けはユウノがいいですね。

森田さん:あとタチアナも受けがいいですね。

三宅さん:私はイルカ2号さんが気になります。サングラスはとるのかな? 帽子は外すのかな?

森田さん:それもお楽しみ、ということで。みなさんの中でお気に入りを見つけてもらって、ひと夏を過ごしてもらえればと思います。

――最後にインタビューを読まれる方に一言お願いできますでしょうか。

阿智さん:昔レッドに泊まっていた頃はお祭りみたいで楽しかったなというのを思い出しましたし、ゲーム作りってそういうもので良いのかなと。そういうことに憧れつつ、懐かしいと思いつつ、みんなでワイワイする楽しさというのが伝わればいいなと思います。

ギャルゲーというほど女の子を落として、というわけではないのですが、魅力的な女の子たちがワキャワキャするシーンもあるので、そのあたりも楽しみにしていただければと思います。あと需要があるかはわかりませんが、男とワキャワキャするシーンもあるので、そういうのが好きな方もぜひ楽しんでください。個人的にはアサノとの会話劇がすごく楽しくできましたので、そこも注目していただきたいです。

森田さん:ゲームを作る7人のひと夏の青春というテーマで、パッと見タイトルがフザケているのかと思われるかもしれませんが、意外といい話を散りばめていて、僕も自分でプレイしていて若干涙ぐんだりするシーンもありました。ただのおふざけや悪ノリだけではない、骨太なお話になっていると思います。現実の夏は終わってしまいましたが、この7人と一緒に2017年の夏を体験してもらえれば嬉しいです。

三宅麻理恵さんプロフィール

生年月日:1985年6月7日
出身:大阪府
趣味:読書・落語・ゲーム
主な出演作品:「輪るピングドラム」萩野目苹果 役、「銀の匙」御影アキ 役、「緋色の欠片」春日珠紀 役、「アイドルマスターシンデレラガールズ」安部菜々 役

※画面は開発中のものです。

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