どのようにしてPS Vita「Unit 13」は生まれたのか?8ヶ月で完成させた開発エピソードやローカライズの苦労を聞いたインタビューをお届け

インタビュー
0コメント 細山田 亮太

ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンより、2012年3月8日に発売されたPS Vita専用ソフトウェア「Unit 13」について、来日したプロデューサー「ケン稲垣」氏やローカライズチームに開発秘話などのお話を聞くことができたのでお伝えしよう。

PS Vita「Unit13」とは?

「MASSIVE ACTION GAME (MAG)」や、「SOCOM」シリーズでおなじみのZipper Interactiveが、開発を手掛けたサードパーソン・シューター。PlayStation Vita専用に設計されたゲームシステムは短時間でのプレイを競う独自のスコアリングシステムが実装され携帯するゲームの遊びやすさを追求。全40以上ある豊富なルールのミッションを戦うことができる。

ネットワークに繋げば2人での協力プレイを楽しむことができ、条件を満たせば、高難易度の「重要ターゲットミッション」が登場。重要ターゲットミッションは「near(ニア)」を使って送受信することもできる。さらに、ネットワークを介して毎日新しいミッションが配信され、スコアを競い合える「デイリーチャレンジシステム」で、毎日が世界一への挑戦となるのだ!

今回お話を聞けた方々

Sony Computer Entertainment America Senior Staff Producer「ケン 稲垣」氏
Sony Computer Entertainment Worldwide Studios JAPANスタジオ エクスターナルデベロップメント部 アソシエイトプロデューサー「松島 弘」氏

「Unit 13」の制作を担当したプロデューサーのケン稲垣氏(写真右)とローカライズ担当の松島弘氏(写真左)

インタビュー

ケン稲垣氏はこれまで「SOCOM」シリーズや、2012年3月8日に発売となったPS Vita「Unit 13」を始め、Zipper Interactive開発タイトルをプロデュースしてきた。また、同席していただいた松島弘氏は、本作のローカライズ担当として、稲垣氏や開発スタジオと細かいやり取りをして、日本での発売まで導いた人物である。今回のインタビューでは「Unit13」を中心として、開発とローカライズ両方の面から、苦労した話やエピソードなどを聞くことができたので紹介しよう。

――本作の大きな魅力を教えて下さい。

ケン稲垣氏:やはり新しい携帯機「PlayStation Vita」に対応した初のTPSタイトルを発売できたことですね。プレイヤーが思った通りの操作感ももちろん、リーダーボードなどでのスコア競争など、友人とのソーシャルな「つながり」も実現できたことが非常に大きな魅力になっていると思います。

――開発の際に一番苦労した点は?

ケン稲垣氏:とにかく当時は、PS Vita(OSなども含め)も完成していませんでしたし、Zipper Interactive内でもPS3「SOCOM 4:U.S.Navy SEALs」の開発を終えたばかりでしたので、短期間の間にゲームを作り上げていくのは本当に大変でした。

松島氏:2011年5月に「Unit 13」のプロジェクトがスタートしたのですが、2011年12月には日本で先行販売されたこともあり、当時はほとんどPS Vitaについては完成していなかった中での開発となりました。

――ハードが完成していない中、どのように開発を進めていったのですか?

ケン稲垣氏:ゲームの基本は「SOCOM 4」のエンジンを使って、PS3フォーマットで開発を進めていました。そして「アンチャーテッド」シリーズを開発したベンドスタジオのレンダリングエンジンなども一緒に組み上げ、その後PS Vita用にポーティング(移植)しました。

――そのままPS3で発売することは考えなかったのですか?

ケン稲垣氏:基本となった「SOCOM 4」で使っていたAIや操作感は実装していたのですが、「Unit 13」は携帯機で遊べることを前提としていたので、外出先でちょっと遊んだりできる手軽なゲーム性と、PS Vitaならではのマルチタッチスクリーンを使った独特の操作感を生かしたいと思いました。最初から本作は「SOCOM」シリーズの続編というわけではなく、まったく新しいタイトルとしてプロジェクトが動いており「新しい何かができないか?」という検討が重ねられ、単純に対戦ゲームだけではないものを「PS Vita」で開発しようとなりましたね。

――PS3とPS Vitaでは操作系の調整は大変でしたか?

ケン稲垣氏:PS3「DUALSHOCK 3」のボタンの多さを、PS Vitaで自然に操作できるようにデザインするのが大変でした。リロードなど両手を離さず、簡単に操作できるように考えました。とにかくスコアを高めることを一番に考えて設計しており、一般のユーザーを呼んで意見をいただく「フォーカステスト」などでも貴重な話をもらいましたね。

――PSPへの移植などは考えませんでしたか?

ケン稲垣氏:PSPには右のアナログスティックがないこともあり、どうしてもPS Vitaで発売することが必要だと感じました。

――ストーリーを構築する上で苦労した点を教えて下さい。

ケン稲垣氏:ストーリーはテーマというだけで、本作では重視していません。バックグランドとしての世界観など存在はするのですが、それをゲーム内に搭載するわけではなく「Unit13.com」といったWebサイトにすべて掲載しています。

松島氏:大前提で「携帯機で発売する」ことにがあったので、ストーリーをじっくり読みながら、長時間腰を据えてプレイすることが少ないと思われ、短時間でゲームを楽しめるといった要素にフォーカスしています。テーマとしては「テロリストを倒すため」に戦うミッションをたくさん準備しようと考えられていました。

――ゲーム内にリアリティーを入れこみたいと?

ケン稲垣氏:実際のニュースで放送されているような、リアルなテロ活動など、すぐに見てわかりやすいものを入れたいと思っていました。

松島氏:本作は世界中で販売しているので、政治的・宗教的な配慮という所に気をつけて調整しました。「日本でこれはNGでしょ!?」といったアイデアもたくさんありましたね。

――発売までどのくらいやり取りをしたのですか?

松島氏:もう数えきれないくらいです(笑)。自分は日本側でのローカライズなどの担当だったんですが、日本のユーザーはこっちの操作のほうが馴染みがあるので変更してください、みたいなフィードバックをしながら、テストプレイも重ねて、ブラッシュアップをしていきました。

――開発チームは何名くらいですか?

ケン稲垣氏:当初は45人くらいから始めたのですが、最終的な調整やバグチェックなどの段階では90人ほどになりました。

――日本のチームとしては何人くらいでした?

松島氏:ローカライズ担当は私だけでした(笑)先輩にも協力してもらいましたけどね。もちろん、デザインや、音声の吹替え、デバックは専門のチームがいますが、それでも総勢10~20人くらいですね。日本語化したときの文字化けや、そもそもの訳し方の間違いなどのチェックは日本で実施しました。

――開発期間はどのくらいですか?

ケン稲垣氏:8ヶ月です!

松島氏:日本でゲームソフト開発というと、1年や2年は当たり前ですから、すごく短いですよね。

――始めて本作を触った時はどうでしたか?

松島氏:正直「SOCOM」だな、と感じました(笑)。そこからかなりブラッシュアップをしていきましたよ。

――「SOCOM」から「Unit 13」にどのように変わっていったのですか?

ケン稲垣氏:もちろん開発当初から「SOCOM」ではないゲームを作ろうと考えており、携帯機ならではのもの、限られた時間でなにができるか、と色々なアイデアを出し合い、テストなどを重ねていくうちにはっきりと形が作られていきました。また、Zipper Interactiveはシューター系のゲームタイトルに関しては昔からのノウハウもあり、本当に開発のエキスパートが多いのでレベルの高い作品を作れました。

松島氏:ローカライズの立場から見ると、よく短期間でクオリティーの高い作品が作れたな、と驚いていました。

――日本からの要望はどのようなものがありましたか?

松島氏:法人としてちょっとマズイような、表現だったり、細かいキー操作についての要望など、本当に色々ありました。

――日本とアメリカのFPSプレイヤーの違いをどう感じますか?

ケン稲垣氏:「MAG」で実際に遊んでいて驚いたのが、日本のプレイヤーはコミュニケーションをしっかり取り、連携しながらグループとして行動しており、すごく感動しました。自分もさっそく回復役でプレイしてみましたが、すごく楽しく、新鮮なプレイでした。

松島氏:アメリカ人はシングルで突っ込んでいきますよね(笑)。「Unit 13」ではグローバルランキングの上位にはたくさんの日本のプレイヤーがランクインしており、相当強者が多いようです。

ケン稲垣氏:チャットで「なんで日本のプレイヤーはこんなにうまいんだ!?」と聞いたこともありましたね。日本のプレイヤーはしっかりと自分と敵の行動の計算をしながら何度も練習を重ねており、上手にスコアを高めるために頑張っていますよね。

松島氏:「Unit 13」ではただミッションをクリアするだけでなく、ヘッドショットなどで「敵をどのように倒したか」によってもスコアボーナスが変わっていきます。どのタイミングで、どう行動すればいいのか、本当に勉強していますよ。

――現在のランキング上位者はPCのオンラインゲームやSOCOMシリーズを昔からプレイしている人なのですか?

松島氏:現在「プレコミュ」の公式グループの中で、デイリーミッションをプレイしてスコアを書き込んでもらうといった試みをしているのですが、そこに来ている人たちは「特別な昔からのシューター」といったプレイヤーは多くないみたいです。むしろスポーツ感覚でシューターゲームを楽しんでいる印象です。あまりマルチプレイが可能なFPS・TPSタイトルなどはあまりありませんよね。「MAG」のような大人数で対戦できるゲームを作れるのは現時点でZipper Interactiveくらいだと思いますね。

――日本のユーザーからの意見や要望を教えて下さい。

松島氏:一番喜んでいるのが「ダイナミックミッション」です。このミッションは一度クリアするとルールが変わり、何回でも遊べることが魅力です。また、あまり深いコミュニケーションは取らなくてもいいので、ちょっとゆるいつながりが現代で流行しているソーシャル性にもマッチしているのかも知れません。

――開発側の想像を超えるスコアを叩き出す日本のプレイヤーも?

ケン稲垣氏:自分たちは何百回もプレイしているはずなのですが「こんなスコアって出るんだ!?」と驚いていました。

松島氏:パーフェクトを決めて10万点くらい稼いで喜んでいたら、60万点叩き出している人がいて…(笑)。「こんな点数出るんだ?」と本当に驚いていました。

――開発スタジオ社内で対戦会なども実施していますか?

ケン稲垣氏:公式の大会などはありませんが、みんなフレンド登録して遊んでいます。Zipper Interactiveの役員もプレイしており、かなり上手ですよ。

――ランキングの調整について苦労した点を教えて下さい。

ケン稲垣氏:予想以上に反響が大きすぎてデータベースの容量が足りなくなったことがありました。まだまだ遊んでくれる人は増えています。

――今後どのようなゲームを作っていきたいと思っていますか?

ケン稲垣氏:現在計画中で、まだお話できることはありません。

――開発スタジオ内で流行っているゲームなどはありますか?

ケン稲垣氏:ハードの垣根を超えて、いろいろ遊んでいますね。私は「マスエフェクト」シリーズや「SSX」など楽しんでいます。ジャンルもスポーツから対戦格闘など幅広くプレイしますよ。

――他社のFPS・TPSタイトルからアイデアを得ることも?

ケン稲垣氏:はい、あります。やはり「Call of Duty」「Battlefield」シリーズも大ファンです。

――個人的にPC版のFPS・TPSタイトルについてどう思いますか?

ケン稲垣氏:最高のグラフィック=PC版だと思っているので個人的には大好きです。マウス+キーボードの操作方法もゲームにはよりますが好きですね。実は「Unit 13」はMajor League Gamingのサーキットに入っているんです。

――他にギリギリで言える開発エピソードを教えて下さい。

ケン稲垣氏:8ヶ月前は髪の毛が真っ黒だったんですけど…(笑)。新しいプラットフォームでローンチとして発売するのは本当に大変です。

松島氏:発売前のPS Vitaのアップデートでゲームが動かなくなったり…(笑)。短期間でゲームを作っていたこともあり、仕様書をください、といってもすぐに仕様が変わってしまうので、ほとんどもらえませんでしたね。

――次回作を作るとしたらどのくらいの期間が欲しいですか?

ケン稲垣氏:いくらでも欲しいですよ(笑)。

松島氏:企業の社員として、決まられた期間と人数と予算で「ゲームを作りなさい」という業務命令がありましたが、稲垣さんが所属するフォスターシティスタジオやZipper Interactiveと一緒に仕事をした時に、同じグループ内とは言え、別のスタジオが他のタイトルで培ったノウハウをしっかり生かす体制ができていることはスゴイと感じました。

ケン稲垣氏:ものすごいチャレンジでした。スタジオ内では、ゲームに関してはストイックな人が多く、職人であり、アーティストですよ。

松島氏:与えられた仕事をただこなすだけではなくて「自分たちはこんな作品を作りたいんだ!」といった意気込みを強く感じました。

――ちなみに「Unit 13」の命名について教えて下さい。

ケン稲垣氏:タロットカード13番目の「死」をなぞらえて、テロリストに死を与える存在として命名しました。

松島氏:全世界で発売するゲームタイトルについては、なるべく名前を統一するのがベストだと思うんですが、実は「Unit 13」になる前の名前は「Direct Action(ダイレクトアクション)」でした。

ケン稲垣氏:「Direct Action」とは実際の軍隊が用いる言葉なんですが、ゲームタイトルにした場合、どうしてもしっくりこなくて…。かなりの数の候補が上がっていましたね。また、商標や法律の問題で使用できるかどうかも課題となっていました。

――やはりコミュニティーサイトはしっかりと持っておきたかったですか?

ケン稲垣氏:「MAG」や「SOCOM」でもそうですが、Zipper Interactiveとして、デベロッパーが直接プレイヤーとつながりを持つことが大事だと思っています。「ゲーム+Web」で完成していくのが自分たちのゲームです。プレイヤーの声を直接聞けるのは珍しいですよね。

――稲垣氏オススメの遊び方を教えて下さい。

ケン稲垣氏:まずはPSNのフレンドをたくさん集めて、お互いチャレンジをしながら熱い戦いを繰り広げるのが一番楽しいですね。また、リーダーボードの上位を狙って頑張ってもらえれば嬉しいです。最初、日本のプレイヤーはあまりシューター系のゲームは好きではないと思っていたのですが、「MAG」や「Unit 13」で一緒に遊ぶようになって、本当に情熱的で楽しく遊んでいるのを見て嬉しくなりましたね。

――続編の予定などは?

ケン稲垣氏:現在計画中です。

――タイトルをまたいだコラボレーションなどは?

ケン稲垣氏:そのような話が上がるときもありますが、タイトルの世界観などに合っていればぜひ実現したいですね。

――ありがとうございました。

※画面は開発中のものです。

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