カプコンがPS5/Xbox Series X|S/PC(Steam)で2026年4月17日、Nintendo Switch 2で同年4月24に発売する、SFとパズル、そしてTPSが融合した完全新規IP「プラグマタ」のフルレビューをお届けする。
以前、先行プレイ体験に基づくプレビュー記事をお届けしたが、今回はついに製品版を隅々までプレイした上でのフルレビューとなる。
本作は、月面を舞台にしたハードSFでありながら、パズルを解き明かす思考力と、TPSとしてのエイム力や立ち回りの両方が要求される、非常に挑戦的な意欲作だ。
筆者はアクションゲームの腕前にそこまでの自信がないため、今回は難易度を下げてプレイに臨んだが、それでも幾度となくゲームオーバー画面を拝むことになった。いわゆる死に戻りのゲームである。

しかし、本作にはその「死」のストレスを凌駕して余りあるほどの魅力が詰まっていた。1周約10時間という凝縮された体験の中に隠された、驚きのレベルデザインと、心揺さぶる人間とアンドロイドのドラマ。
周回プレイを前提とした本作の底知れぬ魅力について、記したい。
思考と反射神経の融合。死に戻り前提のシビアで美しいゲームデザイン
「プラグマタ」のゲームジャンルをひとことで言い表すなら、「トライ&エラー型SFパズルシューター」となるだろう。
主人公は月面施設の調査に派遣されたシステム監査員のヒュー・ウィリアムズ。
近未来、人類が月の鉱石ルナムを発見してから数十年後、ルナムから精製されたルナフィラメントは物体情報をコピーすることで形状だけでなく、性質や機能までもが再現できる夢の素材として月面にて研究が進められていた。
だが、ある日、ルナフィラメント研究を担う月施設との連絡が途絶えてしまう。そこでヒューを含む調査チームが月に派遣されたが、チームは巨大な月震(地震のようなもの)に巻き込まれて遭難してしまう。
ひとり残ったヒューを操り、迫り来る未知の脅威を様々な銃器で退けながら、月面基地の各エリアに仕掛けられたパズル的ギミックを解いて先へ進むのが基本のサイクルだ。

先行レビューでも触れたが、本作は決して「敵を撃ちまくって爽快に突き進む」タイプのTPSではない。
敵の配置、武器のリソース管理、そしてギミックを作動させるタイミング。これらがパズルのように精密に組み合わさっており、少しでも手順を間違えれば即座に死に直結する。
筆者は今回、物語をスムーズに楽しむために難易度を一段階下げ、Casualモードでプレイした。しかし、それでも本作の牙は鋭かった。ワンミスが命取りになるシビアなバランス調整は健在であり、幾度となくゲームオーバー画面を拝み、死に戻りを繰り返すことになった。

だが、この死に戻りが苦痛にならないのが本作の秀逸な点だ。
リトライのロード時間は極めて短く(これは筆者がPS5 Proを使用しているためもあるかもしれないが)、そして死んだ直後の「次はこう立ち回ろう」という解法への気づきが、プレイヤーを即座に次のプレイへと駆り立てる。
パズルのピースがカチリとはまり、強敵をスタイリッシュに撃破してエリアを突破できた時のアドレナリンの分泌量は、近年のゲームの中でもトップクラスである。

アクションに自信がないため、今回は物語をスムーズに追うべく難易度を一段階下げたことは前述の通りだが、本作はそれでも決してストーリーだけをなぞる接待プレイを許してはくれなかった。
序盤から、ハッキング時のパズルを解きつつ同時に2体、3体、4体と故障したロボットたちが押し寄せてくるエリアでは、数回死に戻りを繰り返すハメになった。
パズルの手順に気を取られれば背後から強烈な一撃を浴び(なんと一撃でヒューのHPが半分近く削られるような強力な雑魚もいる)、四方八方を囲まれる絶望的な状況に、思わずコントローラーを握ったまま天を仰いだことも一度や二度ではない。
しかも強敵ほどハッキング時のパズルが難しいと来たものだから、たまったものではない。

しかし、本作の真髄はここからだ。
爆速のロード時間でリトライを繰り返すうち、不思議なことにストレスや絶望感は消え去っていく。代わりに頭をよぎるのは、「あの敵は後回しにして、先にハッキング時のパズルが簡単な弱い敵から処理していこう」、「この場面こそ広範囲に攻撃できる武器で、できるだけまとめて迎撃できるのでは」という極めてロジカルな思考である。

死を重ねていくことによって敵の出現位置がわかるようになることもあり、リソース管理の最適解が見えてくる。画面の前の自分自身のプレイヤースキルが、死の度に確実に上がっているのを肌で感じるのだ。ゲーム内のキャラクターのステータスではなく、プレイヤー自身の思考と反射神経がレベルアップしていく。
特にハッキング時のパズルは「特定のマスを通れば敵へのダメージが上がる」など、通ったマスによって様々な効果があるのだが、慣れれば慣れるほどパズルをさっと横目に舐めるだけで自然と指が「現状自分が取れる最適なルート」を弾き出して動いてくれるようになる。

何回も死んだ難所を凄まじい速さのハッキング処理で攻略し、あと一撃受けたら死ぬというようなギリギリ感で突破できた瞬間の脳汁が溢れ出すような快感は、まさにアクションゲームの醍醐味そのものであった。
月面に作られた箱庭。NYから深い森まで、飽きさせないステージ環境
本作の舞台は、荒涼とした「月」である。


しかし、ゲームプレイ中に視覚的な単調さを感じることは一切なかった。なぜなら、広大な月面基地の内部には、地球環境を模した多種多様なドーム(ステージ)が構築されているからだ。
特に度肝を抜かれたのが、基地の中枢部に広がるニューヨークを模した都市部のようなステージだ。
巨大なドーム状の空間に、摩天楼やネオンサイン、アスファルトの道路が再現されている。ホログラムの看板が、ノイズ混じりに明滅する。地球の繁栄とSF世界が見事に融合したビジュアルは、ただ歩いているだけでもため息が出るほど美しい。


だが、美しいばかりではもちろんない。ショーウィンドウに立ち並ぶ無機質なマネキンの中に、完全に擬態した敵が紛れ込んでいるのだ。美しい街並みに見惚れる隙を突くようなこの悪魔的な配置には、角を曲がるたびに銃を構え、心臓をバクバクさせながら進むという極上のスリルを味わわされた。

さらに物語を進めると、今度は鬱蒼とした森のステージが登場する。このエリアは、木々のざわめきや木漏れ日が心地よく、息の詰まるような死闘の中での素晴らしい清涼剤として機能していた。


鬱蒼とした心地よい木々を抜け、視界が開けた瞬間に目に飛び込んできた夕焼けの海の美しさは、今でも筆者の脳裏に鮮烈に焼き付いている。
月面の施設内に作られた偽りの海と夕日だと頭では分かっていても、波音を聞き、オレンジ色に染まる水面を見つめながらディアナがふと見せたのは無邪気で、しかしどこか切なげな横顔。
死に戻りの連続でささくれ立っていた心が、彼女と肩を並べて見たこの絶景によって一気に浄化されていくのを感じた。過酷な世界だからこそ、こうした静謐で美しい瞬間がプレイヤーの胸を強く打つ。



都市部や森といった地球環境を模したステージの構築が見事である一方で、本作は「ここが月面である」という冷酷な事実をプレイヤーに決して忘れさせない。華やかなドームの区画のあちこちに、無機質な研究所的な場所が混ざっている。
この、命溢れる地球の幻影と死の匂いが漂う月面の強烈なコントラストが定期的に挿入されることで、ヒューとディアナの過酷な旅路のヒリヒリとした緊張感が途切れることなく持続するのだ。

無機質な世界で育まれる温かな絆。無邪気なアンドロイドの少女ディアナ
パズル要素やTPSとしての完成度の高さもさることながら、本作の最大の牽引力は、主人公のヒューと相棒のアンドロイド(プラグマタ)であるディアナが織りなすストーリーにある。
ディアナは、人間で言うところの8~9歳程度の少女の姿をしたアンドロイドだ。過酷な月面世界には不釣り合いなほど無邪気で子供らしく、恐ろしいほどに愛らしい。

ヒューの背中をちょこちょこと付いて歩く姿、プレイヤーの拠点となるシェルターで見せる屈託のない笑顔、危機が迫った時にヒューの宇宙服にぎゅっとしがみつく仕草。最新鋭のグラフィックで描かれる彼女の挙動一つひとつが、プレイヤーの庇護欲を激しく掻き立てる。

そして何より、ディアナに命を吹き込む声優・東山奈央さんの演技が素晴らしい。その無垢で愛らしい声と反応は、死に戻りの連続でささくれ立ったプレイヤーの心を、常に優しく癒してくれる至高のオアシスとして機能している。
東山さんが息を吹き込むディアナの可愛さは、文字通り本作における最大の「救い」だ。
とりわけ、彼女が主人公を見上げて「ヒュー!」と無邪気に名前を呼びかけてくる時の愛らしい声は、殺伐とした死に戻りのループで疲弊したプレイヤーの脳を瞬時に癒すほどの破壊力を持っている。
さらに最新鋭のグラフィックで描かれる細やかな仕草も秀逸だ。シェルターなどで彼女が不思議そうに小首をかしげる動作を見せるのだが、そのあまりの可愛らしさに思わずコントローラーを握る手が止まり、キュンと胸を射抜かれてしまうのは筆者だけではないはずだ。

ディアナのこの圧倒的な愛らしさは、画面の前のプレイヤーだけでなく、ヒューの強張った心をも確実に溶かしていく。
ヒューは根こそ優しいものの、基本的には「任務の達成と地球に帰ること」が目的で、「子供の面倒が苦手」とも口にしている。そのためディアナにも最初は割とドライな接し方をする。
しかし、死と隣り合わせの月面基地を共に探索し、幾度となく互いの命を救い合う中で、ヒューの態度は少しずつ、確実に変化していく。ヒューがディアナへ少しずつ心を開いていく不器用な姿には、プレイヤー自身のディアナへの愛着も完全にシンクロし、胸を熱くさせずにはいられない。

その心情の変化が最も美しく描かれているのは、ディアナがヒューに絵を描いてプレゼントするシーンである。
当初のヒューであれば、任務に無関係なものとして無下に扱っていたかもしれない。だが、彼はその子供らしい不器用で温かい絵を、照れもありつつ嬉しそうに、大切そうに受け取るのである。

「子供の面倒は苦手」と語っていたひとりだけ生き残った孤独な男が、いつの間にかディアナのいる月面生活にすっかり慣れ親しみ、父親のような柔らかな感情を覗かせ始める。ヒューとディアナの間に家族にも似た確かな絆が結ばれたのを感じ、筆者は思わず目頭を熱くしてしまった。この二人の関係性の変化を見守るだけでも、本作をプレイする価値は十分にあると断言できる。

一周10時間に濃縮された極上のシナリオ
本作のプレイ時間は、クリアまでおよそ10時間程度。大作アクションゲームとしては比較的コンパクトに感じるかもしれないが、これこそがカプコンの真骨頂である。
ストーリーの導入自体はシンプルに見えるかもしれない。しかし、その根底には非常に精緻に練り込まれた世界観と謎が横たわっており、プレイを進めるごとに驚くべき真実が次々と明かされていく。
ネタバレになるため多くは語れないが、この短くともプレイヤーの心に強烈な爪痕を残す、満足度の高いストーリーづくりは、同じカプコンの「デビル メイ クライ」シリーズや「バイオハザード」シリーズにも通じる黄金の系譜だ。無駄な引き伸ばしを一切排除し、極限まで濃縮されたドラマ体験がここにある。
例えば、永遠にふたりきりと思えた月面世界の途中で、ふたりはエイトというもうひとりのプラグマタと出会う。月のAIシステムの暴走によって囚われの身になったエイトを助け出すことは、当面の目標のひとつとなる。
このように常に目的がはっきりしており、それに沿ったストーリーがテンポ良く進んでいくのは、遊びやすさのハードルを下げていると言っていいだろう。

さらに言えば、「プラグマタ」は周回プレイを前提としたゲームとして設計されている。
1周10時間という長さは、死に戻りで疲弊したプレイヤーの集中力が途切れないジャストなボリューム感で、一切の中だるみなくエンディングまで一気に駆け抜けさせるための最適解である。
1周目でディアナとの絆を深め、シナリオの深淵に触れたプレイヤーは、「もう一度、最初から二人の旅を見届けたい」、「次はもっと上手く立ち回ってクリアしたい」という強い欲求に駆られるはずだ。
周回するたびにプレイヤー自身の最適解がアップデートされ、物語の解像度が上がっていくこの感覚は、本作ならではの醍醐味である。

本作の終盤で何が起こるのか、ヒューとディアナの月面の旅の果てにどのようなエンディングが待ち受けているかについて、ここで具体的な言及をすることは一切控えたい。これは絶対に、プレイヤー自身の手と目で確かめるべき体験だからだ。
ただ一つだけ断言できるのは、スタッフロールを見つめながら筆者の胸を満たしていたのが、心地よい疲労感と深い達成感であったということだ。
絶望的な敵の群れや行く手を阻んでくるボス、複雑なパズルを、自分自身のプレイヤースキルの向上と試行錯誤によって突破してきた。その苦労のすべてが、結末で描かれる鮮烈な展開によって完璧に報われるのである。


クリアした直後、深い余韻に浸りながらも、「もう一度最初から、今度はもっとスマートに戦いたい」「1周目ではチャレンジできなかった難所に挑んでみたい」と、すぐさま2周目のプレイへと駆り立てられる。
プレイヤーの心理を完全に掌握し、周回することで真の完成を見るこの絶妙なゲームデザインとシナリオの構成力には、ただただ感服するほかない。カプコンが長年培ってきたアクションゲームのノウハウと、練り込まれたストーリーテリングの技術が、この10時間に濃縮されているのだ。

カプコンが示した、新規IPの輝かしい金字塔
パズルとTPSの高度な融合、息を呑む月面の絶景、そして何よりヒューとディアナの間に芽生えるエモーショナルな絆と、カプコンらしい濃密で計算し尽くされたシナリオ設計。「プラグマタ」は、満を持して放たれた新規IPとして、その期待に120%応える傑作である。
UIも基本的に拠点となるシェルターで色んな機能を順次拡張させていく、というシンプルな設計で、難しいことは何もない。シェルターで作成した武器や習得したアビリティを装備したら、いざ目的のために出発だ。

難易度は決して低くない。「Casualにしてもこんなに死ぬんだ!?」と驚いたくらいには死んだ。難易度Standardならばなお一層心が折れそうになる瞬間もあるだろう。しかし、その先には必ずディアナの笑顔という最高の報酬が待っている。
ぜひこの歯ごたえのあるSFパズルシューターに身を投じ、月面で待つ孤独な男と無垢な少女型アンドロイドが紡ぐ”バディストーリー”を見届けてほしい。

(C)CAPCOM
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