フリューのゲームレーベル「Studio Lalala」が本日9月4日にリリースしたNintendo Switch/PC(Steam)向けタイトル「けものティータイム」。同作の先行プレイを通して感じられたのは、本作が纏う優しさだった。

「けものティータイム」は、“言葉とリズムで、あなたの人生に「ラララ」をお届けします。”を掲げるフリューのゲームレーベル「Studio Lalala」が贈り出す、喫茶店を舞台に繰り広げられるアドベンチャーゲームだ。喫茶店を舞台、といっても本作の世界観は独特なものとなっていて、主人公のタルト(CV:小岩井ことり)以外のキャラクターはみなケモミミを携えている。そんな愛らしいケモミミたちと繰り広げる、KAWAII物語を体験できる作品となっている。
本作では、フリューで「CRYSTAR -クライスタ-」「クライマキナ/CRYMACHINA」などの作品を手掛け、本作では企画・共同プロデュース・ディレクション・シナリオを担当する林風肖氏、同じくプロデュースとして携わる一方で、タルト役としても参加する声優の小岩井ことりさん、そして「ソフィーのアトリエ」などで知られ、本作ではキービジュアル/キャラクターデザインを手がけるイラストレーターのNOCO氏らが参加している。

雰囲気からは可愛らしい部分がフィーチャーされた本作ではあるが、どのような特徴を持った作品なのか、という点においては概要だけでは見えてこない部分も多い。序盤のプレイを通して、魅力の一端を体験することができたので、紹介していこう。

なお、本作では作品の魅力に言及する上で一部ゲーム内で判明する要素についても触れている。ゲームの体験そのものを損なうようなところまでは踏み込んでいないが、新鮮に楽しみたいという人は読み進める前に注意してほしい。
時代の流れに逆らうかのように、喫茶店でのゆったりとした時間を味わう
タルトとマカロン(CV:和多田美咲)の姉妹が出店する喫茶店は、タルトが淹れるブレンドティーと、マカロンが作る美味しいお菓子を提供するというコンセプトで営業している。ゲームサイクルとしては、毎朝用意するお菓子を決めた後、営業時間内にやってくる客に対してそれぞれの気分や要望に合わせたブレンドティーを提供するという、至ってシンプルな流れとなっている。

提供するブレンドティーの茶葉やハーブは数多く用意されており、ゲーム開始時点では一部ではあるものの、ひょんなことから居候することになる行商人のキッシュ(CV:木花藍)から一日の終わりに茶葉やハーブをもらうことができる。ゲームが進むにつれて客のオーダーも幅広くなってくるため、充実させることがゲームの目的の一つになってくる。



もちろん、お菓子に関してもさまざまな種類が用意されており、これらは農家を営むクロテッド(CV:桐谷蝶々)とジャム(CV:平山笑美)の姉妹から食材を仕入れることで拡張されていく。その際、タブレットと呼ばれる本作における通貨(のようなもの)を消費することになるのだが、これは客にブレンドティーとお菓子を提供することによって入手できるため、基本的には流れに沿って作れるお菓子も増えていく。



そうして客のオーダーに応えたり、その後に繰り広げられる会話によって好感度が変化する。現時点でクリアまではプレイできていないもの、キャラクターの好感度の高さによってエンディングなどが分岐するであろうことは想像に難くない。


とはいえ、そういうことに目を向けなければ、喫茶店で過ごす時間はとにかく緩やかに進んでいく。一日を過ごす中でやってくる客の人となりを知り、そして交流を深めていくという、現代の忙しない日々とは対極とも言える穏やかな時間は、まさに本作が持つ独自の空気感と言えるだろう。

実はディストピアな世界を背景とした物語
しかしながら、本作のキャラクターたちはみなケモミミであり、そこには何らかの意味がある。その背景はプレイを進める中で徐々に明らかになっていくのだが、予め認識しておいても差し支えないと思われるのが、登場人物たちはかつてタルトと同じ人間であったということだ。
なんと、本作の世界ではパンデミックによって人々がケモミミ化してしまっているという。これ自体が大きなネタバレのように感じられるかもしれないが、実はこの要素は比較的導入で明かされるもので、本質的なネタバレにはなっていない。

そうして明らかになった要素の数々は「MATERIAL」のメニューから用語集のようなかたちで確認することができる。作品自体の構成が会話劇になっているため、落ち着いて整理したい場合などに活用するといいだろう。

ゲーム序盤において、店にやってくる客の中でフィーチャーされるのがマシュ(CV:石見舞菜香)とギモーヴ(CV:杉田智和)。マシュは不思議な雰囲気を醸し出すお嬢様で、どうやら自分たちがケモミミ化したことを忘れている様子。また、ギモーヴという名の恋人がいたものの、作中に登場するギモーヴとは別人だというが……。


これ以上は実際のゲーム体験を損なうことになるので言及は控えるが、マシュとギモーヴのエピソードはまさに本作が持つ物語の魅力を内包するものとなっていた。そうした出来事に触れたタルトたちが何を思うのか、そしてなぜ喫茶店を開くのか、という点は現時点でのプレイ内容でも非常に気になるものだった。
こうした世界の背景もあって、起こる出来事は決して明るいものばかりではない。それでも、登場人物たちの背景や心情はどれも優しさに満ちあふれていて、だからこそ切なくなる部分もあった。恐らくこの感覚はプレイしなければ分からないものなので、体験版からでもぜひ楽しんでほしいと思う。

“音”へのこだわりによって纏う優しさ
本作のプロデュースに関わる小岩井さんは、ASMR作品レーベル「kotoneiro」のプロデュースも行っており、本作でも音にまつわる部分で大きな役割を果たしている。
作中ではボイスが収録されているものの、いわゆるフルボイスでは無く、会話部分はすべてテキストのみで進行していく。ではどういった部分でボイスが活用されているのかというと、いわゆる擬音の部分がボイスによって表現されているのだ。
本作で収録された擬音は大きく二つあり、一つはキャラクターの心情を表すものとなっている。掛け合いの中で表現されたそれらの擬音がキャラクターの魅力を引き出すことで、彼らがより身近な存在として感じられる。

また、紅茶をブレンドする瞬間は一つ一つの所作で生じる音をあえてボイスによって表現している。これはまさにASMRを活かしたアプローチであり、ヘッドフォンでプレイするとブレンドの工程を一段と味わえるものとなっている。

こうしたいわゆるSE(効果音)的なアプローチとともに、ゲームプレイを通して流れるチルアウトなBGMも本作の優しい雰囲気を表現している。これら音の要素はゲーム体験として欠かせないものになっているため、音の環境も大事にプレイしてみてはいかがだろうか。
クリエイターのネームバリューに隠された、インディースピリッツのある作品に
今回は全体的にコンセプチュアルな部分にフォーカスして紹介していったが、可愛らしく表現されたピクセルアートやGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)などの要素も含めてまとまりの良い作品になっているとともに、その中でもゲーム体験としての核が分かりやすい、非常にインディーライクな作品になっている印象を受けた。

もちろんネームバリューが先行すること自体は認知の上では良いことではあるのだが、あえてそこを気にせずプレイすることで色眼鏡なく作品の魅力を感じてもらいたいと思える一作だ。
ちなみに、一日の終わりにはタルトとして新聞を読んだり、ラジオを聴いたりといったひとり時間を過ごすことができる。もちろん作中世界のさまざまな情報を知ることのできる要素ではあるのだが、同時に本作が持つ空気感を体現したワンシーンであるとも感じられ、個人的に好きな瞬間の一つとなった。そんな瞬間をぜひ味わってほしいと思いつつ、本稿を締めくくる。

(C) FURYU Corporation.
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