4月23日にシーズン16を迎える「オーバーウォッチ 2」。新シーズンで実装される新モード“スタジアム”について、ゲームディレクターを務めるAaron Keller氏とゲームデザイナーを務めるDylan Snyder氏、そしてレベルデザイナーを務めるRyan Smith氏にインタビューを実施した。

Aaron Keller氏
Aaron Keller氏

――スタジアムの反響はいかがでしょうか?

Keller:やはりプレイヤーは新しいゲームモードに対する期待値が高いですが、先行で実施したクローズドアルファでプレイしてもらった際は全体的にポジティブな感想が多く安心しました。

とくにリアクションが大きかったのは、各ヒーローのビルドに対する作り込みに対する評価です。ビルドの選択肢を多く用意したことで、戦略性も広く、ユニークなビルドも作れるという反響がありました。

「オーバーウォッチ 2」ビルド構築が奥深い新モードの“スタジアム”について開発陣にインタビューの画像

――スタジアムを企画した背景を教えて下さい。

Keller:この企画は約2年半ほど前に思い付きました。具体的には「オーバーウォッチ 2」ローンチ直前から温めてきたアイデアです。

本格的に開発がスタートしたのは約1年前で、試行錯誤を重ねてさまざまなバージョンを作りましたが、現在のスタジアムのような“ヒーローのカスタマイズして新しい遊び方を追求する”スタンスは当初から変わらずに、ここまで進めてきました。

新しいゲームモードによる大きなヒットが欲しかったのと同時に、プレイヤーたちが「オーバーウォッチの弱点」と感じる部分に対する答えとなるモードにするというのが、この企画の背景としてあります。また、クイックプレイとは異なる自立したゲームモードを作りたい意図もあります。

――スタジアムで勝利に近付くポイントはどこになると思いますか?

Keller:勝利のカギはヒーローのアップグレードを正しく選択することです。スタジアムは、ヒーローのアビリティやマップの形など既存の「オーバーウォッチ」の戦略や知識が活きる一方で、スタジアム独自のアップグレードを購入で戦況が変化していきます。

ヒーローの長所を活かすほか、チームメートがどういうアップグレードを選択していくか。または敵のアップグレードに対するカウンターを選択するなど、臨機応変なアップグレード選択が勝利に繋がる一歩でしょう。

「オーバーウォッチ 2」ビルド構築が奥深い新モードの“スタジアム”について開発陣にインタビューの画像

――現在「オーバーウォッチ 2」には複数のゲームモードが存在していますが、プレイヤー数が分散される可能性についてはどう考えていますか?

Keller:実際にどうなるかはローンチしてからですが、開発陣もどのような変化があるか興味があります。

スタジアムは「オーバーウォッチ 2」らしいプレイ感覚がありつつも、アビリティが変化していく体験が楽しめるので、「オーバーウォッチ 2」未プレイの方や昔遊んでいたプレイヤーが戻ってくるきっかけになれば嬉しいですね。

プレイヤーの分散については新しいゲームモードなので、ローンチ時はスタジアムに大人数が集まると思います。ですが、それをきっかけにスタンダードモードに興味を持って、派生していったらいいなと。スタジアムがスタンダードと共存する3つ目のゲームモードとして自立してくれるのが私たちの望みです。

――新規プレイヤーには既存モードをしっかりプレイしてからスタジアムをプレイして欲しいのでしょうか。それとも最初からスタジアムを体験して欲しいのでしょうか。

Keller:新規プレイヤーでも最初からスタジアムを楽しめます。ヒーローシューターはヒーロー数が多く、複数のアビリティを使えるためプレイを始めるハードルが高い宿命のジャンルです。

ですが、今回のスタジアムローンチ時には使えるヒーローの数を17体に絞っていますので、現在実装している全47人のヒーローの特徴を覚える必要がなく、初心者向けにハードルを低めに設定しています。

また、アップグレードの選択に迷わないようテンプレートビルド(スターター・ビルド)も2種類用意しています。このビルドを基本に自分のビルドを構築していってもらい、最終的にマッチごとに合わせたオリジナルのカスタマイズができるまで至ってほしいです。

「オーバーウォッチ 2」ビルド構築が奥深い新モードの“スタジアム”について開発陣にインタビューの画像

――スタジアムがメインモードになる可能性はありますか?

Keller:開発陣としてはスタジアムが人気コンテンツになって欲しいと願っています。その上で、メインモードになるかどうかはそれこそスタンダードモード以上の爆発的な人気が必要でしょう。

スタジアムの開発に注力こそしていますが、新ヒーローの実装やマップの制作、パークシステムの改善やバランス調整など、スタンダードモードへのサポートやリソース投入の継続は変わらずしてくことは強調しておきたい部分です。

――なぜスタジアムではヒーローを変更できないのでしょうか。また、仕様変更される可能性もあるのでしょうか。

Keller:スタジアムにおけるヒーロー変更不可については、ビルド構築を楽しんでもらいたいからが第一の理由です。

スタンダードモードではヒーローを変更することで相手の戦略を崩すカウンターとして機能していますが、スタジアムではビルド構築によってそのカウンター要素を担って欲しい狙いがあります。例えば、ゲンジがビームを反射できるようになるアップグレードで相手に対処するといった要素が各キャラに用意されています。

しかし、このアップグレードを取得した後にヒーローを変更されてしまうと無意味になってしまう。そのためヒーロー変更を取り入れてしまうとスタジアムならではの遊びであるビルドの戦略性が薄れてしまうことを懸念しました。

一方で、「オーバーウォッチ 2」のゲーム性からヒーロー変更は重要な要素であり、プレイヤーの多くからスタジアムでも取り入れて欲しい声があることは把握しています。まずは現在のルールでスタジアムはローンチしますが、皆さんからのフィードバック次第では導入を検討する可能性があります。

ただし、単純なヒーロー変更を導入するのではなく、カウンターアイテムの追加や制限付きでヒーロー変更を可能にしたりと、スタジアムなりの変更システムを提案するつもりです。

Dylan Snyder氏
Dylan Snyder氏
Ryan Smith氏
Ryan Smith氏

――スタジアム発表時からこれまでに寄せられたフィードバックを経て、変更したものがあれば教えてください。

Snyder:やはり注目度が一番高かったのは三人称視点です。スタンダードモードと大きく異なるスタジアム独自の要素であり、クローズドアルファで多くのフィードバックをいただきました。さまざまな意見を受け、プレイヤーが期待する自然なプレイフィールの実現に近づくために、細かく調整を行いました。

――三人称視点を導入した経緯を教えてください。

Snyder:ラインハルトが盾を構えた際やジャンクラットのRIPタイヤ使用時など、状況を把握目的で三人称視点になる瞬間がありました。スタジアムでは、ヒーローがアップグレードでより強力なアビリティを使うことになるため、状況把握の重要性を優先した結果が常時三人称視点の導入でした。

Smith:特にタンクは、三人称視点になることでプレイフィールが向上するヒーローも存在します。視野が広がったことでこれまで以上に対応できる箇所が増える感覚は大きな利点ですし、拡大していくアビリティの内容に順応しやすくなるだろうとの判断です。

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――スタジアムではプッシュやコントロールといった既存モードのマップも使用されますが、スタジアム用の調整がされているのでしょうか?

Smith:既存マップはスタジアム用に調整されています。これはスタジアムはゲーム数が多いので、1試合のテンポを上げるために全体的にマップを小さくしたり、ラウンド数を減少、リスポーン地点をより近くに変更など、さまざまな調整を加えました。


――どのようにスタジアムにヒーローを追加していくのでしょうか。また、実装が難しいヒーローはいるのでしょうか?

Snyder:次に追加するヒーローは現時点で教えられません。ですが、目標としてはシーズンごとに最低3体ずつ追加していくつもりです。

実装が難しいヒーローについては、マーシーが挙げられます。これは技術的な問題というよりは彼女のヒーラーとして特化しているデザインが困難にしている部分です。

明確なアビリティを持っているマーシーをビルドでどう広げていくのか、どういった選択肢を用意できるのかなど、役割を拡大させるののはデザイナーとして大きな挑戦ですし、同時に楽しくもあります。

――パークシステムとスタジアムのコンセプトの違いを教えてください。

Snyder:パークシステムは、ゲームプレイを中断させないことに重きを置いています。これまでの「オーバーウォッチ 2」のスタイルを崩さずに、プレイヤーに新しい選択肢を提供したかった狙いが強いのです。

一方でスタジアムは、試合で得た経験や情報から時間をかけてビルドを構築していく部分をフォーカスしているので、実はまったく異なる狙いが各システムにはあります。「オーバーウォッチ 2」はゲーム全体のテンポが非常に速いため、プレイヤーが落ち着いて考える時間を作り出したかったのです。そういった試合と強化フェーズによる緩急を作り出すことが重要だと考えました。

――スタジアムの専用通貨やアビリティ強化システムなど、新システムのどこに苦労されましたか?

Snyder:通貨の獲得は、まずはプレイヤーの活躍に対してしっかり反映されるように試行錯誤を重ねました。そのうえで上手なプレイヤーが通貨を稼げると同時に、チーム内で獲得量に差が付きすぎないようバランスにも気を配りました。

また、常に逆転の目を保てるように、活躍している相手を倒すと通貨獲得にボーナスが加わる"バウンティ"や一時的に通貨獲得量が増加するブーストシステムなども用意しています。さらに無料のパワー獲得で大きくプレイスタイルが変わる点など、細かな調整に苦労しました。

「オーバーウォッチ 2」ビルド構築が奥深い新モードの“スタジアム”について開発陣にインタビューの画像

――最後に日本のファンへメッセージをお願いします。

Snyder:スタジアムには長い時間をかけて取り組んできましたが、ようやくお届けでき皆さんの反応が心から待ち遠しいです! OWCSで日本の試合も観戦していますが、コミュニティが盛り上がっていて非常に嬉しく思います。この盛り上がりにスタジアムも協力できたらさらに嬉しいですね!

Smith:日本の「オーバーウォッチ」ファンは私たちにとって非常に大切です。皆さんと同じくらい私も「オーバーウォッチ」を愛していますし、この開発に携われることを誇りに思っています。スタジアムを楽しんでもらう素晴らしい計画をたくさん用意していますので、皆さんにプレイしてもらえる瞬間を楽しみにしています!

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ゲームにメカにロボ、そして映画が人生の中心にある男。気に入ったゲームはトロフィーコンプするまで遊び尽くすやり込み派ライターで、アクションゲームが大のお気に入り。好きなタイトルは「DARK SOULS」シリーズ、「アーマード・コア」シリーズ、「Overwatch」「WARFRAME」「ガンダム」作品全般。好きな映画は「バック・トゥ・ザ・フューチャー」と「オーシャンズ11」

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※画面は開発中のものです。

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