2024年8月21日~23日にわたって開催された「CEDEC2024」。本稿では8月22日に実施されたセッション「ゲーム実況における『配信ガイドライン』の利用・作成上の法的問題点」のレポートをお届けする。

登壇者はoldsport代表の近藤史一氏、TMI総合法律事務所の落合一樹氏。なお、本セッションにおける配信ガイドラインとは「ゲームメーカーなどが個別に自社ゲームの配信利用に関する条件などを定めたもの」としている。
配信ガイドラインの策定がスタンダードになったが、法的に考えた際に一体どういうものかという実践的な議論はあまりされていないのが現状だと指摘。そこで法的に分析した際、どういった法的効力を持つのか、配信ガイドラインを作る上でのリスクなども含めて問題点を考察していくのが本講演の狙いとしている。

配信ガイドラインを調査したところ国内437、海外153、計590のガイドラインが存在したと近藤氏。配信可否、収益化レベル、配信可能範囲、専用ページの有無も確認し、まず配信できる/できないの割合は約98.4%が「可」とした。配信不可としていたものは謎解きコンテンツなどで、その性質上プレイ動画や生放送の公開を禁止していた。

収益化レベルは「不可能」「プラットフォーム機能の一部ならば可」「プラットフォーム機能ならばすべて可」「収益化が可能」「不明」で分けたところ、もっとも多かったのはYouTubeパートナープログラムなどプラットフォーム機能なら可能というものだった。この場合、いわゆる投げ銭やスーパーチャットなど視聴者から直接金銭の授受を行う機能を利用した収益化や、メンバーシップなど有料会員登録者限定の動画投稿に使用することは原則として禁止している。

配信可能範囲は約80.5%が特記事項なしとなったが、一部でオープニング映像は不可、特定のシーンは不可、指定した一定期間までは不可といったものもあった。専用ページの有無は約90.8%が用意されていたが、Steamの製品概要欄に記載されているもの、X(旧Twitter)のポストで触れているものなどもあったという。併せて計量テキスト分析を実施し、頻出単語、その言葉がどの言葉と使われているのかという共起ネットワーク、海外と国内でそれぞれどのような言葉が使われたのかという対応分析なども結果を紹介した。




次に落合氏は、まず配信ガイドラインの策定とその意義について考察。何故、ゲームメーカーが労力をかけて配信ガイドラインを策定するかといえば、ゲーム実況は著作権侵害という犯罪が成立してしまう可能性がある。そこで配信ガイドラインを明示してゲーム実況者の法的地位を安定させ、併せてゲームの認知度が高まることでゲームメーカーにとっても販売促進の効果を生むと考えるゲームデベロッパーも存在する。

そして多くの配信ガイドラインでは「ゲームタイトルを用いた創作活動を応援する」「積極的な権利行使をしない」などの言い方が多い一方、意図しているかどうかは不明だが「許諾します」と明示的に言っているものは圧倒的に少ない。一般的な感覚からすればこれらは許諾であり、こうした書き分けについて差異が生じる可能性はあるが、おそらく司法判断でも書き分けにあまり有意な差は生まれないだろうと落合氏は考える。

続いて、この許諾による利用権は成立するのかを考察していく。通常はライセンス契約などの名称の契約によって著作権者と利用者が合意して利用していくが、配信ガイドラインの場合は何らか同意を取るというフローがほぼ想定されていない。著作権者からの単独の行為によって利用権を成立させることができるのかは著作権法上ポピュラーな論点になっているそうで、現時点では単独行為に利用権の成立を認める見解が多数派であると考えられる。

落合氏の見解として、配信ガイドラインを策定することで生じる法的効果は主に2つ。ホワイトリスト化による著作物の利用に対する禁止権の一部解除、ブラックリスト化による犯罪行為などの一般予防(犯罪に対する抑止効果)と考えられる。さらに著作権侵害で有罪判決が出た直近の裁判例を挙げつつ、配信ガイドラインで禁止されているような行為を行ったという事実認定がされたわけではないと指摘。しかしゲームメーカーにとって非常に悪質な行為だと事実認定がされる可能性はあるため、そうした意味でも配信ガイドライン上で明示する意味はあるだろうと語る。

また、民法上の「定型約款」に該当するかどうかも見解を示し、自由に配信ガイドラインを撤回/変更できるのかについても実例はないとしつつ、やや極端なケースだが場合により一定の制限を受ける可能性はあると語った。そのためガイドラインの内容は専門家による精査が不可欠として本講演を締めくくった。



CEDEC2024公式サイト
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