作品を通して“忘れられない夏”にしたい――アニメ「ATRI -My Dear Moments-」小野賢章さん、赤尾ひかるさんにインタビュー

インタビュー
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7月13日24時よりTOKYO MX、BS11ほかでの放送や、dアニメストアほかでの配信も開始となったアニメ「ATRI -My Dear Moments-(以下、ATRI)」。小野賢章さん(斑鳩夏生役)、赤尾ひかるさん(アトリ役)に作品の魅力などを聞いた。

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不思議なバランスで成り立つ「ATRI」の世界観とは

――ゲームの発売から4年を経てのアニメ放送ということで、今の心境をお聞かせください。

赤尾さん:当初アニメの話は無く、ゲームの収録途中でスタッフさんからアニメ化もできたらいいねというお話があって、この夢が叶えばいいなと思っていました。それから4年の時を経てついに夏生さんのCV(キャラクターボイス)も素敵なお声でしっかりついて、みんなで臨めるというのがすごく嬉しくて、待ちに待ったアニメ化だなとすごく嬉しく思っています。

――小野さんはアニメからの参加ということで、心境はいかがでしょうか。

小野さん:オーディションに参加させて頂き、役が決まりましたという連絡を受けた時は、よかった、嬉しい、と思っていたのですが、その後、アニメの情報が解禁されたタイミングでの反応を見て、「これ、すごく注目度高いんじゃ……」となりました(一同笑)。楽しみだなという気持ちはずっとあったんですけど、周囲の期待を知ってからはプレッシャーが急に来たという感じでした。

――作品の印象についてお聞かせください。

赤尾さん:台本を読む前にビジュアルを通してキャラクターや世界観を見せていただいて、アトリのセーラー服や海というモチーフから爽やかな物語が始まるのかなと思いつつも、よく見ると後ろに廃墟があるなど、そのコントラストにすごく惹かれました。そして、いざ蓋を開けてみると、ヒューマノイドと人との気持ちのお話や、終わっていく世界の中でどう立ち向かうかというのがすごく描かれていました。

ゲームを収録している時にはあまり感じていなかったのですが、アニメの収録をしていく中で、近年AI化がすごく進んでいるところもあったので、みなさんも感じるところがあったりする可能性のある、素敵な世界観だなと思っています。

小野さん:赤尾さんが言っていたことと同じようなことにはなるのですが、ビジュアルからして、海があってすごく綺麗という印象がありました。

また、僕は担当するキャラクター目線で作品をなぞっていくので、やりたいことが全然できず、生活しづらい状況から始まっていく、不自由さへのフラストレーションをすごく感じるスタートではありました。

どんどん生活が便利になっていく中、いきすぎてバランスが崩れちゃうというのが実際にありえそうな世界観で、その中でキャラクターたちが満足のいかない暮らしを変えていくのかというのもありますし、夏生はそれ以上のもっと規模が大きいところをどう変えていくかという部分もありました。

――地表の多くが海に沈んだ近未来が舞台で、背景美術もとても印象的な作品だと思いますが、世界観の中で特に気になる部分はありますか?

赤尾さん:終わりゆく世界の中でも、知識や先人の知恵とか引き継がれているものはたくさんあるんだなって、言葉には出ていなくてもカットごとに見えてくる部分があります。

とあるシーンでも、夏生さんとアトリで物資を一緒に取りに行くシーンがあるのですが、アトリがお菓子について聞いた時に、これは子どもたちがいつか取りに来るかもしれないからと言うところは、相手のことを思いやりながら、みんなで生き延びるという気持ちが根付いていて、それでもいるんだなというのは今を生きるということなんだなと思いつつ、切なさもありました。

小野さん:ヒューマノイド、地球温暖化で海面上昇、みたいなことって、実際の近未来も可能性あると思うのですが、この作品では文明的には不自由になっているというのがすごく不思議なバランスだなと思っています。

アトリを売りにいこうとする場面を見た時に、ちゃんと人が存在するんだと思ったくらい、収録でも人の気配をあまり感じなかったんですが、お店に並んでいる品物の少なさや地べたにポツポツと置いてある感じというのが、個人的には過去のように感じられて、すごく不思議な気持ちになりました。

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お互いのキャラクターの印象やお気に入りのキャラクターは?

――ご自身が演じるアトリ、斑鳩夏生の印象についてそれぞれお聞かせください。

赤尾さん:アトリはまっすぐ天真爛漫で、楽しむ時も怒る時も全力だなと思っています。お話が進むにつれ、それがシステムなのか感情なのかという葛藤は芽生えてくるのですが、冒頭の段階ではとにかく明るく、マスターのためのヒューマノイドなんだなという、まっすぐな可愛らしさが詰まっている女の子です。ただ、高性能すぎてちょっとポンコツというか、自分では意図していないお茶目さは良い魅力だなと思っています。

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小野さん:夏生は、身体的な部分だけではなくて、気持ちの部分でも本当に不自由というか、自分でセーブしているような印象をすごく受けました。それはトラウマもありますし、挫折もあって、ボロボロなところからスタートしているからというのもあると思います。

自分に対してだけでなく、地球の環境に対してももう諦めてしまっているところから、どう再生していくのかという部分で、自然とアトリのペースに巻き込まれていって、良い方向にどんどん転がっていくような印象でした。

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――逆に、お互いのキャラクターの印象はいかがでしょうか。

赤尾さん:夏生さんは、アトリと重なってしまって見ているところがあって、諦めざるを得ない世界にいながらも、アトリとしては一生懸命引っ張って足になりたいところから、夏生さんが同じ島の仲間たちの言葉から一歩踏み出していくのを見ていました。塞ぎ込んではいたけど、その素直さはアトリと同じで可愛いなという気持ちがあります。

それに、賢章さんのお芝居によって私の想像を超えた素敵な夏生さんが生まれていて、ギャグのシーンとかもすごく楽しかったですし、世界のことを語ってくれる時のような知的な部分だけでなく、可愛らしい一面や尊敬できる一面もあって、いろんなものを兼ね備えている男の子だなという印象です。

小野さん:アトリは、思ったより子供だなという印象がありました。ヒューマノイドではあるものの、本当に人間と変わらない見た目の女の子なんですけど、夏生は結構毒づいたりとか、デッキブラシでガンってツッコむシーンがあるので、それはヒューマノイドと分かって行っていても大丈夫なのかな、というのを僕自身は感じていました(笑)。

アトリに限らずほかのみなさんのキャラクターは、ゲームから演じられているというのもあり、その中でもアニメはこういう風にやっていこうというようなところはあったとは思いますし、ベースにある演技部分は最初から最後まで良い意味で出来上がっているという印象がありました。

その上で、アトリの天真爛漫さ、明るさというのはこの作品にとっての光になっていると思いますし、もしこれが夏生だけだったら、もう少しどんよりした空気感になっていたんじゃないかなと思います。

――お話にあったデッキブラシのシーンとかはえげつなく聞こえる部分もありそうですが、そういうシーンを演じる際のニュアンスで気をつけたことはありましたか?

小野さん:逆に気を使うとそういう気持ちになってしまうと思うので、ギャグとして振り切ってやるようにしました。ただ、アトリのテンションに合わせれば自然とそうなるというか、同じ目線に持っていくと同い年ぐらいの喧嘩のような感じに見えるのではないかと思います。コメディシーンに関してはアトリに振り回されるような流れになっていますね。

――ほかに印象に残っているキャラクターはいますか?

赤尾さん:今後学校生活のシーンも出てくるのですが、竜司と洋子が2人揃っている時の、場を和ませてくれるちょっとした掛け合いとかが可愛らしくて好きです。

小野さん:僕も竜司ですね。女の子がかなり多い中で、夏生にとっては男同士の話ができるような友達の関係になっていく存在です。夏生に対しては、島を一度捨てたやつがなんで戻ってきたんだというような印象から始まっていくのですが、島を再生していく中で2人の友情も芽生えていくというところがすごく良くて、好きなキャラクターのひとりです。

――ゲームの印象ではあるのですが、夏生と竜司は仲良くなってからの距離感の詰め方もすごいですよね。

小野さん:大人だといきなり“俺達友達だよな!”みたいな感じで距離感を詰めることは難しいですけど、2人の詰め方は高校生ならではというか、すごく若さを感じます。

――ゲームに続いてのアニメでの演技ということで、変化はありましたか?

赤尾さん:根本にあるものは変わらないですけど、映像がつくことで瞬きのタイミングもしっかり決まっていますし、視線も細やかに変化していきます。アフレコの時はざっとではありますが、大事なところでは絵を動かしていただいていたので、その細やかさに合わせて気持ちを乗せていきました。

また、以前収録していた時はこれがアトリというロボットの女の子としての意識はあったんですが、アニメ化によってより人間感をプラスしていきました。本当に思い入れのあるキャラクターで、4年前にやった私のお芝居を通して私の中のアトリというのが確立してしまっていたので、それを少し崩して、みなさんと一緒にお芝居をする中でのアトリを出していくのが慣れるまでの、最初の数話のアフレコではは少し難しかったなと思います。

――ゲームと違って、みなさんで収録されてみていかがでしたか。

赤尾さん:すごく変わりましたし、私が男性と関わるキャラクターをあまりやってこなかったというのもあるので、隣りにいる男性といっしょに声を合わせる時の視界に見える男性ならではの姿にドキドキしちゃってました(笑)。

小野さん:僕は収録の待ち時間のタイミングで、どういう風になっていくのかとかを聞いたりして作品について補完していったりもしていたので、そういう意味でもみなさんと一緒にやれたのは本当に良かったです。自分の中でもイメージを膨らませながら台本をチェックするのですが、赤尾さんのアトリはそれを遥かに飛び越えてくるので、すごく新鮮で楽しかったです。

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細部にまでこだわりが感じられる描写、そして3話以降の見どころも

――先日開催の先行上映では物語の導入にあたる1話、2話の上映が行われました。その中での見どころがあればぜひお聞かせください。

赤尾さん:アトリが登場するのが1話の後半になるのですが、そこまでの世界観がすごく丁寧で綺麗に描かれています。海に沈んだ世界が儚いのに美しいというのが素敵で魅力的です。キャラクターたちに関しても目の光具合や、ゲームのCGですごく綺麗に表現されていた部分がアニメになったらどうなるのかワクワクしていたのですが、その綺麗さ、鮮やかさがさらに輝きを増していました。

魅力的なポイントは本当にいっぱいあるのでちょっと困っちゃうんですけど、作品としてはやはり海に沈んだ世界、というのが最初のポイントじゃないかなと思いますので、夏生さんが潜水艇で潜るところに注目してほしいです。

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小野さん:1話、2話は本当に世界観の説明というか、こういう舞台だというのがすごく丁寧に描かれていますし、作品全体としてももうとにかく絵が綺麗で、それだけでも見どころのひとつなんじゃないかと思います。あとフックになる表情変化や目のアップがかなり散りばめられていて、それは見ている人がすごく分かりやすいポイントだと思います。

細かいところでは、潜水艇で初めてアトリを見つけてビックリしてしまうところです。アトリがのぞき窓をコンコンってして口パクして伝えようとするシーンがあるのですが、それを見た夏生が“アトリ”と言うところは、普通水の中でガラス越しだと絶対わからないはずなんですよ。ただ、最後まで見るとあの時にポンと出てきたことが、夏生の中の古い記憶などに繋がる部分がいろいろあるのかなと思いますし、また2回目以降に観た時の解釈がどんどん深まっていくような気がするので、ぜひ細かいところまで見てもらいたいなと思います。

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――3話以降の話になってしまうとは思うのですが、本作で描かれる学校生活は寄り合いみたいな独特な空気感になっていると思いますが、そちらの印象はいかがでしょうか?

赤尾さん:年齢分け隔てなくみんなが一緒にいる空間になるので、兄弟感、家族感というのは強くなるのかなと思います。なので、竜司と凜々花も兄妹のような関係性というか、義務として学校に行くとかでは無く、いるのが当たり前というあったかさがありますね。

小野さん:高校生が小さな子たちの面倒を見るという状況があればしっかりやるのかもしれないですけど、個々の差がすごく生まれそうだなという印象でした。

大人がいて、毎日学校に行かないと、という状況ではないので、それぞれの判断に任されている部分が大きくなると思うんですよね。ああいう状況だと学校に行きたい人は行くだろうし、ダラッとしたい人は多分行かないだろうし、そういうことが許されると思うので、どちらかにすごく分かれそうだなと。僕なんかは多分行かなくていいやと思ってしまいそうです(笑)。

――人間とロボット(ヒューマノイド)の交流を描く作品として、本作ならではの魅力を伝えるとしたらどこになりますか?

赤尾さん:今現在のロボットは手助けをしてくれる、知識を与えてくれるというシステムだと思うのですが、アトリはとにかく人に寄せて作られているというところで、そこからさらに感情に寄り添ってくれるというのが作品の魅力だと思っています。

だからこそチグハグで、すれ違いとかももちろん生まれてきますし、心が通いあった時に泣ける・泣けない、笑える・笑えないとか、心がどこにあるか考えるというのは哲学的というか、正解がないものではありますが、それでも相手を思いやることができるのは素敵な関係性だなと思いますね。

小野さん:僕も、最初は人間のほうが心を閉じているというか、はじめから心を閉じているロボットはあまりいないと感じているのですが、でもやっぱり基本的にヒューマノイドって人間がより便利に暮らすためにサポートしていくために開発されているというのがベースにあると思います。

アトリの場合は最初から懐にどんどん入ってきて、逆にお世話されていることが結構多いので、どっちがご主人なのか分からないみたいなところがありますよね。自分では高性能って言っているけど、全然そうじゃないみたいなシーンがたくさん出てきて、そういったおてんば具合がアトリの魅力のひとつかなという風に思います。

あと、とにかく表情がすごく可愛いですよね。夏生がアトリ以外の人と会話している一方で、ずっと睨んでいるシーンも結構印象に残っていて。これはアトリに全部持っていかれるなと(笑)。

――最後にアニメを楽しみにしている方々にメッセージをお願いします。

赤尾さん:今回初めて「ATRI」をご覧になる方、そしてゲームから「ATRI」を応援してるよって方、みなさんに楽しんでいただける作品となっておりますので、毎話毎話楽しみにしていただけたらいいなとすごく思っています。キャスト陣でもご飯とか行ったり、すごくアットホームな現場ですごく温かな作品になっています。私たちみんなで楽しく頑張って収録したので、ぜひ楽しんでください。お願いします。

小野さん:物語も世界も絵もすごく美しく、みなさんにとって今年の夏を忘れられない夏にしてやるぞ、という気持ちで収録しました。素敵な作品に参加できて、僕にとっても大切な1本になりましたので、ぜひ多くの方に見て楽しんでいただきたいです。

――ありがとうございました。

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2011年イクセル入社後、Gamerをはじめとした媒体の運営に携わる。好きなジャンルはRPG、パズル、リズム、アドベンチャー(ほぼギャルゲー)。実はゲームよりもアニメが大好きです。

アニメ公式サイト
https://atri-anime.com/
アニメ公式SNS
https://twitter.com/ATRI_anime

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