「ドラゴンエア:サイレントゴッズ」をレビュー。秩序と混沌という価値観がぶつかり合う本格的なダークファンタジーを、テーブルトークRPG風に表現した骨太なRPG。その魅力を紹介する。
「ドラゴンエア:サイレントゴッズ」は、NuverseからリリースされたPC/スマートフォン向けのRPG。その特徴は、テーブルトークRPG(TRPG)風の演出だ。TRPGとは、ゲーム機やスマートフォンといったコンピューターを使うのではなく、テーブルを囲んで会話(=トーク)主体で進めるRPGのこと。最近は、動画共有サイトでTRPGをプレイする模様が配信されていることもあって、見たことがあるという人も少なくないだろう。そもそもはTRPGこそがRPGの元祖であり、現在主流のコンピューターRPGは、TRPGをコンピューターで表現するかたちで生まれている。本作は、そんなTRPGの要素を取り入れることで、非常に本格的なRPGに仕上がっている。
ダイスロールによる判定やナレーション!TRPG要素が盛り込まれたRPG
本作が取り入れたTRPG要素の中で、もっとも象徴的なものがダイスロールだろう。ダイスロールとは、ダイス(=サイコロ)を振ること。TRPGでは、ゲーム内でのキャラクターの行為が成功したかどうかをダイスで判定する。ダイスの出目とキャラクターの能力値を組み合わせ、成功率の目安となる数値と比較することで行為が成功したかどうか判断するわけだ。
本作ではこうしたダイスロールを主にスキル効果の大小や、イベントの成否の判定に使用している。ダイスはビジュアル的に表現。このため、実際にTRPGをプレイしている感覚が味わえる。
ただTRPGをプレイしたことがないと、「ダイスロールの何がおもしろいのか?」と思うかもしれない。ダイスの結果は運次第。つまり、ゲームそのものの成否が運によって決まることになってしまう。いわゆる「運ゲー」というやつだ。ただ、TRPGの楽しさのポイントはダイスロールにあるわけではない。おもしろさは、その前の「選択」にある。
TRPGの参加者は、プレイヤーとゲームマスターに分かれてプレイする。プレイヤーとは、コンピューターRPGをプレイする際の我々と同様、ゲームの主人公として冒険をする存在。一方ゲームマスターとはゲームの進行役。ゲームマスターはプレイヤーにゲーム内の状況を説明しどんな選択をとるのかを問う。この「選択」こそがTRPGの醍醐味。他プレイヤーとどんな「選択」が正しいかを話し、決断するのがおもしろい。
本作ではこの「ゲームマスター」や「選択」といった要素も上手く演出に組み込んでいる。本作のビジュアルはフォトリアリスティックを追求した美麗な3DCGなので、ゲーム内の状況はビジュアル的に体感できるのだが、そこにあえてナレーションによる説明を導入。ボイス付きでナレーションが再生されるため、TRPGをプレイしたことがあれば、ゲームマスターから状況を説明されているような感覚になるだろう。そしてゲーム内のイベントでは、頻繁に「選択肢」が登場。決断するおもしろさがしっかり盛り込まれているのだ。
ところで、「TRPGの楽しさのポイントはダイスロールにあるわけではない」と書いてしまったが、実際のTRPGではダイスロールそのものもおもしろい。自分たちの選択が成功するのか、失敗するのか?未来をかけたダイスロールはスリリングで、思わず興奮してしまう楽しさを持っている。
ちなみに本作では、一般的なスマートフォン向けRPGのように新キャラクターや新アイテムの入手はガチャで行う。このガチャもまた、ダイスロールによって演出されているのがおもしろい。実際にダイスの出目が提示されることで、自分がそのレアリティを引いてしまったことに納得感が生まれるのだ。また、個人的には「ガチャ」と「TRPG」という要素に噛み合わなさを感じてしまうのだが、ダイスロールという演出が加わることで、違和感なく受け入れることができた。
秩序と混沌の激突!「選択」の楽しさを支えるストーリー
本作に「選択」の楽しさをもたらしているのは、ゲームシステムだけでない。ストーリーも「選択」の楽しさを支えている。
本作の舞台はドラゴンの母ティアマトによって秩序が保たれる世界。…こう書くと、ティアマトという存在がプレイヤーサイドに立つ味方のように感じるかもしれない。しかし、冒頭はプレイヤーパーティーVSティアマトのバトルからスタート。プレイヤーは混沌の申し子と呼ばれる混沌の勢力であり、その目的はティアマトを倒すことなのだ。
このバトルが終わると1200年の時が経過。冒頭のキャラクターからプレイヤーのメイキングしたキャラクターへと担当キャラクターが切り替わり、「罪人の流刑地」と呼ばれる場所が舞台となる。この場所でプレイヤーは、秩序を守るため混沌の申し子打倒を目指し旅立つ。おお、結局のところプレイヤーは秩序側なのか! …そう思ったのだが、ゲームを進めると、どうやらそうとも言い切れない。秩序は秩序で、手放しに素晴らしい存在というわけではないようだ。
つまり本作のストーリーは、「秩序」=善・プレイヤーサイド、「混沌」=悪・敵サイドという単純なかたちにはなっていない。だからこそ、「選択」に奥深さが生まれている。「とりあえず秩序を選んでおけば、ゲーム的にOKだよね」とはならないからだ。ゲーム進行上、「恐らくこの選択肢が正しそう」という推測はできるものの、「でも、どうだろう」という疑問がつきまとう。だからこそ自分の「選択」を問われている感覚があって、おもしろい。
入念な準備が重要!骨太なバトルシステム
本作ではバトルにおいても、「選択」や「判断」が問われることになる。本作のバトルシステムは、オートで行動するキャラクターを見守りつつ、手動でスキルを発動するというもの。スキルは各キャラクターのゲージが満タンになることで発動でき、発動時に対象キャラクターを選ばなければならない。
このバトルシステム自体は、スマートフォン向けRPGでよく見られるものだ。ただ、バトルバランスが絶妙に調整されており、誰のスキルをどのタイミングで使うか?どの対象にスキルを使うかといった点を誤ると、カンタンに味方が死んでしまう。一方でスキルを適切に発動できれば被ダメージを抑えて効率的に勝利できる。つまり、勝敗は「選択」と「判断」にかかっているのだ。
ちなみに、本作ではバトル後にHPが自動回復しない。なので、次のバトルまでに回復アイテムを使ってしっかりHPを回復しなければならない。そうでないと、バトルに勝つことは難しい。準備と戦術が重要な、骨太なバトルといえるだろう。
RPGの醍醐味が満喫できる本格派!RPGファンならプレイすべき一本
ここまで触れてきた通り、本作はTRPGの持つ「選択」という楽しさを、上手くコンピューターRPGへ落とし込んでいる。しかもそれだけに留まらず、スマートフォン向けRPGが持つ「お手軽さ」も備えている点は見過ごせないポイントだ。
ダイスロールやナレーションといったTRPG特有のシステムをコンピューターRPGへ取り入れると、テンポが悪くなってしまうことが多い。コンピューターRPGであれば、わざわざダイスを振る演出がなくともプログラム的に成否判定できるし、ナレーションではなくビジュアル的に状況を説明できる。つまり、ある意味でダイスロールやナレーションは不要な存在ともいえるのだ。しかし本作は、ダイスロールの演出テンポやナレーションの頻度を工夫することで、この課題を解決している。本作のプレイ感そのものは、一般的なスマートフォン向けRPGのようにハイテンポでお手軽なものなのだ。
その一方で、基本的なゲームシステムはスマートフォン向けRPGのスタイルを踏襲していない。本作のスタイルはシナリオ一覧からシナリオを選んでお手軽にプレイする…というものではなく、街を拠点にバトルをこなしつつマップ上を探索し、イベントをこなしていくというもの。主にコンシューマー向けのRPGなどで見られるスタイルだ。
これまでに紹介してきた要素によって本作は、自分の「選択」によって冒険を進めているというRPGの醍醐味がしっかり味わえる本格派RPGに仕上がっている。RPGファンであれば是非プレイして欲しい…!
(C)Nuverse Pte. Ltd.
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