「春ゆきてレトロチカ」インプレッション――「仮説」を積み重ね真実を探るミステリーアドベンチャー

プレイレビュー
0コメント 御簾納直彦

スクウェア・エニックスが2022年5月12日に発売するPS5/PS4/Nintendo Switch/PC(Steam)用ソフト「春ゆきてレトロチカ」(Steam版は2022年5月13日発売予定)のインプレッションをお届けしよう。本作は実写映像を多様したグラフィックスと、ミステリー要素が絡み合った新機軸のアドベンチャーゲームだ。

1972年から2022年まで、プレイヤーは様々な時代で巻き起こる事件と向き合いながら、それらを解決へと導いていく。確かな推理力が必要とされる本格ミステリー作品だが、実際のところ、プレイフィールはいかなるものとなっているのか。

本稿で触れている内容は第一章までのものとなるため、プレイ時間は二時間ほどのカジュアルなレポートとなるが、それでも本作が持つ独特の魅力をしっかりと感じ取ることができた。なお今回はSteam版を使用してのプレイとなるので、レポートもSteam版に準拠している。それではさっそく「春ゆきてレトロチカ」のインプレッションを読み進めてほしい。

現代から大正へ。様々な時代で起こる正統派ミステリー

物語はミステリー小説家の河々見はるかと編集者の山瀬明里が、科学者である四十間 永司の依頼のもと、富士山麓にある永司の実家、四十間邸を訪れたことから端を発する。依頼は桜の下で見つかった白骨死体と、四十間邸に眠るとされている「不老の果実」の真実を究明すること。

そんななか、明里は、はるかに永司の先祖・四十間佳乃が書いた「不老の果実」をめぐる百年前の物語を差し出す。小説の体裁をとった実際の殺人事件を記しているその本から、はるかは何を感じ得るのか。

主人公の河々見はるか。ミステリー小説家として活躍している
編集者の山瀬明里
はるかたちに「不老の果実」についての調査を依頼してきた四十間 永司

というのが本作のザックリとしたストーリーライン。冒頭こそオーソドックスなミステリーの形を取っている本作だが、物語を進めると、時代が一転して現代から大正時代へと遡り、登場人物も一新(出演者は同じ)。そんな中、殺人事件が起こり、本格的な事件捜索の開始となる。

なお第一章では大正時代がメインの舞台となるが、これは、はるかが読み進めている本「不老の果実」の中の物語という設定。古書のため読みにくい箇所がある。そのためはるかは、自身の身近な人間を本の中の人物に当てはめ、自分流に読みやすくカスタマイズしているというわけだ。

「不老の果実」は古書のため、今では使われていない言葉などもあり決して読みやすいとはいえない。
そのため明里は、はるかに登場人物を身近な人に当てはめることをすすめる
時代は大正へ。レトロ感の増した世界観となり、タイトルの「春ゆきてレトロチカ」ともリンク度もアップ

なお冒頭でもお伝えしている通り、本作は大正時代から現代まで多数の時代が舞台となる。大正時代はその中の1つなので、全ての舞台が大正時代ではないということも追記しておきたい。

また本作をプレイして感じたのは、映像から感じられる和風の美しい世界観と、そこはかとなく漂う上品な雰囲気だ。「四十間邸」という巨大な日本家屋が舞台の1つも要因ではあるだろう。筆者としては本作から感じられる世界観に強い魅力を感じている。

「手がかり」と「謎」が隣り合わせになる時、「仮説」は生まれる

ゲームの流れは大きく分けて「問題編」「推理編」「解決編」の3つに分類される。問題編でカギとなるのが映像内に含まれている「手がかり」だ。続く推理編で「謎」と手がかりを組み合わせ、「仮説」を作り上げるのだが、仮説はあくまでも仮説のため、必ずしも真実ではところがポイント。

手がかりと謎を隣り合わせにして「仮説」を作り上げるのだ

数ある仮説の中から、真実を映し出している仮説を選びだそう。なお先程も述べたが、推理編では手がかりと謎を組み合わせるのだが、その2つがマッチした時の達成感はなかなかのもの。というのも、手がかりと謎は整合性が取れたものでないとマッチしないため、やみくもに推理しているだけでは仮説も生まれない。ログとして残されている各シーンを見直しながら、適切な謎と手がかりを組み合わせて、推理を作り上げていくことこそ、本作の醍醐味なのだ。そのため、いわゆる総当り的なプレイスタイルが通じにくい。だからこそプレイが単調にならず、常に一定の緊張感を保っているとも言える。

仮説が出来上がると、ジオラマによる再現映像も

ちなみに仮説は複数作り上げることもできるが、途中で真実に気づいたら推理を切り上げても問題はない。そのあたりはプレイヤーの推理力次第というところか。そして、最後の「解決編」では正しいと思う仮説を選ぶことになるのだが、この際、間違った仮説を選んでしまうとバッドエンドになってしまう。ただバッドエンドになっても推理自体はやり直すことができるので、過剰に心配することはないだろう。

推理ものであると同時に、深い人間ドラマも見どころ

本作は実写映像を多様している作品ということで、映画やドラマと見紛う映像的な魅力を持っている作品でもある。そこで注目したいのが、個性的なキャラクターたちが織りなす人間ドラマの部分だ。

本作のメインキャラクターは、河々見はるか、山瀬明里、四十間永司など実に個性的な面々が揃っている。はるかはミステリー小説家という職業柄、好奇心旺盛で誰に対しても物怖じしない性格。明里は編集者という立場上、はるかにアドバイスを送ることも多い良きパートナー。

そして、四十間家の次男でありながら、家を出て細胞周期学者の職に就いた生粋の研究者でもある永司。他にも四十間の長男である一永や、庭師を務める草刈孟彦、四十間家の当主である了永など、様々なキャラクターが登場して物語を盛り上げる。

四十間の長男であり次期当主の一永
四十間家の当主である了永。家を出ていった永司に辛く当たる

個人的に興味深いのは、四十間家の人間関係だ。家を出て研究者を続ける永司と、それをよく思わない了永や一永たち。一見しただけでは分からない複雑な人間関係や、そこから巻き起こる事件の数々。

ゲームプレイはもちろんだが、1つのミステリー作品としてもクオリティが高く、先の展開が気になる魅力がある。今回は約2時間でのプレイだったため深いところまで切り込むことは出来なかったが、この原稿を執筆したのち、ぜひともクリアまでプレイして、物語の真相を見てみたい。そんなな気にさせてくれる、ミステリー好きにはたまらない一本となっているので、気になる方はぜひ購入を検討してみてほしい。

※画面は開発中のものです。

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