自分の選択が真実になる――名探偵シャーロック・ホームズとなって事件に挑む「Sherlock Holmes Chapter One」をレビュー!

プレイレビュー
1コメント 夏無内好

2021年11月16日より発売中のオープンワールドアドベンチャー「Sherlock Holmes Chapter One」。プレイヤーが名探偵シャーロック・ホームズを操作して、数々の事件に挑んでいく推理ゲームだ。本稿では、そんな本作のレビューをお届けしよう。

Sherlock Holmes Chapter One公式サイト
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母の死の謎を解き明かすため、ホームズは生まれ故郷のコルドナ島へ

シャーロック・ホームズ。

本作の主人公は、イギリスの作家、コナン・ドイルが生み出した名探偵シャーロック・ホームズ。時系列的には、彼が名探偵として活躍する前、駆け出しであった頃が描かれる。自身の生まれ故郷のコルドナ島に帰ってきたホームズは、各地を巡って幼少の記憶を思い出したり、起こった事件を解決したりしながら、母の死の謎を追いかける。

ホームズの親友“ジョン”。

ホームズの相棒を務めるのは、彼の古くからの友である“ジョン”。本来の相棒であるジョン・ワトソンとはまだ出会っていないため、彼は登場しない。ジョンは神出鬼没で、ホームズの行くあらゆるところに先回りして、休んだり遊んだりしてはホームズに小言を言われる。ホームズの言動に振り回される相棒、というのがシャーロック・ホームズの作品でよくある描写なので、こうして立場が逆転しているのは新鮮だ。

場所によってさまざまな側面を見せるコルドナ島

本作はオープンワールドということもあり、舞台となるコルドナ島は広い。上流階級が住むような立派な建物が並ぶ通りや、海岸に面したホテル、労働者が集う工場など、さまざまな場所を自由に動き回れる。母の死を追うという大きな流れはあるものの、各地には膨大な数のサイドミッションが用意されているので、寄り道しようと思えばいくらでも時間をかけられる。

コルドナ島は大英帝国の統治領であり、宗主国であるイギリスの人間だけでなく、クルドやオスマン、アフリカといった多様な土地の人々が共生している。人種や階級ごとに住む地区が違ったり、着ている服の質が明らかに異なっていたりと、コルドナが抱える格差などの問題も緻密に描かれている。

各地を巡っていけば“ファストトラベル”機能も開放される。離れた場所も一瞬で行き来可能だ。

現場検証に科学捜査……多彩な手法で犯人を暴く事件捜査

事件を解決するパートでは、現場に残された手がかりや関係者たちへの聞き取りをもとに推理を組み立て、最終的に真犯人を暴き出す。

証拠から血痕や刃こぼれといった特徴を見出していくだけでなく、そこから得た情報をもとにした犯行の再現、関係者への事情聴取、逃走した容疑者の追跡、公共施設で資料の照合など、事件の解決に必要な部分はすべてプレイヤーが行う。テキストアドベンチャーであれば、決まった選択肢のなかからいずれかを選んで進めればいいが、本作はアクションでありオープンワールドなので、どのように捜査を進めるかは本人次第である。

現場の情報をもとに、犯行の流れを再現する。

事情聴取は、あらかじめセットしておく情報の種類によって聞き出せる内容が変化するほか、一般人から話を聞く場合、ホームズがどのような“変装”をしているかで相手の態度も変化する。例えば、ホームズが高級なスーツを着ている状態で労働者に話しかけてもまるで取り合ってくれないが、こちらも労働者の服を着ていると一転、親しげな口調で情報をくれる。“集中”というモードを使っているあいだに人を観察すると、対象の人種や職業、性格などがわかるので、それをもとに合わせるのがコツだ。服は街中で売っており、お金がなくとも借りることができる。

集中モード時であれば、コルドナ島にいるすべての人間の特徴を調べられる。
警察署や新聞社、市役所では、それぞれ異なる種類の資料を調べられる。
求める情報を見つけるためには、適切なキーワードを3つ選ぶ必要がある。

捜査のなかでもとくに難しいのは科学捜査。証拠や現場に付着している液体などの正体を確かめる際に使う方法で、赤、緑、青の成分が決まった数値になるよう、薬品の調合や組み合わせを調節する。各薬品に設定された数値をもとに、正しい組み合わせを探していくのだが、扱う事件によっては薬品の数が多かったり、足し引きするだけでなく数値を“+”から“-”に反転する必要があったりと、かなり複雑。筆者が遊んだ際、事件の捜査でもっとも手こずったのはここだった。

ジョンはプレイヤーの取った行動に対してさまざまな反応をする。
順調に捜査を進めると褒められるが、手こずっていると愚痴られる。

ここまで読むと、推理慣れした人でなければ厳しいと思える。だが、謎解きなどに関する難易度は、オプション画面で自由に設定可能。本作で一番低い難易度である“若き探偵”を選ぶと、どの証拠をどのような手段で調べるべきなのかを、専用のアイコンがすべて示してくれるので、謎解きが格段に楽になる。謎を解くよりは1本のドラマを体験しているかのような感覚で、手軽に物語を進めることが可能だ。

一方、“推理の達人”を選ぶと、アイコンを始めとするサポート機能はすべてオフになる。すでに述べたように、本作は謎解きの幅が非常に広く、サポートなしで挑むにはかなり難しい。腕に覚えのあるプレイヤーでも、まずは“若き探偵”で慣らしたほうがいいだろう。ちなみに、本作は翻訳関連にはかなり力を入れているらしく、今回のプレイで日本語字幕に違和感を抱くことはなかった。日本語によくある主語の省略にもしっかり対応しており、翻訳のせいで謎解きに詰まるようなことはなさそうだ。

捜査中は銃撃戦になることも。犯人を無力化すると報酬がもらえる。
逆に射殺してしまった場合、もらえるお金が減ってしまう。

メインストーリーはドラマ、ミステリーはサイドミッションで

事件と言っても、それがメインストーリーかサイドミッションかで最後の展開は大きく異なる。メインストーリーでは、捜査を進めると複数の容疑者が浮かび上がり、プレイヤーは推理をもとに誰かひとりを告発しなくてはならない。ふつうの推理ゲームであれば、一度選択を外してももう一度チャンスを与えられることが多いが、本作では誰を告発しようと物語は進む。誰が真犯人なのかは、最後まで明示されない。プレイヤーが告発した相手こそが真犯人になるのだ。

そのため、ドラマや映画などでよく見る、事件の全貌を話しつつ真犯人を糾弾するシャーロック・ホームズを期待していると、ちょっと肩透かしを食らうことになる。また、捜査中は容疑者が言うアリバイの根拠となっている出来事の関係者に話を聞けないこともあった。直前に筋の通った反論をされていたので、自分の推理の正しさを確かめるためにも、アリバイの真偽は重要だったのだが、けっきょくわからずじまい。本作が真犯人を自分で選ぶシステムを採用しているために、あえて考察の余地を残しているのかもしれない。

一方のサイドミッションは、捜査の流れはメインストーリーと同じだが、真犯人ははっきりするので、後味が悪くなることはないだろう。窃盗や殺人など、事件の内容はさまざまで、だいたい10~20分あればクリアできるものが多い。名探偵としてのシャーロック・ホームズ像を求めるなら、メインストーリーよりサイドミッションのほうがオススメだ。

ただ、本作は全体の話の中の“チャプター1”であって、若かりし頃のシャーロック・ホームズを描いている。そこを踏まえると、事件の謎よりも事件そのものとホームズの出会いをメインストーリーで重視するのは、ごく自然だ。次回以降のチャプターでは、名実ともに名探偵になったホームズが見られるのかもしれない。

オープンワールドらしい自由度の高さを謎解きに活かしているだけでなく、本作は難易度を細かく決めることで、初心者から上級者まで楽しめるよう配慮もされている。謎解きが好きな人はもちろん、シャーロック・ホームズそのものやオープンワールドゲームが好きという人も楽しめる。本作はSteam版だけでなく、PS5やXbox Series X|Sでも配信されている。興味がある人は、ぜひ遊んでみてほしい。

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