世界観にゲームシステム、作り込まれた街並みが、深い没入度を生み出す――「サイバーパンク2077」プレイインプレッション

プレイレビュー
0コメント 米澤崇史

PS4/Xbox One/PC向けに、2020年12月10日に発売されるオープンワールドRPG「サイバーパンク2077」。発売に先駆け、製品版をプレイする機会を得たので、そのインプレッションをお届けする。

「サイバーパンク」の世界では、日本が特別な位置づけに

全世界で大ヒットしたオープンワールド「ウィッチャー」シリーズで知られるCD PROJEKT REDの完全新作オープンワールドRPGとして、いよいよそのリリースが間近へと迫りつつある「サイバーパンク2077」。これまで、何度も発売が延期されてきただけに、この日を待ちわびたファンは少なくないだろう。

まず本作には、原作にあたるTRPG「サイバーパンク2.0.2.0.」が存在しており、ゲームではその50年後にあたる2077年の巨大都市「ナイトシティ」が描かれる。50年という月日が経過しているのもあり、原作というよりも原案に近い位置づけで、ストーリーやメインキャラクターを始め、オリジナル要素が多めとなっている。

ただ、その中で異彩を放つのが、「サイバーパンク2.0.2.0.」にも登場するキャラクターである「ジョニー・シルヴァーハンド」。ジョニーは、2020年頃に活躍した、ナイトシティを支配する巨大企業・アラサカに抵抗した伝説的なロックミュージシャンであり、TRPGのルールブックやシナリオ内でも幾度となく登場。「サイバーパンク2.0.2.0.」シリーズを象徴する存在として位置づけられているキャラクターだ。

本作でジョニー・シルヴァーハンドを演じるのは「マトリックス」「ジョン・ウィック」などで知られるキアヌ・リーブス。日本語吹き替えは、多数の作品でキアヌの吹き替えを担当してきた森川智之さんが担当している。

このジョニー・シルヴァーハンドは50年前に起きたアラサカとの抗争ですでに命を落としているのだが、「サイバーパンク2077」においても登場し、不老不死の鍵を握る<Relic>に関わる存在として重要な役割を果たすことになる。そのため、TRPG版についての知識があればより楽しめるような作りにもなっているが、プレイヤーの分身となる主人公・Vを始め、多くの人物は彼の存在を知らない。その分、ジョニーがどんな人物だったのかという謎も、ストーリーを通じてしっかりと描かれるため、原作の知識がまったくなくとも、本作の物語に置いていかれるということはないので安心だ。

また、これはTRPG版から引き継がれた要素でもあるが、本作においても日本がかなり重要な国として位置づけられていることも特徴。本作の世界観に深く関わるアラサカコーポレーションは日本の企業であり、その総帥であるアラサカ・サブロウも名前通りの日本人。他にもジョニー・シルヴァーハンドのバンドの名前が「サムライ」だったり、日本的な雰囲気の区画があったりと、いたるところで日本的な要素が見受けられ、世界的全体でみても、日本がアメリカに匹敵する最先端技術をもった大国のような位置づけとなっている。

これはサイバーパンクというジャンルの成立そのものに日本文化が強く影響していることもあるが、原作である「サイバーパンク2.0.2.0.」が、日本の高度成長期である1988年に出版されたことも要因の1つとなっていると考えられる。

鎌倉時代の津島をリアルに描いた「Ghost of Tsushima」が日本でヒットしたことも記憶に新しいが、本作も「海外から見た日本」という視点が強く反映されており、日本人にとっても親しみやすい世界観となっている。

FPS視点とライフパスが生み出す、高い没入感

本作の主人公で、プレイヤーの分身でもある「V」。「V」はその外見・性別をキャラクターメイクで設定する、アバターのような位置づけとなっているが、Vはとにかくストーリー中によく喋る。一般的なアバター型の主人公は、ストーリー中に言葉をほとんど発しなかったりと、プレイヤーが感情移入するために個性を抑えられていることが多いが、本作のVはかなり個性が強く、個としてのキャラクター性を有している。

キャラクター性が強くなると、どうしてもプレイヤーとアバターの間で乖離が生まれてしまうという問題も生まれることになるが、それを補うのが「ライフパス」と呼ばれる要素。本作では、ナイトシティの裏側を生きてきた「ストリートキッド」、バッドランズと呼ばれる郊外からナイトシティにやってきた「ノーマッド」、アラサカに務めるエージェントとて日々を送る「コーポレート」と、Vの境遇を異なる3つの立場から選択できるようになっている。多くのTRPGのシステムでも、自分のキャラクターを作成する際に決める出自や境遇の設定を「ライフパス」と呼ぶのだが、その要素を反映したシステムだと考えられる。

ストーリーの展開が異なるのは冒頭の導入部分で、その後はどのライフパスも同じストーリーラインで進行することになるのだが、「コーポレート」なら、アラサカの内情についての情報が出た時に「俺はもう知っていた」といった意図の選択肢が出現したり、会話の選択肢が変化する。ただこれらの選択肢には、直後の会話の内容が変化する程度で、直接的な展開にはあまり影響を及ぼさないものも多い。これは「この設定のキャラクターなら、ここでこういうリアクションを返すだろう」という、TRPGでも見られるロールプレイを再現するためだと想像できる。プレイヤーが自分の中でVのキャラクター性を想像し、それに近い選択肢を選ぶことで、より自分のキャラクターとしての愛着が湧くようになる。

キャラクターメイク時には、能力値の割り振りも行うが、これもTRPG的。能力値は装備や選択肢を選ぶ際の条件になっていることもある。

感情移入度をさらに高めてくれるのが、プレイヤーの視点。本作では、TPSだった「ウィッチャー」シリーズとは異なり、FPS視点が採用されている。乗り物に乗る際など、場面によってはTPS視点にも切り替えられるが、基本的にはFPS視点で固定されている。敵を視界に入れた際のみ使用できるスキャンや、瞳のインプラントの設定を生かしたUIの変化といったシステム面に加え、ストーリー上の演出など、FPS視点が、世界観への没入感を高める意味で効果的に活用されている。

FPS視点なので、「V」の姿をプレイヤーが見る機会は鏡の前などに限られる。にも関わらず、キャラクターメイクはかなり細かい容姿まで設定が可能で、膨大な数の装備にグラフィックが設定され、きちんと外見に反映されるなど、その作り込みは凄まじい。

サイバーパンク的な世界観を生かしたバトルシステム。ハクスラ的な要素も

本作のバトルの最大の特徴とも言えるのが、サイバーデッキを使ったハッキングで、敵やオブジェクトの行動に干渉できるということ。まだゲームが序盤ということもあり、選択可能なサイバーデッキのバリエーションも限られていたが、監視カメラのネットワークを切断したり、敵の武器を一時的に使用不可能にしたり、回路をショートさせてダメージを与えたり、様々な戦術を試すことができた。ハッキングの際に必要なRAMは、時間経過によって回復していくため、気軽に使用できるのも嬉しい。

中でも使い勝手がいいと感じたのが、武器を一定時間使用不可能にする武器クラッチ。本作は銃などの火器での攻撃が基本となっているが、素手に刀、バットにナイフにハンマーと非常に多くの近接武器が用意されており、攻撃力も高いのだが、敵に近づかなければならない関係上、どうしてもリスクが高くなる。そこで武器クラッチなどのクイックハックで敵を一時的に攻撃できない状態にし、その間に近づいて攻撃を加えるようにすれば、リスクを軽減しながら近接武器の高い攻撃力を生かせるようになった。

またサイバーデッキは、状況や相手によって効果的なものやそうでないものが頻繁に切り替わる。先程の武器クラッチは主に人間に対して効果的なサイバーデッキで、ドローンなどのメカ系には回路ショートなど電子部品にダメージを与えるタイプとの相性が良くなる。一度にセットしておけるサイバーデッキの種類には限度があるので、状況に応じ付け替えるのも必要になりそうだと感じた。

サイバーデッキ以外にも、それぞれの武器を使い込むことで成長していくスキルや、スキル成長時に入手するポイントを割り振って成長させていくツリー形式の能力であるパーク、サイバーウェアなど様々な要素が戦闘に影響を及ぼす。

中でもサイバーウェアは、サイバーデッキと並んで本作ならではと言える要素で、自身の身体の機械化部分を増やすというもの。能力値やダメージなどを上昇させる補助的な効果から、生身の時にはできなかった新たなアクションを追加することも可能。ピークにスキル、サイバーウェアにサイバーデッキを組み合わせることで、キャラクタービルドの幅は無限大といっていいほどに膨大な選択肢が用意されている。

またサイバーデッキを含め、装備の多くはランダムでパラメーターが変化する。戦闘で敵を倒すと、所持していた装備などをそのままいただくことができるのだが、同じ種類の装備でも性能が微妙に異なるので、ナイトシティを巡って敵を倒し、よりいい性能の装備を求めるハクスラ的な楽しみ方もできるようになっている。装備は所持上限があっという間にいっぱいになるほど高い頻度で入手が可能なので、不要になった装備はどんどん換金していく必要もある。

今回のバージョンでは、前回のプレイで体験できなかったアイテムのクラフト・武器のアップデートも可能になっており、ナイトシティ内で入手できる素材を使って、回復用アイテムやグレネードなどの消耗品にサイバーデッキの作成や、入手した武器の性能をさらに引き上げることもできた。一つの武器を強化して使い続けるのか、新しい武器の入手を期待するのかも、悩ましいポイントになってくるだろう。

広大なナイトシティには、膨大な数のクエストが

超巨大な都市であるナイトシティ内を自由に探索することができるのも、本作の大きな魅力の1つ。ナイトシティには6つの区画があり、それぞれの区画ごとに町並みがガラリと変わる。その中では実に膨大な数の住人たちが過ごしているのだが、本作が凄まじいのはそのほぼすべての住人に話しかけられるようになっていること。人々の中には個性的な行動をする者もおり、サイバーウェアの危険性を訴える演説をする怪しげな人物を、若い女性たちが面白がって撮影していたり、それぞれの生活感を感じられるほどに作り込まれている。

いわゆるサブクエストにあたるサイドジョブの他にも、街の権力者であるフィクサーから様々な依頼や、NCPD(警察にあたる組織)と共闘して、ギャングと戦ったり、指名手配された賞金首を倒したりと、ナイトシティを適当に歩き回っているだけで、ミニクエストのようなものに絶えず遭遇するようになっているので、とにかくやることが尽きない。一部はランダムで発生しているようなので、先程述べたハクスラ的な要素と合わせて、無限に遊び続けることも可能なのではないかと思えるほど。

プレイしていて実感したのが、ローカライズの出来が素晴らしいこと。「ウィッチャー3 ワイルドハント」は、ゲーム自体のクオリティもさることながら、ローカライズの丁寧さが話題を呼び、日本でのヒットにも繋がっていた。ナイトシティの各所には「チップ」と呼ばれる世界観をより深く理解するための読み物が膨大な数で配置されていたり、情報量がとにかく多い。先程も述べた街の住人との会話も、そのほぼすべてに日本語の吹き替えと字幕でのローカライズが施されているのだから、どれほどの手間が掛かったのか想像するだけでも気が遠くなる。

「ウィッチャー3」の時と同様に、個々の翻訳も非常に出来がいい。日本語にローカライズされた海外の映画やゲームをプレイしていると、キャラクターの台詞に独特の翻訳っぽさを感じることも多いと思うが、本作では日本発の作品と比較しても遜色がないほど、日本語として自然な表現に翻訳されている。前回筆者がプレイしたハンズオンでは、まだ日本語のローカライズが不完全な形だった分、日本語のローカライズが徹底されたことで、世界への没入感が大幅に増したことが実感できた。

また強く感じたのが、ストーリーのドラマ性の高さだ。ネタバレになってしまうためストーリーの内容については伏せるが、ゲームの序盤からドラマチックかつ衝撃の展開の数々が待ち受けており、とにかく続きが気になる。筆者はRPGをプレイすると、サブクエストなどをやり尽くしてからストーリーを進めないと気がすまないタイプなのだが、本作は続きが気になるあまり、大量のサイドジョブや依頼を放置したままメインストーリーを優先して進めてしまっていたほど。オープンワールドRPGというと、その自由度の高さから何をするべきか途方に暮れてしまうという人も少なくないかと思うが、本作のメインストーリーはアドベンチャーゲーム並に凝った演出や豊富なシチュエーション、ドラマ性の高いシナリオが用意されており、この部分だけでもプレイする価値はある。

それに加えて、これまでに紹介した装備を集めるハクスラ的な楽しみや、サイドジョブなどの膨大なミニクエストなど、やりこみ要素も凄まじく、リニア型のストーリー性と演出とオープンワールド型の自由度という、正反対の2つジャンルを足して割らずに成立させた、超リッチな作りとなっている。

選択肢によって、ストーリーが全くことなる展開を見せることも。

長い開発期間が必要となったのも頷ける、まさに超大作と呼ぶにふさわしい「サイバーパンク2077」。発売を迎えた際には、是非ナイトシティの住人の1人となり、その壮大な世界観と物語を体験して欲しい。

※画面は開発中のものです。

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