「三國志14」の越後谷プロデューサーにインタビュー-本作に込めた開発陣のこだわりや思いとは?【TGS2019】

インタビュー
0コメント 仁志睦

千葉・幕張メッセにて9月12日より開催中の「東京ゲームショウ2019」。2020年1月16日の発売が決定した「三國志14」のプロデューサー・越後谷和広氏にインタビューする機会が得られたので、その模様をお届けする。

東京ゲームショウ2019のコーエーテクモブースにてプレイデータ収集版がプレイアブル出展されている「三國志14」。1枚マップや君主制の復活、「施政」をはじめとする内政システムなど、見どころ満載の本作についてプロデューサーの越後谷和広氏にお話をうかがった。

コーエーテクモゲームスの越後谷和広氏。
コーエーテクモゲームスの越後谷和広氏。

――初日のステージの反響はいかがだったでしょうか。

越後谷氏:生放送などを見て、楽しそうと言ってくださった方がたくさんおられました。非常にありがたいですし、生放送をやったかいがあったなと思います。

――今回はプレイデータ収集版が出展されていますが、収集したデータの内容はすでに見られているのでしょうか。

越後谷氏:今のところはただ収集しているだけです。プレイデータだけではなく、アテンドのスタッフが実際にプレイを見て、操作にとまどっていたところや詰まっていたところなどもチェックしています。

――スタッフの方たちが集めたデータで、ユーザーのプレイの傾向のようなものはありましたか?

越後谷氏:まだそこまではちょっと分からないですね。今はどんな結果が出るのか期待しているところです。

――今作では1枚マップを採用されているわけですが、かねてからユーザーの要望などが多かったのでしょうか。

越後谷氏:私としては初代の「色塗り」のテイストを復活させたいというのがありました。その上で開発チームを構成したのですが、主要スタッフに「三國志IX」(以下「IX」)、「11」の中核メンバーが意外といたんですね。で、やっぱりあれは良かったと、自分たちも作っていて思ったらしくて、それをさらに進めたい、深めたいという意志がありました。

「12」、「13」と武将プレイでやってきまして、「13」の「with PK」はかなり評判も良くなっていたとは思います。ですが、そうしたスタッフたちの意志を受けて、確かに原点である君主プレイに立ち戻るのも悪くないねと。私の「色塗り」も初代の君主プレイあってのものですから、そこはシンクロするだろうということで、それでいってみようという話になりました。

――開発チームの方たちがそちらの方向に積極的に行こうとされたと。

越後谷氏:そうですね。ただ、「IX」、「11」の評判の高さが裏付けになってくれたというのはあります。お客様の評価も高いのであれば、より良くすることで、もっと喜んでもらえるんじゃないか、みたいな感じで。

――開発陣の意向があって、そこに過去作におけるユーザー、ファンの評価も加わって今回の形になったというわけですか。

越後谷氏:そうですね。

――今回の1枚マップの魅力、今作ならではの部分を教えてもらえますか。

越後谷氏:物語的なリアルを追求している部分でしょうか。たとえば、マップ内の長江と黄河は実寸よりも全然太いです。当時の船や技術で大河を渡るのって、今の我々が想像する以上に難しい事業だったに違いないですよね。距離感的にも別の国くらいの遠さを感じていたに違いないということで、そのイメージに合わせました。なので、上から見ると「やたら太いね、この川」と思われるかもしれません。

――そうした物語的な演出がマップにも含まれているわけですか。

越後谷氏:当時の物語上での踏破の難しさといいますか、難易度みたいなものを元にデフォルメしている感じですね。長江は赤壁の戦いが行われた場所ですから、大部隊が展開できるような太さにしようというのもありました。あと、蜀が滅亡する際の剣閣のルートもすごい難易度の山越えになっています。

――実際よりもさらに断崖絶壁になっていると。

越後谷氏:しかも長いというね。「なんでこんな道を行くの?」みたいな感じになっています。

――最初はリアルに作ったけど、今ひとつ盛り上がりに欠けるな、みたいなところもあったのでしょうか。

越後谷氏:そうですね。たとえば長江って実寸のままですと、太さが1マスとか2マスになっちゃうんですよ。それで赤壁もないでしょう、と。なので、そこはウソっていうわけではないですけど、物語に合わせて誇張している感じですかね。

――今回は君主制なわけですが、君主制と武将制でユーザーの支持に差はあったりするのでしょうか。

越後谷氏:正直、分からないですね。どちらの支持もあるという感じで比べられないです。そもそも、このふたつは完全に別のテイストのゲームだと思っています。私は「三國志VII」の企画会議に出ていたことがあるんですが、そのときもそもそも全武将プレイは「三國志」なのか、みたいな議論がされたんです。それは別の物なんじゃないのかって。そんな議論が社内でもされたくらい本質的には違うゲームです。ですから、全然そこにこだわりはなくて、今回は君主制にしてみましたくらいですね。どちらの評判がいいか、みたいなリサーチからスタートしたわけではないです。

――土地の奪い合いというのが全面に押し出されているように感じましたが、そこをフィーチャーされた理由を聞かせてもらえますか?

越後谷氏:先ほど言いました「IX」、「11」のメンバーの提案ですね。都市、国の奪い合いみたいなものではなくて、もっと面といいますか、戦線を押し上げるみたいな形の戦闘にしたいというのをデザイナーが強く思っていました。

――最初に言われていた「色塗り」からきたわけではないんですね。

越後谷氏:そうですね。システムはシステムで別な発想から出てきて、それに色のエッセンスをブレンドした感じですね。

――戦闘は戦略を決定して、リアルタイムで進軍していく、いわゆる同時プロット制となっていますが、こちらを採用された理由を聞かせてください。

越後谷氏:「IX」で手応えがあったみたいで、さらに極めていきたいっていう話が現場からありまして、じゃあそれでいってみようという形になりました。

――個人的には最近のシミュレーションはリアルタイム志向が強いような気もしますが。

越後谷氏:確かに、同時プロットのシミュレーションって世の中にはほとんどないと思います。ですが、「三國志」とか「信長の野望」に適応するには少し忙しすぎる。ちょっとお茶を飲みながらゆっくり考えさせて、みたいな(笑)、落ち着いたリアルタイムというイメージで同時プロットを採用しています。

――ゆっくり考える時間をユーザーに与えてあげたいと。

越後谷氏:それはあります。セーブデータもけっこう保存できるようになっているので、すぐにやり直すことができます。

――戦闘では兵站を切るのがポイントになっていますが、そうした理由を教えてください。

越後谷氏:猪突して都市を奪ったら勝ちって、全然補給を考えていないじゃないですか。そうではなくて、いわゆる面として(戦線を)押し上げていく。じっくり攻めるのが正道で、ひとつの答えだと思っていまして、それを表現したかったんです。

――私は自分でプレイしたとき、数にモノを言わせようとして痛い目をみました。

越後谷氏:力押しでだけではダメっていうのは用意したかった部分です。

――そこはユーザーの側にも一工夫してほしいと。

越後谷氏:そうですね。あと、シブサワ・コウご自身が、いわゆる戦術的な逆転要素が大好きというのが色濃く反映されていると思います。戦略が重要になるのは間違いないです。ですが、戦術で逆転の一手が打てる。戦略を引っくり返すほどではないにせよ、局面局面では十分に逆転があり得るのが戦術という位置づけで、そのきっかけの一要素にもなっています。

――進軍時に自軍がAIで判断して最適なルートに向かっていくシステムですが、自分はアバウトなタイプなだけに面白いし、ありがたいなと思いました。ただ、細かく設定したがるタイプのユーザーだと「勝手に動かれると困る」と思ってしまうような気がしますが、そのあたりはどうお考えでしょうか。

越後谷氏:そのときには次の戦略フェイズで、もう一度指示し直してもらえればいいと思います。

――そこは修正可能なんですね。

越後谷氏:たとえばですけど、進行ルートに経路を最大5カ所設定できるので、こういってこういってこういってと細かく指示しておけば、一応その通りに進みます。戦況が動いて、だいたいムダになるんですけどね(笑)。ですから、細かく指示を出すよりも、むしろうまくはしょって命令を出してもらえればと思います。

自軍のAIですが、実はとりあえずおおざっぱに指示を出すと、最短で移動しようとするだけなんです。で、陣形によって進軍速度が違っていて、整備された道を行くと早くなるパターンと、普通の道でも森の中でも移動速度があまり変わらないパターンもあるんです。だから、森に行ったほうが最短の日数で着くっていった場合はそっちに行ってしまって、勝手に二手に分かれちゃったりするわけです。

――慣れてくれると、そうしたAIの動きを先読みして指示を出せるようになるかもしれませんね。

越後谷氏:そこが指揮官の腕の見せどころですね。あと、能力の高い武将だと占領した際に色を塗る範囲も大きくなっています。目的地にヒョイっと進ませるだけで広範囲をきれいに塗ってくれるんですけど、武将の能力が低くて兵力も少ないと1マスしか色を塗れないとか。それこそ細かく色を塗っていかないといけないので、そこは使える部下と使えない部下でかなり変わってきますね。

――内政のキモになるという「施政」ですが、アイディアの元になったようなものはあるのでしょうか。

越後谷氏:過去作でも似たようなものはあったんですが、今回は「施政」そのものではなくて、そこに担当官をはめたときの政策のバリエーションといいますか、その成果が重視されています。その部分でも武将の能力差がけっこう如実に出るといいますか、すごい能力が高い一部の武将はそれこそ何人分もの力を発揮します。ですから「施政」の図そのものよりも、そこにどう武将をはめ込むかが重要になります。

――そちらのほうがポイントになると。

越後谷氏:と、思います。なので、結果として人材の確保が重要になってきますね。とりあえず数はいっぱいいて、戦線は維持できるけど、勢力を伸ばすには一歩力が及ばないと。そうなったとき、誰か中核スタッフが欲しいよねってなります。で、どこからどんな人を集めればいいかっていう話になり、他の勢力のパラメータとか見て、忠誠度が低くて能力が高いヤツを引き抜くとか、人材捜索に行ったりするわけです。

――「施政」にはめられる政策の総数はどの君主でもだいたい同じですか?

越後谷氏:ちょっと差がある場合もあるかもしれませんが、ほぼ同じはずです。あと、勢力自体の成長によって、はめられる個数が変わってきたりします。

――初日のステージで曹操の「覇道」、劉備の「王道」、孫権の「割拠」という3つの「施政」のタイプが紹介されましたが、他にも種類があるのでしょうか。

越後谷氏:パターン的には倍くらいありますね。たとえば呂布は戦闘特化型で内政がほぼなかったりします。

――呂布らしいといえばらしいですよね。

越後谷氏:なので、攻めはすごい強いですけど、あっという間に兵糧が枯れてしまうので、天下を獲ろうと思ったら相当大変です。それでも、たとえば諸葛亮を軍師に据えることができたら全然違いますから、可能性としてはゼロではないです。

――武将の政策の相性ですとか、組み合わせによる相乗効果のようなものはあったりしますか?

越後谷氏:はい。今はまだ詳しいことは言えませんが、それは考えています。

――関羽の「三軍強化」といった強力な政策が紹介されましたが、他にも面白い政策がありましたら教えてもらえますか。

越後谷氏:荀彧の「王佐」とかですかね。内政で業績をなした人の政策は「おおっ」というものが備わっています。あとは高い地位にいた武将。夏侯惇などがそうですけど、高い地位にいたのは伊達じゃないんだなっていう政策をちゃんと持っています。かえって呂布なんかは部下になったときは「なんかあったっけ?」って感じです(笑)。

――なるほど、政策面では彼はダメダメなんですね。

越後谷氏:そうです。呂布は先頭に立ってこそ呂布です。あと、曹操軍だと荀彧と郭嘉のどちらを軍師にするか、けっこう悩むんじゃないですか。荀彧は完全な内政型で、郭嘉はどちらかというと謀略型なので、けっこう違ってきます。そういう意味では配下の武将のほうが重要度は高いですね。

――そうした武将の能力を考えるのは大変でしょうね。毎回さまざまな武将の能力がいろいろ見直されていますが、一方でベースとなっている「三国志演義」を大事にされているとも感じます。そこのせめぎ合いがかなりあると思うのですが、いかがでしょうか。

越後谷氏:昨日、シブサワ・コウご自身もおっしゃられていましたけど、苦労と言いながら、でも楽しいんですね。自分の思いをそのまま数値に投影できるので、担当者はかなり楽しいと思います。気分的にはいちユーザーに近いんじゃないですか。今回も大きく変わっているわけではないですけど、細々といくつかいじっています。あとシナリオによって違ってくるという感じですね。

――ちなみに、今回新しいシナリオが登場する予定はありますか。

越後谷氏:いえ、まずはオーソドックスな形になるかと思います。むしろ同じシナリオをプレイすることで過去作との違いを体感できるのではないでしょうか。

――そんなに展開が変わってくるんですか?

越後谷氏:変わりますね。あと、当然ながら始める勢力によっても、だいぶ違うと思います。たとえば赤壁の直前の場合、劉備だと曹操に飲み込まれちゃうパターンが多いんじゃないですかね。やっぱり当時の曹操と劉備の戦力差は相当あるんですよ。劉備側は武将も少ないですし、質的にも関羽や張飛みたいな攻め型がほとんどで、まだ諸葛亮もいないですから。これほど戦力差がありながら、史実で劉備が曹操軍を新野で撃退できたのは、曹操側がさほど本気で落としにかかっていなかったからかもしれませんね。

――もしかしたら、こういう歴史だったのかもしれないみたいな展開になると。

越後谷氏:あくまで今回のアルゴリズムですけどね。もちろん歴史になるべく忠実になるようにとは思っていますけど、一方で歴史って事実が理論を超えているみたいな出来事がいろいろあるじゃないですか。だから、やっぱりあのときの劉備はミラクルだと思いますし、物語として面白いんじゃないでしょうか。

普通なら勝てるわけがないですからね。孫権と周瑜が赤壁で曹操を撃退したのもミラクルの部類ですよ。もちろん史実的には疫病が流行ったとか、いろいろあったんですけど、そこは物語として連環火計で撃退したみたいな。ああいうドラマチックな逆転劇があるから、より面白くなるんだと思います。で、そのシナリオのデータで実際の戦略差を見ていただいたら、そのヤバさがもっと分かってもらえるんじゃないですかね。

――「三国志」が好きな方だと「ああ、なるほど」となるでしょうね。

越後谷氏:そうですね。そこでちゃんと逆転してみせたり、歴史の逆をいったりとか。そこが歴史シミュレーションゲーム本来の面白さだと思いますので、ぜひいろんな味わい方をしてもらいたいです。

――早期特典やDLCなどの予定はありますでしょうか。

越後谷氏:一応、早期特典は用意するつもりです。せっかく早めに買っていただいた方には何がしらのメリットがあるような形にさせていただこうと思っておりますので。今のところ考えているのはそれぐらいですね。あとは、いつも通り「トレジャー」な感じで(笑)。

――なるほど、分かりました。それでは最後にファンに向けてメッセージをいただけますか。

越後谷氏:プレイデータの収集版の配布が決定しましたので(9月14日に行われたステージで2019年10月11日の配信が公開された)、気になる方はぜひ一度体験してみてください。プレイデータの収集と銘打っていますので、AIの強化に参加するつもりでプレイしていただいて、製品版が完成するところまで、ぜひご期待いただければと思います。

――ありがとうございました。

※画面は開発中のものです。

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