自称「ゲームソムリエ」の津久井箇人 a.k.a. そそそが、オススメのダウンロードゲームを紹介する連載企画「そそそのダウンロードゲームれこめんど」。第3回はMemory of God / Lambic Studios開発、Fellow Travellerから発売中のNintendo Switch用ダウンロードゲーム「The Stillness of the Wind」を紹介!
Gamerをご覧の皆さん、こんにちは。ネット界隈で「そそそ」と呼ばれているゲーム大好き音楽クリエイターの津久井箇人です。“どんな人にハマるゲームか”を実際にプレイしてお伝えしていくゲームプレイレポート【そそそのダウンロードゲームれこめんど】略して【そそれこ】の時間がやってまいりました。
忙しいからなのか、28日間とほかの月より短いからなのか、2月があっという間に過ぎていきました。年齢を重ねるごとに時間の流れが早く感じられるようになり、つい先日、新年を迎えたと思ったら、もう3月ですよ。本当にあっという間です。
今回紹介するタイトルも、そんなあっという間の時間の流れを体感する作品です。
「The Stillness of the Wind」ってどんなゲーム?
直訳すると「風の静けさ」というタイトルの本作は、退廃的な世界観の中、独りで古びた小屋で暮らす老婆「タルマ」となって、人生の最期の迎えるという少し変わったゲームです。ゲーム中、明確な目的は示されません。ある意味ではゲームの形に落とし込んだ「メディア作品」と表現しても良いかもしれません。
かつて、たくさんの家族に囲まれ賑やかな環境で暮らしていた「タルマ」ですが、晩年は1人で小屋で暮らしています。彼女が最期のときを迎えるまでに何をするのか、何に思いを馳せるのか。叙情的な表現が随所に見られ、心に直接訴えかけてくるような独特の言葉の表現や、フォトリアルとは異なる不思議な映像表現が魅力となっています。
この胸を締めつけられる感覚はなんだろう?
シミュレーションよりアドベンチャー要素が強い
まず、本作は作物の育成などを行う「ガッツリとしたシミュレーションゲーム」ではありません。畑仕事や家畜の世話などは本作にとって非常に重要な要素のひとつではありますが、あくまでも「タルマ」という老婆、1人の女性の人生を問うような「詩的な表現」がゲーム内容の主軸となっています。
しいて言えば「雰囲気重視のアドベンチャーゲーム」なのですが、そういった枠にも当てはめにくい、一言では言い表せない「メディア作品」です。プレイヤーが老婆「タルマ」を通して何を感じ取るのか。プレイヤーそれぞれに「作品」に対する心への響き方は違ってきます。
たぶん何もしなくてもエンディングはやってくる
エンディングはもちろん「タルマ」が最期を迎えたときにやってきます。ほとんど何もしなくても彼女は最期の時間を迎えることになるでしょう。そのため、エンディングを見ることは本作の目的ではありません。彼女が最期の時間を迎えるまでに、どんなことを行い、何を感じ取るか。筆者は、それが本作の本質にあたる部分であると考えます。
作物の世話をする。家畜の世話をする。美味しい食事を取る。家族との思い出を振り返る。限られた時間の中で、いかに充実した生活を送るかは、ゲーム内の「タルマ」だけでなく、プレイヤー自身の心の充実に直結します。後悔のない最期を「タルマ」に迎えさせてあげたくなります。
旅の商人とのやりとり
1日1度、小屋にやってくる旅の商人によって「物々交換」と「手紙の受け取り」が可能です。これらは、シミュレーション面においても、ストーリー面においても、非常に重要な要素となってきます。
本作には金銭の概念がない代わりに、商人との物々交換によってアイテムを手に入れることになります。物々交換でしか手に入らないものも沢山あるので、作物などを上手く育てて、自分が欲しいものと交換できるか。「価値」は数字で見えるわけではないので、いま自分が必要なものは何かを念頭に、しっかりと渡すものと欲しいものの「価値」を見定めて、交換するものを決める必要があります。
タルマの家族はどうなった?
離れた家族の手紙を届けてくれるのも旅の商人です。この手紙に書かれた内容が本作のバックボーンに広がる「ストーリー」と言えます。届く手紙は必ずしもリアルタイムに起きている出来事とは限らないため、「その後一体どうなっているのだろう」という想像力が掻き立てられます。
手紙には作物の「種」が付いていることがあります。種から作物を育てておくと、前述の物々交換にも使えるので、畑仕事で育てるものが手に入りにくい序盤は特に見逃さないように気をつけましょう。
気になったところ
デフォルトが英語
日本向けにローカライズされているものの、デフォルトが英語になっているため、オプションを開いて日本語に設定する必要があります。ゲーム開始直後、オプションを開くまでは、英語でプレイするほかないので、とにかくオプションが開けるようになったらすぐに言語設定を自分に合ったものに変更することをオススメします。
物々交換の際の字が小さい
めちゃくちゃ小さいです。デザイン性を重視しているのかもしれませんが、視認性が低いとプレイがし難くなってしまいます。
自由すぎてわからないことが多い
UIをスッキリさせるために、必要最低限のアイコンでしか「案内」は表示されません。本作で何をすべきか特にわからないゲーム開始直後は、本当に何もかわからない状況に陥りました。道具の基本的な使い方や、日々の過ごし方の基本程度のチュートリアルがあると、スムーズにゲームに入っていけるのかなと思いました。試行錯誤で数日かかってしまったことをけっこう後悔しています……。
小屋の外に出ると、本当に帰れなくなりかねない
小屋の柵の外には荒廃した土地(砂漠)が広がっていて、自由に出ていけます。自生している食べられる植物なんかもあります。しかし、いかんせん何もない土地が続いているため、小屋から離れ過ぎると本当に自分がどこにいるのか、小屋がどこにあるのかわからなくなります。ガチで迷子です。
本作のコンセプト的に「なし」かもしれませんが、せめて小屋が見えなくなったときだけでも、小屋の方向がわかるようにしてくれるとありがたかったです。
動きの遅さ
とは言え、老婆がキビキビ動くのも変なのですが(笑)。例えば、作物に水を与えるには小屋の柵の外にある井戸まで水を汲みに行かなければなりません。しかし、一往復でおよそ半日過ぎてしまいます。スローな雰囲気が漂うゲームなのですが、実際プレイしてみると案外慌ただしさを感じてしまいました。時間・距離・移動速度のバランスをもう少しだけゆとりのあるところに落とし込んでもらえたら、よりゲームの雰囲気を楽しめるのではないかと思いました。
食事をするゆとりがないのだけれど……?
育った作物やチーズなどを料理することで、「タルマ」に食事をとらせることができます。しかし、食事をほとんどとらなくてもゲームを進行できるため、そのメリットがはっきりせず、筆者はついつい生活の状況を少しでも良くするための物々交換を優先してしまいました。
このプレイスタイルに問題があったのか、あるいはなかったのか、プレイ中にはっきりせず、検証しなければならないあたりが少しモヤつきました。
総評:老婆の最期に希望を見出せるかはプレイヤーの心次第
ゲームというよりも、ひとつのメディア作品を体感するような本作。気になるところも多い実験的なタイトルではありますが、ひとまずのエンディングを迎えたところで、普通のゲームでは味わえない、深く心に何かが刺さった感覚を覚えました。「タルマ」の最期の時間をもっともっと幸せなものにできたのではないかという「後悔」にも近い思いなのかもしれません。今まで筆者は、ゲームをプレイしてこんな思いを抱いたことはありませんでした。
グラフィックが美しいとか、キャラクターの演技がすごいとか、確かにそういった感動で心が揺さぶられることもあります。対して本作は、簡易的に描かれたキャラクターの仕草、詩的な表現の多い文章、音楽を含めたサウンドなどで心が大きく揺さぶられ、ゲームから味わえる感動に新しい可能性を見出すことができました。
しかし筆者が感じた感動は、筆者のプレイのせいで、あまり「ハッピーな感動」ではなかったということが非常に残念です。「タルマ」を通してハッピーな感動を得られるかどうかは、複数回プレイして検証しなければならないかもしれません。しかし、ハマる人にはそれだけの価値があるゲームであると思います。
「ハッピーな感動」を得るためには効率の良いプレイが必要になるかもしれませんが、攻略サイトなどを見ると魅力が確実に失われるタイプの作品だとも感じました。自分が老婆「タルマ」とともに考え、行動することによって、初めて「心に何かが刺さる感覚」が得られると思います。プレイヤーに対して「自己満足でも構わないから後悔のない最期を迎えさせてあげたい」と思わせる説得力。そういったものが作品に強く込められていると感じました。
こんな人にオススメ!
- 雰囲気重視のアドベンチャーゲームが好きな人
退廃的な世界に描かれる独特な雰囲気は非常に惹かれるものがあります。 - 物語の考察が好きな人
断片的に届く手紙からしか読み取れないバックボーンがかなり気になります。 - ゲームらしくないゲームが好きな人
老婆を主人公としたメディア作品を体感している印象を強く覚えました。
老婆「タルマ」のひとつひとつの行動、手紙の内容など、この作品から伝わってくるすべてが本作の魅力を形作っているため、今回はゲーム内容に切り込んだレポートができませんでした。それらひとつひとつが「ネタバレ」になってしまうと感じたためです。申し訳ありません。しかしながら、この記事を読んで、本作に引っかかるものを感じた人は、ぜひプレイしてみてほしいと思います。きっと、心に何かが残る不思議なゲーム体験ができるはずです。
【そそれこ】第3回、いかがだったでしょうか。花粉症の知人が次々と苦しみ出し、そんなところからも春の訪れを感じています。春は華やかな反面、何かと辛いことが多い季節でもあるので、たまには思いっきりゲームにでも没頭してリラックスしてみてはいかがでしょう? 次回もどうぞお楽しみに!
プロフィール
津久井箇人 a.k.a. そそそ
自称「ゲームソムリエ」として、さまざまなウェブメディアでゲームプレイレポートを執筆。物心付いた頃にはMSXでゲームをプレイしていた根っからのゲーム好き。一方で、アーティスト・声優・ボカロの楽曲を手掛ける作曲家としても活動中。エンタテインメントにおけるプロとインディーの垣根を越えた活動を模索し続けており、近年は自身が代表を務めるサークルである創作集団「S-TRIBE」にてバーチャルYouTuberのプロデュースも行っている。
https://twitter.com/sososo291
■エンタメ創作集団 S-TRIBE 公式サイト
https://s-tri.be/
■エンタメ創作集団 S-TRIBE YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/STRIBE
My Nintendo Store - The Stillness of the Wind
https://ec.nintendo.com/JP/ja/titles/70010000013241
(C) 2018 Lambic Studios
本コンテンツは、掲載するECサイトやメーカー等から収益を得ている場合があります。












































