昨今はネットの活用などによりゲームの楽しみ方が変わりつつある。その中の一つのアプローチとして、「ゲーム実況」が大きな盛り上がりを見せているが、この背景などについて「ニコニコ動画」関係者が講演を行ったので紹介したい。

CEDEC 2014の会期2日目となる9月3日、「“ゲーム実況”時代のゲームプロモーション niconicoの事例から」と題された講演が行われた。登壇したのは株式会社ドワンゴ 会長室ゲーム戦略グループの伊豫田 旭彦氏。
ゲームを遊ぶ様子を動画で投稿し、視聴者と一緒に楽しむ文化は、いまや完全に市民権を得た。スタープレイヤーというべき存在も現れているが、いったいなぜ、ここまでの人気となったのか。またゲームメーカーは、この新しい文化とどのように関わっていけばよいのか。「ニコニコ動画」を運営するドワンゴが、ゲーム実況のプラットフォーマーの立場で講演を行った。
ゲーム実況はなぜ人気なのか?
プレイヤーがゲームを遊ぶ様子を動画で投稿する「ゲーム実況」は、現在、一大ブームを巻き起こしている。ニコニコ動画における人気配信者はアイドル並の人気があり、また海外でも、スウェーデンのとあるゲーム動画配信者が「YouTube」で年間4億円を越える広告収入を得たというニュースが話題になった。いったいなぜ、ゲーム実況はこれほどまでの盛り上がりを見せているのか。
講演を行ったドワンゴの伊豫田 旭彦氏は、そもそもの前提として、ゲームのビジネス構造が大きく変化していると語る。旧来のゲームソフトは販売形態がパッケージ形式で、たとえばプロモーションなどに関しても、発売日のタイミングで盛り上がりが最高潮に達するように展開されていた。
その点、近年のゲームソフトでは、インターネットによる本編のダウンロード販売や、ダウンロードコンテンツ(DLC)そしてアイテム課金などが盛んである。またプレイヤーも、購入前にネットで評判などを調べたりするのが当たり前だ。つまり、パッケージ形式のゲームソフトと比べると、発売後に盛り上がりを継続させることがプロモーションの大きな要となる。伊豫田氏はこの両者の違いについて、前者が「買い切り型」、後者が「運用型」と切り分けた。
運用型のゲームにおいてプレイヤーは、(買い切り型のように)ゲームコンテンツの本編と向き合って遊ぶだけでなく、いうならばコミュニケーションの一環としてゲームを楽しんでいる。熱心なプレイヤーは、ゲームをいかに面白く遊ぶか常に模索しており、そのアプローチの一つとして「ゲーム実況」が生まれ、広まっていったと伊豫田氏は語る。
そのうえで、ゲーム実況の人気が一気に高まった要因に関しては、ゲーム関連のコンテンツがインターネット上で元々人気が高いことと、熱心な配信者が魅力的な動画を数多く投稿し、視聴習慣を作ったことが大きいと分析。ニコニコ動画では動画再生数の内34%がゲーム関連で、生放送に関しては52%に達している。またYouTubeや、PCゲーム向け実況配信プラットフォームの「Twitch」の盛り上がりを見ても、ゲーム関連動画の人気は高いのは明らかだ。
そして言うまでもなく、ゲーム実況の配信者も大のゲーム好きなので、その思いが強ければ、より視聴者に魅力が伝わる方法を模索し、頻繁に配信することになる。動画配信の各プラットフォームは、頻繁に配信する人にファンが定着すると、さらに周囲から注目を集めやすい作りになっており、相乗効果で人気が膨れ上がっていく。現在人気の配信者は毎日動画を投稿するのが当たり前で、彼等の熱心なファンにとっては「笑っていいとも!」や「オールナイトニッポン」よりも長く、彼等の声を耳にしている計算となる。その結果、冒頭部で紹介したアイドル級の配信者や、4億円プレイヤーが誕生しているわけだ。
「“有名な配信者になりたかったらどうすれば良いですか?”と聞かれたら、“毎日動画を投稿するのを3年間続けなさい”と答えるでしょうね」と伊豫田氏は語る。言い換えると、現在のスタープレイヤーは、それくらいゲームが好きで、同時にマメであるというわけだ。
ゲーム実況はゲームメーカーにとって「敵」ではない
ゲーム実況を「配信者」と「視聴者」が存分に満喫しているのは分かったが、それではもう一方の「ゲームメーカー」にとって、どのように映るだろうか。ゲームメーカーの視点では、自分たちのコンテンツを勝手に利用して商売されていると考えられなくもないが、果たして彼等にとってゲーム実況は「敵」なのだろうか?
伊豫田氏はこれに対し、一部の例外(※ストーリーのネタバレがクリティカルな影響を与える、など)を除けば基本的に敵ではないと語る。また、現在の「運用型」のゲームソフトにおいては、ゲーム実況をプロモーションに組み込むことで、売上に結びつけることも可能だそうだ。
2013年5月にPlayStation3版が発売された「テラリア」では(2014年2月にPS VITA版も発売)、発売前の先行プレイ実況を皮切りに、生放送番組などを積極展開。その結果、動画配信を交えてテラリアを遊ぶプレイスタイルが定着し、それは発売後1年が経過してしても続き、視聴者の目に留っている。ロングテールの末25万本を超えるヒットとなっており、購入者向けにアンケートを行ったところ「ゲームを知ったきっかけ/購入時に参考にした情報源」の2設問において「動画サイト」が1位だったそうだ。
そのほかの事例としては、「Minecraft」の開発会社からドワンゴへ、有名な配信者を紹介して欲しいというオファーを受けたこともあるそうだ。配信者が継続的に活動してくれれば、それがプロモーションに結びつくので、彼等のサポートを行いたいと考えているわけである。また「ドラゴンクエストX」「ファイナルファンタジーXIV」「パズル&ドラゴンズ」「ファンタシースターオンライン2」が公式番組を定期的に放送するなど、タイトルによっては動画サイトをプロモーションに組み込むことは自然に行われている。そしてこの動きが更に加速し、PlayStation4本体にシェア機能が搭載されるなど、ゲーム実況を意識したゲーム作りも行われ始めているのだ。
ゲームの楽しみ方が「買い切り型」から「運用型」に変わりつつある現状について伊豫田氏は、過去に「音楽ビジネス」で起こった変化に似ていると語る。以前の音楽は「聴く」ものだったが、カラオケの登場によって「歌う」文化が誕生した。そしてカラオケが人気を博することで、音楽を制作する側にとっても、カラオケで歌いやすい曲を意識して作ると言った風に、音楽コンテンツそのものに影響を与えるようになった。それに近いことが、現在のゲーム業界で起こっており、その分かりやすい例としてゲーム実況の隆盛があるというわけだ。
カラオケで歌われることを意識して作られた歌謡曲が気に入らない人がいるのと同様、運用型のゲームに抵抗感がある、昔ながらのゲーマーもいるかもしれない。しかし少なくとも、ゲームの楽しみ方が変わってきている、あるいは運用型のゲームが大きな人気を集めているという点は、覚えておいて損はないだろう。
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