5pb.より2014年6月26日に発売されたPS3/PS Vita用ソフト「CROSS†CHANNEL ~For all people~」。名作アドベンチャーゲームとして名高い本作をプレイした筆者によるインプレッションをお届けします。
「CROSS†CHANNEL」は、2003年にPC用ソフトとして発売されて以来、PS2、PSP、Xbox 360とさまざまなハードに移植されてきた学園青春アドベンチャーゲーム。発売から10年を経た今、コンシューマタイトルとしては最後の移植として、グラフィックのHD化、そして新たな要素を追加し、「CROSS†CHANNEL ~For all people~」としてPS3とPS Vitaで発売されました。
PC版の発売当時、高校生だった筆者は「なんかすごいアドベンチャーゲームが出たらしい」という噂はちらほらと耳にしつつ、翌年発売されたPS2版も受験生だったのでプレイすることは叶わず。これまでにプレイしたいと思ったことはありつつも手が出ず、あれよあれよと時間は過ぎて10年が経ってしまいましたが、今回、5pb.さんよりPS3とPS Vitaで発売されるということとなり、ようやくきっかけを得てプレイすることと相成りました。
結論から言いますと、これはもっと若い時にやっておきたかった! そんな後悔の念をどこかに含みつつ(?)、作品の魅力と筆者の私感を織り交ぜて、ゲーム未プレイの方に向けてある程度ネタバレしない範囲で紹介していきたいと思います。
“ループ”の存在感によって浮き彫りになる人物描写
最初からややネタバレ気味ではありますが、本作では合宿から帰ってきてからの1週間を延々と繰り返す世界に、主人公の黒須太一をはじめとした群青学院放送部の8人が閉じ込められるという、いわゆる“ループもの”になっています。
ですが、ただ繰り返していくということではなく、序盤、中盤、終盤でそれぞれターニングポイントとなる場面が用意されていて、それらをクリアしていくことで先に進むという、ゲームとしての構造も用意されています。
例えば序盤では、プロローグで描かれた1週間と比べて、続く1週間でどこが同一の事象で、どこが異なる時間軸での事象かを視覚的に見せることでループしているという事実のみならず、情報の整理までもプレイヤーがしやすい構造になっています。もちろん、その時点では太一はまだループの事実にたどり着けてはいないのですが、この時点でプレイヤーが介入すべき太一という主人公の目線と、プレイヤー自身の客観的な目線によって、物語を追っていくことになります。
ループしていくことは、自然に登場人物の持つ性質を浮き彫りにさせていきます。その描写は決して綺麗なものではなく、むしろ人間のエゴともいえる部分が、純粋なかたちで見え隠れします。確かにそれは常軌を逸脱しているものばかりではあるものの、人間が普遍的に持ちうるものであるという点で、決して無視はできない存在感を放ちます。
そもそも本作では、精神に異常を持つ者が増加し、それが社会に及ぼす影響が大きくなった世界を舞台としています。「適応係数」というキーワードによってその人間の異常性が測られるということ、そして適応係数が高い少年少女の精神治療の場として群青学院が存在するということはプレイする上で認識しておくべきことのひとつだと思います。
成長のないループの中での選択が物語を動かす楽しみ
ループしているという説明の中で先ほど触れなかったのが、8人の記憶も1週間でリセットされてしまうということです(厳密には例外もあるのですが、それは本編で確かめてみてください)。
それはとある1週間で何らかの影響によって成長したとしても、次の週には全て失ってしまうということを意味します。基本的に彼・彼女らは本人だけが持つ、決まった枠組みの中で行動していくこととなりますが、唯一、太一だけが毎回独自の視点で動き、そこにプレイヤーも選択肢というかたちで介入することとなります。
太一も例に漏れず、1週間で記憶を失うことになりますが、彼はその都度違う選択をし、新たな道筋を切り開いていくこととなります。それはプラスに働くこともあればマイナスに働くことも当然ありますが、そういった選択によって物語が停滞するか動き出すかを楽しめるのは、とてもゲーム的なアプローチだと思いました。
これは私感になるのですが、本作におけるループは、例えば同じく5pb.より発売され、ループもののひとつとして評価の高い「STEINS;GATE」とは異なる構造だなと思います。どちらもネタバレにつなげてしまうと良くないと思うので端的に表すと、「STEINS;GATE」は並列的な構造、「CROSS†CHANNEL」は閉鎖的な構造かなと。これはプレイした人にとっては異論もあるかとは思いますが、これからプレイする人は頭の片隅に入れておいて、ツッコんでください。
ダイレクトに描くことで普遍的なテーマを引き出す
ここまではループという点に注視して紹介していきましたが、あくまでも目につきやすいところという部分であり、本質的な作品としての魅力は別のところにあると思います。
もう少し作品に踏み込むかたちになりますが、作中で登場人物の一人である佐倉霧が太一に対して「怪物」と言及するシーンがあります。何をもってそう呼ばれたのかはここでは言及しませんが、彼がそう呼ばれていることこそが、彼自身の持つ心の闇となります。
その心の闇に対して何らかの答えが得られる時、つまりはエンディングに向かう時になるのですが、彼の中で大きな変化が訪れます。それは人間としてどう生きていくのか、ということに対する彼ならではの答えにもつながっていきますし、このループを幾度にもわたって歩んできた結果としてプレイヤーにも突き刺さります。
この作品におけるループ構造を紐解くのが客観的な視点だとしたら、このテーマに触れることこそが主人公の太一視点としての本作の楽しみ方ではないかと思います。少なくとも、筆者がPC版発売当時の年齢であればよりダイレクトに突き刺さってきただろうと思える最後でしたし、それは誰の目線で捉えても普遍的なものなのではないかなと感じます。
ほかのキャラクターの視点で楽しめるのはPS3/PS Vita版だけ!
ここまでは本編の内容について紹介してきましたが、PS3/PS Vita版では太一の視点で物語の終わりを見届けた後に、それぞれの登場人物の視点による1週間のエピソードを楽しむことができます。
もともと作品が太一の一人称で語られる物語だったことから、本編ではほかの登場人物の視点で語られることはありません。そこを丁寧に補完してくれることで、行間から想像するしかなかった彼ら、彼女らの心情がより深く、より鮮明に描き出されます。
こちらは本編を最後まで楽しんだ人のお楽しみ要素となりますが、おそらく未プレイの人は、こちらをプレイする頃には本作の魅力に惹きこまれていることと思いますし、すでに他のハードで遊んだことがある人も当時を振り返りつつプレイを楽しみ、その上で新たな魅力に触れることができると思います。
近年度々登場し、世間を騒がせているループものと比べても遜色ないどころか、その完成度の高さとテーマ性の強さに驚かされ、名作たる所以を今回ついに実感することができて感無量です。アドベンチャーゲームの魅力にどっぷりとつかることのできる本作をぜひプレイしてみてください!
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賞品
PS3「CROSS†CHANNEL ~For all people~」ゲームソフト(通常版)
提供
株式会社MAGES.(5pb. Games)
当選数
1名(抽選)
応募期間
2014年7月30日~2014年8月6日
(C)2014 WillPlus (C)MAGES./5pb.
※画面は開発中のものです。
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