マーベラスより2025年6月5日に発売されたNintendo Switch2/Nintendo Switch/PC(Steam)用ソフト「龍の国 ルーンファクトリー(以下、「龍の国」)」のレビューをお届け。なお、レビュー内の操作表記とスクリーンショットについては、Nintendo Switch版に準拠しております。
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農作業や人々との交流を楽しむスローライフゲーム「牧場物語」から派生し、アクションRPGの要素を結合させることで生まれた「ルーンファクトリー」シリーズ。開発元の解散など暗雲垂れ込める時期もあったものの、2021年に「ルーンファクトリー5」として復活。さらなる新作としてこの度、世界観を「和」へと一新して世に放たれたのが今作「龍の国」にあたります。
今回、メーカー様よりソフトをご提供いただき、40時間でメインストーリーをクリアし、愛する人との結婚と出産を見届けた段階でのプレイレビューをお届けします。結論を先に申し上げると、「やることが多い…!!」と悲鳴を上げることすら楽しい、止め時を見失うほどにやり応えのある一作に仕上がっています。

滅びゆく世界に命を芽吹かせる“大地の舞手”となりて世界を救え!
本作の舞台は、これまでのシリーズとは雰囲気を一新した東(アズマ)の国。この国ではかつて「龍星崩落」という災厄が起こり、大地からは活力となる「ルーン」が失われ、草木は枯れ果て里の外には魔物が生息するなど、荒んだ世界へと変わってしまいました。
そんな滅びゆく世界で記憶を失いながらも「春の里」で暮らす主人公は、今は力を失ってしまった里の神様のお告げを受け、世界に恵みをもたらす「大地の舞手」に選ばれます。その使命とは、東の国の4つの里の神様を復活させ、この国を蘇らせること。

大地の舞手のお仕事は主に二つ。一つは、神々から託された「神器」の能力で魔物が蔓延るフィールドを冒険し、里づくりに役立つ素材や食材などを入手しながら切り開いていき、力を失った神々を開放すること。もう一つは、東の国に属する4つの里の長として、田畑を開発し居住地を用意するといった、里の開拓を行うこと。規模や2D/3Dの違いなどありますが、「アクトレイザー」のようにアクションとシミュレーションを融合させたもの、と考えるとイメージが湧きやすいかもしれません。

以上の二つは次の章でそれぞれ解説をしていきますが、世界観に強く紐づいた要素としての「神器」は、本作の大きな特徴となっています。例えば、序盤で入手する「鼓」の神器は、フィールドでは自分や味方のHPを回復させる、枯れ果てた草木を蘇らせるといった使い方をして、里内では作物の成長を1日分早めることができます。
このように、神器は戦闘時と日常の場面でそれぞれ異なる使い道があり、メインストーリーを進める=神々を復活させるごとに新しい神器とその能力が解放され、戦闘面でも日常面でもプレイヤーの出来ることが増えていきます。神器は操作中に自由に切り替えることが可能で、里の外でも中でも、状況に応じて使い分けることでどんどん開拓を進めていきましょう。

簡単操作でサクサクと、戦闘もまるで舞いのように。
まずは里の外を探索する「冒険」の要素を紐解いていきます。里を一歩でも外に出るとそこは、自然が活力を失い、大勢の魔物が跋扈する危険なフィールドとなっています。ここでは主人公の他、仲間を最大3人同時に連れだっての移動が可能で、CPUも攻撃や回復、敵へのデバフなどで積極的に戦闘に参加してくれます。
フィールド内での移動は軽快で、プレイヤーの移動速度も速く回避行動やジャンプなどは他のゲームで言うところのスタミナの制約を受けずに使用できるため、思った通りに動いてくれます。ファストトラベルのポイントもかなり細かく用意されているため、探索の中断と再開についても手厚くフォローされているのも嬉しいポイント。

戦闘システムはシンプルで、武器種は片手剣/両手剣/双剣/弓/呪符の5つが用意されており、メインとサブの2つをワンボタンで切り替えられる他、探索中でもメニューを開いても装備変更が可能で、敵の弱点属性に合わせて武器種を変更することも、落ち着いて可能となっています。片手剣や両手剣はスピーディーに敵を切りつけ、両手剣は広範囲を薙ぎ払うようにして戦うことを得意としており、遠距離武器の弓と呪符は安全圏から自動追尾の攻撃を放ったり、照準を自分で合わせることで高威力な狙い撃ちをしたりと、様々なプレイスタイルに対応しています。
これらはYボタン連打による連撃や長押しによる強力なチャージ攻撃の他、Xボタンで先述の「神器」による攻撃を組み合わせることで、硬直をスキップして攻撃を数珠繋ぎにするといった応用テクニックが強力。ガードに類するシステムはないものの、敵の攻撃を受ける直前にダッシュをすることで「ジャスト回避」が発動、敵の動きがスローになった状態で一方的に反撃することができ、判定も易しいためジャスト回避を連続で決め休むことなく攻撃し続ける快感はかなりのもの。

ボス級との戦いではジャスト回避からの反撃や弱点属性を突いて大ダメージを与えるギミックで歯ごたえがあり、MPに該当するRP(ルーンポイント)を消費しての神器による攻撃や別のゲージを消費して使用する広範囲攻撃などもスキルツリー方式で順次解禁されてゆくため、戦闘面での選択肢がどんどん増え、主人公の成長と強化を実感しやすいところも本作の優れたポイントです。

フィールドでのアクションの手触りはストレスが無く、敵を倒す度にレベルが上がったり素材をたくさん入手したりと、小さい達成感が短い間隔でどんどん放り込まれるからこそ、病みつきになってしまうのです。また、フィールドに多数置かれている「ケガレ」を浄化していくことで、土地を奪還しつつあることを視覚的にも表現していることも、ストーリーへの没入を高めてくれます。
なお、戦闘の難易度は三段階用意されており、その名の通りストーリーを読み進めるために特化した「ストーリー」ではかなり難易度が軽減されるため、里づくりに集中したい時やシミュレーションとしての「ルーンファクトリー」が気になっている方にもオススメです。

適切な人員と建物の配置が問われる、時間泥棒すぎる“里づくり”
大地の舞手に課せられたもう一つの重要なお仕事が、里の復興です。東の国には、春夏秋冬をそれぞれモチーフにした4つの里が存在し、プレイヤーはその里の神様を復活させ地を満たし、その後は里長としてすべての里の面倒を見ることになります。

里の復興に必要なのは、農作物を生産しそれを売って生活費を得ること、商売を成り立たせること、安心して住める家を建てること等々、様々な条件があります。建物は工務店で資材とお金を支払って入手できるので、まずは最低限の住居と田畑を工面して、里の中にある開拓エリアにそれらを配置していくのがファーストステップ。

開拓エリアはマス目状に整理されていて、プレイヤーはそこに畑や樹木の苗木、住宅やお店などの建物を配置していきます。これらはアイテム同士が干渉しない限り自由に配置させることができ、設置場所や向きも設定可能。畑の数は農作物の生産量に、施設の数は稼げる資金や住民の幸福度(住民が里に住み続けてくれるパラメーター)に繋がります。限られたエリアを効果的に、かつ見栄え良く整えようとすると、この里づくり画面で一時間経過、なんてことも本作では良くあることなのです。

こうしたアイテムの配置は主人公が実地で行うスタイルの他、エリアを上空から見下ろす形になる「俯瞰モード」があり、主人公の現在地に左右されることなく里づくりに集中できます。アイテムの配置はもちろん、畑に種を蒔く、水やりをするといった農作業もこの視点のまま可能で、広大な畑のお世話もこのモードならあっという間に出来てしまいます。里の人々と一緒に汗を流して農作するのも風情がありますが、こうした効率化のための手段も用意されているので探索優先型のスタイルの方にも本作をオススメできてしまうのです。

里には評判を聞きつけて様々な人々がやってきて、住民として暮らし始めます。プレイヤーはその里人の生産力や特殊能力(スキルや適性)を見極め、農業、鉱業、お店といった仕事に振り分けることで、生産面のお仕事をお任せできてしまうのです。その代わり、彼ら住民の生活費を工面するのも里長であるプレイヤーのお仕事! 効率よくお金を稼ぐ下地づくりをしておかないと、住民たちの幸福度が下がり、里を去って人手不足になっていくかもしれません。
とはいえ、クリアするための最低ライン=里民の生活費と収入のバランスの黒字化はそこまで難しくなく、畑を増やして農作物の生産量を上げ、居酒屋や雑貨屋などのお店に適性のある人物を振り分ければ、自ずと収支がプラスに傾いていきます。まずはこの黒字化を、プレイヤーが手を下さずとも自動化できるところまで整備してあげれば、その里は安泰と言えるでしょう。

しかし、プレイヤーや仲間の装備の購入や強化、大きな建物や置物(設置するとステータスが向上するアイテム)を造るには大金が必要。そのため、プレイヤーはさらなる収益拡大を目指して、試行錯誤することになります。農地をさらに広げるか、お店を増やすか、見栄えを優先して置物を設置するか。あーでもないこーでもないと考える度に、里づくりの奥深さが遊び手をいい意味で苦しめてきます。あと数マスあれば隅に牧場を増設できるのに!!と何度悔し涙を流したことか。
本レビューのタイトルに沿えた“無限に時間が溶けてゆく!”は、まさにここにかかってくるのです。実は、生産できる建物や置物のレシピは、フィールドに散らばる「カエル石」を調べることで増えていきます。そのため、冒険が進む度に造れるものが増え、それらは全て里の拡充と主人公のステータス強化に直結するため、あれもこれもを置きたくなってしまうのです。そして里づくりが一段落したら、装備やステータスが強化された主人公としてフィールド探索を進め、造れるものが増えてゆく。本作は基本的に、このサイクルを繰り返すことで里と自分を強くしていくのです。

このように、アクション=冒険とシミュレーション=里づくりが絡み合い、相互作用を起こし続けることで、本作はプレイヤーがコントローラーを手放せなくなる遊び応えを実現させました。一度手を出せば止め時を見失う達成と充実感のスパイラルは、今作で「ルーンファクトリー」初プレイである筆者も魅了され、時には寝食を忘れ没頭してしまいました。そんな充実した里長ライフを提供する「龍の国」は、シリーズに馴染みのない方にも胸を張ってオススメできます。
絆の数は伴侶の数!?甘々な新婚生活は忙しい日常の貴重な癒し
冒険に里づくりにと忙しない毎日を送ることになる主人公ですが、プレイヤーにはそれらと同じくらい大切で、楽しい営みが待っています。それは、個性豊かなキャラクターたちとの交流、そして恋愛や結婚です。

ゲーム開始時点で、主人公は「春の里」に住み始めて数日が経過しており、すでに住民たちとも打ち解けている設定で、お茶屋の看板娘「いろは」と「すず」の姉妹や、里長の「サカキ」らも主人公に優しく接してくれます。プレイヤーは彼らと会話を重ね、プレゼントを贈ったり一緒に出掛けたりして「絆レベル」を上げることで、一緒に冒険に出たり料理が出来るようになったりと、より親密なコミュニケーションが取れるようになります。

ゲームが進み、夏/秋/冬の里を訪れ新しいキャラクターと知り合っても流れは変わらず、主人公は出会いを重ねる度に絆を結んでいきます。絆レベルを上げるための選択肢には固定の時間を消費する他、一緒に冒険に出かけてもその分の時間は過ぎていくので、知り合ったキャラクターが増えれば増えるほどに冒険/里づくり/交流の時間管理が重要となり、1日の忙しなさが加速して面白さを増していくのです。
また、絆レベルが上がると解禁される「絆クエスト」ではそのキャラクターの掘り下げがフルボイスで行われる上に、対象以外のキャラクターも登場する内容になっていて、いつの間にかあの人ともこの人とも仲良くなりたい! と思わせる内容になっているところが素晴らしく、自然と愛着を抱いてしまいます。とくに、神様同士なのに人間くさい会話劇の妙は、ボイスキャストの演技も相まってアニメーションを観ているような気分で楽しめます。豪華CVについては、ぜひ公式サイト等をご確認ください。

また、交流できるキャラクターの中には恋人関係になれる者もいて、その数なんと13名(DLC導入で+2名)。しかも、同性同士の結婚や出産も可能ということが発売前にアナウンスされ、気になっていた方も多いはず。
ということで、筆者は主人公を女性の「カグラ」でゲームをスタートし、春の女神様の「うららか」さんと添い遂げられるよう、必死なアプローチをかけていき、彼女との会話や絆イベントを誰よりも最優先。そんな努力が実を結び、勇気を出して告白したところ恋人になっていただき、やがては結婚のお許しをいただいたのです。

ゲームの仕様上、恋人~結婚はシナリオ進行の後半に差し掛かるイベントのためここでは詳細は伏せますが、恋人になると呼び方/呼ばれ方を複数から選択する(後から変更も可能/ボイスは初期の呼び方で固定)という驚きの設定から始まり、一緒に時間を過ごす内容も「手をつなぐ」「抱きしめる」なんてドキドキの選択肢が選べるようになります。
そして結婚後は、主人公の住居となる神社に一緒に住んでくれるようになり、寝起きにお弁当(と称してランダムな料理)を渡してくれたり、新婚さんらしい方法でこちらを元気づけてくれたりするのです。こちらが照れくさくなってしまうようなイチャイチャ加減は、里長として、大地の舞手として皆を引っ張ってきた主人公(とそれを導いてきたプレイヤー)への一時の癒しとして、疲れた身体と心を存分に癒してくれます。その甘さ具合は、ぜひご自身でお確かめください。悶絶必死ですよ。

なお、同性同士の出産はどうするのかな、と思っていると、和の世界観に見合った「なるほど!」という方法で実現させており、こちらも必見です。また、ひとりだけなんて選べないよ、という方のために、“あったかもしれない世界”へと飛んで他の相手との恋愛や結婚を楽しめる「世界渡ノ法」なんてシステムもございます。ゲーマーとして全てのイベントを網羅したい!という方は、胸の痛みと相談しながらぜひご活用ください。
復活の狼煙を上げる最新作は、忙しさもいつしかいい思い出に
ここまで「龍の国」の楽しみ方を筆者の体験を元にお伝えしてきましたが、これでもまだまだ本作が内包する要素の一端をご紹介したに過ぎません。魚釣りや里でのお祭りに、複数ある収集要素のコンプリートや図鑑埋め等々、遊び尽くそうと思えばいくらでも応えてくれるアクティビティを多数用意して、「龍の国」はプレイヤーを待ち構えています。ここでは省きましたが、日本神話をモチーフにしたと思われるメインストーリーも見応えがあり、主人公の失った記憶に関する真相が明らかになる中盤のクライマックスでは、これまでとは異なるゲーム性で規格外の戦いを盛り上げます。
のんびり穏やかに流れていく季節を尻目に、やりたいことが山積みで複数の里やフィールドを奔走するうちに、この世界とそこに生きるキャラクターたちに自然と愛着が湧き、里をより良いものにしたい、大切な人との時間を過ごしたい、などの想いもどんどん湧き上がってくるでしょう。その頑張りに対して、恋人や仲間が暖かく迎え入れ、優しい言葉をかけてくれる。たとえゲームであっても、その達成感と充実感は無二のものであり、里長としてのお仕事にもより一層気合が入るものなのです。

前述した通り、筆者は本作で「ルーンファクトリー」デビューでしたが、アクションとシミュレーションが融合し、一方での頑張りがもう一方の成果として返ってくるこのルーティンに、自分でも驚くほどにのめり込んでしまい、これ一作でファンになってしまいました。世界観の一新やナンバリングを冠されていないなど、スピンオフ的な立ち位置ではありますが、だからこそ本作を入門編としてルンファク、始めてみませんか? という想いを胸に、本作のレビューを書かせていただきました。
忙しさばかりを強調してしまいましたが、里づくりには「俯瞰モード」による農作業の効率化、戦闘では「ストーリー」難易度による緩和など、限られた時間でも遊べるよう気配りが施されていることもまた事実。多様なプレイスタイルに対応した本作は、「遊びやすさ」の点でも優しい、芯まで「和」の心に満ちた一作です。ぜひ一度、この暖かさに触れてみてください。きっと、大切な思い出になりますから。
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