2025年5月4日に都立産業貿易センター浜松町館で開催された「東京ゲームダンジョン8」の現地レポートをお届け。前回の「東京ゲームダンジョン7」に続いてライターが気になった作品をピックアップしてお届けする。
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2022年8月に第1回が開催された東京ゲームダンジョンも今回で8回目。この東京ゲームダンジョンはプログラマーやエンジニアの開発者コミュニティである“週末Unityもくもく会”を主催する岩崎匠史氏らによって企画・実施されているイベント。出展にあたっての審査は無く、手頃な料金と充実した設備で自作ゲームの魅力を伝えることができることが大きな特徴となっている。




前回の「東京ゲームダンジョン7」は2日間に渡って開催されていたことに対し、今回は5月4日のみの開催となったが、会場は2階と3階をフルに使った広いスペースで落ち着いてゲームがプレイできるようになっていた。東京ゲームダンジョン自体が“ゲームの試遊に適した環境”がコンセプトのイベントであるため、今回もたくさんの試遊ができた。



ほかのゲームイベントだと、ゲームを遊ぶ余裕が無くフライヤーだけ持って帰ることになってしまうことも多々あるので、このようなゲーマーに寄り添ったイベントはとてもありがたい。
「EDEN.schemata(); -エデン・スキマータ-」
小説家の円居挽氏がシナリオを手がけるSFミステリーADV「EDEN.schemata(); -エデン・スキマータ-」。頭部がなくなった“博士”と呼ばれる人物の死体と“イヴ”と名乗るアンドロイドが佇む部屋のなかで、統合法規インターフェースの“ケル”がイヴを犯人と断定して処分を敢行しようとする……というインパクトのある展開で物語はスタートする。


主人公はイヴの無実を晴らすためにプレイヤーは室内の調査を開始することになるが、許された時間はたったの5分。ゲームはポイント&クリック型のアドベンチャーゲームで、リアルタイムに時間が進行することはないが、場所を調べるごとに時間が経過。1回に付き1分を消費するので調査をできるのは5回となる。この間にケルに反論可能な証拠を見つけなければイヴは処分されてしまい、バッドエンドを迎えることになる。

最初のプレイではほぼなにもできないが、最後のイヴとの会話で新システムが解禁。会話のなかの気になる単語が“KEYWORD”として記録されるように。会話のなかの単語にキーワードをドラッグ&ドロップで反映させることができるようになり、展開を変化させられるようになる。

ビデオカメラに映っているアンドロイドとイヴの違いとなる証拠を見つけ、適切な部分に証拠となるキーワードをドラッグ&ドロップすればストーリーは進行するが、ここはプレイヤー自身がしっかり謎を理解していなければ進めない作りになっており、能動的なプレイに達成感があった。残り時間が5分という短さも絶妙で、何度もゲームを繰り返して少しずつ謎を解いていきたくなるおもしろさがあった。

手書きアニメで描かれるキャラクターたちも魅力的で、こまかくアニメーションをするので観ていて飽きない。早く製品版をプレイしたくなった1本だ。
「ハッピールートを終わらせて」
“絶望的な状況の中で抗うキャラクター達の物語”をテーマにしたノベルゲームを発表しているウォーターフェニックスの新作。選択肢を見ることができる主人公・赤羽氷河が何者かによって正しい選択肢を封じられてしまい、最悪の選択肢だけを選ばされるようになってしまったなか、プレイヤーとともに正しい世界を取り戻す作品となっている。今回の試遊では序盤を遊べる“基本ストーリー版”とゲームのキモとなる部分が遊べる“操作雰囲気版”の2種類が用意されていた。

基本ストーリー版は幼なじみの亜由乃(あゆの)や後輩の麗羅(れいら)との微笑ましいやり取りが楽しめる一方、操作雰囲気版は主人公の氷河(ひょうが)がプレイヤーに語りかけてきたり、とある理由からキャラクターの立ち絵がしっかり表示されていなかったりとメタ的な表現がたくさんあって刺激的だ。


ゲームでは選択肢の一部が“汚染”の影響で封じられているが、各ルートのエンディングにたどり着くと、主人公がプレイヤーにその記憶を託す。そのとき入手した“言霊”で汚染を破壊すれば別ルートへ進めるという仕組み。チャートから新規のルートを開拓していく仕組みはアドベンチャーゲームの醍醐味を味わえておもしろかった。


ウォーターフェニックスは「一緒に行きましょう逝きましょう生きましょう」や「最悪なる災厄人間に捧ぐ」などキャッチーな作品を手がけているが、今回の作品はそのなかでもとくに掴みのインパクトが強い作品だった。アドベンチャーゲーム好きのひとりとして注目していきたい。

「モンスターコマンダーズ ‐深淵の夜想曲‐」
Studio51によるターン制ストラテジーゲーム。内容はプレイヤーの発想次第でどこまでも自由に冒険できるTRPGに近く、GMの役目はAIが補助してくれるという形だ。外見や能力をテキストで打ち込んで、その情報からAIにモンスターを生成してもらったり、モンスターに遭遇したときの対処をテキストで入力し、その情報からAIが結果を導き出すという形だ。

筆者は“無調整豆乳”という名称のモンスターを作り、“セクシーな女性”“かわいい”という設定を入力したところ、ビキニ姿のかわいい女の子が誕生。また、“ミルクシャワー”という必殺技を作ってくれた。設定から弱点なども作ってくれるので、AIがしっかりサポートしてくれる。


敵との遭遇に関しては、自由にテキストを打ち込めるので戦うことも交渉することもできる。プレイヤーの発想次第なので“友だちの織田信長を呼んで相手を攻撃してもらう”といったコマンドも可能だ。なお、ちょっとエッチなコマンドを入力しようと思い、“自分の服を脱ぐ”と入力してみたが、美少女モンスターの無調整豆乳ではなくプレイヤーが脱ぎ、彼女が驚くという展開になったときは笑ってしまった。たしかに“自分”とテキストを打った自分が悪い……。

ただ、AIはかなり賢く、破綻していない長文の文章を制作してくれる。ひとりで手軽にテーブルトークRPGの雰囲気を楽しみたいと思っている人にはピッタリのゲームなのでぜひ体験してみて欲しい。
「BB ADVENTURE」
インディーゲームのイベント会場には変わったデバイスの試遊が展示されているのが醍醐味であるが、この「BB ADVENTURE」はバランスボールで移動するゲーム。

世界中の人々がバランスボールの上で繰り広げられるアスレチック競技に熱狂する時代を舞台にプレイヤーも“ライダー”のひとりとして頂(いただき)を目指すというストーリーだ。

コントローラーで方向を決めてバランスボールで飛び跳ねて移動することになるが、道中には落とし穴や踏むと底がグラつき、抜けてしまう床などが用意されていて緩急が作られている。クライマックスは傾斜となっており、連続で飛び跳ねる必要があり、しっかりやり応えを感じることができた。

こういったゲームが遊べるのもイベントならでは。ゲームを楽しませてもらうと同時に、日々の運動不足を認識し、しっかり健康に気を付けなければと考えを改めさせられた。
「フルーツマウンテンパーティ」
BeXide(ビサイド)の手がけるフルーツをくっつけて大きくする3Dパズルゲーム「フルーツマウンテン」の新作。今回は対戦型のパーティゲームになっているが、「フルーツマウンテン」と同様に、同じ種類のフルーツをくっつけて大きくするという分かりやすいルールなのですぐに盛り上がることができる。

フルーツを大きくするほど得点は増すが、フルーツがお皿からはみ出てしまうとタイムロスとなるので負けていても追い上げるチャンスがある。また、自分を有利にしたり相手の邪魔をするアイテムの存在もあり、ハラハラとしたバトルが楽しめる。

夜道雪さんが声を演じるアートちゃんをはじめ、キャラクターもポップでかわいらしく、賑やかで楽しい作品。パーティゲームを探している人はぜひチェックしてみてはいかがだろうか。

「ヒバリでなくナイチンゲールでもなく」
個人的に気になっている同人サークル“F0.94”の最新作。毎回レベルの高い作品を発表しているため、どのようなサークルなのかお話を伺ってみたが、メンバーはゲーム業界のプロでは無く趣味の人間が集まって生まれたサークルであるそうだ。もちろんゲーム制作の経験もなかったため、今回のLive2Dもイチから勉強して制作したとのこと。ちなみにメンバーのなかには現役大学生もいるというから驚きだった。

ストーリーは論文が具現化し、大學が権力を握る架空の世界を舞台に栃木 茜と夕霧しずくのふたりが連続傷害事件“學者殺し”の真相を探っていくミステリーとなっている。

キャラクターたちはLive2Dで臨場感あふれる表情を見せてくれるほか、ボイスも三川華月さんや石川由依さんといった第一線で活躍する声優陣が担当しており、リッチな作りになっている。また、オリジナルBGMを多数用意しており、本作独自の世界観をしっかり作り上げている部分も素晴らしかった。ファンとしては前作「大學奇譚」とのつながりも気になるところ。発売を楽しみに待ちたい。

「泥酔ローグとおしまいの吸血鬼」
飲んだくれのローグであるリタと吸血鬼のエンドがダンジョンの最深部を目指して冒険するデッキ構築型ローグライクゲーム。今回のプレイではリタを操作して、エンドと戦う部分までを体験できた。

ダンジョン内にはさまざまな障害があり、能力値判定でクリアしていくことで報酬が得られる作り。障害は先送りすることもできるが、先送りにした出来事が後により困難になって出てくる可能性がある。そのため、どこまで危険なことにチャレンジするかが悩まされるポイントだ。ダイスによる不確定要素によりハラハラさせられるのがおもしろい。



また、リタとエンドはお酒好きという設定があり、飲めば飲むほど強くなるのだが、飲みすぎると幻覚を見るようになってしまうのが特徴。危険なモンスターが実家の飼い犬に見えるようになってしまったりして、正確な情報を得られなくなる。ランダム要素が増すのでゲームシステムとしてもおもしろいし、画面のビジュアルがどんどんカオスになっていくので演出も楽しめる。

ワンアイデアを見事にゲームに落とし込んだ良作であった。ゲームバランスも絶妙で早く製品版を遊ばせて欲しいと思った1本だ。
「ウンコテクニカ」
「ウンコできます」という文字が気になってプレイさせてもらった作品。ウンコをトイレに流す内容であるが、ゲームをはじめると「このゲームには心を動かすようなシナリオや魅力的なキャラクターといった要素は一切ありません」という文が表示され、ニヤリとさせられる。


題材自体はいい意味でしょうもないものの、ゲームはよくできたアクションゲームで止め時が見つからない。具体的な内容としては、お尻をタップするとステージ内に直線的に進み続けるウンコが登場するので、プレイヤーはこのウンコをジャンプさせてゴールである便器まで到着させるのが目的となる。

便器まで辿り着けばステージクリアだが、ステージ中にあるUN-COINを集めるやり込み要素も。このUN-COINはウンコの外見をカスタマイズしたり、高難度のステージをアンロックしたりするために必要となる。


ゲームとしてはストイックな部類であるが、クールなBGMやネオン風のグラフィックなどのセンスはよく、世界観に浸っていたくなる魅力がある。そして、そんななかでひときわ目立つウンコの存在が本作のいい味を生んでいる。筆者が試遊しているときも隣で小さい男の子が楽しそうに遊んでいたのが印象的で、「ゲームというのはこういうものでいいんだ」と気付かされた。
※画面は開発中のものです。
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