コーエーテクモゲームスが2025年3月21日に発売した「ユミアのアトリエ ~追憶の錬金術士と幻創の地~」。プロデューサーの細井順三氏、ディレクターの安彦信一氏へのインタビューを前後編にわたってお届けする。

目次
  1. 「アトリエ」を知らない人にとってもモチベーションになるよう意識した調合システム
  2. 紆余曲折あったハウジングの制作エピソード
  3. キャラクターの個性を活かしたバトルシステムはオプションによって柔軟に調整可能
  4. チュートリアル導入の意図や今後の展望も
「ユミアのアトリエ」発売後インタビュー(後編):調合・ハウジング・バトルにあった多くの試行錯誤やチュートリアル導入の意図とは?の画像

後編では、新たなチャレンジを盛り込んだゲームシステムの数々や今後の展望について伺っている。

※インタビューは3月の発売直前に実施。

インタビュー・構成:TOKEN
文:胃の上心臓

「アトリエ」を知らない人にとってもモチベーションになるよう意識した調合システム

――ここからはゲームシステムについてお聞きます。今回の調合システムについて、面白い部分や、プレイヤーへのアドバイスをお願いします。

安彦:今回の調合は、材料に関する決まり事を緩めています。今までは「ここにはこの材料だけが入れられます」といった決まり事が多かったと思いますが、本作の調合では、こうした決まり事をかなり緩和しています。反面、大雑把な材料を入れたら本当に大雑把なものが完成するようになっています。そのため、アイテムを作る上ではあまり必須とされなかった中和剤の重要度がとても高くなっています。

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攻撃アイテムや装備アイテムのような直接キャラクターに影響するものに注力しがちなのですが、そのほかの調合だけに使えるアイテム(中間素材)に関してもしっかり作り込むと、途端にすごく強いものができるような仕組みです。

本作の調合においては、中和剤はわりとどのアイテムを作るうえでも材料として使えるようになっていますので、がんばって性能のよい中和剤を作って材料にすれば、完成品となる調合アイテムの性能も必然的に上がるかたちになっています。ぜひ中間素材にもこだわっていただければと思います。

また、アイテムにつけられる特性についても手を入れました。今までの特性は、調合時に試行錯誤して狙ったものをつける、もしくは調合したあとに勝手に付いてくる中から選ぶもの、といったイメージの方が多かったのではないかと思います。その点、本作の特性は「特性結晶」として、しっかりとそのアイテム用の装備アイテムとして意識できるようにしました。特性結晶の合成も含めてこだわっていくと、時間が無限に溶けていくと思います(笑)。

そういうところを含めて調合システム全体や必要な特性結晶を見渡して、「これが一番いいだろう」という材料や結晶を求めて探索を楽しんでいただきたいです。

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――調合に関しては、わからないうちは「おまかせ材料投入」が有用な印象を受けました。これによって、どうやれば自分の目指した方向のアイテムに寄せられるのかが見えてきますし。

安彦:今回の「おまかせ材料投入」には「カスタム」を用意していて、カスタムで内容を設定すると、おまかせとはいえ比較的自分の希望にフィットした調合ができるようになっているのではないかと思います。例えばSランクの材料は使いたくないといったように、レアな材料だけは使わないといった設定もできますし、Cランクくらいの材料でいい感じにまとめたいといった設定も可能です。アイテム数が多いこともあって、開発としてはかなり難産な機能でしたが、今では入れてよかったと思っています。

――おまかせをやると調合の流れが視覚的に見られるので、それは本当によかったなと思います。

安彦:今回の調合は、そこも意識して制作していました。最初にゲーム全体のコンセプトや仕様を考える際、「調合を知らない人にとって、調合のモチベーションになるのはどこなんだろう」と思ったんです。調合を知らない人に、「調合は、手持ちのアイテムでおまかせで調合するもの」と思われたりするのは避けたいな、というところがあって。

それに、そう思われてしまうと「アトリエ」における調合の重要度や楽しさに気づいていただけないかもしれない、とも思っていましたので、視覚的に楽しんでいただけるところを意識しました。まずは目に見えてすぐわかるということで、戦闘中にプレイヤーが攻撃アイテムを使うときにさまざまなアクションをつけるようにしました。

例えばフラムはこれまで敵に向かって投げるものでしたが、本作では使うとプレイヤーの新しいアクションが増えるようにして、攻撃アイテム作りを調合の一つのモチベーションにしたいという話は最初の段階からしていました。

攻撃アイテム作りを入口にして調合を意識してもらって、まずはおまかせで作る、慣れてきたら徐々に自分で材料を吟味して作るといった流れで段階的に楽しんでいただいて、「あれ? このアイテム、戦闘中の使用回数が増えたな」「作ったアイテムで5コンボできるようになったぞ」といったモチベーションの繋がりになるといいなと思っていました。

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――各要素が点になってしまうと、それをやる必要性みたいなものをどこで感じるかが重要になりますよね。

安彦:そうですね。アイテムを強化する方法を色々考えていったら、先ほどお話しした中和剤や特性結晶に繋がっていく形がいいな、という設計ではあります。ただ、特性結晶だけはちょっと繋がりにくくなってしまったかもしれません。

細井:調合では特性結晶をつけるためのスロットを解放する仕組みにしていて、特性結晶を装備する画面とは少し離してしまったので、「あれ?」って思う方もいらっしゃるだろうなと。

安彦:調合画面で特性結晶を装備できるのも良かったかもしれないですね……。

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――略式調合は探索を便利にする要素だと思うのですが、今回実装することになった理由はありますか?

安彦:「アトリエ」シリーズは、拠点となるアトリエでの行動をきっかけに展開していくことが多いゲームですが、広いフィールドを冒険しているとアトリエに戻るのが億劫になったりすることもあると思います。クエストの目的地に設定されていることもありますけど、「もう少し探索したいのに、採取したアイテムでカゴがいっぱいだから戻ろう」といった感じで、どうにもならない理由で戻るイメージが強かったんです。

過去作で経験があるのですが、アイテムを持っていくのを忘れたからアトリエに戻ったのに、アトリエでイベントが発生して、アイテムを忘れていたことを忘れてしまうという (笑)。もちろんレシピが増えたら調合のためにアトリエに帰りますが、「どうにもならなくなったから、戻らないといけない」といったところを、ある程度緩和したかったんです。

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そこから拡張していき、壊れた宝箱やギミック、ジップラインを見つけた時にアイテムを使ったり、ゲームを少し進めると出てくる、宝箱の位置がわかるアイテム(レリックサーチャー)を使ったり、いつもなら一旦アトリエに戻って専用のアイテムを調合したり、取りに戻ったりするところを、最終的には略式調合としてプレイヤーのシチュエーションにあわせて、やりたいことをその場で叶えられる仕組みにしました。

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紆余曲折あったハウジングの制作エピソード

――ハウジングについても本作ではプリセットだけでなく、自由度の高い作りにしていますが、実装へのこだわりはありますか?

安彦:ハウジングに関しては私自身も好きで、私のようなプレイヤーが「これじゃ物足りない」と思わないようなものを作ろうと考えていました。確か最初は床とか壁とか天井は小分けにしないように考えていましたよね。

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細井:元々はここまでのボリュームの予定ではなかったのですが、いつの間にかやりすぎでは、というぐらいになっていて驚きました(笑)。

安彦:床とか天井が無い状態で制作していたら、欲しくなってしまうじゃないですか(笑)。

細井:仕様をシュリンクしたほうがいいよとアドバイスしたら、(かかるコスト面は)あまり変わらないですよ、と。「本当か?」と思ったんですけど……。

安彦:私がやり過ぎたところで、細井から「初心者でも簡単にできるような仕組みがあるべき」という話があり、カタログを実装しました。やり込み型のヘビーユーザーは床・壁・天井・照明すべてにこだわって楽しんでいただき、ライトに楽しみたい方はカタログを見て「この家かっこいい」といった感じで簡単に選んで建てられるという方向になりました。

ちなみに効率重視の社内のプログラマーは、素材が採取できる家具をたくさん並べて、そこでずっとアイテムを集めていました(笑)。

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――自分は正直あまり頑張れないタイプなので、カタログがあって良かったです。最初の地方だけでもハウジングできるポイントが結構ありますし、思った以上にハウジングエリアが大きくて、簡易的な拠点をたくさん作っているような感覚があります。

細井:ハウジングは、おっしゃるとおりそこまでやり込まないという方は絶対いらっしゃるだろうと思っていましたし、そういった方にとってはRPGとしての体験を阻害する可能性もありますので、カタログはマストだと思いました。ハウジングや戦闘周りはまとまるまでに色々な経緯がありましたね。

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――実際にやってみるとバランスが取られていると感じました。資材の入手も大変そうかと思いきや、そこらへんで採取しておけば比較的に簡単に作れるのは嬉しかったです。

安彦:最初は資材と調合の材料は分かれておらず、同じ扱いのものでした。

細井:元々は調合で作ったアイテムの使い方や楽しみを増やすべく導入したものではあったのですが、さまざまな効果がつく調合アイテムとは違い、それ自体に効果をもたない家具を作るにしては、完成までに必要なストロークが長く、ハウジング自体がすごいストレスになるなと思ったんです。

調合の材料と資材をイコールにしてしまうと、シリーズのコアなシステムである調合を阻害する可能性すらありましたので、それぞれを別にすることにしました。採取の行動による出先が「調合」「ハウジング」「略式調合」になることで、フィールド探索の質を上げる方向にシフトしました。このあたりはかなり議論しましたね。

安彦:仕様的にすごく難しかったんです。例えばこの材料は本当は使わないで欲しいとか、勝手に使われると困るみたいなことってあるじゃないですか。調合以外の方法で家具を作るときに、そういうところもプレイヤー自身がしっかり細かく選べるようにしなきゃなどを考えると、家具の完成までにさらに手間が増えてしまうのではと……。

そんな時に「リディー&スールのアトリエ ~不思議な絵画の錬金術士~」を制作した頃を思い出しました。あの時も戦闘中にカゴの中にあるアイテムどうしをその場で調合して、それを使うみたいなことができたのですが、同様の問題がありました。その経験がありましたので、おそらく今回も考え方を変えないとちょっと難しいだろうなと思い、資材と調合の材料を分ける形にしました。

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キャラクターの個性を活かしたバトルシステムはオプションによって柔軟に調整可能

――バトルシステムはゴリ押しでも十分に戦えつつ、敵との戦力差によってはプレイヤースキルが要求される作りになっていると思いました。今回のシステムの肝になる部分はどこになるでしょうか?

安彦:バトルシステムに関しては、「秘密」シリーズで取り入れたリアルタイム要素の良い部分は落とし込めているのではないかと思います。ただ、アクションゲームが苦手な方やアクションだけどゆっくりやりたい方もいらっしゃいます。そういった方に対するサポートはある程度きちんと用意すべき、という意見は開発中に社内からも出ていました。

そういう経緯もあって、バトル専用のオプションを用意する方向にしました。「秘密」シリーズではやり方を覚えて、頑張って動いてもらうというところがあったのですが、今回はバトルオプションを設定すると極端な話、動かなくても戦闘ができるんです。

例えば何も操作しないでも敵が攻撃してきた時に自動でガードしてくれるとか、HPが減った時に味方が勝手に自分を回復してくれる機能とか、そういったサポートをたくさん用意しています。

あとは味方の思考もかなり細かく設定できるようにしています。RPGの戦略的な部分の話になりますが、たとえばアイテムを優先して使うとか、HPがどれくらい減ったら防御行動を優先するかとか、そういったところを細かく設定できます。

なので、アクションゲームが苦手な方はバトルオプションの設定で、自分の苦手な部分を補うような設定をしていただければ、本当に手軽なアクションになると思います。

逆にアクションゲームが得意で自分のプレイヤースキルを発揮したい方も、オプションを調整していただければと思います。例えば敵の攻撃を綺麗に回避するとか、ジャストガードを駆使するとか、あとは敵の攻撃にあわせて味方に交代したりアイテムを回して戦うだとか、魅せるプレイができる構造になっています。バトルオプションも含めて、今回の戦闘は得意・不得意に関わらないハイブリットな形に落とし込めているのではないかと思っています。

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細井:元々はもっとアクション寄りだったんです。安彦はアクションを作りたいと言っていて、私の方から「さすがに少しやりすぎかな」とブレーキをかけました。ですが、「回避は絶対に入れたくない」と言っていて。

安彦:まあ、そうですね。ターン制のRPG的な要素を残すとなった時に、回避よりガードが必要だと思っていたんです。回避とガードは棲み分けが難しい部分がありましたので、どうしようかなと思いながら今のかたちに落ち着きました。

細井:私はもう少しターン制のRPG要素を出したいという側で、安彦はもっとアクションをやりたいという側でした。二人ですごい綱引きをしましたが、その結果である今のかたちが一番良い状態になっているかなと思っています。

私としては、「秘密」シリーズのユーザーさんたちが、「秘密」シリーズでの体験とイコール、もしくは違和感なく遊べるようなものがよいと思っていました。例えば先程安彦が言ったような、一切動かさなくても大丈夫といった機能は、「秘密」シリーズでもバトルにおいて操作キャラクターをずっと変更しなかったり、移動させずにプレイできたと思います。その対応をトレースできるということであり、その上で「もっとやりたい」という方は移動やガードなども楽しめるようにするという考えです。

安彦が回避を入れたくなかった理由は、「回避だけやっていればOK」となりかねないからなんです。それによってゲームとしての不均衡が発生してしまうというところで結構議論したことを覚えています。

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安彦:防御力のステータスの意味がなくなってしまうんです。回避しているのにダメージを受けてしまったらそれは回避ではないですし、かといって回避でダメージが発生しないのなら防具の意味がなくなってしまう。どの程度の塩梅を選択したとしても回避が最強になってしまうと思ったのはあります。

一方で、回避ができることによってカッコよく見えるというのは絶対あるんです。やはりアクションが得意な人は、自分のプレイヤースキルを存分に発揮してカッコよく、スタイリッシュに遊びたいと思うはずですので、そういった幅や緩さを作るのもある意味「アトリエ」シリーズらしいと言いますか……。「アトリエ」は、調合ですごく作り込んだアイテムだったら、ボスだろうがなんだろうが一撃で倒せたりもするじゃないですか。そういった遊びの幅の部分は「アトリエ」らしい部分だとも思っていますので、本作のバトルにより幅をもたせるものとして、最終的には回避も入れました。

――キャラクターを切り替えて戦うというのは「アトリエ」シリーズのバトルにおける魅力の一つだと思いますが、今回のようなリアルタイム性のあるバトルでその仕組みを十分に遊んでもらう上で意識している点はありますか?

安彦:キャラクターたちのバトルスタイルについては、今まで以上に明確な違いがあるようにしています。錬金術士はアイテムが強いけれど他の要素は……といった方向に限らず、キャラクター自身が持っている性能をすごく明確に表現しています。例えばユミアなら魔法攻撃も物理攻撃もできるけれど、アイテムを特定のタイミングで使うとより強力になっています。

アイラなら物理や魔法に関係なく敵にブレイクをどんどん仕掛けていく、ヴィクトルはインレンジのスキル使用後にアウトレンジスキルを連続使用できる、ルトガーは敵に専用の状態異常を増やしていくとその分威力があがっていくなど、キャラクターごとに性能や性質みたいなものをかなり尖らせています。

それぞれのキャラクターの特性を考えた上で他のこともできるといったような、今までとはちょっと違う設計の仕方をしています。その部分で、敵の相性によってキャラクターを切り替えるという選択肢があります。

ユミアやアイラなど最初から登場するキャラクターはある程度使いやすさを意識していますが、レイニャなどはすごくピーキーで、初めからひとりで戦えるくらいのキャラクターというコンセプトがありました。

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――自分はナチュラルにユミアばかり使っているところがありましたが、特性を理解した時に楽しみが増える感覚がありました。

安彦:キャラクターはデザインの段階でも個性を出していきますが、それが実際のゲーム内での性能と乖離することは避けたかったので、設計の順序については変えていこうとメインプランナーに話をしていました。一方、アイテムに関しては全キャラクターが全てのアイテムを自由に装備できるようになっていますので、そういったところで「アトリエ」らしさも感じていただけるだろうと思っていました。

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――操作するのが好きなキャラクターについてアンケートを取ってみたら結構変わりそうですよね。

安彦:そう思います。操作感も違いますし、キャラクターごとにモーションスピードの調整指示も出しましたね。細かく設定・調整していますので、色々なキャラクターを操作して楽しんでいただけると嬉しいです。

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チュートリアル導入の意図や今後の展望も

――「秘密」シリーズを経てフィールドのギミックが色々増えてきたと思いますが、攻略のためのアクションについて、入れてみて良かったと思っているものはありますか?

安彦:やっぱり銃ですかね。自分で遠距離にある何かを撃って作動させるとか、壊すといったことは「アトリエ」シリーズでは初めてやったものだと思います。

銃によって視界が広がって、フィールドの上方向にもカメラを向けるようになり、さらに射撃を入れたことによってステージの設計や考え方も大きく変わったと思っています。プレイヤー体験も今までと違って射撃という選択肢ができましたし、そこに銃弾の種類までありますので、より拡張されたように感じられるのではないかと思います。

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――冒頭でのチュートリアルはやはり従来との違いを意識されたのでしょうか?

安彦:ゲーム冒頭のチュートリアルステージに関しては、細井の想いが強いです。

細井:「アトリエ」シリーズの導入部分はゲームスピードが遅い、という感想を多くいただいていたんです。プレイヤーが操作できるようになるまでが遅く、ゲームとして楽しめるのはそこからさらに1、2時間後になっていると。そういったところが、ユーザーのみなさんのフラストレーションになっているポイントではないかと思っていました。

少しでも早くキャラクターを操作したい、ゲームの先を楽しみたいというのはあると思いますので、導入部分のゲームスピードを体感的に早めるためにも、本作の冒頭のようなチュートリアルを兼ねたステージを入れて、最初から比較的自由にキャラクターを動かしつつ、操作も含めて一通り確認でき、かつストーリーも中盤の核になるような部分も見せるという形にしました。

――発売後のDLC展開についても発表されていますが、追加マップは完全に新たなフィールドとして用意されるのでしょうか?

安彦:現状の想定では、今のマップから繋がる場所を追加して、そこにストーリーや専用のギミックが入ってくる形を考えています。当然採取物も増やす予定ではあります。ボリューム感のある形でまとめようと現在鋭意開発中で、10月末頃までの配信を予定しています。

――今後のタイトルに、今回のチャレンジをどう活かしていきたいと考えていますか?

細井:今回は色々なチャレンジをして、開発工程においても成功や失敗の経験がこれまで以上にあったプロジェクトです。調合システムも何度か作り直していますし、戦闘システムも同様に作り直している部分があったりします。本当に今まで以上にチャレンジした結果、我々としても自信をもてる作品になったと思っています。

その反面、正直どの作品でもあるのですが、「こうしておけばよかったかな」といったところも存在しています。今回の色々な工程を経て来たからこそ、今後さらにチャレンジしてみたいものも増えました。

より規模の大きいRPGであったり、ハウジングシステムを横展開させるゲームであったり、オープンフィールドをさらに伸ばす方向性だったり……。逆にハウジングなどミニマルなループのものも作ってみたいとか、たくさんの気持ちが今はあります。

ですので、今後もチャレンジしていくことは変わらないのですが、ユーザーのみなさんのご意見も参考にしつつ、さらに高品質なRPGを目指していきます。

安彦:今回はハウジングなども含めて、「アトリエ」で初めてとなる要素をかなり入れていますので、そういうところを遊んでくださった方の反応は気になっています。良かったというのものがあるのであれば、そこは当然伸ばしていきたいですし、悪かったという部分も受け止めて今後に活かしていきたいと思っています。

また、国内はもちろんグローバルでのユーザーさんの反響や感想もとても気になります。我々のグローバルへの考え方の方向性があっているかどうかを含めてもう一回省みたい部分やより発展させていきたい部分を検討していきたいです。

――コンソールの新作と考えると、シリーズとしてこれまでにない期間が空きましたが、「アトリエ」シリーズの今後の流れはどのようになっていくのでしょうか。

細井:シリーズとして、これまでの流れは踏襲していくつもりです。「アトリエ」シリーズがここまで長く続いたのは、定期的なスパンできちんと発売し続けているからだと思っています。

ゲームを通したユーザーさんとの接触頻度は、今の世の中だとさらに重要になると考えています。当然それが飽きに繋がるという側面もありますが、我々としてはこの飽きに対してはクリエイティブで抗わなければならないと思っています。

とはいえ、接触頻度を高めることを簡単にやろう思ってもなかなかできません。ゲームにおいては、やり続ける意思がないと続けられないと思うんです。また、今回のように開発に時間を要するものも存在しますので、そうした場合のガストブランド全体の工程や取り組み方を考えていくのが重要だとも思っています。

当然これまでと同じような取り組みは行っていきたいですが、求められる品質や世界観が変わってきているとも感じていますので、そこに対していかにユーザーさんを失望させず、期待に応えられるものを作れるか、ガストブランドとして真摯に取り組み、試行錯誤し続けていきたいです。

――最後に遊んでくださっているユーザーへのメッセージをお願いします。

細井:いつもガストブランド、並びに「アトリエ」シリーズを応援していただき本当にありがとうございます。おかげさまで今回もシリーズの新作を皆様のお手元へお届けすることができました。我々として非常にチャレンジした作品ですし、お届けしがいがある作品になっていると思います。

様々なご意見があると思いますが、忌憚のないご意見を我々にいただけると、とても嬉しいです。いただいたご意見を受け止めて、よりよい「アトリエ」シリーズにできればと思っています。これからもぜひ応援していただければ幸いです。

安彦:本作、そして「アトリエ」シリーズを遊んでいただき本当にありがとうございます。新シリーズということで本当に色々な挑戦をしまして、今までとは違う「アトリエ」シリーズを目指して開発に打ち込んできました。今は、「ユミアのアトリエ」を皆様にお届けできたことを嬉しく思っています。

今後もユーザーの皆様と一緒に「アトリエ」シリーズを育てていきたいと思っていますし、皆様の反響やご意見を糧にして今後のタイトルにしっかり活かしていきたいと考えていますので、SNSやアンケートなど、色々なところで感想をお伝えいただけると嬉しいです。

まずはぜひプレイしていただき、ユミアの冒険を見届けていただければと思います。何卒よろしくお願いいたします。

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2011年イクセル入社後、Gamerをはじめとした媒体の運営に携わる。好きなジャンルはRPG、パズル、リズム、アドベンチャー(ほぼギャルゲー)。実はゲームよりもアニメが大好きです。

アニメ・ゲーム系の媒体でお仕事をしているフリーのライター。Gamerさんでは2022年夏頃よりお仕事をいただいている。

主にプレイするのは大作RPGからFPS、18禁の美少女アドベンチャーゲームなど。ゲームセンターが好きで「BLAZBLUE」や「MELTY BLOOD」などのコンボ重視の対戦格闘ゲームや、「機動戦士ガンダム VS.(バーサス)」シリーズなどをよく遊んでいたが最近はちょっと年齢を感じて辛い。

最近は仕事のために始めたカメラにハマり、スナップ写真や動物写真を撮ることも。使用しているカメラのメーカーはNikon。

※画面は開発中のものです。

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