PC(Steam)用ソフト「異世界帰りの僕と、失われた恋」のレビューをお届けする。本作は台湾のゲーム開発会社である「第四の壁」が手がける実写アドベンチャーゲームだ。

実写のアドベンチャーゲームはセガサターンやプレイステーションの時代に人気となり、2008年12月4日には「街~運命の交差点~」の流れを汲む傑作「428~封鎖された渋谷で~」が発売。多くのゲーマーが実写アドベンチャーゲームに注目をした。その後、このジャンルのブーム自体は落ち着いたものの、2018年には「ルートレター Last Answer」、2020年に「デスカムトゥルー」、そして2022年に「春ゆきてレトロチカ」がコンスタントに発表されており、根強い人気を誇っている。また、近年では、「サマースウィートハート」や「しまった!美人に囲まれた!」など、海外で作られた実写ゲームが話題になることも多い。
そんな日本だけでなく海外でも人気の実写アドベンチャーゲームである「異世界帰りの僕と、失われた恋」。ヒロインとして日本のセクシー有名女優である河北彩伽さん、三浜唯さん、元・セクシー女優で現在はインフルエンサーやグラビアアイドルとして活動する上原亜衣さんが出演するほか、台湾で活躍するKira詹云晴さんとマレーシアの新人俳優・Joey林短短さんも出演している。

ストーリーの内容は異世界で魔王を倒した主人公が10年ぶりに現実世界に戻ってきてヒロインと恋愛をするというもの。メインヒロインは初恋の相手でもあった女社長の青山乃愛で、ほかにもクールな女性である桃野恵麻、や小悪魔的な女の子である露草楓、ちょっと困ったお嬢様の音羽純奈が登場する。

上原亜衣さんが演じる桐沢華怜は特殊な立ち位置で、異世界で主人公に破れてしまった魔王。今度は主人公のことを誘惑して恋の虜にしようとしてくる。このキャスティングはとても上手で、筆者に関わらず上原さんの過去の作品を観て誘惑された人は多いはずだ。本作ではあからさまにトラップと思われる誘惑でこちらを誘ってくるが、ついつい誘惑に乗る選択肢を選んでしまいたくなる。

なお、本作にはバッドエンドに直行する選択肢が存在するが、フローチャートが実装されていたりシーンのスキップができたりと快適にプレイできる作りなので、気軽にトラップの選択肢を選べるのがうれしい。

ストーリー自体は主人公の主観視点で進行。ヒロインたちはこちらを見つめながら話してくるので臨場感がある。主人公の妄想オチであることは多いものの、ゲーム中にはきわどいシーンやキスを迫ってくるシーンなどもあり、ドキドキしながらプレイできた。

また、主観で主人公が見えないことを逆手に取った演出も。異世界帰りでボロボロの格好をしていることをヒロインが指摘したりと状況を想像する楽しさもある。また、演出でおもしろいのはなんといっても主人公の魔法。主人公はピンチになると魔法を使ってピンチを脱することがあるが、ここは特殊なエフェクトや役者陣の芝居で現実ではありえないシチュエーションを楽しませてくれる。

嫌味を言う面接官を傀儡のように操るシーンコミカルなシーンだったり、魔法を使ってヒロインを救うシリアスなシーンだったりと、魔法の使いかたは多彩で飽きさせない。また、自分の欲望を抑えるためにアソコに氷の魔法を使うようなクスッと笑ってしまうような下ネタも多い。笑いのツボは人それぞれであるため評価は難しいが、本作のギャグのセンスは筆者には合っており、とても笑わせてもらった。恋愛アドベンチャーとしてはもちろん、コミカルな芝居にも注目してもらいたい。

VFXを活かした演出に関しては昨今の映画などに比べると見劣りしてしまう部分もあるが、筆者としてはその手作り感に温かさがあってよかった。舞台劇を鑑賞しているような感覚にも近く、微笑ましかった。なお、VFXこそ手作り感はあるが役者の芝居は本気であり、手を抜いている感じは一切しない。できる限りの予算と技術でプレイヤーを楽しませようという制作陣の心意気が伝わってくる。

ヒロインたちに関しては等身大の悩みを持った人物像となっており、感情移入しやすい。外見がかわいいのはもちろん、ストーリーを進めていくことで内面もしっかり好きになっていくように作られている。

とくにJoey林短短さんの演じる音羽純奈は序盤こそ自分勝手な人物に感じるような描写が多いが、彼女ならではの悩みと弱さを見せてからは途端に可愛くなる。きっとプレイを続けていくうちにどのヒロインとのエンディングが見たくなってくるはずだ。

展開的には片方のヒロインと仲良くなっているときにもうひとりのヒロインから連絡が来るなど、ラブコメらしい展開も満載。

後半からはヒロイン同士が仲良くしたり協力したりするような展開もあり、物語は盛り上がっていく。プレイヤーやヒロインの心が傷つくようなことはなく、優しい物語に終始している。

一方で魔王である桐沢華怜とは少し悲しい別れが待っているが、だからこそ次のプレイでは彼女を救いたくなるような請求も生んでいる。桐沢華怜はほかのヒロインに比べて好感度を上げるタイミングが少なく、隠しヒロインのような立ち位置なので彼女を攻略するようなやり込みプレイも楽しめる。

ゲーム部分に関しては時折出現するハートマークを選択して好感度を上げたり、ミニパズルを解いて魔法を発動させたりヒロインの好感度を上げたりするミニゲームも存在する。ハートマークについては、画面に集中する要素としてしっかり作用している印象。ミニパズルに関してはストーリーの区切りで好きなヒロインの好感度を選んで上げられるのがありがたい。本作はクライマックスでヒロインを選ぶことになるが、そもそも好感度の低いヒロインは選択ができない仕組みなので、このパズルが救済処置になっているのがありがたかった。パズルはそれほど難しくないが、制限時間があるので、きちんと緊張感を生んでいる。

斬新なジャンルということもありプレイするまでは少し不安な部分もあったものの、中身はしっかりと作られており十分に楽しめた。アドベンチャーゲーム好きな人はもちろん、普段あまりゲームをプレイしない人にもオススメできるタイトルとなっているので、ぜひチェックしてみて欲しい。

※画面は開発中のものです。
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