アニプレックスが2025年4月24日に発売するNintendo Switch/PC(Steam)用ソフト「HUNDRED LINE -最終防衛学園-」を先んじてプレイさせていただいた。

極限のタッグが送るADV×SRPG体験!人類のために命を懸けて戦う100日間の物語「HUNDRED LINE -最終防衛学園-」レビューの画像

本作はトゥーキョーゲームスが企画するアドベンチャー(以下、ADV)ゲームだ。「ダンガンロンパ」シリーズの小高和剛氏と「極限脱出」シリーズの打越鋼太郎氏がタッグを組んでシナリオを作り上げ、シミュレーションRPG(以下、SRPG)部分は「メギド72」や「ワイルドアームズ」シリーズで知られるメディア・ビジョンが開発したタイトルである。

それぞれのフィールドで長きに渡って才能を発揮してきた開発者たちが一堂に会したことで、他に類を見ない異質な作品として仕上がっていた。特にシナリオ面においては圧巻のボリュームと内容であり、ADVファンならずともチェックしておきたい作品に仕上がっていた。

一方で、いくつか見過ごせない点も見受けられた。それらについて詳しくレビューしていきたい。

※8日目以降のゲーム内容に関するネタバレがありますのでご注意ください。

極限のタッグが送るADV×SRPG体験!人類のために命を懸けて戦う100日間の物語「HUNDRED LINE -最終防衛学園-」レビューの画像

本作のストーリーは以下の通りだ。主人公は東京団地というドーム型のコロニーに住む澄野拓海(すみのたくみ)という少年。彼は平穏無事な生活を送っていたものの、ある日突然怪物に襲われ、死にかけてしまう。そこに現れたSIREIというロボットの手引きで我駆力(がくりょく)という異能力に目覚め、怪物を退けたものの、意識を失ってしまった。

次に彼が目覚めたのは「最終防衛学園」と呼ばれる学校施設の中だった。そこには、同じような立場の若者たちが集まっていた。SIREIによって告げられたのは、澄野たちがこの学校を100日間侵校生(しんこうせい)という怪物たちから守り抜かねばならないこと、もしもそれが達成できなければ、人類が滅んでしまうということだった……。

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本作は主に学校生活を送るADVパートと、侵校生と戦うSRPGパートに分かれている。

ADVパートは「ダンガンロンパ」シリーズと同じようなテイストで、明らかに学校を模しているがどこか落ち着かない閉鎖空間に閉じ込められた若者たちが、ときにいがみ合い、ときに助け合いながら、謎を解いて真実に近づいていく物語が描かれる。

このパートのゲームプレイとしては、チャイムとともに起床し、まずは食堂か作戦室でメンバーと作戦会議や顔合わせをして、そこから自由行動時間がある日ならば朝と昼にそれぞれアクティビティを楽しむことができ、そうでなければ一日を通してメインストーリーが進む……といった具合である(多少のイレギュラーはあるが)。

アクティビティは、キャラクターとの会話、模擬戦、プレゼント作成と贈与、戦闘に必要なアイテムの作成、外界の探索など多岐に渡る。ひとつひとつはそこまで濃厚ではないが、みんなで共同生活をしている感じは充分に味わえるのでフレーバーとしては充分に機能している。

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とはいえ、これらアクティビティはあくまでADVパートを成り立たせるものに過ぎず、そこまで珍しいものではない。筆者が思うに、本作の白眉はシナリオにあり、クリエイターたちが最も力を入れているのもここだと感じた。

一癖も二癖もあるキャラクターたちは、なし崩し的に協力し合わなければならなくなり、死と隣り合わせの危険なミッションを背負わされる……そんな非日常だからこそ、それぞれの個性が垣間見え、ただの友情を超えた一生ものの絆を交わすことができるのだ。小松崎類氏によるユニークで可愛らしいデザインも素敵だ。

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特に序盤はそれぞれのキャラクターたちのあいだで戦闘に対してモチベーションが異なり、彼らを説得するパートが入る。ちょっとずつキャラクターのことがわかってきて、好きになってきたあたりで侵校生の襲撃が挟まったり、大きな事件が起きたりするのも、テンポが良くて素晴らしい。

本作のシナリオは「ダンガンロンパ」シリーズなどを初めとする小高氏の得意とするデスゲーム的な展開や、若者たちを精神的に追い詰めるようなイベントが目立つものの、随所に新たなチャレンジが見られ、その多くが成功していた。これでもかというほどエゲつない下ネタや露悪的な表現を盛り込むからこそ、彼らが初めから持っている純真さやまっすぐな気持ちが垣間見えてくるという小高氏の持ち味とも言える筆運びは、今作で完成したと言ってもよいだろう。

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詳しくはネタバレになるから語れないものの、二転三転するシナリオの先が気になってなかなか止められず、長いゲーム体験を感じさせない工夫に満ちていた。エンディングが100種類あるという点は、プレイヤーによって体験が異なるであろうからレビューしづらいポイントだが、筆者がいくつか見た中ではどれも納得感のあるものばかりだったので満足している。

一方、SRPGパートに関しては、一見して入りやすく、ド派手な演出が楽しめるものの、個人的には長時間のプレイに耐えうるほどの奥深さがなかったことは残念だった。

基本的には中型以上の大きさの敵を倒すことでAP(行動に必要なポイント)が溜まるので、小型や大型を巻き込みながら技を使っていくことになる。

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特にほとんどのカウンター技が死にスキルであり、ゲーム終盤でもほとんど活躍が出来ず、もう少しバランスが取れていれば良かったと感じた。

また、一部の重要なイベントボスは攻略条件が難解で、シナリオ上の演出と若干違和感があったりして、個人的には残念だった。

とはいえ、大人数で学園を防衛するという設定や、我駆力を胸に突き刺して変形学ランに変身して戦うというバンクなど、見た目はとても華やかである。戦闘は面倒だというプレイヤー向けに簡単な難易度も用意されているので、それでサクサク進めてしまうのもありだろう。

極限のタッグが送るADV×SRPG体験!人類のために命を懸けて戦う100日間の物語「HUNDRED LINE -最終防衛学園-」レビューの画像

さらに言うと、戦闘と同様に、探索というアクティビティも気になった。本作では、最終防衛学園の外に出て色々な物資を取ってくるために、すごろく状のマップを行き来してイベントや戦闘をこなしていく。すごろく中に発生するイベントには毎度選択肢が表示され、好きなように対処できるのだが、同じイベントの同じ選択肢でも発生した際に結果が変動するようで、この前まで回復してくれたはずの選択肢で、ダメージを受けることがあるのだ。

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探索中にランダムでアクシデントが起きることを否定するわけではないが、そういった予期せぬ形で受けてしまったダメージに対処する方法が、わざわざ戦闘を起こして敵を足止めさせているうちに回復スキルないしアイテムを使うくらいのものになっている。

一応、連れていくメンバーによって素材の変動はあるものの、ただの運試しで成否や成果が大きく左右される割に、ストーリー中も何度も行かされるので、こちらについては個人的にはもう少しブラッシュアップしてもらえるといいなと思った点である。

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などなど、大きく分けて、シナリオは良かったが、戦闘や探索といったゲーム部分に気になる点があるという作品だった。

ユニークな設定にクセの強いキャラクターたちに重荷を背負わせ、極限の選択を迫らせ続けることで、ギリギリのところで彼らのもっとも輝かしいところが発揮されるというシナリオは、何度も言うが素晴らしい。小高氏や打越氏のクリエイティブにそこまで関心がなかった人にもオススメできる一本だ。

マーダーミステリー『探偵シド・アップダイク』シリーズを制作している。思い出の一本は『風のクロノア door to phantomile』。

https://x.com/toshinthepump

※画面は開発中のものです。

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