MAGES.が2025年4月10日に発売を予定しているPS5/PS4/Nintendo Switch/PC(Steam)用ソフト「メモリーズオフ 双想 ~Not always true~」のプレイインプレッションをお届けします。
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「かけがえのない想い」をテーマとして1999年9月30日のシリーズ第1作「メモリーズオフ」の発売以降、ナンバリングタイトル8作、ファンディスクなどが展開してきた恋愛アドベンチャーゲーム「メモリーズオフ」シリーズ。2018年に発売した第8作「メモリーズオフ -Innocent Fille-」を集大成として、翌年のファンディスク発売をもって、20年を区切りにシリーズを一度完結しました。
その後、同コンセプトの後継作としてナンバリングを無くした「シンスメモリーズ 星天の下で」が展開されましたが、25周年という節目を迎えるにあたって、改めてシリーズの名を冠した完全新作としてリリースされるのが、本作「メモリーズオフ 双想 ~Not always true~」となっています。
そうした経緯を経ての発売となる本作ですが、キャラクターデザインにはシリーズ第2作「メモリーズオフ 2nd」以来となるささきむつみ氏が参加し、限定版パッケージイラストはシリーズ第1作「メモリーズオフ」のメインビジュアルをセルフオマージュしたものに。また、シナリオは「STEINS;GATE」などの科学アドベンチャーシリーズで知られ、「メモリーズオフ」シリーズとしては「メモリーズオフ#5 とぎれたフィルム」以来の参加となる林直孝氏が名を連ねています。

シリーズ全体を通して湘南、鎌倉がモチーフの地域を舞台にしており、同時に作中の時間軸はつながっているため、過去作に登場したキャラクターが登場するのも本作の特徴。しかしながら、ナンバリングタイトルでは基本的にメインキャラクターは一新されており、新たな物語が展開するため、前後関係は知らなくともプレイに問題はありません。
シリーズ25周年という歴史もあるためこうした前提を知っていただきつつ、ここからは本作の序盤部分のインプレッションをお届けしていこうと思います。説明の都合で多少過去作に言及することはあるものの、基本的には誰でも読めるものとして整理していくので、安心して読み進めてください。
テキストと演出、ボイスで表現する正統派の恋愛ADVに
……とは言いつつ、いきなり過去作との比較になってしまうのが、ゲームシステムについてです。
基本的に選択肢によって分岐していくテキストアドベンチャーゲームであるのはシリーズ通して変わらないのですが、「メモリーズオフ ゆびきりの記憶」や「メモリーズオフ -Innocent Fille-」では独自のシステムが組み込まれていました。「メモリーズオフ」シリーズはサスペンス要素も多いタイトルということで、こういうプレイヤーが主人公の立場から介入する仕組みは相性が良かったように思います。
一方で、後継作となる「シンスメモリーズ 星天の下で」はオーソドックスなテキストアドベンチャーとなっていましたが、本作も基本的には同様の作りになっていると思います。一応メニュー画面のシルエットで誰とのルートになっているのかを確認できる模様ですが、後述するルート分岐も含めて、細かく気にする、という感じにはならなそうです。



また、ボイスに関しては主人公の久寿米木 一癸(CV:広瀬裕也)も含めて、メインキャラクターに関してはフルボイス仕様となっています。恋愛アドベンチャーゲームでは主人公のビジュアルが無いことも多いですが、一癸にはしっかりとビジュアルが用意されており、視点が変わる際にはその姿も確認できます。このあたりも「メモリーズオフ」シリーズでは採用されているケースがあり、シリーズならではの特徴といえそうです。

つまり、本作ではストーリーを描くテキストと画面上の演出、そしてキャストによるお芝居によって表現される、とても正統派な恋愛アドベンチャーゲームになっています。


ちなみに、本作では未読・既読の管理が画面右下の“READ”の表示の有無で判断できるようになっています。これが個人的には分かりやすくて地味に嬉しかったりしました。

途中から2つのルートで進行していく&キャラクターの印象
上述の進行ということもあり、基本的には選択肢の組み合わせでルートが分岐していく作りではあるのですが、本作はいわゆる共通パートにあたる部分があまり無く、分かりやすく各ルートに分岐していきます。
詳しく触れてしまうとゲームプレイの楽しみを損なってしまうので大枠としてお伝えすると、本作のメインヒロインである洲宮紗絵(CV:Lynn)、天羽ねね(CV:加隈亜衣)については二人独自のルートに進んでいき、残る北方和音(CV:関根瞳)、フェルスター・マリー・暁空(CV:藍本あみ)、中森雪加(CV:山根綺)についてはフラグとなる選択肢が用意されていて、そのまま各ヒロインのルートに進行するといったかたちです。
序盤でいくつか選択肢が登場する中で明らかにそう感じられる瞬間があると思うので、そこではセーブを忘れないようにしておきたいところ。本作でもアドベンチャーゲームでは馴染みのある、自動で一時的にセーブされるクイックセーブ機能があるので、チェックしておくとより便利です。

この振り分け方からも分かる通り、紗絵とねねについては作品の核となる部分にも関わってきますが、和音、暁空、雪加の3人についてはやや毛色が異なるのでそれぞれの特徴についても触れておきます。
和音は一葵のクラスメイトで内気な女の子。一葵は元々接点はなかったものの、とあるきっかけから交流を重ねていくことになります。プロフィールにもある通りオタクな一面があり、いわゆるオタク語りも可愛らしいです。また、文芸部に所属していることや、小説の投稿サイトに自作を投稿していることも、ストーリーに関係していきます。


暁空は藤川高校の女子サッカー部にスポーツ特待でスカウトされ、ドイツから留学してきた女の子です。その実力は世代別代表クラスということですが、どうやら良からぬ噂も飛び交っているよう。一葵はとあるきっかけで女子サッカー部の練習を観に行き、そこで暁空と出会うことになります。見た目こそボーイッシュな美形少女という感じですが、かなりギャップを感じさせる一面があります。


藤川高校での先輩に当たる雪加との初対面は、外で起きたとあるいざこざがきっかけとなります。そこでの姿はどちらかと言うと不良っぽい立ちふるまいなのですが、その後校内で会った際には見た目こそギャル系の装いなのですが、また少し印象が変わるものとなっています。加えて、どうやら一葵たちのクラス担任で、「メモリーズオフ 2nd」のヒロインの一人でもあった南つばめ(CV:池澤春菜)とも関係がある様子です。


一葵、紗絵、ねねの3人を取り巻く関係性に注目
紗絵とねねについては表面だけで語るには作品全体のストーリーにも奥行きがありそうな感じなので、ひとまずある程度プレイした限りの印象を紹介しておきますが、その前提となる主人公・一葵のことにも少し言及しておきます。
一葵は「誰かのために行動すれば、みんな幸せ」が信条ということで、失恋したクラスメイトを慰めるためにファミレスで奢ったりと、一般的な感性とはいろいろとズレている部分があります。その一つが顔も名前も知らない許嫁がいるという背景から、恋愛に対しても興味がないという点。冷静に考えるとちょっとおかしい部分もあり、こうした細かな違和感が物語においても重要になってきそうです。


また、一葵の幼馴染で親友のような関係性だというねねは、可愛らしい見た目や人当たりの良さから、周囲に好かれている様子が見て取れます。また、実際にゲーム序盤を進めている限りだと、恋愛関係ではなく、どこか共依存のような部分も見え隠れしてきます。さらに、先を読み進めるほどに普段は見えていないねねの一面が出てくる瞬間もあり、ある意味で一番気になる存在です。


そして、一学年上の紗絵は学業優秀な特待生で、ファミレスのルサックでバイトをしています。その出会いは最悪なものでしたが、一癸は彼女の大人な振る舞いに感銘を受け、そこから一気に距離を詰めていきます。最初こそ頼れる先輩と危なっかしい後輩という関係性ですが、彼女自身が抱える問題とともに意外な一面も見えてきて、その魅力が多層的に見えてくるようになります。


幼馴染である一癸とねねは別として、一癸と紗絵には明確な関係性は無いように見えますが、「メモリーズオフ」シリーズはこれまでも意外な流れになってきたことがありますので、正直なところ全然先が見えません。このあたりは自身の目で実際に確かめてみてもらえればと思います。
こうした攻略対象となるヒロインたちの魅力はもちろんですが、「メモリーズオフ」といえば周囲のキャラクターの魅力も重要になってきます。本作において親友ポジションとなる大多喜新(CV:井藤智哉)は、まさに親友兼悪友と呼ぶに相応しい残念イケメンで、愛すべきキャラクターになっています。名前の読みは新(あらた)なのですが、ねねは“しんくん”と呼ぶあたりが、シリーズファンにはちょっと面白かったりするところです。

メモオフシリーズの息吹と変化の両面を感じさせる作品に
上記も含めて、もちろん過去作をプレイしているシリーズファンにも楽しめるポイントが随所に盛り込まれています。シリーズ皆勤賞で今作でも主人公を見守る稲穂信(CV:間島淳司)は言わずもがなですが、つばめ先生の登場シーンでのBGMは20年以上の時を越えて当時に戻ったかのような気持ちになりました。これもシリーズ通して阿保剛氏が劇伴に関わられているからこその魅力ではないでしょうか。


筆者としては完結作と銘打った「メモリーズオフ -Innocent Fille-」が素晴らしい作品だったと思っていまして、正直ここで新たな「メモリーズオフ」が提示されるという意味がどこにあるのか、というのはプレイする前の時点ではずっと気になっていました。
まだ触りの部分だけの感想ではありますが、同じ学校生活を描くにしても、例えば主人公がライトノベルが趣味であることなど、25年も経てば世の中のトレンドが変わったり、常識が変容したりと、そのアプローチが変わっていくものだと思っています。そうした点からも、「かけがえのない想い」というキーワードを残しつつ、「メモリーズオフ」としてのニュースタンダードを示している感覚がありました。ヒロインたちとの行く末をぜひ見届けられればと思います。

最後になりますが、本作ではパッケージの限定版だけでなく、デジタルデラックスエディションでも特典として設定資料集とSound Collectionが楽しめるようになっています。これから限定版を入手するのは大変かとも思うので、興味のある人はぜひそちらもチェックしてみてください。
(C)MAGES.
※画面は開発中のものです。
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