セガより発売中のPS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/Windows/PC(Steam)用ソフト「龍が如く8外伝 Pirates in Hawaii」。発売から約1ヶ月を迎えたタイミングで行われたシリーズチーフディレクター・堀井亮佑氏へのインタビューの模様をお届けする。
インタビューでは、発売から約1ヶ月を迎えた心境や印象に残っているキャラクター/キャスト陣やシーンについてはもちろん、テーマ曲となる「旅立ちの歌 -Journey to the new world-」の制作秘話、全プレイヤーが気になるエンディングについて伺うことができた。


――発売から約1ヶ月を迎えた今の心境をお聞かせください。
発売当初からシンプルに「面白かった」という声が今までで1番多いです。他の方とも「修学旅行に行った感じの楽しさ」という話をしており、それは狙っていた部分でもありました。
ゴロー海賊団との旅が楽しかったと思えるゲームを目指したので、その意図が伝わってこういう声が聞けたのは一番嬉しかったです。
――「龍が如く8」で描ききれなった部分を「龍が如く8外伝」で補完するという考えは最初から決まっていたのでしょうか?
「龍が如く8」の内容を補完することが前提としてあったわけではありません。ただハワイというステージしかり、まだ掘り下げられそうな要素が多かったのも事実です。
なので、「龍が如く8」の延長上の後日談として、使いきれなかったところ使ったり、もう少し面白い表現を目指すことは、企画の初期段階でありました。
――企画段階でやりたいと言っていたことについてはやりきった感覚、手ごたえはありますか?
そもそも「龍が如く8外伝」で海賊になっている以上、「龍が如く8」と関係があるとはいえず、そこまで「龍が如く8」の補足をしたかったわけでもないので、あまり後悔とかそういう感情はありません。
ただ「龍が如く8」から1年でここまで毛色の違う、新しい体験を生み出せたというのはクリエイターとして満足している部分です。

――OPのミュージカル感、EDのカーテンコールはポジティブな意味で「龍が如く」っぽくないという感想も多く目にしました。
私自身、歌が大好きでずっとミュージカルゲームを作りたいと思っていました。その点も踏まえて、「龍が如く8外伝」という作品で新しいことに挑戦したい気持ちがあったので、最初からミュージカル要素を入れることは決めていました。
ただミュージカルのシーンを作ったことがなかったので、かなり苦労はしました。時間もない中、最初にとりあえず「旅立ちの歌 -Journey to the new world-」をパパっと作って、静かな会議室の中で歌う…なんて経験もしましたが、結果的にはすごくお気に入りのシーンになりました。
――作品を通しても随所で流れていたので、耳にも記憶にも残っているのが「旅立ちの歌 -Journey to the new world-」です。日常生活で鼻歌交じりに歌っていることもしばしばあるくらいです。
狙い通りでございます(笑)。歌は海賊っぽさを象徴するというか、冒険感が出るじゃないですか。なので、「ゴロー海賊団のテーマ」も含め、軸となる“この曲聞いたらあの時を思い出す”ような楽曲は必要だと考えていたので、上手くパッケージングができたのは良かったです。
――「龍が如く8外伝」において、外部アーティストの既存楽曲や書き下ろしの楽曲が使われていないのには理由があるのでしょうか?
作品自体を短期間で作ったのもありますが、海賊というテーマでまとまった作品にしたいという思いがありました。海賊団の象徴となるような歌がゲームの中にあり、それが目立つような形にした方が海賊体験をストレートに伝えられるという意味でも良いと思ったので。
――サウンドトラックCDの発売時には、シリーズの中でもトップレベルに気に入っているとコメントしていましたが、好きなポイントなどあればお聞かせください。
今までで1番聞いててワクワクするというか、思い出に直結するような曲を多く残せたという点です。「龍が如く」らしさと海賊らしさのバランスをどう取るかは悩んだポイントで、最初はもう少し冒険海賊のような感じに寄ってしまい、「龍が如く」っぽくなかったので、ミュージックディレクターの吉田を含め、色々と相談しながら作りました。
どの楽曲も好きですが、「旅立ちの歌 -Journey to the new world-」は朝のアラームに設定するくらい好きですね。1日の始まりにもちょうど良いですし。あとは、「The Power of Goro's Pirates」という「ゴロー海賊団のテーマ」をリミックスしたバトルの曲もお気に入りですね。
――それこそ今後開催予定の「龍が如くthe LIVE」での楽しみも増えました。大きな会場、多くのお客さんがいる中で「旅立ちの歌 -Journey to the new world-」はかなり映えそうですし。
「旅立ちの歌 -Journey to the new world-」は、本当にあのスケジュールの中でよくできたなと思っています。
実は詞先、初めて歌詞から作った楽曲になっています。ミュージカルの曲は作ったことがなく、勝手も分からなかったので、とりあえず歌詞を書いて、それを元に作曲メンバーにデモを制作してもらいました。
1,2週間くらいして出来上がったものを聞いてみて、「いいんじゃないの?」「それっぽいじゃん!」という感じからスタートしました。あの曲が駄曲だったら作品の評価も変わってると思うので、本当に良かったです。

――出演されたキャスト陣の中で印象に残っている方はいらっしゃいますか?
全員素晴らしかったですが、皆さん思っているようにファーストサマーウイカさんの演技には感動しました。オーダーする時点で、少年っぽさのある声かつ、器用な方なのでいけるとは思っていましたが、あそこまでマッチするのは期待以上でした。
ノアは真島に次ぐ主人公というか、キーになる存在だったので、そこを素晴らしい演技で固めていただけて、作品がさらに引き締まりました。

――マサル・フジタ役の秋山竜次さんの演技も印象的でした。
海賊団が明るい感じの雰囲気になれたのは、マサルの存在が大きいと思います。ノアとジェイソンは家族である以上、下手したらギスギスするかもしれないところを、マサルという誰からも愛されて皆を笑顔にしてくれるようなキャラがいたことで、ゴロー海賊団への親近感を増してくれました。それは秋山さんだからこそ、唯一無二だったのかなと思います。
――マサルが登場する“Masaru's LOVE JOURNEY”についてですが、内容は台本として流れが決まっていたのか、もしくは秋山さんのアドリブなのでしょうか?
最初にコンセプトと必要なネタや道具(飲むヨーグルトなど)は考えていましたが、会話の流れなどは秋山さんに任せていました。
普通はこちらで用意してお願いする流れですが、秋山さんは一緒に打ち合わせで1時間ぐらいアイデア出しとかもしてくださり、良い経験になりました。


――「龍が如く8外伝 Pirates in Hawaii」における象徴的なシーン、もしくは印象に残っているシーンがあればお聞かせください。
サブコンテンツの導入にある、ミサキという女の子にまつわるストーリーが気に入っています。サイドコンテンツをあそこまでシリアスに始めたのは初めてだったので。
本編が「お宝でイエーイ!」のような明るい感じがあるので、サイドコンテンツはシリアスに寄せたのですが、結果的にはその方向性で間違ってなかったかなと。楽しいだけではなく、シリアスなシーンをサイドで少し多めに表現することで、本編もより引き締まるようなバランスになっていると思います。
真島についても、子供にダサい姿を見せるのは嫌だという点が、彼を描く中で1番大事にしてる部分です。ノアの前でかっこ悪い大人の姿を見せないとか、夢を諦めちゃダメだということを“大人の生き様”として伝えるシーンはメインストーリーでも多かったのですが、そこは1番大事にしたい軸だったので、そういった意味ではすごく象徴的なシーンだと思って気に入っています。
――サブで関わる人でいうと、茂田が仲間に入らなかったのが印象に残っています。
最初は茂田も仲間にしようかと思っていましたが、話を進めていくうちに、彼の幸せのことを考える仲間にならない方が良いという結論になりました。
何でもかんでもサブストーリーをクリアすれば報酬として仲間に加わるというのを優先しすぎて、道理から外れるのは違うかなと。真島も「誰でも歓迎やで!」と言いつつ、入らない方が良いときは止める人間であるべきだと思ったので。
――本作で真島とノアの絆にフィーチャーした理由やきっかけがあればお聞かせください。
真島の行動に対するモチベーションを、プレイヤーがしっかりと感情移入できるものにしなければという考えがありました。
その中で、助けてくれた少年に外の世界を見せてあげる、夢を叶えてあげるという“誰かのために行動する”というのが「龍が如く」の大事にしてきたテーマと一致するため、この形になりました。

――シナリオの中で、真島と冴島の絆の深さが強調されているイベントが多く、ファンとしてはグッときました。一方でコミカルに冴島をいじる場面もあり、お堅いキャラのイメージが変わったという人もいると思います。その点は狙ってのことなのでしょうか?
明るいメンバーが多いはもちろん、冴島ってはじめはとっつきにくいキャラだと思うので、海賊団にアジャストさせる意味でコミカルにいじったりしました。
もちろん最初のプロットの時点で、冴島を出さないという手もありました。ただ真島が極道の後始末的なことをやるのであれば、彼も手伝うのは当然ですし、真島の初単独主人公作品なので、そのそばに冴島がいないとつまらないというのは、私たちも思っていました。

――エンディングで表示された“続”に込められた意味をお聞かせください。
正直あそこまで反響があるとは思っていませんでした。元々は“終”や“完”と入れていたのですが、トロフィーで“まだまだ人生は、続くでぇ”と言っているし、真島や桐生の未来を見据えた終わり方にしているので、その時に完とでるのは凄く納得がいかないと。
「龍が如く9」に続く、シリーズものとしてご期待くださいというよりは、彼らの人生がまだまだ続くというメッセージも含めた上で“続”にしています。ただそれをSNSで言うも野暮なので(笑)。
――最後に読者へメッセージをお願いいたします。
世界中たくさんの方に遊んでいただき、シンプルにゴロー海賊団の冒険を楽しんでいただけたのがすごく嬉しく思っています。
今回、突飛なタイトルだったというか、私たちとしても実験作に近い部分がありました。そういう作品で「龍が如く」らしさを感じていただけた部分もあったと思うので、そこはすごく私たちにとっても大きなことだったと思います。
これから先、この後どうなる?みたいなことは、まだ話せませんが、今回の「龍が如く8外伝」で学んだことも多く存在するので、それを糧にして海賊よりびっくりするようなものとか面白いものを僕らも作っていきたいと思っています。
今後も龍が如くスタジオの続報しかり、次の作品を楽しみにしていただければ嬉しいです。
――本日はありがとうございました。
(C)SEGA
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