2025年3月5日にXbox Series X|S/PC(Steam)版が発売を迎えた「ツーポイントミュージアム」。これに合わせ開発チームの指揮を取る2人のクリエイターへのメディア合同インタビューが行われた。

ユニークな経営シミュレータで世界を魅了するクリエイターに直撃!「ツーポイントミュージアム」メディア合同インタビューの画像

「ツーポイントミュージアム」は、イギリスのゲーム開発スタジオTwo Point Studiosが手掛けたゲームで、同スタジオが長く展開してきた経営シミュレーションゲーム「ツーポイント」シリーズの最新作だ。「ツーポイントホスピタル」「ツーポイントキャンパス」に続く3作目となる。また同スタジオは名作として名高い「テーマパーク」シリーズを手掛けたクリエイターが設立したことでも有名で、まさに経営シミュレーションのスペシャリストとも言えるスタジオだ。

ゲームの発売は2025年3月5日だが、先行アクセスが行われ、ファンからすでにその出来栄えに高い評価が集まっている。今注目してほしいゲームだ。

今回のメディア合同インタビューではそんな注目作を手掛けたスタジオからリードデザイナーのLuke Finlay-Maxwell氏、そしてアートディレクターのMark Smart氏が複数のメディアの質問にオンラインで答えてくれた。

Luke Finlay-Maxwell氏(以下Luke氏)
Luke Finlay-Maxwell氏(以下Luke氏)
Mark Smart氏(以下Mark氏)
Mark Smart氏(以下Mark氏)

――シリーズが病院、大学と続いて最新作で博物館を選んだ理由、さらに博物館の中に水族館も含めた理由をあらためて教えてください。

Mark氏:博物館というアイデアは、それこそなんでも展示ができる場所で、その幅広さが我々にとって非常に魅力的でした。「美術館なら何でも選べる!」というわけです。また、もし消防士をテーマにした場合、プレイヤーは必ず消火活動に従事することになります。ですが博物館なら、プレイヤーを何にでも携わらせられます。

Luke氏:水族館というアイデアについては、展示物のテーマごとに独自のメカニクスを持たせられると我々が気づいてから、水族館なら面白い体験を生み出せるんじゃないかとワクワクしました。お客さんは魚のいろんなことを知りたい。それが満たされれば寄付をする。ですが、それを満たすには温度管理や魚同士の関係性、食性など、さまざまな管理すべき要素がある。こうした要素をゲームに落とし込んでいくのは非常にエキサイティングな体験でした。

――経営シミュレーションはある程度の難しさがあるジャンルですが、テーマに興味があれば一度は手に取ってみたいジャンルだと思います。どの程度の難易度を目指しているのかや、プレイヤー(特にジャンル初心者)への誘導についてどのように考えているのかを教えてください。

Luke氏:「ツーポイント」シリーズ全体の核となっているのは、アクセシビリティと奥深さにあると考えています。我々は複雑でやりこみがいのあるシミュレーションを作りたいと考えてはいます。が、それと合わせ「ツーポイント」シリーズはチュートリアルの開発にも多くの時間をかけていることもまた強みとしています。「ツーポイントミュージアム」ではまず先史文明の化石展示で基礎的なところを学んだら、次はゴーストや水族館といったちょっと変わったことに挑戦してもらって、最終的には科学装置の材料採掘や宇宙文明の調査をやってもらう、といろいろなことに順々に挑戦してもらいます。中にはゲーム前には想像もしていなかった意外なことにも挑戦することになるでしょう。

そうやって色々遊んでいるうちに、価格の微調整やスタッフの賃金といった要素の存在に気づいて、よりよい博物館運営ができるかもしれません。これまでもそうであったように「ツーポイントミュージアム」でもプレイヤーの失敗は些細なことです。挑戦することで、成功体験が得られるような作りを目指しています。

Mark氏:このゲームには「Easy to Win」のループがあります。ですが、先に出てきたスタッフの待遇改善など、さまざまな要素を駆使することもできる。私はプレイヤーが我々のゲームをどうやって遊ぶのか、いつも興味津々です。多様な要素があることで、人によって遊び方がガラリと変わります。我々の目指すところは、誰もが自分の好きなようにゲームを遊べるようにすることです。

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――「ヘンテコ博物館」の「ヘンテコ」部分へのこだわりを教えてください。シリーズを通してのこだわり、または特に本作でこだわった部分があれば教えてください。

Mark氏:視覚的な面から言うと、我々は見栄えが良くて分かりやすいビジュアルを目指していますが、あらゆるものに一種のパスティーシュ(パロディ・ヘンテコ)要素を取り入れたいとも考えています。これはゲーム全体を通して押し通している部分です。

私は個人的に、アニメーターがキャラクターにつけたアニメーションが大好きで、彼らはあらゆることに対して大げさな反応をします。ゲームを遊ぶと、この大げさぶりによってキャラが何を表しているのかとても読み取りやすくなっています。彼らは幸せだったり、悲しかったり、退屈したりしています。この大げさなそぶりに、ゲーム内で起こっていることを理解するのに必要な視覚的要素がすべて詰まっています。そして、我々はすべてのゲームでここにヘンテコな要素をキュレートしようとも努めてきました。

Luke氏:「ツーポイントミュージアム」では例えば、氷漬けの原始人が溶けてしまったとして、我々はその現象によってどんな楽しい・面白いことが起こるのかを探ります。そうしてできたのが、溶けた原始人が脱走し、寄付スタンドを破壊して、警備員に逮捕されてしまうところです。ヘンテコな要素をさらに強調できる場面であり、メカニズムとして取り入れようと試みました。

――本作はマネジメントを楽しむことのみならず、見た目の賑やかさやユーモアといった部分を非常に大切していると感じました。そうした見た目やユーモアを生み出すにあたって意識している点や影響を受けたもの(たとえば本作には映画をモチーフにした展示物などがあります)、あるいはこういうものは避けているというものがあれば理由とともに教えてください。

Mark氏:映画だけでなく、本やソーシャルメディアなど、私たちはみんなそうした文化によって形作られています。私たちはスポンジのような存在なんです。だから、私たちはいつも「あれとちょっと似ている」と感じています。

ですのでコピーはしませんが、我々のやっていることの多くにはパロディが含まれています。インディジョーンズの「あれは博物館のものだ」というセリフがこのゲームのトレーラーに用いられています。オチは当然違いますけれど。ただ、開発チームの我々はイギリスの文化の影響を常に受けてきました。ですが、すべての人がそうではない。我々は他の国や文化圏で、こうしたパロディがうまく伝わるのか、常にチェックし、正しく伝わるよう尽力しています。

また、過激すぎるパロディやシーンは避けるようにしています。私たちのゲームを遊んで、ショックを受けてほしくないからです。

Luke氏:軽く、ユーモラスでヘンテコに保つということだと考えています。「ツーポイントホスピタル」がいい例になりますでしょうか? 我々はすべての事柄をおおげさに誇張して、楽しげな雰囲気にしようと努力しています。

――展示品のカテゴリーに超常現象が用意されているところに、「ツーポイント」シリーズらしいユーモアを感じました。数々のおもしろおかしい展示品のアイデアはどのようにして生まれたのでしょうか?

Mark氏:(展示物の面白さは)ビジュアルとデザインのコラボレーションだと思う。さまざまなテーマや登場させたいモノをみて、一体何ができるのかを考えました。超常現象の展示物を例に上げると、私はどれだけカメラを回してもこっちを見てくる呪いの人形が好きなのですが、あのギミックにプレイヤーは最初気づかないかもしれません。このような小さなニュアンスの実現こそが重要だというのが私の考えです。

Luke氏:例を上げると、実際の幽霊を展示物にするというアイデアを思いついたとき、いいアイデアだと思いました。ただ、そのときすでに先に話した水族館のシステムを我々は持っていて、これを幽霊に当てはめるときにニュアンスの差をつけたかったんです。魚は動物ですが、幽霊はもともと人間です。なので、展示物である幽霊に人間らしさを感じてほしかった。人間それぞれ好みが違うものなので、ランダムな趣味嗜好が幽霊に設定されるようにし、特定の人物を相手している雰囲気を感じるようにしました。また、暗黒時代の幽霊はそれぞれ異なる種類のアニメーションを用意しています。

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――お気に入りの展示物、または特に力を入れた展示物をお教えください。

Luke氏:具体的にコレというのはないですが、先に出てきた呪いの人形もお気に入りですし、同じ超常現象テーマだとマネキンもいいですね。見ていないとポーズが変わるんですよ。

Mark氏:大きな植物で、スタッフや来館者を食べてしまうものが好きです。あれはお気に入りの1つだと思います。あと、先史文明の展示物である凍った蜂の巣もお気に入りです。視覚的にすでにギャグですが、溶けると蜂が来館者に飛びかかって大混乱になります。このゲームを要約しているような展示物です。

スキューバーダイバーのおかしな歩き方も好きですし、セキュリティが泥棒を捕まえるときに催涙スプレーではなくペッパーミルでコショウを浴びせかけるのも笑えます。あと、トレーニングルームの3段本棚は作るのに時間がかかったので印象的です。いろんなパーツが動いて、3冊の本が1冊にまとめられるのですが、そういう動きを見るのもいいですね。かなり満足感があります。……そうですね、実際ほとんどの展示物をかなり気に入っています。

――たとえばバレンタインデーチャレンジなど、季節に合わせさまざまなチャレンジが実装されるのが前作までの通例だったように思います。「ツーポイントミュージアム」でもこの取り組みは継続されるのでしょうか? またその頻度についてもお伺いできると嬉しいです。

Luke氏:(そうした取り組みについては)コミュニティが何を望んでいるかを見てから、方針を決めることだと思います。これまでと同様に、コミュニティのフィードバックが我々にとって本当に重要です。だから、もしプレイヤーたちがチャレンジしてみたいことがあるのならば、我々はそれを検討することができます。

Mark氏:プレイヤーが「ツーポイントミュージアム」をどのように遊ぶのか、彼らが何を望むのかです。我々は博物館を飾ることができる装飾品など、いろいろなものを特定の時期に合わせて検討しています。ただ、さまざまなことを動かす前に、コミュニティの動向を見なければなりません。それは発売したのち、数週間でおのずと明らかになるところでしょう。

――遠征回りのシステム、特に「ルートボックスのようなランダム入手する展示品」の扱いが気に入っています。分析を用いたパークの入手や啓発(Enlightenment)への置換、さらに上質を狙いたくなる展示品の品質など、プレイヤーの行いが無駄になることを避けた素晴らしいデザインだと思います。遠征や展示品についてどのようなことを意識してデザインしたかを教えてください

Luke氏:遠征システムがゲームの大部分を占めることはわかっていたので、意図的に時間をかけ繰り返し調整をしました。15か16回は調整を重ねたと記憶しています。最初はタイマーだけの簡素なシステムでしたが、イベントを起こしたり、それをカウントしたり、システムの内容はどんどんと大きくなっていきました。

ただ、遠征をゲームの唯一の焦点にはしたくはありませんでした。プレイヤーは博物館のマネージャーです。博物館を管理しつつ、スタッフに博物館の外への遠征の指示を出す。彼らが遠征から帰ってくると博物館に大きな影響がある。遠征に行くたびに、博物館で待つプレイヤーが楽しめるようにしたかったんです。そのため展示物の品質や分析室などのシステムなど遠征に関わるシステムをさらに重ねていきました。

また、本作はシングルプレイヤーゲームです。プレイヤーにリスクとリターンによる興奮は与えつつも、必要以上の苦労はさせたくありませんでした。なので、遠征に活かせれば必ず遠征レベルは上がりますし、スタッフに経験値も入ります。スタッフの怪我や病気、行方不明などのデメリットはありますが、遠征は常にメリットがあるようにしています。

Mark氏:博物館をキュレーションするということは、新しい展示物を集めなくてはいけません。そこで大事なスタッフは遠征には行かせず、危険な役を1人のスタッフに押し付け使い捨てにするなんてこともできるところも、このゲームの気に入っている部分です。

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――これまでもひと味違うシミュレーション作品を生み出してきたツーポイントスタジオですが、昔からずっと変わらずに作風を貫くにあたっての秘訣はありますか?

Mark氏:自分たちがやっていることへの熱意だと思います。

我々は人数もそれほど多くない、しかも誰が興味を持ってくれるのかもわからない状態でスタジオをスタートしました。そこで我々は、ゲームを作るたびに、これまでの持っていたものを基にして構築してきました。そのため繰り返し登場するテーマも、過去のキャラクターを思い起こさせる要素もたくさん登場します。これによって多くのユーザーに、このゲームは紛れもなくツーポイントスタジオのゲームであり、スタジオの色とユーモアがある、と認識してもらえるようになりたいのです。そして新しいゲームをより進化させたいと考えています。

つまり「ツーポイントミュージアム」は前作「ツーポイントキャンパス」の後押しを受けているわけです。また、我々は、我々の行うすべてに少しひねりを加えたユーモラスな魅力を持たせたいとも強く思っています。

――本作のUIは非常に練られていて、さまざまな要素に簡単にアクセスできることがうれしかったです。「ツーポイント」シリーズのUIで心がけていることを教えてください。プレイヤーを迷子にさせないコツなどはありますか

Luke氏:UIは経営シミュレーションゲームをナビゲートするうえで非常に重要な要素です。まずデザインチームが最も重要だと思われる情報のモックアップを作成します。そして、そのモックアップをコードに落とし込み、試行錯誤を繰り返し、よりよいものへと昇華させていきます。どんな情報が必要か、下部のバーにはどんなボタンがあればよいか、ある程度ブラッシュアップができたら、次はUIアーティストたちを呼んでアートスタイルの観点からどんな色が人を引き付けるかを検討を重ねていく。そうして最終的に、洗練されたものが仕上がるわけです。

UXの面でもできるだけアクセスしやすいよう、初期から何度も改良が加えられています。グラフィック面では、全てがクリアで読みやすいように気を配らなければなりません。

Mark氏:Lukeが言ったように、この反復プロセスがとても重要なんです。たとえグラフィカルにレイアウトすることができたとしても、それが実際に使用されるまでは正しく機能するかはわかりませんからね。

――今回日本語音声対応もあり、日本での展開に本腰を入れている印象をうけます。今回、日本展開に力を入れた経緯を教えてください。また、日本市場&ユーザーにどのように届いてほしいと考えているかを教えてください。また、日本語対応について日本人のファンに向けて一言いただきたいです。

Luke氏:日本のファンからの反応はいつも強く感じています。なので、我々ができる限り日本のファンの要望に応えたいと考えていることを知ってもらいたいと思っていました。そこで日本語音声に対応するのは良い方法だと考えたのです。

日本のファンの方へ。みなさんが「ツーポイントミュージアム」を過去作からどのように進化させたと捉えるのか、改善点はどこにあるのか、どこをどうすればよりインタラクティブで、楽しく、アクセスしやすいものにできるのか、フィードバックしてもらえるのが本当に楽しみです。

Mark氏:このゲームのパブリッシングは日本企業であるセガが担当しているので、まだ我々を知らない日本の方々にも気に入っていただけたらうれしく思います。

――「ツーポイントミュージアム」ではリリース開始時からMODに公式対応していることに驚きました。前作で行われていたMODコンペディションのようなイベントも計画されているのでしょうか?また、コミュニティとの関係をいかに盛り上げていくのか、その方針をお聞かせください。

Luke氏:我々は常にゲームの改善を行いたいと考えています。そのためにはコミュニティからのフィードバックがこれまでのゲームがそうであったように、非常に重要です。

そして、「ツーポイントミュージアム」でリリース初日からSteam WorkshopでModに公式対応することも我々にとって非常に重要でした。なぜなら、Modコミュニティがゲームと共に成長することを望んでいるからです。また、プレイヤーがどんなモノ・プレイに興味を持っているのか、どんな助けを必要としているのか知るきっかけにもなります。我々がそうした需要に今後対応できるかどうかに影響するわけです。

Mark氏:我々にとっても非常に良いことです。もしMODコミュニティの盛り上がりが特定のテーマに偏っていたり、1つの方向に向かっているように見えたりした場合は、開発側からそれを支援することができます。「ああ!なんて素晴らしいアイデアだ!」と取り入れることができるわけです。

Luke氏:またコンペのようなイベントに関しては、コミュニティが何を求めているか、彼らが必要としているサポートが何なのか見極めることになると思います。

Mark氏:Modに公式対応したことで本当に気に入っているのが、オリジナルの装飾品を作って博物館におけるところです。

Luke氏:このゲームでプレイヤーがゲーム内で運営する博物館のインテリア・レイアウトはプレイヤーごとに全く違ったものになると考えています。Modによってその差がさらに10倍へと膨れ上がるのが本当に楽しみです。我々の過去作に比べ「ツーポイントミュージアム」はよりクリエイティブなゲームですし、カスタマイズのオプションも豊富です。今後コミュニティがどんなものを生み出してくれるのか、期待しています。

――最後にプレイヤーに向けて一言ずつお願いします。

Mark氏:このゲームを楽しんでいただけたら幸いです。我々はたくさんの愛と情熱をこのゲームに注いできました。「ツーポイントミュージアム」に興味を持ってくれて、本当にありがとうございます。みなさんもこのゲームに満足していただけると思っています。

Luke氏:あなたがこのゲームで何を作り、どこを面白いと感じ、「ツーポイントミュージアム」をどのように成長させてくれるのか、とても楽しみにしています。

PCゲームの情報同人誌を作っていたところスカウトされ商業ライターデビュー。ゲームメディアを中心に執筆活動を行う。頻繁に自分は女子高生であると主張している。主な共著に『インディ・ゲーム名作選』(Pヴァイン、2021年)、『ゲーマーが本気で薦めるインディーゲーム200選』(星海社、2021年)、『インディ・ゲーム新世紀ディープ・ガイド ゲームの沼』(Pヴァイン、2022年)。

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