アニプレックスが2025年4月24日に発売を予定しているNintendo Switch/PC(Steam)用ソフト「HUNDRED LINE -最終防衛学園-」の体験版レポートをお届けする。内容のネタバレを含むので、閲覧には注意してほしい。

本作は「ダンガンロンパ」のクリエイター陣による“極限”と“絶望”のアドベンチャーゲームだ。小高和剛氏と打越鋼太郎氏がディレクションとシナリオを手掛け、異能の能力を授けられた少年少女たちは迫りくる敵「侵校生」から「最終防衛学園」を100日間守り抜くことになる。
この体験版では「プロローグから7日目まで」がプレイ可能となっており、セーブデータは製品版へ引き継ぎ可能。2月19日にリリースされる体験版はPC用で、Nintendo Switchでの体験版は後日配信を予定している。本稿ではPC版にDualSenseワイヤレスコントローラーを接続してプレイした。

結論から言うと、過去に「ダンガンロンパ」シリーズなどをプレイしていて本作にも“ああいうノリ”を期待しているのであれば、一も二もなくすぐに体験版を遊んでほしい。今回の限られた範囲のプレイでも、極限状態に置かれた少年少女が、さまざまな謎を前に疑心暗鬼に陥りつつも仲間たちを信じて敵に立ち向かう――こうした王道的な展開に、プレイヤーの予想を超えた驚きが待っているのは間違いないと確信できた。
「この先、もしかして○○みたいになるんじゃないか?」といった安易な考えを、ブラックジョーク風やいわゆるメタなノリで「残念でした!そんなのこっちも予想済み!」と一刀両断されていくのは、むしろ心地よいほど。そうまでして面白さのハードルをとことん上げても、プレイヤーの期待を絶対に超えてみせるという自信がひしひしと感じられる。体験版はちょうど盛り上がり始めたところで終わってしまったので、製品版ではここからどうなっていくのかいちプレイヤーとしても非常に楽しみなタイトルだ。




仲間たちと絆を深めつつ、謎の侵校生から学園を防衛する
それでは改めて、本作のシステム関連について紹介していこう。謎の敵、侵校生は最終防衛学園で守られた“あるモノ”を狙っている。これを100日間にわたり守る使命を課されたのが総勢15人の「特防隊員」で、詳細は不明だが“あるモノ”を奪われれば人類は滅亡を免れないという。


特防隊員は全員、超常的な能力を発揮するための原動力「我駆力(がくりょく)」を備えている。我駆力刀(がくりょくとう)を心臓に刺すと各隊員の適正に合わせた学生鎧(クラスアーマー)、学生兵器(クラスウェポン)が具現化。この力についても詳細は伏せられているようだがゲーム内でも言っているとおり、ペルソナとかスタンドといった例えでピンとくる人はそう思えばいいらしい。この我駆力を駆使し、侵校生から学園を守り切るのが目的だ。

アドベンチャーパートではメインストーリーを楽しむ傍らで、学園内にいる仲間と絆を深めてステータスをアップさせたり、各種リソースを集める「探索」を行ったりできる。メインストーリーが進むと、学生兵器のカスタマイズなどの要素も順次解放されるようだ。学園内は徒歩移動でもいいが、ファストトラベルでもテンポよく移動できる。




探索では学園の外に飛び出し、仲間と共にすごろくのような盤面をカードに書かれた数字の分だけ進んでいく。止まったマスに応じてリソースを入手できるが、場合によりダメージを受けたり、侵校生とのバトルが発生したりすることも。全滅すると集めたリソースの半分を失ってしまうので、引き上げるタイミングの見極めが重要になる。


会話や探索を繰り返してアドベンチャーパートが進むと、侵校生から学園を防衛するシミュレーションゲームのパートが発生。状況によりいくらか異なるようだが、概ね「敵を全滅させる」が勝利条件、「味方キャラクターの全滅」や「バリア装置の破壊」などが敗北条件となる。

各キャラクターは個性に応じた「スキル」を備えていて、画面左上の「AP」の回数だけ行動を行うことができる。敵への攻撃など何らかの行動を行うと「疲労」となり1マスしか移動できなくなるが、APが残っていればその場で再度スキルを使ったり、体勢を整えて行動し直したりできる。APは使い切るとターン終了となるが、残ったAPを次のターンに持ち越すこともできるので、温存して一気に使うのも戦略のひとつだ。




また、各キャラクターにはバトルをやり直す、移動したマス数に応じて自身に簡易バリアを獲得する、ステータスに応じてスキルの性能が変化する、倒した敵の分だけターン中の攻撃力が上がるなど、自動発動するパッシブスキルがある。スキルとパッシブスキルの効果に応じて直接切り込んでいくのか、サポートや防衛に回るのか、各キャラクターの行動方針は自ずと決まってくるだろう。
戦闘を進めていくと画面中央上のゲージ「VOLTAGE」が蓄積され、100%になるとキャラクター固有の「必殺我駆力」を使えるようになる。APなしでも使える強力な攻撃だが、反動として次のターン終了まで行動不能となる「スタン」状態になるので注意したい。このほか、同様にゲージを100%消費して「我駆力アップ」でバトル中ずっと攻撃力を高めたり、再行動を取ったりすることもできる。どのタイミングで何を選択するのかプレイヤーの判断が勝負を分けるので、慎重に活用しよう。
味方が死亡した場合もVOLTAGEを100%獲得し、さらにVOLTAGEの獲得率も上昇。また、HPが5以下の「瀕死状態」となったキャラクターは命と引き換えに必殺我駆力と同等の「決死必殺」を放てる。死亡した味方は一時離脱するが次のWAVEには蘇生されるうえ、報酬がアップする「ナイスDEATH」としてカウントされる本作らしいユニークな要素がある。こうしたシミュレーションゲームでは味方が戦闘不能にならないよう立ち回るのが定石だが、本作ではむしろ積極的に味方を犠牲にしながら戦うほうがプラスといえそうだ。




ちなみに死亡はシステム上の表現ではなく文字通りの死亡で、すぐに死体を回収できれば「保健室」で蘇生できる……という仕組み。これも我駆力の恩恵のひとつらしいが、それゆえ学園が破壊されない限りは不死身なので戦い続けなくてはならない運命にある。

侵校生は、一撃で沈むほど弱いが数が多く真っ先にバリア装置を目指すタイプや、そこそこ耐久力のあるタイプをはじめ、強大な力をもつ「部隊長」クラスも登場。部隊長はカウンターや雑魚とは比較にならない強力な攻撃でこちらを追い込んでくるため、味方の犠牲も視野にいれた戦略が不可欠となるだろう。




シミュレーションゲームに馴染みのないプレイヤーには少々厳しく感じるかもしれないが、本作にはほどよい歯ごたえを楽しめる「HUNDRED LINE」、バトル中に定期的に味方のHPと状態異常が全回復する「SAFETY」という2つのバトルモードが用意されている。バトルモードはいつでもオプションから変更できるので、バトルのやり直しなどを駆使してもクリアが難しい場合はバトルモードを変えてみよう。
大切なものを守るため、立ち上がった少年少女の行く末は
本作の主人公・澄野拓海(CV:木村太飛)は、平凡な家庭に育ったごく普通の高校生だ。幼馴染みの柏宮カルアと「東京団地」で暮らしていたが、突然侵攻生からの襲撃を受ける。自らを「SIREI(CV:大塚芳忠)」と名乗る謎の生物によって異能に目覚めた澄野は辛うじて危機を乗り越えるが、その直後に最終防衛学園へ「転校」させられてしまった。
見渡す限り瓦礫に囲まれ、不思議な「消えない炎」に守られた学園で目覚めた澄野は、同じような境遇の少年少女と出会う。彼らは学園の司令官だというSIREIに逆らうこともできず、東京団地に帰ることもできず、特別防衛隊の隊員として侵校生との戦いを強いられることになるのが物語の始まりだ。




ただし全員が全員、戦う決心がついているわけではない。幼馴染みを守るために立ち上がった澄野をはじめ、序盤から戦えるのは見た目と言動は怖いが心根は優しい厄師寺猛丸(CV:小林親弘)、ある理由で圧倒的な戦闘力を誇る雫原比留子(CV:井上麻里奈)、デスゲーム好きで情緒が不安定な飴宮怠美(CV:ファイルーズあい)のみとなる。
意見の食い違いを経て、こちらが照れてしまうようなセリフを恥ずかしげもなく言ってのける仲間想いの蒼月衛人(CV:櫻井孝宏)も加わり、どうにか部隊長を撃退する……といったところまでが体験版で遊べた範囲だ。バトルの性能を確かめられなかったキャラクター、公式サイトなどで紹介されているものの体験版には登場しなかったキャラクターも気になるところ。


そしてここまでの間、澄野たちは侵校生からの襲撃だけではなく、さまざまな問題に直面する。何故、こんな少人数で戦わなくてはいけないのか。どういった理由でこのメンバーが選ばれたのか。侵校生が狙う“あるモノ”は一体何なのか。その疑問の答えを知っているはずのSIREIが行方不明となり、変わり果てた姿で発見される。特別防衛隊の面々は埋め込まれた爆弾によってSIREIに造反できないはずなので、犯人は一体誰なのか。澄野が見かけた人物は敵なのか、味方なのか。




学園にまつわる謎が深まる一方、澄野たちは聞いたことのない言語を操る人型の侵校生が部隊長へ姿を変えるのを目の当たりにする。それは、自分たちが我駆力で変身するのとまったく同じといってもいいシステムだった。この人型の侵校生を抹殺すると力を吸収でき、澄野たちの我駆力が高まるという。不可解な類似点は、一体どういうことなのか。


そもそもでいえば、澄野たちが住んでいたという東京団地にも妙な部分が多い。ここは天井まで覆われ、人口光で昼夜を切り替えているなど異常なほど閉鎖された空間だ。そのため彼らは、学園に来て初めて空や星、月を見ることになる。そこでは警報が鳴ればシェルターへ避難するのが当たり前のように生活の一部となっていて、澄野も何に対する警報なのか疑問を抱くこともなく暮らしていた。
学園と東京団地は遠く離れていて、今は侵校生も学園を狙っているため安全らしいが、果たして東京団地は現在どのような状況なのか。何故、雫原は他のメンバーよりも先に東京団地で戦っていたのか。ストーリートレーラーから垣間見える部分や、双子の兄妹である九十九今馬(CV:緒方恵美)と九十九過子(CV:伊藤梨花子)の言動と併せて、平穏な場所に見せかけただけの、ろくでもない場所のような気がしてならないが……。


こうした数々の疑問に対し、さまざまな想像をめぐらすプレイヤーも多いことだろう。しかし、デスゲーム好きの飴宮を中心にキャラクター同士のやりとりでぱっと思いつく程度の妄想は「そういう話ではなさそう?」と次々に封じられてしまう。さらに彼らは学園内にいる限り不死身であり、良くも悪くも仲間同士でのデスゲームが発生しない環境下というオマケ付きだ。
これまで「ダンガンロンパ」シリーズや「極限脱出」シリーズであっと驚くシナリオを越えてきたプレイヤーはもちろん、多彩なエンターテインメントを味わってきたプレイヤーほど「○○みたいな話じゃないなら、どういう展開になるの?」と先が気になることは間違いないだろう。もちろん、そのすべてが本来の展開を隠すためのもので「ああいう演出にしたけど、実は全部ウソで……」といった結果が待っている可能性も捨てきれない。


そんなわけで気になる部分はいくらでもあるが結局のところ、ああだこうだと考えを巡らせても疑問の答えは製品版をプレイする以外に得られそうもない……と身もふたもない結論になってしまう。雫原の過去に関しては予約特典の「特防隊前日譚FILE03 雫原比留子の初陣」で語られるようなので、体験版を遊んで気になったプレイヤーは早めに予約しつつ製品版の発売日を指折り数えて待っていよう。
(C)Aniplex, TooKyo Games
※画面は開発中のものです。
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