2025年2月15日~16日に都立産業貿易センター浜松町館で開催された「東京ゲームダンジョン7」の現地レポートをお届け。ライターが気になった作品をピックアップしてお届けする。
インディーゲームの展示会である東京ゲームダンジョン7が2025年2月15日~16日に都立産業貿易センター浜松町館で開催された。イベントは年々と規模が大きくなっているが、筆者がお話を聞いたクリエイターの多くは本業でゲーム会社に勤めながら好きなことをやりたいために副業でインディーゲーム開発をしている人が多かった。
また、大手に勤めていたものの自分の作りたいものを表現するためにインディの制作に乗り出しているクリエイターも多数おり、ひとりひとりから熱気とポジティブな空気が伝わってきたのが印象的であった。
コミュニティは巨大になりつつも、根幹に流れるインディースピリットを感じるとてもいいイベントだった。ここからは2月15日に現地取材をしたライターがとくに気になった作品を紹介していこう。

「新宿異変」
新宿の街で怪異の写真を撮影するビジュアルノベルゲーム。それぞれのスポットで、「近寄る」「撮影」「去る」というコマンドを選択できる。怪異か人間か近づいてみなければ分からないが、あまり近づきすぎると怪異によって呪い殺されてしまう。

また、人間であった場合も因縁をつけられて刺されてしまうことに……。どこまで近づくのか、適切な距離を予想するのが重要だ。なお、ゲームオーバーになったあと、同じスポットに訪れたときに登場する被写体はランダムで変わるので、毎回ハラハラさせられることになる。

フィルムの数は決まっており、そのフィルムのなかでどれだけ怪異を撮影できるかがカギに。自信がないときは「去る」を選んで別のスポットに移動することも可能。難しい操作もなく、ルールも分かりやすいので、サクッと遊べるカジュアルなゲームになっていそうだ。

怪異に襲われるシーンはビックリさせられるものの、自分の感覚ではそこまでショッキングではなかったので、ある程度ホラーに耐性がある人であれば問題なくプレイできるだろう。また、近づくべきか、止めておくべきかのスリルを楽しむ作品なので、ひとりでプレイするのはもちろん、実況プレイでコメントを募りながら遊ぶのも楽しそうだ。

発売は今年中を予定しているということだが、ビジュアルやサウンドの雰囲気も抜群にいいので、楽しみに待ちたい。
「Danchi Days」
とくにオリジナリティを感じた作品が「Danchi Days」。団地のお祭りを盛り上げるため、少女とカッパが地域に暮らす人々に協力を仰いでいくというもの。出展されているアドベンチャーゲームはダークな内容のものが多かったので、本作のほのぼのとした内容が微笑ましかった。筆者も実家が団地で長らく団地住まいをしていたため、家族や友だちとも違う地域ならではのゆるいつながりを思い出すことができてよかった。

本作が影響を受けた作品は「さくらももこのウキウキカーニバル」とのことで、グラフィックもゲームボーイアドバンス風のドット絵に。このグラフィックもゲームの雰囲気にとても合っていた。

製品版では151人のキャラクターをお祭りに招待できるそうだが、今回の体験版では4人のキャラクターを招待可能だった。悩みを聞いてあげたり、五感を使うミニゲーム“感覚ゲーム”をクリアしたりすることで、祭りに参加してくれる流れで、難易度は易しめ。謎解きもあまり悩むこともなく、ミニゲームのアクション性も高くないので、ゆっくり世界観に浸かることができる。感覚ゲームの内容は、トイレの配管を流れる水の音でほかの住民とのつながりを感じるものだったり、竹ぼうきを掃く音に癒やされるものだったりと、現代に生きる我々が忘れていしまったような懐かしい感覚を思い起こさせてくれる。

2000年代の個人サイトを彷彿とさせるインターネットにつなぐことができるシステムも用意されており、さまざまな部分でノスタルジーを感じさせてくれる作品。キーワードが増えていくごとに世界が広がっていくのも、当時のネットサーフィンのおもしろさを彷彿とさせた。

ドラマチックな展開はなくとも、なんでもない日常がキラキラした宝物だったことを思い出させてくれる作品だ。
「おやおや?大家さん!」
ファインの社内若手チーム“Shadow Glove”が制作する人狼風推理アドベンチャーゲーム。大家となったアパートの住人に紛れ込んだ妖怪を見つけ出すのが目的で、“妖怪は嘘をつけない”というルールをヒントに妖怪を見つけていくことになる。妖怪には人間とは違う習性があり、住人たちに聞き込みをして怪しいところがないか探っていく流れ。

気になった発言はメモとして残すことができ、このメモを証拠品として妖怪を追い詰めていく。しっかり証拠が揃っていなければ妖怪を指名しても失敗となってしまうので、しっかりと住人の言葉に耳を傾け、自分のなかでロジックを組み立てるのが重要となる。

謎解きはもちろん、キャラクターたちの交流も見どころの作品。個性的なキャラクターが多く揃っているだけに製品版では彼らがどのように活躍するのか楽しみに待ちたい。

「ざこのあひる」
「Getting Over It with Bennett Foddy」のような高難度ゲームを、いわゆる“メスガキ”と呼ばれる女の子に見守られながらプレイするゲーム。

こういったゲームはストイックなプレイになりがちだが、メスガキが煽ってくるので思わず笑ってしまう。高難度ゲームとメスガキの組み合わせはイライラを倍増させそうな気もしたが、このシュールなシチュエーションに和んでしまった。

なお、ゲーム部分に集中する必要があるのでメスガキのセリフをしっかりチェックできないのがネックに感じたが、制作者にヒアリングしたところ、音声は実装予定ですでに収録も終わっているとのことだった。より本作ならではの世界観になっていくと思うので期待したい。

ゲーム部分に関しては水を含んだアヒルのおもちゃを操作する形で、勢いよく水を出すことで遠くまで飛ぶことが可能。ただし、アヒルはくるくる回るので、なかなか狙った進行方向に進めないのがもどかしい作りになっている。いちど飛んだあと、ふたたび空中で水を発射することも可能で、一気に進めたときは気持ちがいい。一方で水が無くなってしまうとリスタートとなるので、何度も失敗することはできずに緊張感を持って遊べるようになっている。ゲームとしてもおもしろいし、そこにメスガキの煽りが加わって“わからせ”たくなる仕組みが最高で、ずっと遊んでいたくなってしまうゲームだった。
「キメキャワ♥限界ビートちゃん!!」
キャラクターのかわいさが目に付いた1作。ライン工場で働く女の子がひたすらフルーツをつぶしてジャムを作る内容だが、虚無だった彼女に限界が来ると周囲がキラキラした世界に早変わりし、愛くるしいぬいぐるみを叩き潰すフィーバータイムに突入するというブラックジョークにあふれた作品。

フルーツを潰して給料として獲得した資金はショップで使用可能。フルーツの種類を増やしたり、単価をアップしたりと、さまざまな機能を解放可能。ショップは任意のタイミングで利用できるので、こまかいものから取得していくか、我慢してから一気に効果の大きいものを選ぶのかというゲーム性がある。

クリッカーゲームのひとつであるが、ぶっ飛んだ世界観やセンスのあるビジュアルにより、唯一無二の魅力を放つ作品だ。

「レイチェルの思い出」
百合SFノベルゲームというジャンルと作品の雰囲気がが気になり、プレイしてみた作品。基本はビジュアルノベルだが、“思い出”というショートストーリーから“フラグメント”と呼ばれるキーワードを拾って本編中の問いに答えながら進んでいくシステムがあるのが特徴だ。

フラグメントは同じ単語であっても思い出によって意味合いが違うという仕掛けも。また、メインとなるビジュアルノベル部分もメッセージウインドウが存在せず、特徴的な演出になっていて世界観に引き込まれる。

メインとなるストーリー部分は主人公の鹿島かをりが親友のレイチェルと帰宅していたところ、レイチェルが黒いフードを被った人物に刺されて死亡。その後、タイムマシンを手に入れたかをりがレイチェルの生きている時間に戻るものの、そこは少し違うパラレルワールドであるという展開。パラレルワールドに分岐した分岐点はどこにあるのか思い出から探っていく内容となっているそうで、とてもワクワクさせられるものだ。製品版を楽しみに待ちたい。

「Romp of Dump」
登場するキャラクターは全員かわいい見た目をしているものの、じつは全員が猟奇犯罪者で、もれなくクズという“クズ囚人観察アドベンチャーゲーム”。じつにインディーらしい作者のクセがたっぷり詰まった作品だ。

プレイヤーは彼らとの“賭けトランプ”に挑んでいき、Live2Dで動く彼らの癖を見抜いて勝利を目指していく。Live2Dは美麗で表情も多彩なので観ていて飽きない。また、キャラクターたちはクズであるものの、どこか憎めない人物ばかりで愛嬌があり、なぜか好きになってしまう。

キャラクターを出し抜いて勝利し、新しい情報を手に入れるのがゲームの基本であるものの、負けた場合も主人公の情報を知ることができるので、メリットもあるのがうれしい。主人公自信も冤罪を主張する連続殺人鬼で、他者を虜にするような魔性の魅力を持っており、好きになる人も多いはずだ。

各キャラクターのバックボーンはもちろん、メインストーリーとなる猟奇犯罪をテーマにしたサスペンス系ストーリーもとても先が気になる作り。作者である個人ゲーム開発者のザクロスケ氏によると本作は女子がターゲットとのことだが、乙女心を持たない筆者でもすごく楽しめたので、ぜひチェックしてみてもらいたい。
※画面は開発中のものです。
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