Firaxis Gamesが開発し、2Kが来たる2025年2月11日にPS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/Nintendo Switch/PC(Steam/Epic Games Store)にて発売する「シドマイヤーズ シヴィライゼーションVII」の先行プレイレビューをお届けする。

目次
  1. わずらわしさを廃する変更で、誰にとっても遊びやすく
  2. 指導者・文明・記念品の組み合わせが無限の戦術を生む
  3. 必ずプレイヤーを襲う試練「危機」に備えろ
  4. 最新作から「シドマイヤーズ シヴィライゼーション」の世界に飛び込もう

「シドマイヤーズ シヴィライゼーションVII」は30年以上の歴史を持ち、今なお多くのファンを抱えるシミュレーションゲーム「シドマイヤーズ シヴィライゼーション」シリーズ待望の最新作だ。前作である「シドマイヤーズ シヴィライゼーションVI」の発売は2016年10月であり、新作の登場は実に8年ぶりだ。

もちろん前作はDLCやシーズンパスなど継続的なコンテンツ追加とアップデートを近年まで重ねており、シリーズファンにとってはそこまで間隔が開いたという印象は少ないだろう。だが、シリーズを知ってはいるけど遊んだことがない、あるいは前作を発売当初は遊んでいたけどアップデートまでは追っていなかった、という方にとってはひさかたぶりの大作の帰還となる。

これを機会に「シドマイヤーズ シヴィライゼーション」シリーズに触れてみよう、ひさしぶりに遊んでみよう、と考えている人は多くいるはずだ。

「シドマイヤーズ シヴィライゼーションVII」プレイレビュー:シリーズ最新作は初心者にもやさしい?変更点を中心に紹介の画像

だが「シドマイヤーズ シヴィライゼーション」シリーズはゲームシステムが難解であることもまた有名だ。このシリーズは探索・軍事・経済・研究・政治などさまざまな要素を同時にこなし、その多様な要素が複雑に折り重なることで生まれる戦術、やり取りが大きな魅力となる。複雑だからこそ面白い、世に言う4Xと呼ばれるゲームジャンルの先駆けとも言えるシリーズだ。

システムが難しそうだしできるだろうか? ひさしぶりだと新システムについていけないのでは? と、興味はあるものの不安を感じている人もまた多いだろう。

実は「シドマイヤーズ シヴィライゼーションVII」はこれまでのシリーズの定番を大きく変更する大改革が行われている。これには初心者にとってもありがたい内容が含まれている。

最新作の変更内容については公式ページに細かく紹介されているため、シリーズファンの熟練者ならばそれを読むだけでプレイフィールの違いや良くなったところを想像できる。だが、初心者にはそれもなかなか難しいはずだ。

そこでこの記事では大きな変更点を紹介しながら、初心者にこそ「シドマイヤーズ シヴィライゼーションVII」をおすすめしたいその理由を紹介していこう。

わずらわしさを廃する変更で、誰にとっても遊びやすく

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「シドマイヤーズ シヴィライゼーションVII」でプレイヤーは文明を時代を超えて指揮する指導者となる。目指すは世界を牛耳る巨大文明だ。だが、当然世界にはプレイヤー同様に世界の覇者を目指している他の文明も存在する。CPU・他プレイヤーが率いる文明としのぎを削りつつ、古代・探検の時代・近代の3つの時代を経て最も大きな文明を築き上げた文明が勝利となる。

時代の移り代わりごとにゲームは一部リセットされるが、前の時代で成し遂げた成果がアドバンテージを生む。2度の時代変化で他文明よりも大きなアドバンテージを得て、最後に訪れる近代で大きな成功を収めるのが目標だ。

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加えてこのシリーズの大きな特徴は勝利条件が複数用意されている点だ。今作では文明の発展を計る尺度が軍事・経済・文化・科学の4つ用意されており、それぞれの尺度に設定された達成目標(マイルストーン)の進捗具合によるポイント数、あるいは近代でどれかのマイルストーンを完了すると進行できる勝利目標を達成できるかで勝敗が決する。軍事力で他文明征服を目指すのも、資金力で世界を牛耳ることを目指すのも、プレイヤーの選択次第だ。

だが、このゲームは歴史の長い歩みをターン経過で表現しており、何かを生産・研究するのに短くても10ターン前後、長いものだと30ターン以上も必要になる。もちろんこのターン数は文明の成長によって短くできるが、それにもやはりターン数が必要だ。プレイヤーの選択の成果が現れるのは何十ターンも過ぎたあとというわけだ。細かいシステムやルールを説明しだすときりがないので省略させてもらうが、先の先を見据えたプランニングが「シドマイヤーズ シヴィライゼーション」の基本だ。

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「シドマイヤーズ シヴィライゼーション」シリーズにはこの基本を初心者にも伝えるべく、目指す勝利に向けて何を進めるかを提示してくれるシステムや、新しい要素が登場するたびにチュートリアルを表示する設定、ゲーム内用語をいつでも検索できる辞書機能など、初心者用のシステムが多数用意されている。本作はターン制ゆえに手を止めて調べることができるし、そもそもゲームスピードがゆっくりだ。ゲームを実際に触っていくことでゲームのイロハが学べる下地はきっちりある。

しかし、そうした初心者のゲーム理解を阻むシステムが「シドマイヤーズ シヴィライゼーション」シリーズには存在していた。蛮族だ。蛮族はマップ上に定期的に出現する全ての文明に敵対する軍事ユニットで、コレが定期的に出現してはプレイヤーの都市を襲ってくるのが通例だった。

そして「シドマイヤーズ シヴィライゼーションVI」ではこの蛮族があまりに猛威をふるっていた。初心者が分からないなりに立てていた計画はその辺に湧いた蛮族に破壊されるし、熟練者も対策を余儀なくされる。ただただ厄介な存在と化していた。

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その反省を踏まえてだろう。なんと「シドマイヤーズ シヴィライゼーションVII」ではなんと蛮族が廃止されることとなった。これは本当に大きな変更だ。

本作では文明に属さない独立勢力が蛮族のような立ち位置となっており、蛮族同様に独立勢力の軍事ユニットがこちらの都市へと攻撃を仕掛けてくる。とはいっても蛮族と違って、独立勢力ごとに性質が決まっているのか好戦的ではない勢力も多い。しかも独立勢力は各時代の開始時に配置される仕様となっており、プレイ中にいきなり出現することもないのだ。

つまりガツガツ攻め込んでくる独立勢力が近隣にあったとしても、そこを破壊すればもう襲われる心配はないわけだ。また新登場した政治用のリソース影響力を消費して従属国する選択もあり、リソース消費とターン数は必要だが独立勢力からリターンを得ることまでできる。

蛮族と違って独立勢力には計画的な対処が可能で、わずらわしさがかなり軽減されている。かなりの緩和措置だ。

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この蛮族の廃止に加え、本作はこれまでシリーズ作にあった数々のわずらわしさを減らす変更がいくつも入っている。

例えば本作では資源・リソースの確保がかなり簡略化されている。木材のような資源を獲得したい場合、マップ上の資源が取れるマスを見つけ、そこに居住地を広げて、労働者ユニットを派遣して必要な地形改善を行う。あるいは他文明と交易を行って、取引によって獲得する。という手順が必要だったのが前作までだ。

ここに変更が入っており、本作では自分で獲得する場合は居住地をそのマスに広げたら自動で獲得。他文明の都市から資源を輸入したい場合も商人を派遣して交易路をつなぐだけでその後の操作の必要なく自動で輸入されるようになった。

さらに労働者ユニットも廃止されており、都市拡張の手間も大幅に削減されている。生産される食料が閾値に達すると都市成長ポイントが得られ、その都市の居住地を広げる、あるいは市街地に専門家を割り振ることが可能になる。文明が成長し都市が増え、巨大化していくごとに労働者ユニットと取引の操作量が増え続けていくわずらわしさをなくす調整だ。

都市に関して言えば都市の前段階である町が追加され、放っておくだけでリソースや資源だけを回収できるサブ拠点として運用することも可能になった。

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他にも司令官ユニットが追加され、軍事ユニットをひとまとめにして移動と行動が指示できるようになったり、航行可能な河川が追加されて海に面していない都市でも河川を通して海上ユニットの往来・生産が可能になったりと、調整はほかにもたくさんある。ただ、その多くが面倒ごとを減らす方向で「シドマイヤーズ シヴィライゼーションVII」は行われている。

遊んでみると、ユニットや都市が増えた中盤以降は1ターンで行う操作がどうしても膨れ上がってしまうものの、前作まではこれの2~3倍は操作を要求されていたことを考えればかなり楽になった印象だ。

開発はこれら調整のことを合理化と説明しており、プレイヤーには作業に追われるわけではなくゲームを左右する重大な選択に集中してほしいとしている。もちろんこれはシリーズファンの熟練者にむけたメッセージだ。公式ページで変更について詳しく説明しているのも、大きな変更にはちゃんと理由があるという弁明だ。

だが、このメッセージは初心者にとっても非常にありがたいものだ。筆者は「シドマイヤーズ シヴィライゼーションVI」からかなりひさしぶりのプレイで、いろいろと忘れていて最初は混乱が大きかった。だが、操作しなければいけないこと、序盤に気にかけねばいけないことが少ないおかげで、イロハを取り戻す余裕があった。

システムを忘れただけの経験者の意見ではあるが、シリーズはじめての方にも本作の調整は良い方向に働くはずだ。もちろん、簡単に遊べるとは全く言えないゲームだ。だが挑戦のハードルは前作に比べて、確実に下がっている。

指導者・文明・記念品の組み合わせが無限の戦術を生む

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こうしたわずらわしさを減らす調整に加えて、シリーズの当たり前を揺るがす大きな変更も行われている。

これまでのシリーズではプレイヤーはまずは文明を選び、それに属する指導者を選択することでゲームがスタートした。エジプトならクレオパトラとラムセス2世が選べるといった具合だ。文明にはそれぞれ独自のバフと固有ユニット・建造物があり、ここに指導者に設定された能力が加わることで文明の強みが強化される。

軍事力に秀でた文明もあれば、科学力に秀でた文明もある。また、古代で力を発揮する早熟タイプの文明と、近代で爆発する大器晩成タイプの文明という違いもある。これが前作までの当たり前だった。

「シドマイヤーズ シヴィライゼーションVII」プレイレビュー:シリーズ最新作は初心者にもやさしい?変更点を中心に紹介の画像

「シドマイヤーズ シヴィライゼーションVII」ではこの当たり前が大きく変わった。

まず文明と指導者が紐づかないようになった。指導者と文明を自由に組み合わせることができるようになったのだ。今作ではエジプトの指導者としてハトシェプストが登場するが、彼女を使ってギリシャや漢、クメールを率いることもできる。指導者の持つ能力を、さまざまな文明に掛け合わせることが可能になったのだ。

さらに文明と時代のつながりが濃くなったのも大きな変更だ。本作では文明が各時代ごとに設定されている。例えばエジプトは古代の文明で探検時代と近代には存在しないし、日本は近代日本として近代に入ってからようやく登場する文明だ。プレイヤーは次の時代に進むごとに、文明の発展の先として別の文明を選ぶこととなる。

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次に選べる文明には条件があり、基本的にはプレイしてきた文明や指導者に史実上のつながりがあるものを選ぶこととなる。エジプトからは探検の時代にアッバースかソンガイへと派生でき、今作から追加された日本の指導者卑弥呼を選べば近代に近代日本へと派生することができる。当然時代ごとの文明にもそれぞれの固有ユニット・建造物があり、長所と短所が大きく異なってくる。

つまり、科学メインで進めてきたが他文明の軍事的圧力がキツイから軍事に強い文明へと進もうとか、科学力で他の文明に差をつけられたし次も科学に力を入れようとか、これまでの経過を考慮して今後の方針を文明で調整できるのが本作なのだ。

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さらに、この次の時代で選べる文明は紐づいていないものであっても、プレイ中に特定の条件を達成することで派生できる。エジプトからショーニーや明、モンゴルなど史実上のつながりがまったくない文明へと変身できるのだ。この条件は隠されてはいるものの、プレイしていると自然と達成できる可能性があるぐらいの難易度であり、ゲームに慣れてくれば狙ってイレギュラーな文明へと派生することもできるだろう。

これまで当たり前にあった文明それぞれの弱点を、史実上のつながりを持たない文明の派生によって克服することすら可能だ。

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そしてここに、指導者に装備させる記念品のシステムも合わさってくる。記念品はプレイヤーレベル、もしくは指導者ごとのレベルを上げることでアンロックされていくアイテムで、指導者に最大2つ装備できる。記念品にもさまざまなバフ効果が備わっており、これもかなり強力だ。しかも、例えばハトシェプストのレベルを上げてアンロックした記念品を別の指導者に装備させることも可能だ。もちろんシングルプレイ・マルチプレイ問わず利用可能だ。記念品は全部で100種程度も用意されているようで、プレイヤーの戦術にさらに深みを与えてくれる。

指導者、各時代の文明、そして記念品の組み合わせパターンはもはや無限だ。

前作までの経験者である筆者は、文明と指導者が別々になっていることに少し違和感を感じはした。歴史の追体験という側面もこのシリーズにはあったのではないか? という疑問も浮かんできた。

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ただ、今日のゲームにおいて組み合わせによるビルドの多様さは標準的な遊びだ。高い自由度で人気を得た「シドマイヤーズ シヴィライゼーション」シリーズがそこに制限をかけ続けるというのは、それはそれで違和感がある。歴史の再現性よりも、シミュレーションゲームとしての幅の広さを選んだということだろう。8年ぶりの新作らしく、現在のスタンダードへとアップグレードしてきたのが「シドマイヤーズ シヴィライゼーションVII」なのだ。

違和感や疑問はあれど、この組み合わせでどんな戦術が楽しめるだろうというワクワクのほうが大きい。

ただ、この開放にはもちろんデメリットもある。これだけの組み合わせがあるならば、とんでもない強さのぶっ壊れビルドの存在は避けられまい。そして、その強さによってはゲームプレイ体験が破壊されてしまう可能性すらある。これは開発側が未然に防げることではない。ビルドの多様性があり、プレイヤーが熱心であればあるほど、必ず発見されてしまうものだ。

だが、こうした強力なビルドは初心者救済の側面もある。どういう組み合わせが強いのかわからないレベルであっても、記念品にはスキルポイントを追加してくれるシンプルに強力なものもある。完全に装備し得だ。それに先に触れた通り時代ごとの文明選択で軌道修正もできる。複雑で難しい「シドマイヤーズ シヴィライゼーションVII」に慣れるのを、指導者と文明の自由な組み合わせと記念品の力が後押ししてくれる。

もちろんマルチプレイで強豪との激しい戦いを望んでいるプレイヤーにとっては勘弁願いたい部分だ。ただ前作もそうであったように、本作も継続的なアップグレードが行われるはずだ。まずは熟練者の方も今までとは比べ物にならないほど自由な「シドマイヤーズ シヴィライゼーションVII」を楽しんでほしい。強力すぎる組み合わせは発見された後に調整を待っても遅くはない。

必ずプレイヤーを襲う試練「危機」に備えろ

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わずらわしさも減り、強力なビルドで以前にも増して強く立ち回れるのが「シドマイヤーズ シヴィライゼーションVII」だ。多くのプレイヤーがメインで遊ぶシングルプレイにおいては確実にストレスが減っていることは間違いない。

それを見越してか、本作にはプレイヤーを苦しめる「危機」というシステムが用意されている。

危機は時代の終わりが近づくと発生し、ランダムに革命や恐慌といった事件・災害が巻き起こり、プレイヤーの文明にどんどんとデバフを与えてくる。革命ならば幸福度に、恐慌なら資金に関係するデバフといった形で危機デバフが複数提示され、プレイヤーはこの中からいくつかを選んで負わなければならない。しかも危機は1度では終わらず、複数回にわたって起こり、そのたびにデバフの数が増えていく。

いかに順調に文明を運営できていたとしても、危機は絶対に避けられない。プレイヤーを阻むボスイベント、関門というわけだ。本作では蛮族というおジャマ要素を廃止し独立勢力にその役目を譲ったわけだが、独立勢力では時代の中盤以降にプレイヤーにプレッシャーを与えることができない。そこで終盤に危機イベントを起こしてプレイヤーを揺さぶってやろうというわけだ。

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危機のデバフ効果はかなり大きく、文明の基盤がしっかり整っていないと総崩れになる危険性も十分あるものだ。どんなイベントが起こるかは危機が発生するまでわからない。計画外のことを絶対に引き起こしプレイヤーにストレスを与えるために生み出されている。運が強く影響する要素のため、危機に関してはプレイヤーによって賛否の分かれる部分になるだろう。せっかくランダムスポーンの蛮族を消したのだから、こういう要素を追加するのは無しだろうと感じるプレイヤーは絶対にいる。

ただ、危機は発生する時期が決まっているため、それまでに基盤をしっかり整える対処が可能だ。その備えはゲーム勝利へ繋がるものであり、危機のためだけに気を配る必要がないのもよいところだろう。

それに、他文明以外に目立った邪魔がない「シドマイヤーズ シヴィライゼーションVII」においては危機がプレイのアクセントになっているのも事実だ。特に軍事以外で勝利を目指すプレイヤーにとっては蛮族がいないために他文明に戦争をふっかけられない限り、戦闘という派手で緊張感のある瞬間が全く訪れない。そのため、危機による不測の事態への対処がゲームの盛り上げに一役買ってくるのだ。

たしかに危機はかなりうっとおしいためその最中は本当に勘弁してほしいと強く思うが、乗り越えられたときの安堵感・達成感というものもまた強く感じられるものだった。逆にリソースも生産量も盤石になり、危機が発生してもそのデバフをものともしなかったときはその辛さを知っているだけに自文明の成長にニンマリできた。1つの時代ごとのプレイの充実さは、危機によって上がっている。

最新作から「シドマイヤーズ シヴィライゼーション」の世界に飛び込もう

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他にも宗教ポイントや宗教勝利がなくなり宗教の立ち位置が変更されていたり、指導者ごとに設定されたストーリーイベントが存在していたり、さまざま変更点、新規要素がある。あの「シドマイヤーズ シヴィライゼーション」の8年ぶりの新作だけあり、その量は膨大だ。

だが、プレイしていて感じたのはその根幹部分は変わっていないということだ。斥候を走らせ世界の形を把握し、他文明とやり取りをしながら、自分の思い描く成長に向けて選択を重ねていく。何十ターンも前の選択が上手くいった、失敗したと一喜一憂する。そういうプレイ体験は変わりない。

むしろ、わずらわしさの削減によって、この計画と選択を楽しむプレイがより際立ったようにも感じられる。開発者の狙いがうまくいったということだろう。指導者と文明、記念品の組み合わせもこの計画をさらに深める要素として機能している。そうして育て上げた文明に対して、他文明と危機が襲いかかってくる。それに耐えられるかどうかはプレイヤーの計画と選択次第だ。

「シドマイヤーズ シヴィライゼーション」シリーズは複雑で大変なゲームには変わらない。しかし最新作は初心者にとってもかなりはじめやすい作品となっている。ぜひこの機会に、その名を世界に轟かせる大作に触れてほしい。もちろん、シリーズファンやひさしぶりの経験者にも本作の変更点はありがたい。プレイヤーたちが一体どんな戦略を生み出すのか、いまから非常に楽しみだ。

PCゲームの情報同人誌を作っていたところスカウトされ商業ライターデビュー。ゲームメディアを中心に執筆活動を行う。頻繁に自分は女子高生であると主張している。主な共著に『インディ・ゲーム名作選』(Pヴァイン、2021年)、『ゲーマーが本気で薦めるインディーゲーム200選』(星海社、2021年)、『インディ・ゲーム新世紀ディープ・ガイド ゲームの沼』(Pヴァイン、2022年)。

※画面は開発中のものです。

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