PLAIONより2025年2月5日に発売を予定しているPS5/Xbox Series X|S/PC(Steam)用ソフト「キングダムカム・デリバランスII」のレビューをお届けする。
「キングダムカム・デリバランスII」は、全世界800万本以上のセールスを記録したアクションアドベンチャーRPG「キングダムカム・デリバランス」の続編にあたるタイトル。前作から引き続き、チェコのデベロッパーであるWarhorse Studiosが開発を担当しており、15世紀のボヘミアを徹底して研究し、建物から人々の生活に至るまで再現されているのが特徴だ。
今回はそんな本作を発売前にプレイする機会をいただけた。とにかく骨太でやりごたえのあるオープンワールドゲームを求める人にはたまらないRPGとして仕上がっていると感じた、本作のレビューをお届けしていく。

犯罪の誘惑に屈しそうになるシビアな世界
まずプレイして筆者が感じたことを真っ先に伝えると、とにかくあらゆる面がシビアなゲームだということだ。難易度の高いゲームというと、いわゆる“死にゲー”であるソウルライクなタイトルを想像される方も多いかと思うが、本作はそれらとはまったく方向性が違っている。
戦闘の難易度が高いのもあるが、本作はサバイバルゲームとしての側面ももっており、腹が減ったら食料を食べないと餓死してしまうし、定期的にベッドで睡眠を取らないと能力が低下していく。ゲームの序盤は寝る場所もない状態からスタートし、お金もほとんどもっていないので、どうやって日々を生き延びるかということから頭を悩ませていかねばならない。時には住民の目を盗んで、家の中にある鍋の食事を盗み食いすることもあったほど。

本作は徹底して現実の15世紀のボヘミアを再現したゲームであるため、中世を舞台としたファンタジーRPGにありがちなモンスターが登場しない。つまりは、序盤に登場する弱めのモンスターを倒してお金や経験値を入手するといった、RPGのお決まりの攻略パターンが使えなくなっており、お金を稼ぐには「依頼をこなして報酬をもらう」「素材を集めて加工品を作って、商人に売却する」「盗みに手を染める」といった、現実さながらの方法を取らなければならない。
セーブも前作同様に「救世主のシュナップス」という専用のアイテムを使わないと行えない仕様となっているので、迂闊に死んでゲームの進行を結構戻されてしまった……という経験は一度や二度では済まない(とはいえ睡眠を取らないといけない都合上、長くても1日の行動範囲に収まるようになっているのがゲームデザイン的に優れていると感じたところ)。

夜に歩いている時は松明をもっていないと不審者として追いかけられることになるし、夜に家に入ろうとすると知り合いであろうと追い出される。野党に襲われる確率も上がり、夜間の行動にはかなりのリスクが伴う。
また、金策のために加工品を作るのも決して楽ではない。薬を調合したい場合は、まず素材とその薬の製造法が書かれたレシピを揃えた上で、鍋にベースとなる液体を入れ、集めた素材を適切なタイミングで適切な個数投入し、指定の時間火にかける……といった、かなり複雑な手順を踏む必要がある。手順を間違っても一応薬自体は完成するのだが、正確な手順を踏んだものよりも効果が弱くなってしまうので、販売価格も下がってしまう。
鍛冶の方でも、剣を実際に加熱し、形が綺麗になるように極力均等にハンマーで何度も叩くのを複数回繰り返し、ようやく1本の武器が作れるので、かなりの手間と時間が掛かる。
……と、書けば書くほどシビアな要素が満載ではあるのだが、だからこそ「犯罪」という道への誘惑と葛藤が生まれるようになっているのが面白いポイントだ。
筆者はこうした自由度の高いオープンワールドRPGをプレイすると、大抵善人プレイをして犯罪は極力避けるのだが、本作に関してはつい誘惑に負けて盗みに走ってしまった。というのも、夜中にピッキングで鍵を開けて部屋に侵入し、寝ている住人から鍵を盗み、箱に入れられた金目のものを盗む……という流れがちょっとした達成感と適度なスリルを得られるサイクルになっていて、そもそも盗むまでの一連の流れ自体が純粋に楽しく、中毒性があるのも正直ズルい。

ただし、犯罪には当然ながら相応のリスクがついてくる。盗みを成功させること自体の難易度はさほど高くはないのだが、翌日には住人は盗まれたことに気づき、憲兵が犯人探しを始め、見つかると犯人として逮捕されてしまう。さらにやりすぎると指名手配されてしまうので、その周囲の地域には近づけなくなったり、盗品を身に着けていると住民から通報されることもあり、周囲の目を気にしながら行動しなければならなくなる。
一応、多額の賠償金を支払うか、囚人監視に晒されながらむち打ちの罰を受けることで指名手配は解かれ、街の中も歩けるようにはなるのだが、繰り返すと犯罪者としての刻印を入れられ、自分の評判を大きく損なってしまうようだ(筆者は実際のところそこまでにはなっていないが)。

この善人か悪人かという葛藤はクエストやストーリー上でもしばしば発生し、例えばクエストで高額なアイテムが必要になった時、正攻法でお金を稼いでアイテムを購入するのか、それとも盗みに入って指名手配されるリスクを負ってタダで入手するのかという選択を、頻繁に迫られることになる。
アイテムさえ揃えば、それが正規の入手したものであっても盗品であっても、基本的にストーリーの展開が大きく変わるというわけではないのだが、クエストの目的を達成するまでの方法にはいくつものバリエーションが用意されていることが多く、自由度が高い。
正義の道を進むのか、時に悪事に手を染めるのか。会話の中では頻繁に選択肢が発生し、プレイヤーの選択肢によってもクエストの結果が変化することも多く、ロールプレイ的な要素が非常に強く、15世紀のボヘミアで生きているかのような主人公との一体感を味わえる。
リアルな世界観ながら、ストーリーの展開はドラマチック
本作は前作と同じく、シグムントによって故郷を滅ぼされた青年・ヘンリーが主人公を務める。物語としても、前作のストーリーからそのまま地続きとなっており、トロスキー地方を治める、オットー・フォン・ベルゴー卿の元に、休戦条約を締結するための和平の使者として、ハンス・カポン卿らと共に旅をするところから主な物語がスタートする。

となると「前作をプレイしていないとストーリーが分からないのでは?」という懸念を抱かれる方もいると思うのだが、プロローグにあたる冒頭では、ヘンリーの過去やハンスとの関係性が丁寧に描かれる。
また、少しプロローグのネタバレにはなってしまうが、和平のためトロスキーを目指した一行は、正体不明の盗賊の一団による襲撃を受けて壊滅してしまい、ヘンリーとハンスは難を逃れたものの、持ち物も仲間もすべて失ったところから再スタートすることになる。
ハンスは最初ヘンリーと行動を共にしているが、ある出来事がきっかけで二人は仲違いしてしまい、ヘンリーは一人でベルゴー卿に接触するための方法をトロスキーで探っていくことになる。

「I」からの流れを引き継いではいるものの、明確に「II」ではヘンリーが新たな地方で新しいスタートを切るような形で物語が始まるので、「II」からプレイしても物語の内容がさっぱり分からないということはないので安心。実際、筆者も前作を未プレイだったのだが、ヘンリーに感情移入してしっかりと物語にのめり込むことができていた。
リアルさを重視した世界観であるため、ストーリーも地味になりそうだと思われがちだが、展開は非常にドラマチックで、ストーリーの演出にも力が入っていてどんどん先に進めたくなる。
その世界観についてはストーリーだけでは把握しきれないところもあるが、その分はメニューの「辞典」から解説でフォローされている。メインストーリーに関わる人物や用語の他にも、当時のボヘミアの生活や文化を知れる、ちょっとした歴史の文献並のボリュームがある。オープンワールドRPGでは、ゲーム内の世界観を知ることができるテキストが登場することは珍しくないが、本作に関しては実際の歴史について学ぶことができるのが新鮮で、より興味を惹かれた。
RPGで「中世のヨーロッパのような世界観」には馴染があっても、実際の中世の世界に触れられる機会というのはそう多くなかったということを、改めて感じさせてもくれた。

雑魚相手にも油断できない緊張感のあるバトル。戦いを避けることに特化する選択肢も
冒頭部でも説明したものの、本作はあくまでも15世紀のボヘミアを再現しているため、モンスターのようなファンタジーな敵は存在しておらず、戦うのはもっぱら人間が相手となる。
近接戦闘はやや特殊で、繰り出せる攻撃は上左右の3方向と突き(下方向)の4種類のパターンがあり、相手がガードしていない位置を攻撃できればダメージが与えられる……のだが、実際には相手が武器を構えている位置の逆をついてもガードされることが多く、ダメージを与えることはなかなか難しい。

その分、こちらのガードの性能も優秀で、敵の攻撃はほぼ防げるのだが、攻撃を一発受けるとスタミナを大きく消費してしまう。そうなると攻撃のスタミナが残らなくなるので、ガードを重視するとダメージを与えられないのが悩ましいところ。
その分、攻撃一発が入った時の重みはかなりあり、いかに相手のガードをかいくぐって一発をいれるか……というジリジリした戦闘が繰り広げられることになる。

それでも、まだ1対1ならやりようはあるのだが、2体以上の敵と同時に戦う時は、一気に難易度が跳ね上がる。その上、道端で遭遇することになる野党は基本的に2人以上の集団で行動しているので、序盤ではそこいらの野党に一方的にやられることも珍しくないほどだった。
ただ、正面から倒すのが難しいのなら、他にもいろいろな搦め手が用意されているのが本作の面白いところ。
敵に見つかる前であれば、背後から忍び寄ってノックアウト(ステルスキル)で相手を減らしてから1対1に持ち込むこともできる。ただし、本作はステルスキルに対してもしっかりと抵抗を行い、正確なタイミングで入力ができなければ失敗して通常の戦闘に入るのでリスクはある。

敵に発見されてしまった場合は、相手が野党であるのなら近くの街に逃げ込むのも手だ。本作は敵の追跡がかなり長く続く仕様になっているのだが、これを利用して街まで誘導してやれば、憲兵や一部の住人が一緒に戦ってくれる。戦いが終わると憲兵はいなくなるので、残った野党の死体から装備を漁ったりすることもでき、筆者はこの戦法で、序盤の装備を揃えていた。

また、ある程度クエストを進めると、離れ離れになっていた犬のマットが一緒に行動してくれるようになり、このマットが戦闘においても心強い。とにかくガードを崩すのが大変なのは前述した通りだが、合図を送るとマットが狙っている相手を攻撃してくれるので、ひるんでガードできなくなった隙を一気に畳み掛けられるようになる。

マットは戦い以外にも、吠えて周囲の気を引き、潜入したいシチュエーションで囮役になってくれたり、ヘンリーにバフ効果を与えてくれたりとかなりの恩恵がある。ただ、マットは気まぐれで、時折どこかにふらっといなくなったり、はぐれてしまうこともある(時間経過で戻ってくる)。
昨今のオープンワールドゲームというと、遊びやすくカジュアルな方向性のタイトルも多いが、本作とはその方向性とはまったく真逆のタイトルで、とにかく難しいゲームや、「面倒くさいことは絶対にやりたくない」というプレイヤーには不向きとは言える。

実際筆者も、純粋に難しいアクションゲームはあまり得意な方ではないのだが、本作で敵を倒す以外にもいろんな抜け道や方法が用意されているので、アクションのプレイスキルではない部分の試行錯誤の余地が残されているのが非常に楽しかったところ。
弾を消費するとはいえ、弓矢やクロスボウといった遠距離攻撃を使って倒す手もあるし、交渉で戦いそのものを回避したりもできる。本作では装備など見た目で変動する「魅力値」というパラメータが存在し、これが高いとあらゆる交渉が成功しやすくなる。基本的に魅力値の高い装備は防御力が低く、直接戦闘には不向きなことが多いのだが、筆者は戦闘力が多少下がっても魅力値が高くなる装備を優先し、できるだけ戦いが起きないように立ち回っていた(クエストによって切り替えることもできる)。こうした、アクションが苦手なら苦手なりのプレイ方法を発見したりできる自由度の高さが、本作の魅力と感じた点だ。

また、序盤の立ち上がりが辛いからこそ、そこから抜けて軌道に乗り始めた時の喜びもひとしお。野党に勝てるようになると街の外を気軽に出歩けるようになったり、お金に余裕が出来て泊まれる宿が増え、遠慮なくセーブできる機会が増えたりと、ゲームが進行するにつれ着実にプレイアビリティが向上していくのを実感できるのも、ゲームプレイのモチベーションを高めてくれる。
グラフィックも非常に美しく、15世紀の中世ヨーロッパに実在した建物や街の人々の生活から感じられるリアリティは唯一無二。決して万人向けではないかもしれないが、重厚かつやりごたえのあるオープンワールドゲームを求める人には、たまらないタイトルだと言えるだろう。

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※画面は開発中のものです。
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