Gamerで執筆しているライターに、年末年始に合わせて自由に書いてもらおうという企画。各務都心による、年末年始にサクッと終わるインディーゲーム作品の記事をお届けします。
目次

2023年はとんでもない量の大作がひしめき、プレイするのも大変なほどだったが、打って変わって2024年はインディーゲームが豊作だった。
そこで今回は、筆者が2024年中に発売したインディーゲームのなかで、これは遊んでみてほしいと思うものをピックアップして紹介したいと思う。どれもこれも数時間で終わるスケールであり、手が出しやすい作品ばかりだ。ぜひとも年末年始の休暇中に遊んでみてほしい。
超現実的なロシアを旅する修道女の物語「INDIKA」

本作はインディカという修道女を操作し、超現実的な空間となった極寒のロシアを旅するアドベンチャーゲームだ。
修道院内で嫌われている彼女は、一通の手紙を持たされ、別の修道院に運ぶ仕事を言い渡される。どうやら彼女は悪魔の囁きが聴こえるらしく、悪魔による姦淫への誘惑を振り払いながら、懸命に冬景色のなかを旅していくのだ……。

たった4時間ほどのボリュームしかないにも関わらず、本作が見せてくれるビジョンはとても鋭い。人の信仰心を徹底的に皮肉ったストーリーが特に秀逸で、宗教的な知識が一切なくても、こちらの腹にズドンと穴をあけてくれる一本だった。
自分が動けば世界も動く!?奇妙な法則を理解するのがカギ「アレンジャー・ロールパズリングの旅」

本作は「Carto」や「Braid」のクリエイターらが一堂に会して作ったパズルゲームだ。
主人公のジェマは、なぜか自分が動くと世界も同じだけズレてしまうという特異な体質を持った女の子。ジェマが東に行けば世界も東にひとつずつズレていくし、北に行けば北にズレる。

そんな体質のせいもあってか、街を追い出されてしまったジェマだが、世界を「よどみ」という邪悪な物質が汚染していることに気付く。果たして彼女は、よどみを祓うことができるのだろうか? というストーリーだ。
グリッドがズレていくというワンアイデアのパズルからは離れず、だが飽きを感じる前に次の面白い仕掛けが展開されるという良作だった。黄金期のRPGをちょっとだけ皮肉った会話もクスリと笑ってしまう。ぜひとも遊んでみてほしい。
タマゴ、それは二つの部位からなる完全「Arctic Egg」

本作は近未来の南極でひたすら目玉焼きを作る物理演算ゲームだ。とろっと落ちてきた生卵を焼き、ひっくり返してもう片面も焼き、寒空の下で料理の完成を待つ人に届けるのが目的である。
ゲームプレイとしてはそれだけなのだが、注目すべきはその世界観とテキストのセンスだ。六胃聖という存在に管理された北極で、皆が高層建築にしがみついて生きているらしいのだが、わかるのはその程度のことで、どのキャラクターもニヒルなセリフをボソッと呟き、料理が出来上がるのを待っているだけだ。

ときにはタバコや虫といった食べられるかも怪しいものも混ぜながら、ひたすら彼らに両面焼きを提供していく。スレたセリフと、音楽と、吹雪と、ちょっとしたご褒美だけ。2時間ほどのゲームプレイのなかで得られるものはそんなもんだが、どうしてかいつまでも忘れられない印象を残してくれる不思議なゲームだった。
宇宙船に閉じ込められた男女……彼らが味わう地獄とは「Mouthwashing」

本作もまた「Arctic Egg」と同じパブリッシャー“CRITICAL REFLEX”のローポリ系アドベンチャーゲーム。宇宙貨物船の事故によって何か月も閉じ込められてしまった男女のサバイバル劇を描く作品だ。
極限状態でどう生き延びるのかという設定ではあるが、彼らが陥る狂気はこの手のフィクションでよく見かけるワンパターンのものではなく、むしろ物語はふたりの男のあいだに刻まれた深い溝について掘り下げていく。

SFど真ん中の作品かと思いきや、男同士の歪んだ友情や嫉妬について読みたい人にこそオススメだ。ユニークなグロテスク&ゴア描写が満載なので、その手の需要にもしっかりと答えている作品だった。
アナログゲーム出身!年の瀬に現れた怪物パズル「LOK Digital」
最後に紹介するのは、完全にダークホースだった傑作パズルゲームだ。

本作は元々「LOK」という名前のアナログのパズルブックであり、それをデジタル版としてSteamで販売した形である。ゲームのルールは同じで、ステージ中に散らばっている文字の書かれたパネルを特定の順でなぞり、効果を発動させてすべてのパネルを黒く塗りつぶすだけ――いわゆる一筆書きパズルだ。
最初はただLOKとなぞって、他のパネルを1つ塗るだけなのだが、そのうちに隣接するパネルを2つ塗れるものや、同じ文字の書かれたをすべて塗れるものなど、どんどんルールが複雑化していく。
しかしながら、ただいたずらにルールが増えるだけではなく、ゲーム中盤からは発想の転換や、勝手な思い込みからいかに脱するかといったものが求められてくる。およそパズルゲーマーが好きな気持ち良さがぎっしり詰まった傑作なので、腕に覚えのある方はぜひとも挑戦してみてほしい。特に8-11にはビックリするぞ!

以上、2024年に発売したインディーゲームから筆者のおすすめを紹介させていただいた。どれもこれも一癖も二癖もある良作ばかりであり、値段もプレイ時間もお手頃なので、いくつか遊んでみていただけたら幸いだ。
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