セガより2023年11月7日にリリースされる「Football Manager 2024」。待望の日本語対応が実現した、この人気サッカークラブ運営シミュレーションのプレイレビューをお届けする。
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本物さながらのサッカークラブ運営を楽しめる「フットボールマネージャー」シリーズ。戦術の決定や選手の獲得・移籍、試合の采配のほか、若手の育成、メディア対応、選手のメンタルコントロールなど、クラブのマネジメントのさまざまな部分に関わることが可能で、ストイックなプレイを楽しめることから世界中で絶大な人気を誇っている。
この人気シリーズの最新作となる「Football Manager 2024」が、ついに発売される。これまでは日本語に対応しておらず、有志が配布した日本語化MODなどを利用して楽しむ人が多かったが、本作ではついに日本語に正式対応。Jリーグの全クラブも実装されることから、日本のサッカーゲームファンの注目を集めている。この話題作がどのようなゲームになっているのか、本稿にてレポートしていこう。

なお、本作はPC/Mac/PS5/Xbox Series X|S/Nintendo Switch/Netflix向けに発売予定で、今回の試遊ではPS5版をプレイすることができた。基本的な要素や進め方などはどのハードもほぼ同じだが、画面構成など一部異なっている部分もあるようだ。PC版とMAC版はすでにSteamとEpic Gamesにてアーリーアクセスがスタートしており、サンプル画像などもチェック可能になっているので、どのハードでプレイするか迷っている人は本稿で画像などを比較してみるといいだろう。
※体験したバージョンには、権利者による監修中の情報も含まれています。現時点ではデータが正確に反映されておらず、一部のクラブや選手のアセットデータが表示されない場合があります。
ゲーム開始時にモードを選択、日本語での入力も可能に!
まずは、ゲームモードを選択。今作ではゲーム開始時にモードを選べるようになっており、「オリジナル」と「リアルワールド」のいずれかを選択することが可能。「オリジナル」を選ぶと、従来のシリーズと同じく最新のクラブの状況を反映した状態でスタートすることができる。たとえば、アンドレアス・イニエスタ選手は、現実の世界では2023年シーズンの途中でJリーグのヴィッセル神戸を退団したが、「オリジナル」で始めた場合はイニエスタ選手が最初からいない状態で2023年のシーズンが開始される。
一方、「リアルワールド」は実際の移籍がカレンダーどおりに進行するというもので、シーズン開始の時点ではまだイニエスタ選手はヴィッセル神戸に所属しているが、6月になると自動的に退団。現実の世界で夏の移籍時に加入してきた選手もシーズンを進めていけば自動的にチームに加わる予定になっているなど、より現実に即したプレイを楽しむことができる。

まだ実装されてはいないが、「マイワールド」というモードも用意されているようだ。「リアルワールド」と同じく、現実世界の2023-24シーズン開始時点を反映した状態でスタートするが、そこからは実際の移籍は反映されず、自由に進めていけるようになっているとのことだ。
ちなみに、筆者はJリーグのFC東京でプレイしてみたのだが、対戦スケジュールも実際の2023年シーズンそのままとなっていた。おそらく、設定で試合日程を変えることも可能になっていると思うが、現在Jリーグは佳境を迎えているだけに激動のシーズンを改めて体験してみるというのも面白いのではないだろうか。

今作ではJリーグの実装が話題だが、もちろんヨーロッパ、南米、アジア、北米、アフリカといった世界中のリーグが多数収録されており、2部や3部のクラブも選択することが可能。下部のクラブでキャリアをスタートし、成功を収めてビッグクラブの監督にステップアップしていくといった実際の監督さながらのサクセスストーリーを展開できるし、下部の無名のクラブを世界有数の強豪にするのを目標に進めていってもよい。非常にゲームの幅が広く、いろいろな楽しみ方ができるのも本作の魅力のひとつと言えるだろう。
もうひとつ注目すべき新要素が、日本語の入力が可能になったこと。ゲーム開始時に自身の分身となる監督を設定するのだが、今作では漢字、ひらがな、カタカナでも名前を決められるようになっている。たとえば、ドイツ国籍の「マルティン仁志」みたいな名前にしてもよいわけで、ちょっとしたことだが日本人にはうれしいのではないだろうか。
なお、今回の試遊ではPS5のコントローラーを使用。もともとPC向けのゲームで、キーボードとマウスでのプレイを想定して作られているためか、一部の操作時に左スティックを押し込んで上下左右で選択するなど、独特の操作の場合も存在する。
少しプレイすればすぐに慣れてサクサク進められるようになるが、最初は多少とまどう人もいるのではないかと思われる。そのため、初めてプレイする際はチュートリアルをオンにしておくことをオススメする。
戦術構築にトレーニングメニューの決定と、やるべきことがてんこ盛り
監督となって最初に行うのが、チームのスタイルや戦術、スタメンなどの決定だ。ボールを失ったらすぐさまプレスをかける「ゲーゲンプレス」、細かくパスを繋いで攻める「ティキタカ」など、さまざまなスタイルの中からチームの戦術とフォーメーションを選択。この基本戦術に沿って攻撃時のフィールドの使い方、ビルドアップの仕方、ボールを奪い返しにいくときの動き、プレスのかけ方、守備時のディフェンスラインの高さなどを設定していくのだ。
選手個々の役割も自由に設定することが可能だ。キーパーであればゴールを守ることに集中するオーソドックスな守り方をさせてもよいし、積極的にペナルティエリア外に出てビルドアップに加わる近代的な役割を与えることもできる。さらに、今作ではサイドバックが中央に絞ってボランチのような役割をこなす、偽サイドバックといった新たな役割も与えられるようになっており、多彩かつ多様な戦術を構築することができる。

セットプレイの戦術も設定できるようになっている。本作の新要素のひとつで、決定できる項目はさまざま。守備はゾーンかマンマークか。自軍のゴールポストをカバーする選手を置くか。前線にカウンター要員を置くか。攻撃時のキックはニア、ファー、中央のどこを狙うか。何人を敵ゴール前に上げて、誰を守備要員として自陣側に残すかなど、細かく設定することが可能だ。
たとえば、負けている状況で終盤を迎えたら、守備時のセットプレイの人数を削ってカウンター要員を増やす。逆に、リードしている場面では全員を自陣に戻して守るなど、試合の局面に応じていろいろ配置を変えられる。カウンター要員を誰にするか、キックのターゲットとなるポジションには誰を配置するかなど、選手個々の役割も決定できるようになっており、さらに戦術が奥深くなっているのだ。
次に、トレーニングメニューの設定だ。フィジカルを強化する、攻撃や守備を重点的に鍛える、戦術に関する練習を行うなど、こちらも選択できるメニューが充実。もちろん、若手に高負荷のトレーニングを課したり、逆にケガをしやすい選手やベテランは負荷を軽くしたりと、個別に設定することも可能になっている。
特筆すべきは、一緒にトレーニングをするグループを作成できること。チームのリーダー的存在と期待の若手を同じグループに入れて良い影響を与え合うようにする、同じポジションの選手同士で組ませて連携を深める、新たに加入した選手を長年所属している選手のグループに入れてチームになじませるなど、チームの結束力を高めるためのさまざまな工夫ができるのだ。

クラブの目標設定という要素も存在する。「予算の上限を守る」、「今シーズンのリーグでトップハーフ入りする」など、かなり細かくて具体的なのだが、そのひとつに「ポゼッションサッカーの展開」というものがあった。確かに、筆者がプレイしたFC東京も、現実の世界ではボールを保持しての攻撃的なスタイルを目標に掲げているが、なかなか実現してはいない。むしろ、現在の所属選手は能力的には堅守速攻スタイルのほうが合っているように思える(あくまで私見です!)。
攻撃的スタイルにトライしたもののなかなかうまくいかず、方針転換を余儀なくされる。これは現実のJリーグ、とくにJ1でよく見る光景で、Jリーグをよく観戦している人ならこのあたりにもリアリティを感じてしまうことだろう。

もちろん、年度ごとの目標を達成できなければクビになる可能性が高まる。ただ、解任されたとしても、そこでゲームは終わりではない。日程を進めていけば下部リーグのクラブなどからオファーがくることもあるそうで、そのオファーを受ければ監督としてのキャリアを再開できるのだ。
進化した試合のビジュアル、試合の展開もリアリティがアップ
ここまでのプレイでだいたい30分くらいかかったと思うが、読んでいてお気づきのとおり、まだ公式戦どころか練習試合すら行っていない。準備段階でやるべきことがいくらでもあり、なかなか試合を始められないのだ。それほどプレイヤー=監督が関われる領域は多岐に渡っており、あまりの情報の多さにプレイしていてクラクラしてしまったほどだ。
しかし、このできることの多さ、情報量のすさまじさが本作の圧倒的なリアリティを支えており、同時に最大の魅力となっているのだ。他クラブの戦術や布陣などもチェック可能で、さまざまな項目に目を通しているだけでもたまらなく楽しく、フットボールファンなら間違いなくハマってしまうだろう。筆者もレビューという目的がなければ「4-3-3より4-2-3-1の方が守備が安定するのでは」、「若手のホープである俵積田選手や熊田選手はもうトップチームに入れておこうか」などと考えながら、まだまだ戦術やチーム編成などを細々いじっていたはずである。
とはいえ、何もかもすべて自分だけで行う必要はない。トレーニングメニューの決定などを担当コーチに委任することも可能になっており、手っ取り早く進めたい場合はすべてスタッフ陣に任せてしまえばいいのだ。いくらでもこだわれるが、手を抜こうと思えば抜けるのでカジュアルなプレイを楽しみたいという人も安心してほしい。

プレイの方に戻ろう。日程を進めていくと、まず紅白戦を実施。その後、何試合かプレシーズンマッチを行い、いよいよ公式戦となる。時間に余裕があれば、試合をすべてフルで見ていてもいいし、ハイライトシーンだけをチェックしてどんどん進めてしまってもいいなど、試合の見方も細かな設定ができるようになっている。
選手の動きなど、映像のクオリティは前作よりも向上しているものの、最新のゲームに比べるとやはり見劣りしてしまうだろう。とはいえ、試合の展開には説得力があり、確かにこの選手ならこういうプレイをするよなと思えるシーンがけっこうあった。ポジショニングなどもわりと適切で、指揮しているチームのことをよく知っていれば、かなり納得できる映像になっているのではないだろうか。
また、リーグ戦などの公式の試合では、判定が間違っていないかビデオで検証するVAR(ビデオアシスタントレフェリー)が入ることも。実際の試合と同様、主審がスタジアムに置かれている小型モニターのところに行って映像をチェック。その結果、判定が覆る場合もあるのだ。こうした現実のサッカーに即した演出も没入感を高めてくれる。
もちろん、試合中も監督のすべきことは多い。ピッチ上の選手たちへの指示出しや声がけなどを行ってチームを指揮。攻守のバランスを取る、オフェンス重視で積極的に試合を進める、ディフェンス重視で慎重な試合運びをするなど、時間帯や展開に応じて全体の戦い方を変更したり、選手に声をかけてモチベーションアップをはかったりと、さまざまな対応を取ることができる。
特に面白いのが選手たちへの「声がけ」だ。称賛を送ったり叱責したり、「もっとできる」と奮起をうながしたりと、いろいろな声効果で選手のやる気が上がったりするので積極的に活用したいが、選択を間違えるとチームの雰囲気が悪くなったりするのだ。

ハーフタイムや試合後のロッカールームでも選手たちに話しかけられる。ジェスチャーを交えて激しい調子で鼓舞したり、全員をほめたたえたり、リラックスできるような言葉を選んだり、あえて失望をあらわにしてみたりと、いろいろな態度で選手のモチベーションを上げられる。好影響を与えられればモチベーションがアップし、選手との関係も良くなるが、試合中の声がけと同様、逆効果となる場合もあるので試合の展開や選手たちの状況に合った適切な対応が求められる。
そのほか、選手の交代やフォーメーションの変更など、試合中もできることはいくらでもあり、のんびり観戦している余裕はない。得点期待値や選手のプレイエリアなどチェックできるデータも非常に豊富で、試合後にはこれらをもとに戦術に調整を加えるなどして、次の試合に備えるのだ。
駆け引きが楽しい移籍交渉、選手個々への対応や配慮も重要に
選手の獲得や移籍交渉も醍醐味のひとつ。サッカーゲームにはおなじみの要素だが、本作は比較にならないほど奥の深い交渉が行えるようになっている。
たとえば、移籍金を相場より上げるが分割払いにする、移籍金を相場より下げる代わりに別のクラブに売却したときに生じた利益の何%かを支払うなど、いろいろな条件を追加して交渉することが可能。たとえ、最初に提示した内容が受け入れられなかったとしても、そこで交渉が終わるわけではなく、新たな条件を追加したりして交渉内容を詰めていく。どのラインで妥協するか、相手の譲歩を引き出せるか。この駆け引きがたまらなく面白いのだ。
もちろん、他クラブから自軍の選手へのオファーが入ることもあり、主力だからといって簡単に拒否するわけにはいかない。その選手が移籍を望んでいる場合、関係が悪化してしまう場合があるからだ。そうした状況を避けるためにも、主力選手は早めに契約更改を行ってプレイに専念できる環境を整えるなどの対応が必要になるわけだが、あえて移籍市場に出して高値で売却し、得られた資金で新たな選手を獲得するといった手段を取ってもよい。ときには長年主力としてプレイしてきたベテランを切って、若手に切り替えていく必要もあるなど、リアルサッカーさながらのシビアさが要求されるのだ。
もうひとつ興味深いのが、移籍に関するサポーターの反応だ。ゲーム中ではサポーターの声をSNSで確認できるようになっているのだが、主力選手を放出すると「なぜ○○を手放した!」、「クラブは何を考えているんだ!?」みたいなリアルな反応があってなかなか面白い。試合で負けが込んだりすると荒れ気味になるのも現実のサッカーと同様で、こうした部分でも現実味を感じられることだろう。
記者会見などのメディアへの対応も面白い。手順は簡単で、記者の質問を受け、いくつかの回答の中から最適と思うものを選んでいけばいいだけ。無難な回答、リップサービスを交えた大げさなもの、記者を挑発するようなものなど選べる回答はさまざまで、回答を拒否したり取材自体を断ったりすることもできる。また、特定の記者と友好的になればリーク情報をもらえたりするが、敵対的な対応をすることで得られるメリットもあるようだ。
当然、試合内容が悪かったり負けが込んだりするとメディアの反応も厳しくなる。たとえば筆者は公式戦で勝利したにも関わらず、「ペンキが乾くのを見ているような(退屈な)試合」と酷評されてしまったことがあった。こうしたメディアの論調に引っ張られて、ファンやクラブ首脳の心象が悪くなったりすることもあるので、メディア対応もおろそかにはできない。どのようにメディアをコントロールするか、ここも監督の手腕の見せ所になっているのだ。
選手のメンタルコントロールもかなり重要。これも筆者のプレイで発生したのだが、コーチが副キャプテンの交代を進言。従ったほうがメリットは多いと判断して交代を指示したところ、それまで副キャプテンだった選手が不満を表明してきたのだ。
こうした選手の行動に対して言葉を尽くして説得するか、自分への反抗とみなしてとがめるか、監督は決断しなければならない。もちろん、監督に従わない不満分子として移籍させてしまってもいいし、そうすることでチームがまとまったりするが、外された選手に近しい選手たちが不満をためてしまう場合もある。そのため、不平を言ってきた選手がチーム内でどのような立場にいるのか把握しておく必要もあるわけだ。
ちなみに、筆者は気が小さいので「君が必要だ」などと言って説得。選手は機嫌を直してくれて、その選手に近い選手たちの不満も抑えることができた。結果的に成功だったわけだが、伝説的な名将は選手に甘い顔を見せないタイプもけっこう多いだけに、あえてシビアな態度を取ってみるのも面白いだろう。

世界中のサッカーファンに愛される理由を実感
筆者はこれまで「フットボールマネージャー」をプレイしたことがなかったのだが、とにかくやれることのボリュームがすさまじく、約3時間の試遊ながらかなりディープなゲームであることが実感できた。凝ろうと思えばいくらでも凝ることができるので、フットボールフリークならば何時間でもプレイしていられるのではないだろうか。
こう書くと面倒くさそうと思う人もいるかもしれないが、実際にプレイしているとまったくそんなことは感じない。むしろ積極的にいろいろな部分に手をつけたくなるのだ。今回は試遊のため割り切って進めたこともあって、リーグ戦の2試合目まで行うことができたが、自宅でのプレイだったらおそらく開幕戦すら迎えられなかっただろう。

このように、かなりの時間泥棒である本作だが、上でも述べたとおりトレーニングの設定や選手の発掘などをスタッフに一任することで、プレイ時間を大幅に節約することも可能。「戦術の構築と試合の指揮に専念する」といったプレイの仕方もできるので、自分のスタイルに合った楽しみ方をすればいい。
最後に「フットボールマネージャー」ならではの要素をもうひとつ紹介。シリーズのファンにはおなじみだが、このゲームにはオープニングをはじめBGMが一切なく、観客の歓声や審判のホイッスルなど試合中の音は聞くことができるが、音楽のようなものは流れないのだ。長時間じっくり考えてのプレイになりがちなため、BGMがないほうがプレイしやすいと開発陣が判断してのことだろう。最初は静かすぎて少し違和感があったが、慣れるとチーム運営に没頭できるのではないか。無限にプレイしていられるので、ぜひともこの“サッカー沼”にどっぷりハマってほしい。
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※画面は開発中のものです。
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