日本ファルコムより2023年9月28日に発売された、PS5/PS4/Nintendo Switch用アクションRPG「イースX -NORDICS-」(以下、「イースX」)のレビューをお届けする。
4年ぶりの新作となる「イース」シリーズ。本稿ではその製品版レビューを、「イース」シリーズを35年以上追い続けている、シリーズ愛の濃いライターの視点で【ネタバレなく(重要!)】お届けします。
35年の歴史は伊達じゃない! アクションRPGの金字塔
まず最初に伝えたいのは、「イース」シリーズは35年以上続いているシリーズだけれど、「イース」は【1話完結型】の物語であるということ。
冒険家アドル・クリスティンが主人公なのは共通しており、過去作を知っているとニヤリとする場面もあるのですが、基本的には各作品毎に独立した物語で、エンディングもきちんと迎えます。「アドルが主人公ということは物語がズルズルと続くのでは……?」なんていう不安も問題ありません。必ずスッキリ爽やかなプレイ感で終われる作品が、「イース」です。
なお、過去作の「イース」については以前の記事にまとめてあるので、もし興味がある方はそちらを見ていただければと思います。
そんな「イース」の一番の特徴と言えば、爽快感溢れるアクションバトルです。
今回、アクションの主軸となるのは「マナ」と呼ばれる不思議な力。アドルと、もうひとりの主人公カージャはマナの枷で繋がれてしまい、常に2人そろって行動しなければならなくなってしまうのですが、その設定を活かした「クロスアクション」がとにかく爽快!
アドルとカージャの操作を入れ替えるのもワンボタンで、敵の弱点に合わせてさっと2人を入れ替えることが簡単にできますし、アドルとカージャ、2人を同時に操作して戦うコンビモードも、R2ボタン(PS版)を押しっぱなしにしている間はコンビモードでの攻撃になるという手軽さ。
さらに、R2ボタンと〇、□、×、△ボタンの組み合わせで、コンビスキルという2人のパワーで押す派手な技をどんどん出せます(4つの内のひとつは通常攻撃枠になるので、コンビスキルがつけられるのは最大3つまでです)。
R2ボタンは、ガードボタンも兼ねているところがポイント。つまりコンビモードで攻撃していれば、結構その場凌ぎで適当にボタンをガチャガチャしていても、簡単にジャストガードとかが出ちゃったりするのです!
実際筆者はアクションが好きながらアクションが下手くそなのですが、そんな筆者でも簡単に「キンキンキン!」と敵の攻撃を弾けてしまうので、これがまた爽快なんですね。もちろん、ジャストガードは狙って出そうと思えばどんどん出せるものなので、アクション上級者さんも気持ちよく遊べるものになっています。
「イース」と言えばジャスト回避を思い浮かべる人も多いかと思いますが、本作に限ってはジャストガードでリベンジゲージを溜めてリベンジゲージが溜まったところで強力なコンビスキルをガンガン叩き込む! ……という流れのアクションが楽しいように設計されていました。
ガード主体の「イース」、という言葉に不安を抱かれないように補足しておくと、決して「イース」特有のスピード感は失われていません。クロスアクションの気持ちよさ、ガードの楽しさ、それらの上にスピード感もしっかりありました。
軽快さと重厚さが合わさったような本作のバトルは、いよいよ「アクションRPGのひとつの完成形」とも言えるほど、ほぼ不満点らしい不満点がありません。
「イースIX」までのバトルから一新したとも言えるシステムではありましたが、「イース」の伝統を見失ったようには感じられず、むしろ「良い進化を遂げたなぁ」と思えるバトルの手触りになっていたのが素晴らしかったと感じます。
なお、難易度はEASY、NORMAL、HARD、NIGHTMARE、INFERNOから選べるようになっており、物語をのんびり楽しみたい人から、アクションRPGのやり応えをたっぷり感じたい人まで満足できるようになっています。アクションが苦手な筆者も、2周目でNIGHTMAREに少し触れてみたのですが、まるでソウルライクのような手触りになっており、これはこれでまるで別のゲームのようで全然違う遊びになって面白いです。
「イース」のアクションは自分の好きなアクションとはちょっと違う、なんて思っている人も、難易度を変えてみることで新しい発見があるかもしれませんので、ぜひNIGHTMARE、INFERNOのような激ムズ難易度でのプレイにも触れて見てほしいです。
EASYは誰でもプレイできるような難易度……と言いたいところですが、「イース」の場合、雑魚戦はレバガチャでプレイできても、ボス戦はそう甘くありません。例えEASYでもボス戦はちょっと頭を使わないとクリア出来なかったりすることがあります。そんなボス攻略の楽しみも「イース」の良さなので、レバガチャだけに頼らず楽しんでほしいポイントです。
2023/10/18 15:04 掲載時、難易度に関する表記について誤りがございました。お詫び申し上げるとともに、ここに訂正いたします。(編集部)
ちなみにデフォルトの通常攻撃ボタンは×ボタン(PS5の場合)なのですが、「イース」の良いところはかなり自由度の高いボタンカスタマイズにもあります。
筆者はどうしてもここ最近のアクションゲームに多い「□ボタンで攻撃」に慣れてしまっていたので、潔く通常攻撃は□ボタンに変更。カージャとの交代は〇ボタンに割り振って……と好きにカスタマイズしてしまったのですが、動作に問題さえなければ、かなり自由度の高いカスタマイズが可能です(ボタンが被ると上手く動作しなかったりするので、カスタマイズには注意も必要ですが)。
決まったパターンの中から選ぶのとは違い、本当に好みに設定できるので、「最近やっていたゲームの操作性から抜け出せない!」という時は、潔く操作を変えてしまうのも良いかと思います。ボタンカスタマイズを駆使してしっかり手に操作が馴染むと、より一層バトルの爽快感が増しますよ!
アドルとカージャ、それを取り巻く人々の物語たち
「イース」シリーズではしばらく、アドル+プレイアブルキャラクター2名、という3名でのパーティ構成が続いていましたし、プレイアブルキャラクターも多数いましたが、本作はスッキリとアドルとカージャふたりの物語が中心となっています。プレイアブルキャラクターは他にいません。最初から最後まで、アドルとカージャの物語なのです。
ちょっと物足りなく感じてしまいますか? いいえ安心してください、その分みっちりとアドルとカージャの物語が濃密に描かれているのが「イースX」です!
ストーリードリブンな「イース」といえば、「イースVIII」を浮かべるファンも多いのではないかと思いますが、本作は「イースVIII」以上にストーリードリブンな「イース」だったように感じられます。
「イースIX」もかなりストーリードリブンな作品ではありましたが、それでも6名のプレイアブルキャラクターを順々に描いていくとあって、後半で仲間になるキャラクターはどうしても序盤からいるキャラクターに比べて、存在感が薄くなりがちでした。
ですが、本作ではそんな心配はいらないのです。アドルとカージャは、常に“ふたりでひとり”。「イースX」という物語の中でアドルとカージャの成長がじっくり丁寧に描かれており、歴代「イース」の中でも抜群に、人物描写に焦点を当てていると言っても過言ではないでしょう。
それもあってか、本作のアドルはよく喋ったなぁという印象です。それほどはっきりとしたセリフを口にするわけではないのですが、ところどころ相槌のような選択肢は声に発することがありましたし、宝箱を見つけると「宝箱じゃないか」と嬉しそうな声を聴かせてくれたり、何かにつけてよく喋ります。
「イース」というシリーズに出会ってから35年以上も経って、アドルという像が少し上書きされたようなそんな印象も感じられる、新しいアドル。それでいながら、プレイヤーが思い描くアドル・クリスティンの像から逸脱することのない、きちんとしたアドル。本作のアドルは17歳ですので、その年の頃らしいフレッシュさも声の演技から感じられました。
そんなアドルの新しい魅力を引き出してくれたのが、もうひとりの主人公であるカージャです。カージャはノーマンと呼ばれる海賊の頭領の娘で、男勝り系の気が強い女の子なのですが、アドルとふたりきりの時には可愛い女の子らしさも見せてくれたり、様々なプレイヤーから愛されるようなキャラクターになっていました。
カージャとアドルはノーマンのしきたりに従い“盾の兄弟”という契りを交わすのですが、契りを交わした後のカージャがしばしば口にする、「な、キョーダイ!」という微笑みには、誰もが心臓を撃ち抜かれてしまうことでしょう。
最初は人を寄せ付けない“海賊”だったカージャがすっかりアドルに心を開くまでの過程や、カージャとアドルが何故マナの枷で繋がれて離れられなくなってしまったのか、マナの枷で繋がれたふたりに起こるさまざまな出来事らがじっくりと10章に渡って描かれるので、誰もが自然と物語に入り込み、アドルに共感し、カージャを愛でる構成になっているのです。
なお、プレイアブルキャラクターはアドルとカージャのふたりのみですが、登場人物は他にもたくさんいて、アドルとカージャの助けになってくれます。シリーズお馴染みのドギはもちろんのこと、「イースII」に登場した医師・フレアも登場します。
他にも本作のオリジナルキャラクターが多数登場。いずれもアドルとカージャの操る船「サンドラス号」に乗船して、ショップやら何やら、さまざまな役割を担うこととなります。
本作はアドルとカージャに焦点を当てているので、他のキャラクターたちの出番は少なめではありますが、そんなキャラクターたちのさまざまな面を知れる「好感度イベント」は本作でも健在。好感度アップのアイテムをショップやクエストなどで入手して渡すだけの簡単イベントになっていて、煩わしさもありません。クエストでも仲間のさまざまな姿を見ることができるので、クエストは全てクリアしたいところです。
また、今作は敵キャラクターにも注目してほしいです。特に“三将”と呼ばれる、ヨルズ、ラーグ、オーズの3人のキャラクターはいずれも非常に良く磨かれたキャラクターになっていて、アドルとカージャの冒険を盛り上げるのにひと役もふた役も買ってくれています。
「イース」シリーズにこのようなボス敵が現れるのは珍しく、これもストーリードリブンな「イース」シリーズになっている所以だったと思います。
これまでにも人型の敵キャラクターはもちろんたくさんいましたし、話をする敵キャラクターもたくさんいましたが、序盤からストーリーにしっかり絡んでくる明確な敵キャラクターというのは、あまりいない方でした(全くなかったわけではありませんが)。
それは「イース」シリーズがアクションに主軸を置いたゲームだからこそのストーリー構成だったと思いますし、長年そこに対して不満を抱いたこともなかったのですが、今回三将が敵として登場することによって、「イース」の物語の新たな可能性も見えたように感じられます。
これだけバーンと登場するからには、敵キャラクターにもそれなりの物語が用意されている、と思いますよね。もちろん、ストーリー上ではしっかりと三将の背景も描かれており、さすが「イース」と手を叩きたくなってしまいました。
海の旅や、探索が楽しい!
前作の「イースIX」がオープンワールドに近いゲーム性で、本作は再びリニア式に戻ったことなどから、オープンワールドが好きな筆者はちょっと心配だったのですが、そんな心配は無用だったのが、海の旅の楽しさです。
本作は大小無数の島々が存在する北の海「オベリア湾」が舞台で、アドルとカージャはサンドラス号に乗ってこの海原を翔けるのですが、海が本当に広大で進んでも進んでも先が見えない、だからこそ何かを見つけたら「わぁ!」と声をあげたくなるほど嬉しい、そんな旅が待っていました。
だだっ広い海を進むだけの何が楽しいのかと思われるかもしれませんが、長い船旅を楽しく進めるように、様々な工夫がされています。
まずは船を進行させながらそのまま海上で各キャラクターたちが交わす、「船上会話」。先程も述べた通り、本作はアドルとカージャ以外のキャラクターの出番は控えめなのですが、それを補ってくれるのがこの船上会話です。
船上会話は必ず聞かなければならないものでもありませんが、聞いていると長い船旅があっという間になるという、不思議。むしろ船上会話が終わらないのに目的地に着いてしまい、周囲をウロウロすることもあるほどです。
ちなみに目的地に着いて船上会話が途中で切れてしまった場合も、日誌に会話の内容は登録されるので安心です。ただ、せっかくなのでその場で聞きたいんですよね。船上会話の内容は長すぎず短すぎず、非常に良い塩梅になっているので、長い船旅でも全く飽きることがありません。
船上会話以外にも、海上に落ちている資材を拾いながら進んだり、風の吹くルートを探したり、時には敵に占領されている島を見つけて「奪還戦」に挑んだり……。奪還戦はスコアによって報酬が変わるので、Sランクを目指して素早くスマートにクリアする必要があります。
他にも流しの商船や、敵の艦隊と遭遇することもあり、海の旅は広いながらも全く飽きることがなく、むしろ「こっちには何があるんだろう?」と常にワクワクした気持ちで臨むことができました。
海域ごとに発見率も表示され、マップも徐々に開けていくので、発見率を100%にする楽しさがあります。
そして海から上陸できる島は、いずれもしっかりとした手応えのある難易度。結構序盤から長めでやり応えのあるエリアが登場して、1ミリも妥協しないエリア作りへの意気込みが感じられます。
後半になればなるほど様々なマナアクションを駆使しないと進めないようになっており、闇雲に突き進むのではなく、頭を使って進むようになっています。アドルとカージャ、2人だからこその連携プレイが光るギミックなども用意されていて、ダンジョンを進んで行く楽しさはまた格別です。
なおマナアクションは物語が進むごとに徐々に解放されていくので、鈍臭い筆者でも安心の、親切丁寧な設計になっています。
例えば、マナアクションのひとつ「マナライド」はスケボーのようなものに乗って地面から浮き上がって滑走するアクション。水の上を移動でき、風脈に乗ってビューンと遠くまで飛んだりすることができるようになるのですが、このマナライドでの移動が疾走感があって、探索のテンションがとても上がります。
「イース」シリーズならではの、「マップに見えているけれど、取りに行く方法がわからない宝箱」を探して、ウロウロするのも楽しい!
ただし、「埋もれた財宝」だけはマナアクション「マナセンス」を覚えないと回収できないようになっているので、場所によっては来訪時点で発見率を100%にできるわけではないのだけが、筆者の本作唯一の不満点だったかもしれません。
発見率は初回来訪時から100%にできるようにしてほしかった、という気持ちですが、マナセンスを覚えてから回収していないエリアを一網打尽にすれば良いだけではあるので、些細なことではあります。
釣りが復活!探検をするだけが冒険じゃない。レリーズ・ラインは奥が深い
「イースVIII」で好評だった釣りが、本作で復活しました。
操作はシンプルなので、誰でも簡単に楽しめます。実際筆者は釣りが少々苦手なのですが、そんな筆者でも楽にこなせる数と操作感で、程よい気分転換を楽しむことができました。
海が舞台ならではの海釣りもあり、マグロとかも釣れます。巨大なマグロを釣り上げると、アドルも小さく見えますね。
他にも野生のピッカードを捕まえて船内で飼育することで船内で野菜が採れたり、採れた食材を使って食事会を開催したりと、やれることは盛りだくさん(食事会の効果が主に発揮されるのは奪還戦)。
そしてもうひとつ、「イースX」には重要なシステムがあります。それが、レリーズ・ラインというアドルとカージャの潜在能力を引き出す強化システムです。
レリーズ・ラインはアドルとカージャでそれぞれで持っており、レベルアップしたときに獲得するマナポイントを使って、能力を解放していくシステムです。レリーズ・ラインにマナシードをセットしてマナアビリティ発動させ、アドルとカージャの能力を自分好みにカスタマイズすることができるのです。
文字だけで見るとちょっと難しそうですが、難易度NORMALくらいなら特に気にしないで発動させてもクリアには問題なかったです。ただ、難易度INFERNO~NIGHTMAREなどになると、このレリーズ・ラインが相当意味を持ってくるのだろうなと感じました。
レリーズ・ラインでは、例えばアドルをひたすらクリティカルに特化させたり、カージャをひたすらBRKに特化させたり、といったことが可能です。自分の苦手な分野をカバーするも良し、自分の得意な分野を更にマシマシにするのも良し、もちろん色々バランス良く伸ばすも良し。アドルとカージャでそれぞれ設定できるので、色々試して使い勝手の良い調整をするのが良いと思います。
特にアドルがレベル99になるとレリーズ・ラインの様々な制限が解かれるので、やり込もうと思えばこのレリーズ・ラインだけで何十時間費やすこともできるレベルです。普通にクリアまでプレイする分にはちょっと空気感のある要素になってしまっていたのが非常にもったいなかったのですが、やっておけばバトルが楽になるのは確かなので、ぜひ活用してほしい要素です(「軌跡」シリーズのクオーツにちょっと似ているシステムなので、クオーツいじりが好きな方なら絶対楽しいです)。
「イース」初心者にもオススメ!
以上、「イースX」の魅力、いかがでしたか?
「イースVIII」、「イースIX」と高評価の「イース」が続いたこともあり、「イースX」はどうなるんだろう……? と筆者も発売日までドキドキだったのですが、そんな心配を吹き飛ばす面白さで、一気にクリアしてしまいました。2周目も難易度を上げて順調に進んでいます。
さまざまなマナアクションを駆使しての探索も楽しいですし、バトルも熱いですし、キャラクターもみんなとっても可愛いかったりかっこよかったり、最後の最後まで怒涛のように押し寄せる熱いストーリー展開も最高でした。
今回は序盤から街並み、各島の風景、ダンジョンと、様々な景色を目にできるのも楽しかったですね。
「イース」と言えば音楽の評価も非常に高い作品ですので、音楽も忘れてはいけません。迫力感満点の曲から船旅を盛り上げてくれる曲、イベントシーンを盛り上げる曲、いずれも素晴らしいです。「イースX」のテーマがあちこちに散りばめられているので、全体的な統一感もグッドです。「イースIX」が少々重めの音が多かったのに比べて、スカっと青空の下でプレイしている感じが音楽からも溢れていますので、明るめの雰囲気のBGMが好きな方ならハマることは間違いないでしょう。
ちなみにPS5版だとロードも爆速で、一瞬のうちにマップが切り替わってしまいます。さりげないところですが、ロードでストレスがかからないのはいいですよね。
いきなり「イースX」から遊んでも面白いのかな、と悩んでいる方はもちろんのこと、過去作をプレイした方にも全力でオススメしたい作品となっていますので、ぜひプレイしてみてほしいと思います!
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