Wright Flyer StudiosとKeyが手掛ける新作のスマートフォン向けRPG「ヘブンバーンズレッド」。11月4日よりスタートしたクローズドβテストのプレイレポートをお届けする。

目次
  1. ストーリーが主導するゲームサイクル
  2. 会話のやり取りから見える“麻枝准イズム”と、ゆーげん氏が描く魅力的なキャラクターの融合
  3. バトルはテンポと戦略性のバランスが魅力
  4. 育成に役立つサブコンテンツも充実
  5. 伏せられているであろう秘密の数々にも期待

発表当時、「AIR」「CLANNAD」「リトルバスターズ!」などで知られる麻枝准氏が手掛ける待望の新作ということで話題を呼んだ「ヘブンバーンズレッド」。その後、しばらくの充電期間を経て、いよいよリリースに向けて再始動することになった。

事前登録などの施策とともに、ゲームシステムやゲームのバランス調整、サーバー負荷などの検証を目的として行われている今回のクローズドβテスト。11月11日14:59までと比較的長い期間での実施となるが、それだけにゲームのボリュームも盛りだくさんとなっている。

今回、昔からのKeyファンの一人である筆者もクローズドβテストの内容をプレイすることができたので、その魅力をいくつかのポイントから紹介していければと思う。

ストーリーが主導するゲームサイクル

まず実際にプレイしてみて驚かされたのが、本作ではいわゆるチュートリアルにあたる部分が全てメインストーリーのサイクルに組み込まれているところ。もちろん、ストーリーとチュートリアルが連動しているのは良く見かけるが、本作ではある一定のところに達するまで、メインストーリーの中で各種チュートリアルが行われる。

その後、ホーム画面にも行けるようになるのだが、どちらかと言うとホーム画面はメインストーリーの合間の箸休め的なポジションで、とにかくゲームにおいてはメインストーリーの占める割合が圧倒的。1日サイクルでゲームは進行していくのだが、その途中にはフリータイムが設けられており、そこでレベル上げに役立つアリーナや一部の装備アイテムを購入するショップなどを利用できる。

ここに筆者の一番の驚きがあったのだが、本作は主人公である茅森月歌を操作し、特定の場所に赴くことでストーリーやイベントが進行する。もちろんマップ上のショートカットは用意されているものの、いわゆるワンタッチで移動できるアイコンは用意されておらず、ここにRPGならではの体験を意識していることが感じられる。

シーンによってはほかのキャラクターたちと移動することも。

また、スマートフォン上でRPG体験を成立させるためのアプローチはいくつかあると思うが、本作においてはキャラクターの移動自体をベルトスクロールにすることで、シンプルな操作感でさまざまな場所に移動できるようになっている。こちらはWright Flyer Studiosがこれまでに手掛けてきたタイトルのノウハウが感じ取れる。

道なりであればそのまま移動可能。建物などの場所は矢印に触れると入ることができる。

朝起きてから夜寝るまでの一連の流れを繰り返していく中で、個性豊かなキャラクターと関わり、さまざまな出来事に遭遇する。このゲームループそのものを主体にシステムが構築された、まさに本作ならではの体験となっていた。

移動中にはほかのキャラクターたちの姿も。喋っているセリフにも注目したい。

会話のやり取りから見える“麻枝准イズム”と、ゆーげん氏が描く魅力的なキャラクターの融合

もちろん、このサイクルを支えるためにはストーリーそのものの魅力も重要。本作では、謎の生命体「キャンサー」に襲われて危機に瀕している地球を舞台に、唯一キャンサーに対抗できる決戦兵器「セラフ」を操ることのできる、何かしらの才能を持った少女たちを描いていく。

随所にその世界観の一端を感じることはできるものの、会話のやり取りは全体的に速いテンポ感で進んでいく。例えば、Day1の冒頭でのボケ続ける茅森月歌とツッコみまくる和泉ユキのやり取りは、ある意味で本作ならではの醍醐味。なぜならば、この軽妙かつ畳み掛けるやり取りこそが麻枝准氏のシナリオの魅力の一つと言えるからだ。

自身も伝説的バンド「She is Legend」の天才ボーカリストである月歌が部隊長となる第31A部隊でも、天才ハッカーのユキをはじめ、サイキッカーの逢川めぐみ、諜報員の東城つかさ、ゲーマーと殺人鬼の二重人格者である朝倉可憐、ちびっ子艦長の國見タマと個性豊かなメンバーが勢揃い。そのほかの部隊や司令部のキャラクターたちとのやり取りもバリエーション豊かだ。

ベースはオーソドックスなテキストアドベンチャー形式を採用しているが、フルボイスであることで会話劇としての面白さを表現。そして随所に用意されたカットインの存在が、麻枝氏の持つテキストの勢いを増幅させている。ゆーげん氏の立ち絵やイラストのバリエーションも、昨今では多くなってきた2Dアニメーションの手法に劣らない魅力を醸し出している。

また、システム的にもシックスセンスと呼ばれる各要素のチャートが用意されていて、ゲーム中の行動などでその値が変動する。今回のプレイで確認できた範囲だと、ほかのキャラクターたちとの交流の際、その値を満たしていないと解放されない模様。時折発生する3択同士を組み合わせた選択肢の結果や、ゲーム進行で解放されるアクティビティによって変動するため、どの数値を伸ばすかも意識していく必要がありそうだ。

実際に読み進めてみて絶妙だと感じたのが、本作における選択肢はいわゆる会話の分岐を楽しむだけの形式的なものから、一部のパラメーターに影響するものまで多彩に用意されていること。これによって、メリハリのある会話をほどよい緊張感の中で楽しめた。

なお、ホーム画面からは過去にさかのぼって同じ体験を繰り返すことが可能で、改めて別の選択肢でのやり取りも確認できる。ストーリーを味わい尽くすことが本作における目的の一つになってくるだろう。

バトルはテンポと戦略性のバランスが魅力

バトルは、前衛3人後衛3人のシンプルなターン制コマンドバトルを採用。行動開始前に戦列は自由に入れ替え可能で、ターン開始時にプラスされるSPを消費することでさまざまなスキルを繰り出せる。

テキストで説明するとこのぐらいのシンプルなものにはなってしまうのだが、実際は武器によって属性があって3すくみの関係になっているほか、敵味方お互いにDPと呼ばれるバリア状のもので身を守っており、DPを破らないと直接HPにダメージを与えられない。

このDPとHPの関係が意外とクセモノで、まず一度DPが破られてしまうとHPの回復手段は少なくとも今回のプレイ範囲では無く、さらに誰か一人でもHPが0になると敗北になってしまうのだ。逆にDPを回復させるスキルはあるため、DPが危なくなったらすぐ回復……といきたいところだが、該当のスキルには戦闘ごとに使用制限が設けられているため、強敵と長期戦になった場合にはいかに効果的に使うかも大事になってくる。

ちなみに、部隊に編成するメンバーには全部で7つの役割があり、用意されているスキル攻撃はDPやHPにダメージ補正がかかるものなど、それぞれの特性を持っている。また、アビリティとして特定のキャラクターがスキル攻撃を行った際に追撃してくれるキャラクターもいて、編成と育成の両面から戦略性のあるバトルが楽しめそうだ。

DPが無くなると敵がBREAKし、1ターン分のアドバンテージが得られるので一気に畳み掛けよう。

もちろん、ゲームが進行していくといわゆるバトルの2倍速やオートバトルなどの要素が解放され、サクサクとバトルを進めていくことも可能。敵との実力差を鑑みながら、要所以外ではオートバトルも活用することで、よりスムーズにバトルを進行できるのではないだろうか。

今回、探索から敵にエンカウントし、バトルに勝利するまでの流れを動画にしてみたので、参考にしてもらえれば幸いだ。

育成に役立つサブコンテンツも充実

最後の項目として紹介したいのが育成について。実は本作、プレイヤーランクに応じてメインストーリーが解放されるようになっている模様で、メインストーリーに挑むために推奨される戦力と併せて、各種育成が欠かせないゲームとなっている。

各キャラクターには固有のパラメータのほか、ガチャで手に入るスタイルによって補正パラメータが上乗せされるようになっている。スタイルそのものをレベルアップさせるだけでなく、アイテムによるパラメータ強化やスキルやアビリティの習得もできる。

加えて、セラフというキャラクター固有の武器にブースターやチップを装備したり、アクセサリの数々を装備することであらゆるステータス補正を上乗せできる。ここにプレイヤーごとの遊び方が反映されてきそうだ。

メインストーリー上でもメニュー画面から部隊編成やスタイルの強化、ミッションの確認などはすぐに行えるのだが、アクセサリなどを入手するためのサブコンテンツはホーム画面から向かうことになる。

こちらがメニュー画面。まるで実際に手にしているかのような没入感を味わえる。

今回のプレイで実装されていたのはプリズムバトル、ダンジョン、時計塔の3つ。最初に挑むことになる時計塔はゲーム進行によって徐々に階層が増えていく踏破型のコンテンツで、基本的には解放されている階層までであればいつでも挑むことが可能。そのほかのコンテンツに関してはライフを消費することになるが、1日につき用意されているライフは3だけで時間経過による回復もないため(ゲーム内通貨のクォーツでの回復は可能)、必然的に挑む回数は限られてくる。

本記事の序盤で本作はストーリー主導のゲームであると書いたが、これはスマートフォンゲーム特有の育成サイクルすらもストーリーを進めるための鍵として機能している点からも感じ取れる。とはいえ、メインストーリー内のフリータイムにはホーム画面からいつでも行くことができ、スタミナの概念がないことからアリーナなどの周回プレイにも制約は設けられていないため、時間をかければ着実に進められることだろう。

伏せられているであろう秘密の数々にも期待

正直なところ、育成要素に関してはスタイルがガチャに依存してしまう部分もあって特にプレイを始める当初は色々考えながら進めていく必要があるのだが、翻すとそれはメインストーリーのボリュームが大きいからこその、スマートフォンゲームならではのデイリーサイクルを考えた上での仕様でもあるのだろう。

それでも先に進めたくなるだけのメインストーリーの魅力が本作にはあるし、CBTの範囲をプレイした今の段階でも、時折仄めかされる不穏な空気や、ホーム画面にいる猫の正体など、気になるところは多々用意されている。それがどれほどのボリュームで語られることになるのかは分からないが、少なくともCBTの第1章からは壮大な物語の片鱗を感じ取ることができた。

蛇足にはなってしまうのだが、本作では麻枝氏自らが音楽プロデュースも手掛けており、随所に流れる音楽も魅力であることもここで触れておきたい。その中でも、バトル中の音楽もシチュエーションによって変化しており、ここにもRPGならではのテイストが感じられたので、ぜひチェックしてもらえればと思う。

※画面は開発中のものです。

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