サムザップ・ドリコム・ブシロード三社の共同メディアミックスプロジェクトとして提供される「ディーサイドトロイメライ」をレビュー。奥深いストーリーや戦略的なバトルなど、本作の魅力を紹介する。
「ディーサイドトロイメライ」は、サムザップから配信されているスマートフォン向けRPG。配信元はサムザップとなっているが、本作はサムザップ、ドリコム、ブシロードという三社による共同メディアミックスプロジェクトとして提供されている。
ゲームとして配信されている本作以外に、TVアニメが存在。ゲームとTVアニメではそれぞれ異なる物語を描いているが、いずれもストーリーのモチーフとなっているのはクトゥルフ神話。さらに、ストーリーとキャラクターコンセプトは「女神異聞録ペルソナ」や「ペルソナ2(罪、罰)」といったタイトルでシナリオを手がけた里見直氏が担当。クトゥルフ神話ファンや里見氏のシナリオのファンにとっては、注目の一作といえる。
現実を侵食しようとする悪夢の世界
本作の舞台、自然の残る由良島では、その穏やかな雰囲気とは真逆の凄惨な事件が発生していた。噂によると、死体の首はいずれも失われいていたという。由良島にある海神学園へ通う本作の主人公、古堅 蘭堂は、この事件に巻き込まれるうち、現実を侵食しようとする悪夢の世界のことを知る。
本作において「夢」は、寝ている時に脳が見せる幻影などではなく、現実世界の裏側に別世界として存在している。「トロイメライ」と呼ばれるこの夢の世界から、現実世界を侵食しようとしているのが、「トロイメライ」に住む異形の存在「ウィアード」。
蘭堂は、海神学園へ転校してきた天海 えると知り合ったことから、「ウィアード」と戦う力を持った「ノッカーアップ」として覚醒。「ウィアード」を巡る事件に深く関わっていくことになる。
これが本作冒頭のストーリー。「悪夢の世界」という設定がいかにもクトゥルフ神話を連想させる。また、HPラブクラフトの作品が掲載されていたパルプ誌を思わせる「ウィアード」というネーミングに、思わずニヤリとした人もいるのではないだろうか。ただ、本作はクトゥルフ神話要素をストレートにそのまま描いてはいない。本作なりの形に落とし込む形で描いている。「クトゥルフ神話」はあくまでモチーフと捉えた方がいいだろう。
学校で起きる問題を描いた味わい深いストーリー
「悪夢の世界から来る異形とのバトル」という現実離れした世界観を描いているものの、本作のストーリーはとてもリアルに感じられる。これは、いじめや学級崩壊、親子関係の問題などといった、学校で起きる問題を横糸として扱っているからだろう。
「トロイメライ」は夢の世界ということもあって、我々の「想い」や「願い」が強く影響を与える。「ノッカーアップ」たちが現実世界にいながら「ウィアード」に対抗できるのもこのためだろう。一方で、現実の人間が「ウィアード」と化してしまうことも起こり得る。では、「ウィアード」化してしまうような強い「想い」や「願い」がどうして生まれるのか?そう、学校で起きる問題が原因だ。
学校で起きる問題は、大部分の人にとって非常に身近な、肌で感じられる問題ではないだろうか。既に学校を卒業したという人であっても、学校で経験したいいこと、いやなことが想い出として残っているはず。あるいは、学校を卒業した後、父母や教師など、異なる立場で改めて学校に関わるという人もいることだろう。だからこそ、本作で描かれる事件に強く感情移入してしまう。そして強く感情移入するからこそ、「ウィアード」をめぐる超常的な物語も、リアルに感じられるのだ。
加えて、本作のゲームシステムも、深い感情移入を促しているように感じた。本作は、アドベンチャーパートとバトルパートによって構成された「クエスト」をクリアしてゲームを進めていく。これ自体はスマートフォン向けRPGで一般的なスタイルだ。しかし、本作の場合、アドベンチャーパートのみで構成された「クエスト」が非常に多い。
スマートフォン向けRPGの多くが、キャラクターの獲得できる「ガチャ」を課金ポイントとしている。プレイヤーは、「ガチャ」で手に入れたキャラクターを使って、バトルを行う。だからこそ、バトルパートはスマートフォン向けRPGにとってメイン。このため、多少無理があってもストーリー上にバトルパートを挿入することが少なくないように思う。
本作も、ゲーム的なおもしろさのメインはバトルパートに存在している。しかし、本作のバトルパートはストーリー的に無理がない状況でしか発生しない。流れ的に敵の出現が不自然な状況は、アドベンチャーパートのみで構成されているのだ。だからこそ、感情移入が促進される。ストーリーの見せ方にこだわっていることがよくわかる仕様だ。
ちなみに、筆者としては、必ずバトルパートと会話パートを組み合わせるタイプの演出も、悪くないと思っている。ゲームシステムの比重が高い作品であれば、できる限り毎ステージ、バトルパートがあるべきだろう。しかしストーリー性を重視するのであれば、本作のように、会話パートを重視した方が、より深く物語に浸れる。要は、コンセプトに相応しい演出が採られているかという話だ。
なお、細かい所だが一点だけ、ストーリー演出で気になったところがあった。それは、ストーリー上のパーティー編成と、バトルパートでのパーティー編成が異なるという点。これ自体はスマートフォン向けRPGで標準的なスタイルなのだが、本作の場合、パーティー編成以外の部分はストーリー重視の仕様になっているため、気になってしまったのだと思う。ただ、自由なパーティー編成でバトルできるというのはスマートフォン向けRPGの醍醐味。なので変える必要はないのだが、一言でいいから違和感を与えないための設定が欲しい。筆者は「トロイメライを通じて、いないはずのメンバーのアストラル体だけを呼び出しているのだろう…」などと脳内補完していた…。
一定ターンまでに効率よくコマンドを選ぶ戦略的バトル
では、本作がバトルを重視していないのかというと、そんなことはない。本作のバトルはオーソドックスなターン制コマンド選択型バトルをベースとしながらも、深い戦略性が楽しめるものになっている。
本作のバトルで関わってくる要素は大きく分けて3つ。1つめは敵がスキルを使うまでのターン、2つめは弱点属性による攻撃、そして3めはバフ/デバフだ。
敵には強力なスキルを使うまでのターンが示されている。大ダメージを避けるためには、当然、そのターンまでに態勢を整えなければならない。この要素はいわば、制限時間のようなものとして機能している。
では、限られたターン数で何を行うのか?そのひとつが弱点属性による攻撃だ。敵の弱点属性で攻撃すれば、大ダメージを与えられる上、敵のWEAKゲージがアップ。ゲージが満タンになると敵がダウンし行動不能になるので、スキル発動も避けることができる。
また、バフ/デバフを使って被ダメージを軽減するのも有効。本作のスキルの多くは、直接ダメージに加えて、味方攻撃力アップや味方防御力ダウンといったバフ/デバフの補助効果を持っている。敵がスキル攻撃をしかけてくるターンに合わせて上手にバフ/デバフを発動させれば、被ダメージを軽減されることが可能。もちろん、与ダメージを増加させるためにもバフ/デバフは有効だ。必殺技的な威力を持つアストラルフォースに合わせてバフ/デバフを仕掛ければ、大きなダメージを与えることができる。
特定のターンまでに最適な行動を目指す本作のバトルは、考える楽しさをしっかり味わわせてくれる。その反面、難易度が高いと感じる人もいるだろう。ただ、もし難易度が高いと感じたら、レベルアップや属性攻撃による力押しを試す前にぜひ、バフ/デバフを使って戦闘の組み立ててみてほしい。トレーディングカードバトルゲームでコンボを組むかのような戦略性が味わえるはずだ。
ストーリーに深く浸って楽しめる学園モノRPG
本作がストーリーにこだわって作られた作品であることに間違いはない。とりわけ学生生活の問題を描いている点は、多くの人の心に刺さるだろう。里見直氏の過去作のファンはもちろん、ゲームにストーリー性を求めるプレイヤーはプレイする価値のある作品だ。
一方で、クトゥルフ神話、とりわけ超自然的恐怖を描くコズミックホラー系のクトゥルフ神話を期待してプレイすると、肩透かしをくらう可能性が高いだろう。変死事件などのサスペンス要素はあるものの、ホラー要素はさほど強くない。クトゥルフ神話テイストの学園伝奇RPGといった認識でプレイすることをオススメする。ただ、そもそもクトゥルフ神話はコズミックホラーからパルプフィクション的娯楽作まで幅広いフォロワーを許容するシェアードワールド。なのでその意味では本作もまた、クトゥルフ神話の一形態といっていいはずだ。
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