miHoYoからリリースされたオープンワールドアクションRPG「原神」のiOS版をレビュー。アニメタッチの美しいビジュアルを特徴とし、大きな話題を集めている本作の内容に迫る。
「原神」は、ファンタジー世界を舞台としたオープンワールドアクションRPG。正式リリース後、PC版ではアンチチートプログラムがバックグラウンドで起動し続けてしまうだとか、iOS版ではアプリがクリップボードの情報を取得していただとかいった問題があり、炎上騒動に発展した。ただ、これらの問題は現在はいずれも修正済み。また、これだけ大きな話題になったのも、そもそも本作がビジュアルやゲーム内容といったゲーム本来の面においても、大きな話題を呼ぶだけのポテンシャルを持っているからだろう。そこで、問題が沈静化した現段階でゲームをプレイ。その内容を紹介したい。
「ゼルダ」的ルックスを持ったハイクオリティ作品
本作の見どころは、そのグラフィックスだろう。セルアニメ風のビジュアルは、パッと見てわかる美麗さ。ゲーム世界の中に流れる風すら感じさせるそのクオリティを持っている。
このグラフィックスと、オープンワールドアクションRPGというゲーム内容から「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド(以下BotW)」をイメージする人も少なくないだろう。筆者もプレイ前はそう思っていた。いや、実際のところ、プレイ中も何度か「BotW」が頭をよぎった。正直、「BotW」のプレイ経験がある人なら、プレイ中あれこれ比較せずにはいられないだろう。ただ、本作はオープンワールドアクションRPGといっても、「BotW」とは真逆の方向を目指した作品だ。
純文学的な「BotW」とエンタメ的「原神」
筆者は「BotW」について「純文学的」だと感じている。徹頭徹尾、プレイヤーに「感じる」ことや「考える」ことを促しているからだ。純文学というのは、(もちろん作品にもよるが)作品内で描かれていることについてあれこれ過剰に説明しない。作品のテーマは読者自ら考えるものだし、その結果、読者によって感動の形が異なることにもなる。読者によって…と書いたが、同じ人間が繰り返し読む場合でもそうだ。十代のころと二十代のころとでは物語の見え方や感動が大きく変化する。
「BotW」もまた、プレイヤーによってプレイの形も感動の形も変化する。敵の攻略方法はさまざまなパターンがあるし、「試練の祠」を辿る順番だって特定の順番があるわけじゃない。そもそも序盤の「始まりの台地」をクリアすれば、途中過程をすっ飛ばしてラスボスである厄災ガノンと戦って倒すことだってできるのだ。だからこそ、プレイヤー自ら考え、プレイヤーごとに異なる体験が生まれ、結果として異なる感動を味わうことになる。
これに対して「原神」は「エンタメ的」だと感じた。エンタメ…エンターテインメントジャンルは、お客さんを楽しませてナンボ。お笑いだったら笑わせなければならないし、ホラーだったら怖がらせないとならない。お客さんがお金を払っている対象は、ゲームや映画、小説といったコンテンツ本体ではなく、「感情の変化」と言ってもいいだろう。なので、プレイヤー自ら「感じ」たり、「考え」なければ楽しさがわからない…という純文学とは真逆の方向。もちろん、どちらがいいとか悪いとかいう話の問題ではない。単なる方向性の違いだ。
「原神」がエンタメ的だと感じ要素のひとつが、パートナーである「パイモン」。「パイモン」は、主人公が釣り上げた妖精であり、旅のおともとして…また目的地へのガイド役として活躍してくれるキャラクターだ。チュートリアル役と世界の説明役も兼ねており、プレイヤーは序盤、「パイモン」を通してこの世界を知ることになる。これはつまり、プレイヤーは基本的に「パイモン」を通して、ゲーム世界の情報を「知る」ことができるということ。能動的に「感じ」たり、「考え」たりする必要はほぼない。…と、ここまで読んで、なんか「パイモン」が悪い的に見えるかもしれないが、そんなことを言いたいわけではない。むしろ「パイモン」はイイ。かわいい。いて欲しい。というか、先に書いた通り、いい/悪いの話ではなく、方向性の違いということが言いたいのだ。「原神」はエンタメ的…もっと言えば「JRPG」的方向性を持った作品といえる。
というのも、「原神」はオープンワールドの性質も「BotW」とは真逆。「BotW」のオープンワールドは先に書いた通り、ラスボスである厄災ガノンを倒すことという大目的が提示されており、大目的達成の足がかかりとして4神獣の解放や試練の祠攻略、ウツシエの記憶収集などの中目的が提示される。ただし、中目的は達成してもしなくてもいいし、達成する場合もどんな順番で挑もうが構わない。言い変えるなら、ゴール以外にチェックポイントがない形だ。
一方、「原神」はメインシナリオが存在している。筆者もまだ途中までしかプレイしていないが、少なくとも現段階では基本的にはメインシナリオ通りに物語を辿る形。つまり、ゴール以外にチェックポイントが存在している。ただ、チェックポイントまでの寄り道は自由に行うことが可能だ。この結果「原神」は、物語で魅せる楽しさを持ち合わせている。キャラの立った登場人物たちが、セリフやイベントシーンで活躍する楽しさ。まさに、JRPGが持つ楽しさだ。
オープンワールド要素を持ったJRPGとして格別におもしろい作品
ここまで「BotW」との比較で本作について触れてきたが、では、ひとつの作品として見た時、本作は面白いのか?これがおもしろい。無料でこんなおもしろいゲーム遊べていいの?ってくらいだ。
主人公は、世界から世界へ移動する力を持った双子の兄妹。ある時彼らは、謎の神の襲撃を受けてしまう。この時プレイヤーは、兄妹のどちらを操作するか選択。プレイヤーが選ばなかった方は謎の神に囚われ、いずこかへ消え去ってしまう。
プレイヤーが選んだ方の双子は、どれだけの時間が過ぎたのか、そこがどこかわからない状態で目を覚ます。目覚めた後初めて会うのが、妖精「パイモン」。プレイヤーは「パイモン」の助言を元に、失われた兄妹と、謎の神を探す旅に出かける。
静かなシーンが続いたかと思うと、ド派手なシーンを盛り込む、メリハリの効いた物語の魅せ方。旅の過程で会うキャラクターの個性。ゲーム内の要素は巧みに作られていて、思わず物語に引き込まれてしまう。海外製のゲームだと翻訳の精度が悪く、セリフによってキャラクターイメージが壊れることも多々あるが、本作においてそんな心配は無用。JRPGライクなゲームとして確実におもしろい作品だ。
また、アクション部分もよく作り込まれている。スタミナゲージを使っての壁のぼりや、翼を使っての滑空など、世界を探索するためのアクションもよくできているが、バトルもおもしろい。
バトルは、攻撃ボタン連打でコンボを繰り出すことができるというアクションRPGの王道的システムに、属性システムを組み合わせたもの。属性といっても「木属性には火属性で攻撃」のように、ただ相性によるダメージ効率を考えていればよいというものではない。たとえば、盾を持った敵にはなかなかダメージが通らない。そこで、火属性攻撃の出番。その盾が木で作られていれば、火属性の攻撃によって燃やすことが可能。あるいは、火属性の攻撃で火炎樽を爆発させて、敵を爆発に巻き込んでもいい。
こうした「属性」と、仲間キャラクターとが絡んでいる点も、本作の特徴だろう。仲間が増えると、プレイヤーは操作する仲間を切り替えることができる。たとえば、最初に仲間になってくれるアンバーは弓の使い手。彼女の弓は遠距離攻撃できるという以外に、火属性を帯びているということが特徴だ。このため、木の盾を持った敵に出会ったらまず操作キャラをアンバーに切り替え、弓攻撃で敵の盾を燃やす。その後、そのまま遠距離攻撃で倒し切ってもいいし、敵が接近してきたら主人公に切り替えて剣で戦うことも可能だ。
…と、ここまで書いた通り、本作のゲーム内容はビジュアル、ストーリー、アクション…と、三拍子そろった良作。ただ、スマートフォンでプレイする場合、懸念点もある。ひとつめは、6GB近いストレージを必要とすること。そしてふたつめは、発熱。筆者はiPhone11 proを使用し、1時間プレイしたら20分程度休憩する…という形でプレイしたが、それでも1時間経つとかなり熱くなった。長時間プレイする前提であれば、他機種版を選んだ方が無難かもしれない。
(C) miHoYo Inc.
※画面は開発中のものです。
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