ソニー・インタラクティブエンタテインメントは2018年4月23日、PS4用ソフト「Detroit: Become Human」(デトロイト ビカム ヒューマン)のメディアプレゼンテーションを東京・ソニーシティで開催した。
脚本・ディレクターを務めるデヴィッド・ケイジ氏によるプレゼンテーション
「Detroit: Become Human」は、2018年5月25日に発売予定のPS4用ソフト。共にPS3・PS4向けに発売された「HEAVY RAIN -心の軋むとき-」や「BEYOND: Two Souls」といった、全世界で高い評価を受けたアドベンチャーゲームを多数開発したQuantic Dreamが手掛ける最新作となる。
今回の行われたメディア向けプレゼンテーションには、そのQuantic DreamのCEOであり、本作の脚本・ディレクターを務めるデヴィッド・ケイジ氏が登壇。あらゆる仕事をアンドロイドが担当するようになった、2038年のデトロイトが舞台となる本作。デトロイトではアンドロイドの中に、変異体と呼ばれる感情をもつ者が出現し始めるようになり、人類はそのバグ修正を試みようとする。
本作では変異体による犯罪の捜査を行う“コナー”、変異体アンドロイドグループのリーダーとなる“マーカス”、少女と共に逃亡者となった家事手伝いの“カーラ”ら3人のアンドロイドがプレイヤーキャラクターとなり、デヴィッド・ケイジ氏は「本作はアンドロイドの視点から物語が描かれることが重要だった」と語る。
ゲームプレイの面では、非常に分岐の多いストーリーとなっていることも特徴。Quantic Dreamの中でも、もっとも多い分岐が用意されているが、これはプレイヤーがゲーム内で選択をするたびにその選択がゲームへの大きな影響を及ぼし、それにより表面的なものではない、まったく異なるストーリー展開を提供するという作品を作りたかったからだとケイジ氏は明かす。
加えて、本作はシネマティックではなく、あくまでゲームプレイを通じて物語を追体験できることが重要なポイントとなっていることを挙げ、これによりデトロイトではプレイヤーごとに異なる体験ができるようになっているという。
またデヴィッド・ケイジ氏は「本作の物語がただのエンタメとしてではなく、現実の問題と関連づけて考えられる、プレイヤーの議論や思考を誘発するものになりえる」と、本作で描かれる世界観は決してありえない未来ではなく、これからの人間にとって重要になるテーマが描かれていることも明かしていた。
開発を終えた心境として、「最初に感じたのは安堵、そして期待と不安が入り混じった気持ちです。本作のストーリーはとても複雑なので、執筆をしていて『このゲームは完成しない!』と諦めかけたこともあったくらいで、とにかく無事に完成してホッとしています。4年もの時間をかけて作った作品なので、皆に好きになってもらいたいのですが、本作は非常にユニークなゲームで、これまであまりゲームで扱われなかったテーマを描いているので、プレイヤーからどんな反応があるのか不安もあります」とコメント。
また「本作を手がけたことで、アンドロイドに対する考え方の変化はあったか」という質問を向けられると「やはり考え方に影響を及ぼした部分はありました。というのも、本作を制作する上でAIをどこから知性をもった、どの部分で生物をみなすのかという点をすごく考えさせられたからです。既にAIは特定の分野においては人間を超えていると言えますが、自分たちが作ったものは自分たちを凌駕した高等な存在であると認めるのはすごく大変なこと」と、現実のAIが人間を超えた存在となった時の困難さを語るという一幕も。
発売を楽しみにする日本のファンに向けては「日本のプレイヤーは、ユニークな体験をもとめ、感情が揺さぶられる物語を重視したゲームに対して貪欲で寛容だという印象をもっています。同時にAIやロボットといった題材は日本の文化の中で重要な位置づけとなるテーマだとも思っているので、日本のユーザーが本作にどのような反応を返してくれるか、どの部分が響くのかということを非常に楽しみにしています」と、メッセージを送っていた。
発売に先がけて、ゲーム序盤のチャプターを体験!
プレゼン終了後には、本作の序盤のチャプターをプレイすることもできた。中でも筆者がもっとも大きな衝撃を受けたのは、その世界観がもつ圧倒的なリアリティと作りこみの深さ。2038年のデトロイトは、現在から20年後の未来であるにも関わらず生活感にあふれており、プレイヤーが直接かかわる部分以外でも、世界観を読み取るためのスポットがいくつも用意されている。
例えば、テレビをつければ複数のチャンネルでさまざまな番組が流れ始めるし、街に置かれている雑誌を読むことで、2038年の世界でどのような出来事が起こっているかのニュースを知ることができる。2038年では、仕事の大部分をアンドロイドが賄っているが、街中では、工事現場の一角で肉体労働力としてアンドロイドが使われていたり、仕事を奪われたことでアンドロイドへの反対演説を行う人々がいるなど、リアルな街の空気感を存分に味わうことができる。これらは(あくまでの今回体験した範囲では)ゲームプレイに直接影響を及ぼすことはないが、操作キャラクターであるアンドロイドたちへの感情移入をより強くさせ、あたかも2038年のデトロイトが本当に存在している場所のような感覚を抱かせることに成功している。
本作では、それぞれのチャプターごとに分かれた3人のプレイヤーキャラクターの物語を順番に追体験していく。ゲームシステム的も異なる方向性が用意されており、特に印象的だったのが、捜査官として変異体に関わる事件を解決するコナーのストーリー。本作の物語は、主人を殺害し人質をとって立てこもっているアンドロイドにコナーが交渉を挑むエピソードからスタートすることになる。
部屋の中を捜査し、手がかかりを発見していくと、現場の「再現」が可能となり(ビデオを再生するように事件の状況を確認でき、さらに新たな証拠を発見できる)、どのように被害者が殺害され、なぜ事件が発生したのかという背景がわかるようになってくる。
殺人事件など、より深い捜査が必要になるチャプターでは、捜査の内容を理解しないまま適当にゲームを進めていくと、必要な証拠が揃っていても推理に失敗してチャプターが強制終了してしまうことも。プレイヤー自身がしっかりと推理を立てて事件を解決していく必要があり、純粋なミステリー・アドベンチャーとして、これ単体でも成立するのではと思えるほどの作り込みとなっている。
また本作には、膨大な数のストーリー分岐が用意されており、分岐によってはまったく異なる展開を見せることもある。表示された選択肢によって展開が変わる分かりやすいものもあれば、その時にプレイヤーが行っていた操作、銃などの道具を所持しているかいないかなど、さまざまな要素がストーリー展開に影響を与える。前のチャプターで入手したアイテムを持ち越すことで、プレイヤーがとれる行動が変わったり、チャプターをまたいでの変化が起こるものも少なくない。
これだけだと、一体どんな行動がストーリー展開に影響するのか、プレイヤーにとって予想が難しいゲームとなってしまうのだが、本作では一つのチャプターが終了すると、自身がそのチャプター内で行った選択がフローチャート形式で表示されるようになっている。そのため、自身のとったどの行動がストーリーに影響を与えたか、このチャプターには残りいくつの分岐が存在しているのかを、一目で把握することができる。
これはこれまでのQuantic Dreamの作品では見られなかったシステムで、採用するかかなり頭を悩ませたという。前々作である「HEAVY RAIN」では、残りの分岐がいくつ存在しているかがわからなかったため、全体の20%程度をプレイしただけで満足してしまうプレイヤーが少なからずいたこと、アドベンチャーゲームでありがちな「一見選択肢が存在しているようで、その後の展開には影響を及ぼさない」という表面上でしかない分岐を隠す必要性が、膨大な分岐をもつ本作では存在しなかったなどの理由から採用を決めたそうだ。
またこのフローチャートを遡ることで、任意のチャプターのチェックポイントからストーリーの分岐をやり直し、別の結末を見ることもできる。ただ、それまでのチャプターの結末が次のエピソードにも影響を及ぼすことがある本作においては、前のチャプターの結末が変わるとその先の展開はどうなるのか、疑問をもつプレイヤーもいるかもしれない。
この点については新たなプレイでチャプターの記録を上書きするか、前のプレイの結末を保存したままにプレイ直すかを選択できるようになっている。例えば、最初のプレイでベストだと思える行動をとった後、それとは正反対のバッド気味の選択肢を選び、どんな展開になっているかを、ベストな選択を選んだ状態のデータを保存したまま確認するといったことが可能になっている。
今回の筆者の初回プレイでは、冒頭のコナーのエピソードで交渉に失敗し、犯人が人質ごと自殺した上、コナー自身も撃たれてしまうという考えうる限り最悪に近い結末を迎えてしまったが、フローチャートをさかのぼり、一回目のプレイで逃していた場所の捜査を進めたことで、犯人を説得し人質を解放させることに成功した。
このようにできるだけ最良の結末を求めながら、何度もプレイし直して進めるのも楽しいのだが、デヴィッド・ケイジ氏としては初回だけは一切のやり直しをせず、素直な心のままに選んだ選択肢でエンディングを迎えて欲しいのだという。
おそらく初回プレイでは、筆者が体験したような後味の悪い結末を迎えることも少なくないと思うのだが、通常のゲームならとっくにバッドエンドを迎えて終わっている結末を迎えても、そのままストーリーが進行していくのも本作の大きな特徴。「本当にこのまま進めても大丈夫なのか」という手探り状態でプレイができるのは、本作だからこそ味わえる体験で、大きな魅力となっていると言えるだろう。
最初のエンディングを迎えるまでは、約10時間前後のほどよいボリュームとなっているそうなので、デヴィッド・ケイジ氏の勧める通り、まずは本能のままにストーリーを通しでプレイしてから、「あそこでこんな行動をとっていたらどうなっていたか」とフローチャートを遡って異なる可能性を探っていくのもアリだろう。
さらに異なるストーリー展開を開放していくと、ボーナスポイントを獲得できるようになっている。このボーナスポイントを使ってコンセプトアートやサウンドトラックやメイキング映像といったボーナスコンテンツをアンロックすることができ、一つのやりこみ要素としても楽しめるようになっている。
また本作ではビンを開ける時はスティックをひねる、窓を開ける時はコントローラーを上に持ち上げるなど、通常のゲームではありえないほど、細かい動作の一つ一つに操作が必要となっており、DUALSHOCK4を多彩に活用するのも特徴。洗濯物を取り込む際には、洗濯カゴをもっている必要があったり、ボタン一つでものを拾ったりできないことに苛立ちを覚えるプレイヤーもいるかと思うのだが、そうした細かい動作の一つ一つを異なる動作で行っていく「いい意味での面倒臭さ」が、より作品の中に生きていると錯覚する、没入感を高める役割を果たしている。
このあたりは「HEAVY RAIN」などのQuantic Dreamの作品をプレイしたことのある読者はすぐにピンと来る要素だと思うが、本作ではDUALSHOCK4のタッチパッドを生かした「めくる」や「なぞる」といった動きが加わり、さらに操作のバリエーションが大幅に増した(筆者が今までプレイした全てのゲームの中で、一番タッチパッドをうまく活用したタイトルだと感じたほどだ)。よりリアルかつリッチになったグラフィック、300人以上のアクターを動員し、モーションの撮影だけでも1~2年の年月を要したという細かな人間の動きも、没入感を高めるのに重要になるリアリティを高めている。
そして何より筆者が惹かれたのが、とにかくストーリーが面白いということ。デヴィッド・ケイジ氏は本作のストーリーについて「プレイヤーの議論や思考を誘発する」と発言していたが、まさにこの言葉の通り、思わず考えさせられる深いテーマが描かれる。機械化によって人間の仕事が失われているというのは、2018年の現代にもすでに起こっている問題であり、本作で描かれているデトロイトの姿は、決して遠い未来の夢物語ではなく、現実問題として間近に迫っていると言える。
人間型のアンドロイドが登場することから、本作に対しSF的なイメージを抱かれるかもしれないが、決して小難しい内容ではなく、その本質は現代を生きる人間なら誰しも無関係とは言えない、非常に身近なテーマが描かれている。
もちろんエンターテインメント性も高く、息をつく間もなく繰り広げられこちらの予想を裏切るような、続きの気になる展開の数々は、多くのプレイヤーが止め時を忘れて夢中でプレイしてしまうはず(このあたりの作りは海外ドラマも彷彿とさせる)。プレイヤーの行動によってキャラクターの生死がガラリと変わることも珍しくなく、そんな物語の登場人物の一人として世界に影響を及ぼすことができるのだから、これが面白くないわけがない。
新たな傑作の誕生も予感させる、素晴らしい出来となっていた「Detroit: Become Human」。来たる5月25日の発売が、今から待ち遠しい。
(C)Sony Computer Entertainment Europe. Developed by Quantic Dream.
※画面は開発中のものです。
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