声優の三宅麻理恵さんが気になるゲームを実際にプレイして紹介する「マリエッティのゲーム探訪」。第9回はSpicy Tailsよりリリースされているインディーズゲーム「WORLD END ECONOMiCA」を紹介します。Spicy Tails代表の支倉凍砂氏へのインタビューではVR向けに制作中の最新作「ProjectLUX」にも触れています!

少しずつ春の訪れを肌で感じられてきた今日この頃ですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。新年度に合わせて、世間の進学や新生活への盛り上がりを感じますね。
この波に乗りたいけれども、進学するわけではなく新生活をする環境でもないじゃない…。そんな時は、今まで学んでこなかったことや、理解が足りていなかった分野改めて調べてみるのはいかがでしょうか。
いくつになっても学べることはたくさんあります。しかし、大人になるにつれ選択肢が多すぎて何を学べばいいのか迷って結局何もしないことも多いんですよね、
でも私は、今年の春こそ、株式や経済についてもう少し勉強しようかと思っています。それというのも今回取り上げる作品「WORLD END ECONOMiCA」の影響です。
「WORLD END ECONOMiCA」とは?
「WORLD END ECONOMiCA」は、「狼と香辛料」「マグダラで眠れ」などで知られる支倉凍砂氏が製作した、3つのエピソードで構成されている金融青春アドベンチャー。近未来の月や月面の株式市場を舞台に、月で生まれ月で育った少年・ハルが、“前人未到の地に立つ”という夢を、少女と追いかけていく。
このゲームをプレイするには、PC版(ep3を購入すればep1~3の全てが遊べます)と3DS版(DL販売でep1・ep2・ep3がそれぞれ配信中です)があります。私はep1をPCで、ep2は3DSで、ep3はPCでプレイさせていただきましたが、大きな違いは感じなかったので、みなさまのプレイスタイルに合ったものを選ぶのをおすすめします。ただし、各章ごとに物語は完結していますが話は繋がっているので、Episode1からのプレイをおすすめします。
※以下、画面写真は3DS版のものです。
「WORLD END ECONOMiCA(以下、WEE)」は全3部作の作品となり、Episode1は火星を目指してデイトレードで資金を集める月面生まれの川浦ヨシハル(通称ハル)と数学の天才少女ハガナが出会い、仮想株式市場のコンテストで優勝を目指していく物語。
そしてその4年後を描くEpisode2では、株式投資をやめたハルが没落貴族のエレノアとともに再び株式市場に戻り、大企業アバロンの不正を暴くために奔走します。
最終章のEpisode3ではさらに4年が経ち、投資家としても月面の英雄としても名の知れるようになったハルが月面の危機を、経済を通じて救おうと奮闘する物語になっています。
ハルを通じて実に8年間の物語を追っていくのですが、その間に出会うキャラクターも魅力的です。
まずは主人公の「川浦ヨシハル」。月生まれの月育ちの少年です。前人未踏の地を目指すためにその資金を株取引で稼ごうとする。血気盛んで夢に向かってただただ突き進む様がまぶしいEpisode1の彼ですが、年を重ねるにつれ社会性や責任感を持ち、成長していきます。決して成功ばかりではない、挫折や苦難に対峙する場面も作中ではたくさんありますが、その向き合い方や乗り越えていく場面は涙なしには語れません。
メインヒロインの「ハガナ」。親に売られて月に来た不愛想な少女ですが数学に関しては天才的。Episode1では、その能力を持ってハルと共にコンテスト優勝を目指します。少しずつ心をひらいてくるととても可愛らしく守ってあげたくなる女の子です。
Episode2のヒロイン的な立ち位置の「エレノア」。没落貴族のお嬢様ですが、再興のためハルに助力を求めます。上品で信念があり、ep2では株の世界から距離を置いたハルを引き戻します。
Episode1ではあまり目立つ活躍はないですがep2から成長し、恐らく印象もがらりと変わっていくのが「クリス」。家が貧しいものの数学の才能があり、その能力で地位を築いて行きます。
3作でハルを見守ってくれている「理沙」。クリスチャンでハルだけでなくたくさんの人々を支えてくれます。芯の強さと信念が伝わるキャラクターです。時に厳しく、時にやさしい彼女の言葉は、きっとハルやプレイヤーである私たちに多くの事を気づかせてくれるでしょう。
その他にも様々な魅力的なキャラクターが登場します。
ニュースでは必ず報道されますが、意外と「株」というのは馴染みのない人間にはピンとこず、難しそうな印象を受けるかと思います。私自身もあまり馴染みがなく、株式を題材とした本作を楽しめるか不安だったのですが、ゲーム内でとても丁寧にわかりやすく説明があるので心配は無用です。実生活でも大ニュースになった【バブル崩壊】や【リーマンショック】がなぜ起きたのか、その仕組みも「WEE」の舞台である月面と置き換えて理解できるようになれますので、株式について興味がある方にもおすすめです。
月面の気温が上昇すると株価が変化する。株式は社会と、経済と、文化と密接に関わっています。それを取り巻く人間とも。自分は一人で生きているのではない。電子でのやり取りが多い株式ですが、人とのつながりの重要さを描いているのも「WEE」の特色です。
投資において、作中にはハルが守る重要なルールが示されます。「一つ、損をしないこと。二つ、一つ目のルールを絶対に忘れないこと」。同様に投資をするキャラクター達にも自分が作ったルールが存在するのですが三者三様で自分だったらどんなルールを決めるだろうかと考えてしまいます。
「WORLD END ECONOMiCA」においての武器は、銃でもペンでもありません。株式投資です。頭と武器を使い、前人未踏の地を夢見た少年がどのように成長していくのか、ぜひその目で確かめてくださいね。
「WORLD END ECONOMiCA」を手掛けたSpicy Tailsの支倉凍砂氏にインタビュー!
メインヒロイン以外の女性キャラが人気!?
三宅さん:私は支倉凍砂さんというと電撃文庫で書かれている小説家さんという印象がすごく強かったのですが、「WORLD END ECONOMiCA」というゲームを出されていたのをAmazonで発見して、そこから気づいたらニンテンドー3DSでも発売されていたので気になっていました。最初にインディーズゲームを作られるようになったのは、ゲームを作っているサークルさんから依頼されたからだと思っていました。ゲームを作ろうと思ったきっかけは何でしょうか?
支倉氏:すでにゲームをたくさん作られているサークルがあり、そこに共通の知人を介して、「こういう企画があるのですが、一緒にやりませんか?」と声をかけて作ってもらった感じです。半分委託みたいな感覚ですね。
奈須きのこさんたちTYPE-MOONが作られた「月姫」に昔からすごく憧れを持っていて、自分でも作ってみたいとずっと思っていたのですが、やはり難しくて。本業が落ち着き始めていた2010年あたりに「今やらなければきっとやらない!」と思って、「WORLD END ECONOMiCA」を作りました。
三宅さん:ゲームは三部作になっていますが、最初からそのかたちで出すことは決めていたのですか?
支倉氏:そうですね。分量的にも多くていっぺんには作れなかったので、1年に1作ずつ作って、3年かけて出していきました。
三宅さん:私はEpisode3の時に見つけたという状態だったのですが、その時に衝撃を受けたのが、Episode3を買えば1、2も一緒に遊べるということでした(編注:各種ショップで販売しているPC版のみ。3DS版はエピソード単位での販売となります)。
支倉氏:この作品は章ごとに分かれていたので、全部まとめないと少し弱いなと最初から思っていたのですが、ちょっと欲をかいて分割してみたところ上手くいかなかったので(笑)、結局3つのエピソードを全て入れてパッケージにしました。
三宅さん:実際にお話を書かれるにあたって、小説とゲームでの違いで意識されたことはありましたか?
支倉氏:(テキストの)長さですね。小説は(ページ数が増えて)本が厚くなると売れなくなるので短くするのが大変ですが、ゲームは長くしても大丈夫なので、削るよりも足す意識で書いています。削らなければいけないという悩みがなく、思いついたらどんどん入れていけるという点で、ゲームのシナリオは楽しかったですね。
本当はもっと地の文を少なくしたり、セリフを短くしたりするのがゲームのシナリオライターさんが書かれるテキストだと思うのですが、「WORLD END ECONOMiCA」の場合は小説家が作っているという言い訳で、小説をそのまま書いたんですよ。なのでゲームに慣れている人には地の文が長いと言われますね。
三宅さん:私自身が株に対する知識が明るくなかったのですが、すごくわかりやすく書かれていることに感動しました。その説明の部分が作品の肝だと思ったのですが、実際に書かれる上で苦労したことはありましたか?
支倉氏:専門用語には解説を入れるように注意はしましたね。それと業界用語っぽいのはなるべく入れるようにしたんですよ、通ぶれるような感じで。
三宅さん:月面が舞台ではあるものの、使っているのは現実と同じ言葉にしているんですね。ちなみに「WORLD END ECONOMiCA」はどういう人を対象としているのでしょうか?
支倉氏:大学生から30代ぐらいのサラリーマンで、オタクが止められない人向けですかね。実際には若い人もプレイしてくれていて、「WORLD END ECONOMiCA」を遊んで大学の学部を決めたという人もいてありがたいです。
三宅さん:株を題材としながら、人との繋がりも重要なんだなと思いました。
支倉氏:本当はお金にまつわるシステムの話を延々と書きたいのですが(笑)、今回はお金に振り回される人たちの話を書こうと思い、なるべく人間模様を入れてストーリーになるようにしました。
三宅さん:作中に登場する女性も魅力的な人ばかりですよね。
支倉氏:メインヒロイン(ハガナ)よりほかの2人のキャラ(クリス、エレノア)のほうが人気が高いのですが、いかがでしたか?
三宅さん:ハガナも好きなんですけど、一番最初はクリスを男の子だと思っていたので、Episode2の展開を経て、明らかに結ばれない気がしていたからこそ、私はクリスが好きですね。
支倉氏:とあるゲーム好きの方にプレイしてもらって感想を聞いたのですが、「ハガナは声をかけたら簡単についてくるけど、理沙やクリスはちゃんとしてないと落とせないからそっちのほうがいい」と言われて、すごいこと言うなと(笑)。けどきっと正しいんだろうなと思いました。
三宅さん:ハガナはEpisode1で一緒にお布団で寝るシーンがあるじゃないですか。よくわからない感じにモヤモヤしていました。「あー、わー、もう一歩進まない!」ってなりました(笑)。
支倉氏:もしちゃんとしたノベルゲームだったら、分岐してエレノアルート、クリスルートみたいな感じでやるのでしょうが、同じ結末にはならない気がするので一人では無理でした(笑)。
三宅さん:ちなみに支倉さんが株式投資をやるにあたって大事にしていることはありますか?
支倉氏:どんなルールでも良いのですが、必ず自分のルールを守ることです。
三宅さん:元から投資はされていたのですか?
支倉氏:そうですね。今はあまりやってないのですが、2006年に電撃小説大賞に応募してもらった賞金から始めたので、作家と同じ期間だけ株式投資をやっていますね。
三宅さん:私の両親が株式投資をやっていて、休みの日は午後3時頃までへばりついていたのを見ていたので、ゲームを遊んでいて、月面でも株式市場が開いている時間は一緒なんだなと(笑)。
支倉氏:本当に月面に行くようになったら恐らく24時間開いていると思うのですが、今回はイメージしやすいように同じかたちにしましたね。
三宅さん:音楽や映像も作中には用意されていますが、制作にあたってこだわった点はあるのでしょうか?
支倉氏:背景はシーンの切り替えたり、SFっぽくしたいといった指定があったので、自分でレイアウトを描いて担当の方と打ち合わせするなど、こだわって作っています。キャラクターデザインとゲーム内のイラストは、どちらも同じイラストレーターさんにお願いしていたのですが、ハガナだけ何度か修正したぐらいで、あとは一発OKでした。
三宅さん:このシーンに合わせて絵を入れてほしいという要望もしたのですか?
支倉氏:以前もインタビューで答えているのですが、小説や物語を書いて、編集者さんやイラストレーターさんから「ここにイラストを入れましょう」と言われた時に、自分が見せ場だと思って書いたところと違う箇所だったらそれは失敗しているということだと思っているんです。「WORLD END ECONOMiCA」の時は何も言わなくても、自分が見せたいシーンや印象的なシーンを選んでイラストにしてもらえたので、それは良かったかなと思いました。
音楽についても委託したサークルの知り合いの方にお願いして自分はほとんど触れていないのですが、主題歌の岸田教団&THE明星ロケッツさんは自分が好きだったので、ダメ元でお願いしたところ、全然いいですよと言ってお引き受けいただけました。そのためだけに全員九州から連れてきてスタジオで収録してくれるなどすごく男気のある方で、本当にありがたかったです。
三宅さん:あの曲の雰囲気が、難しそうに見えるテーマをだいぶ和らげてくれているような気持ちでした(笑)。
支倉氏:実際に同人で販売する時にどういったゲームか聞かれた時に、株を扱っているという話をすると「あ、じゃあいいです」という人が多いんですよね。“わからない”という先入観があるみたいで。
――支倉さん自身、ゲーム制作においてディレクションのような役割を担っていたと思うのですが、お話を伺っていると小説を書いている時と似たような感覚で作られているなと感じました。
支倉氏:ゲームのジャンルとしてRPGを作っているわけでもないですし、似たような媒体なので自分でも制作にコミットできたのではないかと思っています。
三宅さん:3DS版がリリースされたことで、若い年代の人たちもプレイする機会ができていいなと思いました。私も小学生ぐらいからギャルゲーをプレイしていたので、そういった人が影響を受けて投資とかをやりたくなったりするのかなと。
VR向けの長編アニメーション「ProjectLUX」の制作エピソードも
三宅さん:VR向けに新たに制作されている「ProjectLUX(プロジェクトルクス)」では、株や投資の話は出てこないんですね。
支倉氏:ただ自分がVRを作りたかったので、お願いして作ってもらったという感じですね。
三宅さん:これまでの情報を見る限りですと、サスペンスの要素があるのかなと思いました。
支倉氏:そうですね。ストーリーは冒頭の裁判シーンから始まり、プレイヤーの視点になる人がヒロインのルクスを殺したらしいという話になって、何が起こったのかを記憶を追体験して見ていくという構成になっています。そして最後には、VRを活用した仕掛けも用意しています。ただ本編自体はプレイヤー視点のキャラクターと女の子がずっと会話をしている、ラブコメっぽい感じです。
三宅さん:今回はマルチエンドということですね。
支倉氏:最後に選択肢が出てくるのですが、トリックに気がついていればトゥルーエンドを迎えることができます。選択肢自体は2つしかないので、何も考えずにトゥルーエンドを見たとしても、そのオチを見てもう一回プレイした時にその仕掛けに気づくようになっています。
三宅さん:VRじゃないとできない仕掛けということですね。
支倉氏:今はVRがあっても、VRで遊ぶ理由のないものがたくさんあると思っているので、必然性を出すためにそのトリックを使っています。
三宅さん:日本語以外も対応されているのは海外にも販売していきたいからでしょうか。
支倉氏:日本ではまだ市場が狭くて売れないので…(笑)。「WORLD END ECONOMiCA」も海外のほうが10倍以上売れているということも大きいですね。海外では日本のコンテンツであれば何でも買うという人が一定層いるらしくて、それが思いのほか大きいのではないかと思います。
――昨今では国内のパブリッシャーがSteamで配信するケースも多くなってきましたよね。
支倉氏:ローカライズのコストをかけても十分回収できることが大きいでしょうね。ローカライズを頑張ってくれている会社もいるのですが、非常にありがたいことですよね。それで味をしめて、今回は最初から翻訳を入れて進めています。
――それは企画立ち上げの時から並行して進めているのですか?
支倉氏:「WORLD END ECONOMiCA」と同じ翻訳者の方にお願いして、最初から字幕を入れていくかたちで進めています。それは前のゲームでの経験が大きく役に立っています。小説家をやっていると以前より進歩しているという実感がないので、ゲームづくりではその感覚が大きかったですね。
――今作に関わられているスタッフの方々との接点はどういったところになるのでしょうか?
支倉氏:キャラクターデザインの月神るなさんは、翻訳版を出している北米の会社(Sekai Project)から招待を受けて、Anime Expoに行った時に知り合いました。
モデラーの榊原圭介さんは、3Dモデリングの同人ゲームを片っ端から見ていって、一番可愛いモデルを作っていて、なおかつしっかりと仕事をしてくれそうな方にお願いしました。モデラーは特殊な領域らしくて、ものすごい執念で1作だけ作るような人たちが結構いるんですよ。すごいクオリティなんですけど、一緒に仕事はできないだろうなという職人さんたちが多いので、その中でクオリティとスケジュール感のバランスが取れているのが榊原さんでした。モデルを可愛くしようという執念を燃やしているけれど、ちゃんとコンスタントに出されてすごいなと。
コンセプトイラストのよー清水さんは、VR界隈によく出没している、背景をメインとされているすごく良いイラストレーターさんですね。
三宅さん:支倉さんがVRに注目されたのはいつ頃でしょうか?
支倉氏:2013年の9月に脳科学者の藤井直敬先生が出されていた「拡張する脳」という本を読んで、これはすごいシステムがあると思いそのまま藤井先生が所属している理化学研究所に体験したいとメールを出したのが最初ですね。そこでVR業界が今来ていることを知って、ずっと作りたいと思っていたのですがツテもなく、3年ぐらいずっと立ち止まっていたのですが、PS VRが出るタイミングで一念発起して、いろいろな人に声をかけて制作しました。
三宅さん:テーマ曲の「夏の境界」も可愛らしいですよね。
支倉氏:n-buna(ナブナ)さんはすごい方で、何通りもサンプルを用意してくれて、こちらの希望に沿ったものを的確に作ってくれました。
三宅さん:内容が内容だけに、これがかかった時にどういう気持ちになるのかなと思っています。
支倉氏:ちゃんとハッピーエンドは迎えるので安心してください(笑)。
――前作がノベルゲームだったのと違い、今回はインタラクティブなゲームになっていると思います。ゲーム進行にあたって説明できる要素も少なかったと思うのですが、いかがでしたか?
支倉氏:今回は何もわからなかったのでとにかく作ってみたのですが、作ってから「こうしておけばよかったな」と思う要素はたくさんありますね。
まず実際に読み上げてもらうとセリフが長いんです。私が以前書いていた「狼と香辛料」がアニメになった時に全然違和感を感じなかったので、小説で書いてもアニメで読み上げても普通にいけるんだなと思いこんでいたんですよ。同じ感覚で進めて実際にアフレコで読んでもらったらすごく長く感じて、そこで脚本家さんがすごいんだと初めて気づきました。ちゃんとセリフを切って、違和感なくする職人の技が入っていたんだなと。
また今回は、シナリオの介在する余地がないので、肩身の狭い思いでした(笑)。ノベルゲームの時はシナリオのデータ量がものすごく多いですし、シナリオがあってイラストが付いてくるので自身を強く出せるのですが、「ProjectLUX」に関してはメインはモデラーさんとシステムで、そこに声優さんの演技が加わっているような感じです。モーションも全部つけてくれて、本当にモデラーの榊原さんはすごい方でした。
三宅さん:拝見したデモムービーでルクスが下から見上げてくれるのが本当に可愛かったです!
支倉氏:大元のデータは声優の田中あいみさんがモーションキャプチャースタジオで実際に演技をしてくれたものですが、その時点では大雑把なデータになっているらしくて、それに表情をつけつつ、ひたすら可愛くしてくれたのが榊原さんです。
田中さんも当初は演技ができないと仰っていたのですが、他の方にお願いする時間的な余裕がなくておまかせしたら、すごく良い演技をしてくれました。自分は何の感覚もなく上手いなと思って見ていたのですが、オタクじゃない人にムービーを見せたら「知り合いのオタクの女の子と同じ動きをしている」と言っていて。そういう文脈の動きがあるらしくて、それが分かるような可愛らしさを出してくれていたようです。
モーションを撮影しようとした時に、劇団の人にお願いしようという案もあったのですが、その方がオタクのことをよく分かっていなかったら、演技としては上手くてもきっと可愛くならなかったんじゃないかなと思います。
三宅さん:二次元感みたいなものですかね。
支倉氏:今回は偶然が重なった感じですが、次はちゃんとリサーチしてやっていきたいと思いました。それとキャラクターデザインもモデリングしやすいデザインがあるみたいですね。モデラーさんは絵を描くというよりは、元絵を再現する能力らしくて、三次元にしやすい絵とそうでない絵柄があるみたいですね。独特の絵柄の人だと三次元にすると顔が破綻してしまう場合もあるみたいですが、それを知らずに今回はお願いして、結果的には上手くいったような感じですね。
演技についてもモーションを作りやすいものとそうでないものがあるみたいで、私は特に関係なくシーンを入れていたので、一緒にモーションスタジオにいた榊原さんから「演技は非常に可愛いけれど、作業を考えると鬱になる」とポツリとつぶやいていたのを覚えています(笑)。
三宅さん:制作期間はどのぐらいになるのでしょうか?
支倉氏:人を集め始めたのは2016年2月ですが、シナリオが完成したのは6月なので、そこから半年強ぐらいの期間で制作しています。「ProjectLUX」は恐らく萌え系の長編アニメーションは初となるはずで、こういう機会は人生でそう何度もないチャンスだと思っています。
三宅さん:今後、ゲームとして作っていきたいものはありますか?
支倉氏:最終目標はVRMMOなんですよ。それもあって「ProjectLUX」を作ろうと思いました。なるべくVR業界で実績を残して、いつか企画が立ち上がった時に関われるようにしたいと思っています。
三宅麻理恵さんプロフィール

生年月日:1985年6月7日
出身:大阪府
趣味:読書・落語・ゲーム
主な出演作品:「輪るピングドラム」萩野目苹果 役、「銀の匙」御影アキ 役、「緋色の欠片」春日珠紀 役、「アイドルマスターシンデレラガールズ」安部菜々 役
(C)2011-2016 Spicy Tails
(C)FURYU Corporation.
(C) Spicy Tails All rights reserved.
※画面は開発中のものです。
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